そうだ、絵を書こう。
次の瞬間にはキャンパスが目の前にあって、手には絵筆を握っていた。青と赤の絵の具をぐるぐるとかき混ぜて紫を作る。赤過ぎずもなく青過ぎずもない綺麗な紫ができた。私はそれを絵筆にたっぷりと染み込ませて、キャンパスを塗りつぶした。ねちゃねちゃぐちゃぐちゃ音を立てながら、キャンパスが紫色になる。
紫色は地底の色だ。地面と血と怨念が混ざった色。私やお姉ちゃんはそこに住んでいる。ペットの皆や鬼さん達も一緒に住んでいる。
次に私は白と赤を混ぜて桃色を作る。紫色を作り過ぎちゃったみたいで、パレットにはあまりが隙間がない。混ざらないように気をつけたけれど、結局絵筆についた紫色と混ざってしまった。そうして出来上がった桃色をキャンパスに乗せていく。桃色はお姉ちゃんの色だ。優しいけど家に篭りっぱなしのお姉ちゃん。外に出るのが怖いお姉ちゃん。私は外は怖いところじゃないんだよって教えてあげるけど、お姉ちゃんは頷いてくれない。
私は緑色のチューブからパレットに絵の具を出した。パレットは紫色と桃色とその二つが混ざった色で一杯で、緑色はすぐに他の色に溶けてしまった。みるみるうちに飲み込まれていく。私はそれを絵筆ですくい上げ、キャンパスに塗る。生乾きのキャンパスの上で、緑色は見えなかった。紫色と桃色は大きかった。
緑色は私の色だったはず。なのに見えなくなっちゃった。私はどこ?ああそうか。この絵に私はいなかったんだ。地底にはお姉ちゃんがいて、私はいなかったんだ。だから緑色は見えないんだ。
ーーー
気づくとお山にいた。山頂の神社には二人の神様がいる。お空に太陽の力を与えた神様だ。大きな鳥居とのっぽな柱に囲まれた神社。びゅーびゅーとつめたい風が吹いている。山は紅葉が綺麗で、緑色の葉っぱは一枚も残っていない。全部赤と黄色に奪われちゃったんだ。ここでも緑色は見えないみたい。
境内には巫女のお姉ちゃんがいた。掃除の途中だったみたいで、箒とちりとりを抱えている。私には気づかないようで、さっさと神社へと入って行ってしまった。私もお姉ちゃんの後に続いて中に入った。
神様は留守みたいで、巫女のお姉ちゃんが一人コタツでお茶を飲んでいた。
「わあ、茶柱です!今日は何かいいことあるかも!」
何やら巫女のお姉ちゃんが大騒ぎしている。湯のみの中を覗いてみると、緑色のお茶の中に、緑色の茶柱が浮いていた。少しでも息を吹きかければ倒れてしまいそう。ぷかぷかと揺れている。
「ねえ、茶柱立つといいことあるの?」
「そうですよ!茶柱は幸運の印なんです!・・・ってこいしちゃんいつのまに!?」
そうか。こんなちっぽけな緑色でも、皆幸せになれるんだ。
もう一度茶柱を見てみる。水面を漂う一本の筋。しっかりと立ち上がって、沈まないように一生懸命なんだ。黒い湯のみのなかで戦ってるんだ。
「沈んじゃいけないよ。頑張って立ってるんだよ」
私は茶柱を応援した。茶柱は沈まない。きっと沈まない。
ーーー
私はまたキャンパスの前にいた。紫色と桃色でできたキャンパス。絵の具は乾いていて、濃く塗った部分が所々ひび割れている。私はもう一度パレットに緑色を注ぐ。今なら緑色は混ざらない。そのままの色を残せる。筆に含ませて、そのままキャンパスに押し付けた。緑色と桃色。不恰好だけど、お姉ちゃんの隣に私がいる。消えてなくなった私はちゃんと帰ってきた。紫色は怖いけど、桃色は優し過ぎるけど、緑色もちゃんとそこにあった。緑色は幸福の色だから、きっと桃色も紫色も喜んでくれる。皆幸せになれたらいいな。
「あらこいし?絵を書いているの?」
「うん!ほら!」
私はキャンパスを目一杯掲げた。
「綺麗ね」
桃色のお姉ちゃんは笑った。それにつられて私も笑った。
次の瞬間にはキャンパスが目の前にあって、手には絵筆を握っていた。青と赤の絵の具をぐるぐるとかき混ぜて紫を作る。赤過ぎずもなく青過ぎずもない綺麗な紫ができた。私はそれを絵筆にたっぷりと染み込ませて、キャンパスを塗りつぶした。ねちゃねちゃぐちゃぐちゃ音を立てながら、キャンパスが紫色になる。
紫色は地底の色だ。地面と血と怨念が混ざった色。私やお姉ちゃんはそこに住んでいる。ペットの皆や鬼さん達も一緒に住んでいる。
次に私は白と赤を混ぜて桃色を作る。紫色を作り過ぎちゃったみたいで、パレットにはあまりが隙間がない。混ざらないように気をつけたけれど、結局絵筆についた紫色と混ざってしまった。そうして出来上がった桃色をキャンパスに乗せていく。桃色はお姉ちゃんの色だ。優しいけど家に篭りっぱなしのお姉ちゃん。外に出るのが怖いお姉ちゃん。私は外は怖いところじゃないんだよって教えてあげるけど、お姉ちゃんは頷いてくれない。
私は緑色のチューブからパレットに絵の具を出した。パレットは紫色と桃色とその二つが混ざった色で一杯で、緑色はすぐに他の色に溶けてしまった。みるみるうちに飲み込まれていく。私はそれを絵筆ですくい上げ、キャンパスに塗る。生乾きのキャンパスの上で、緑色は見えなかった。紫色と桃色は大きかった。
緑色は私の色だったはず。なのに見えなくなっちゃった。私はどこ?ああそうか。この絵に私はいなかったんだ。地底にはお姉ちゃんがいて、私はいなかったんだ。だから緑色は見えないんだ。
ーーー
気づくとお山にいた。山頂の神社には二人の神様がいる。お空に太陽の力を与えた神様だ。大きな鳥居とのっぽな柱に囲まれた神社。びゅーびゅーとつめたい風が吹いている。山は紅葉が綺麗で、緑色の葉っぱは一枚も残っていない。全部赤と黄色に奪われちゃったんだ。ここでも緑色は見えないみたい。
境内には巫女のお姉ちゃんがいた。掃除の途中だったみたいで、箒とちりとりを抱えている。私には気づかないようで、さっさと神社へと入って行ってしまった。私もお姉ちゃんの後に続いて中に入った。
神様は留守みたいで、巫女のお姉ちゃんが一人コタツでお茶を飲んでいた。
「わあ、茶柱です!今日は何かいいことあるかも!」
何やら巫女のお姉ちゃんが大騒ぎしている。湯のみの中を覗いてみると、緑色のお茶の中に、緑色の茶柱が浮いていた。少しでも息を吹きかければ倒れてしまいそう。ぷかぷかと揺れている。
「ねえ、茶柱立つといいことあるの?」
「そうですよ!茶柱は幸運の印なんです!・・・ってこいしちゃんいつのまに!?」
そうか。こんなちっぽけな緑色でも、皆幸せになれるんだ。
もう一度茶柱を見てみる。水面を漂う一本の筋。しっかりと立ち上がって、沈まないように一生懸命なんだ。黒い湯のみのなかで戦ってるんだ。
「沈んじゃいけないよ。頑張って立ってるんだよ」
私は茶柱を応援した。茶柱は沈まない。きっと沈まない。
ーーー
私はまたキャンパスの前にいた。紫色と桃色でできたキャンパス。絵の具は乾いていて、濃く塗った部分が所々ひび割れている。私はもう一度パレットに緑色を注ぐ。今なら緑色は混ざらない。そのままの色を残せる。筆に含ませて、そのままキャンパスに押し付けた。緑色と桃色。不恰好だけど、お姉ちゃんの隣に私がいる。消えてなくなった私はちゃんと帰ってきた。紫色は怖いけど、桃色は優し過ぎるけど、緑色もちゃんとそこにあった。緑色は幸福の色だから、きっと桃色も紫色も喜んでくれる。皆幸せになれたらいいな。
「あらこいし?絵を書いているの?」
「うん!ほら!」
私はキャンパスを目一杯掲げた。
「綺麗ね」
桃色のお姉ちゃんは笑った。それにつられて私も笑った。
とにかく頑張って下さい。
こいしちゃんが無邪気でなによりです。
というわけで。
頑張れ!長編書けるように頑張れ!
綺麗な話だと思いました。
前作見てきます