私は、幻想郷縁起の著者である。
幻想郷の妖怪と対談し、その内容を書物にまとめ、幻想郷について様々な調査を重ねてきた。
私のその記憶が薄れることはない。
調査を全て紙に記録してまとめているからという理由もあるが、それだけではない。
記憶が薄れないのは、私に一度みたものは二度と忘れない能力があるからだ。
その能力のおかげで、私は様々なことを知っている。
加えて、私は寿命が短い代わりに、転生前の記憶が残るという特性も持っている。
忘れない能力と転生前の記憶のおかげで、私は人間の寿命では到底叶わない程の知識を宿しているだろう。
私の知識はたとえ妖怪が相手でも、誰にも負けない。
私は、幻想郷について一番知っている。
そう思っていた。
だが、そんなものは私の驕りだった。
幻想郷についてわからないことがないなど、ただの傲慢だったと理解したのだ。
傲慢だと理解できた理由は簡単だ。
今、理解できないものを目撃しているからだ。
「なんで、パンツを頭からかぶってるんです?」
「え? パンツはかぶるものでしょ?」
ヤバイ。
意味がわからない。逃げたしたい。
なにこれ、全然意味がわからない。
今まで前世の記憶全て辿ってもこんな状況は初めて体験する。
目の前の人間がパンツを被っているなんて体験は初めてだ。
そんな体験した人はいないだろう。
しかし、私の目の前には、パンツを被っている人間がいた。
パンツを被るなんて、完全にパンツの扱い方を間違っている。
それが、どこぞの変態妖怪だったらまだいい。
まだ理解できなくはない。
そのパンツの扱い方を間違っている人物が、幻想郷屈指の常識人である上白沢慧音じゃなければ、どれだけ良かったことか。
「阿求、どうかした?」
「近寄らないでください」
きもい。
本気できもい。
きもけーねとかいうレベルではない。
パンツの被り方が、更にキモさを上昇させている。
なぜ、頭から素直に被るのではなく、まるでパンツを仮面のように被っている。
具体的に言うと、顎にパンツのゴムを引っ掛け、頭から顎まで顔全体を覆うようにしている。
足を通すところから目が見える様にし、股下を隠すところで鼻を隠している様に被っていた。
この被り方だと、頭から被っているというより、顔から被っていると言った方が正確だろうか。
「阿求、震えてるぞ?」
「そりゃ、震えもしますよ」
怖い。
何これ。
昔、慧音さんに添い寝してもらったことあるが、こんな変態に添い寝されていたのか。
そう思うと、恐怖でどうにかなりそうだった。
「阿求? 寒いのか?」
「寄らないで」
慧音さんは私を心配している風に近寄ってくる。
けれど、その被っているパンツで全てが台無しだ。
台無しどころか、キモい。
私は、このキモい存在の事を忘れたくなった。
そのためには、まずこのキモい存在を視界に入る範囲から離れなければならないだろう。
出口はキモい存在の奥にある。
つまり、逃げるにはキモい存在をかわして行かなければならない。
少しでも近づきたくない変態パンツ仮面をかわさなければならないのだ。
避け損ねて、捕まったりしたら、もう一巻の終わりだろう。
だけれど、この困難を乗り越えない限り、私はこの絶望的な状況から脱することはできない。
私よ、立ち上がれ。
今こそ、稗田家の真髄を見せる時。
このどうしようもない状況を打破するのだ。
私は、そう自分に言い聞かせて、走り出した。
「きゃっ」
「阿求!? 顔から転けたぞ、大丈夫か?」
走り出して一秒後、運動不足が祟って、盛大に顔からダイブする形で転んでしまった。
どうやら、鼻を強打してしまったようだ。
鼻血は出ていないだろうか。
あ、ちょっと出てる。
「阿求、怪我を見せろ」
「ひっ」
うつ伏せに倒れていた私は、慧音さんに肩を掴まれて正面を向かされる。
向きを変えられた私の目の前に、慧音さんの顔が至近距離にあった。
いや、慧音さんの顔というより、パンツを顔に被せた変態の顔と言った方がいいだろうか。
その変態の顔が息のかかる距離にある。
案の定、私の頬に変態の息がパンツを通してかかった。
気持ち悪い、吐き気がする。
「どうした、阿求。 顔色が悪いぞ」
「お願い、離して…」
怖いし気持ち悪いし離して欲しい。
これから私は何をされるのか、この人は一体何をしたいのか。
私には、全く理解出来ない。
わからないことほど、怖いものはない。
つまり、パンツを被っているこの人より怖いものは、この世には無いと言っても過言ではないだろう。
「はっ、もしや、パンツを被っていないから、顔色が悪いのでは?」
「違う」
意味がわからない。
この人は一体何を言っているのか意味がわからない。
「よし! そうと分かったら、阿求の今履いているパンツを脱がせて顔に被せてやろう」
「…。 え?」
わけがわからないよ。
本当に意味がわからない。
ダメだ、この人はダメだ。
そうだ、逃げよう。
逃げようと思ったけれど、私の体は、私の言う通りに動かなくなっていた。
蛇に睨まれたカエルのように、全く何もできなかった。
ただ私の体は震えているだけだった。
私は、その震えを抑えようと、自分の体を抱きしめる。
けれど、その行為は全く意味をなさず、私の体はただ震えるだけであった。
「安心しろ、優しくしてやるから」
「ひぃっ!」
怖い怖い怖い。
こんなの慧音さんじゃない。
慧音さんは、人里の中で一番優しい人なんだ。
勉強ができない子どもにも優しく教えてくれる聖母のような人なんだ。
そうだ、この慧音さんは偽物なんだ。
誰か悪い妖怪のイタズラに決まってる。
そうでなければ、これは私の夢だ。
慧音さんがこんなことするはずはない。
慧音さんが、私のパンツを無理矢理脱がすなんて事するはずはない。
昔、私が怖くなって一人で寝れなくなった時に、私と添い寝をして子守歌を歌ってくれたあの慧音さんがこんな事をするはずがない。
そうだ、これは夢だ、夢なんだ。
「白にリボンのアクセントがあるパンツなんて、可愛いものを使ってるじゃないか」
「やめろ! はなして!」
「はっはっはっ。 半妖の私にその程度の抵抗など無意味だぞ」
「いやぁ!誰か助けてー!!」
「こらっ、暴れるんじゃない」
「いや! やだ! やだぁぁあああああああああ!!」
慧音さんの力の前には、私の抵抗など虚しいだけだった。
最初のうち、私はかなり激しく抵抗していたのだが、運動不足気味の私はすぐに体力もなくなってしまった。
体力がなくなった私の抵抗など慧音さんには無いに等しい。
そして、弱々しく抵抗する私のパンツを慧音さんはあっさり脱がした。
その瞬間、私の中の何かが弾けた。
私の中の大切な無くてはならない物が、音を立てて弾け去った。
パンツを脱がされた私は、もはや何も考えることができなかった。
いや、何も考えたくなかった。
そんな私に慧音さんは、パンツを被せる。
そのパンツは、私の体温で生暖かった。
幻想郷の妖怪と対談し、その内容を書物にまとめ、幻想郷について様々な調査を重ねてきた。
私のその記憶が薄れることはない。
調査を全て紙に記録してまとめているからという理由もあるが、それだけではない。
記憶が薄れないのは、私に一度みたものは二度と忘れない能力があるからだ。
その能力のおかげで、私は様々なことを知っている。
加えて、私は寿命が短い代わりに、転生前の記憶が残るという特性も持っている。
忘れない能力と転生前の記憶のおかげで、私は人間の寿命では到底叶わない程の知識を宿しているだろう。
私の知識はたとえ妖怪が相手でも、誰にも負けない。
私は、幻想郷について一番知っている。
そう思っていた。
だが、そんなものは私の驕りだった。
幻想郷についてわからないことがないなど、ただの傲慢だったと理解したのだ。
傲慢だと理解できた理由は簡単だ。
今、理解できないものを目撃しているからだ。
「なんで、パンツを頭からかぶってるんです?」
「え? パンツはかぶるものでしょ?」
ヤバイ。
意味がわからない。逃げたしたい。
なにこれ、全然意味がわからない。
今まで前世の記憶全て辿ってもこんな状況は初めて体験する。
目の前の人間がパンツを被っているなんて体験は初めてだ。
そんな体験した人はいないだろう。
しかし、私の目の前には、パンツを被っている人間がいた。
パンツを被るなんて、完全にパンツの扱い方を間違っている。
それが、どこぞの変態妖怪だったらまだいい。
まだ理解できなくはない。
そのパンツの扱い方を間違っている人物が、幻想郷屈指の常識人である上白沢慧音じゃなければ、どれだけ良かったことか。
「阿求、どうかした?」
「近寄らないでください」
きもい。
本気できもい。
きもけーねとかいうレベルではない。
パンツの被り方が、更にキモさを上昇させている。
なぜ、頭から素直に被るのではなく、まるでパンツを仮面のように被っている。
具体的に言うと、顎にパンツのゴムを引っ掛け、頭から顎まで顔全体を覆うようにしている。
足を通すところから目が見える様にし、股下を隠すところで鼻を隠している様に被っていた。
この被り方だと、頭から被っているというより、顔から被っていると言った方が正確だろうか。
「阿求、震えてるぞ?」
「そりゃ、震えもしますよ」
怖い。
何これ。
昔、慧音さんに添い寝してもらったことあるが、こんな変態に添い寝されていたのか。
そう思うと、恐怖でどうにかなりそうだった。
「阿求? 寒いのか?」
「寄らないで」
慧音さんは私を心配している風に近寄ってくる。
けれど、その被っているパンツで全てが台無しだ。
台無しどころか、キモい。
私は、このキモい存在の事を忘れたくなった。
そのためには、まずこのキモい存在を視界に入る範囲から離れなければならないだろう。
出口はキモい存在の奥にある。
つまり、逃げるにはキモい存在をかわして行かなければならない。
少しでも近づきたくない変態パンツ仮面をかわさなければならないのだ。
避け損ねて、捕まったりしたら、もう一巻の終わりだろう。
だけれど、この困難を乗り越えない限り、私はこの絶望的な状況から脱することはできない。
私よ、立ち上がれ。
今こそ、稗田家の真髄を見せる時。
このどうしようもない状況を打破するのだ。
私は、そう自分に言い聞かせて、走り出した。
「きゃっ」
「阿求!? 顔から転けたぞ、大丈夫か?」
走り出して一秒後、運動不足が祟って、盛大に顔からダイブする形で転んでしまった。
どうやら、鼻を強打してしまったようだ。
鼻血は出ていないだろうか。
あ、ちょっと出てる。
「阿求、怪我を見せろ」
「ひっ」
うつ伏せに倒れていた私は、慧音さんに肩を掴まれて正面を向かされる。
向きを変えられた私の目の前に、慧音さんの顔が至近距離にあった。
いや、慧音さんの顔というより、パンツを顔に被せた変態の顔と言った方がいいだろうか。
その変態の顔が息のかかる距離にある。
案の定、私の頬に変態の息がパンツを通してかかった。
気持ち悪い、吐き気がする。
「どうした、阿求。 顔色が悪いぞ」
「お願い、離して…」
怖いし気持ち悪いし離して欲しい。
これから私は何をされるのか、この人は一体何をしたいのか。
私には、全く理解出来ない。
わからないことほど、怖いものはない。
つまり、パンツを被っているこの人より怖いものは、この世には無いと言っても過言ではないだろう。
「はっ、もしや、パンツを被っていないから、顔色が悪いのでは?」
「違う」
意味がわからない。
この人は一体何を言っているのか意味がわからない。
「よし! そうと分かったら、阿求の今履いているパンツを脱がせて顔に被せてやろう」
「…。 え?」
わけがわからないよ。
本当に意味がわからない。
ダメだ、この人はダメだ。
そうだ、逃げよう。
逃げようと思ったけれど、私の体は、私の言う通りに動かなくなっていた。
蛇に睨まれたカエルのように、全く何もできなかった。
ただ私の体は震えているだけだった。
私は、その震えを抑えようと、自分の体を抱きしめる。
けれど、その行為は全く意味をなさず、私の体はただ震えるだけであった。
「安心しろ、優しくしてやるから」
「ひぃっ!」
怖い怖い怖い。
こんなの慧音さんじゃない。
慧音さんは、人里の中で一番優しい人なんだ。
勉強ができない子どもにも優しく教えてくれる聖母のような人なんだ。
そうだ、この慧音さんは偽物なんだ。
誰か悪い妖怪のイタズラに決まってる。
そうでなければ、これは私の夢だ。
慧音さんがこんなことするはずはない。
慧音さんが、私のパンツを無理矢理脱がすなんて事するはずはない。
昔、私が怖くなって一人で寝れなくなった時に、私と添い寝をして子守歌を歌ってくれたあの慧音さんがこんな事をするはずがない。
そうだ、これは夢だ、夢なんだ。
「白にリボンのアクセントがあるパンツなんて、可愛いものを使ってるじゃないか」
「やめろ! はなして!」
「はっはっはっ。 半妖の私にその程度の抵抗など無意味だぞ」
「いやぁ!誰か助けてー!!」
「こらっ、暴れるんじゃない」
「いや! やだ! やだぁぁあああああああああ!!」
慧音さんの力の前には、私の抵抗など虚しいだけだった。
最初のうち、私はかなり激しく抵抗していたのだが、運動不足気味の私はすぐに体力もなくなってしまった。
体力がなくなった私の抵抗など慧音さんには無いに等しい。
そして、弱々しく抵抗する私のパンツを慧音さんはあっさり脱がした。
その瞬間、私の中の何かが弾けた。
私の中の大切な無くてはならない物が、音を立てて弾け去った。
パンツを脱がされた私は、もはや何も考えることができなかった。
いや、何も考えたくなかった。
そんな私に慧音さんは、パンツを被せる。
そのパンツは、私の体温で生暖かった。
いや、あえて本来履いてない筈のものを履いていて、かつそれを再び履かない事で新たな境地を……とか深い事もなさそうなのでこの点数で。
真面目な人ほど壊せばおもしろいって事かな