「妖夢」
この子は、いつになればもう少ししっかりしてくれるのだろう。いつまでたっても桜の妖しさが美しいように、この幼さは私を不安にさせる。
「何ですか?」
「春を集めてきてといったけど、春っぽい人達を集めてこいとは言ってないのに」
私もこの子も疲れ切っている。あの桜は結局咲かなかった。
「勝手に来たんですよ、ここが春っぽいから」
「そうかな、あなたが春っぽいからつられて来たんじゃないの?」
少しむくれた様に俯くのがいつものやり方だった。この子はこうして愛情表現をするけれど、幼すぎるのではないか。そしてそれをうけいれる私はまるで生きているみたい。
「妖夢、あなたはまるで生きてるみたいね」
「半分生きてますよ、とりあえずお茶いれてきますね。庭は明日から片付け始めますから」
小走りで台所へ向かう後ろ姿には、桜の様にぼろぼろになった服の切れ端が舞っていた。
「妖夢」
あの子はいつかここを出ていくかもしれない。さっきの巫女や他の人間達に出会ってから明らかに何かが変わった、人間側の心にあの少女達が深く刻まれたんだろう。それはきっといいことでもあるのだろうけど、あの幼さのままに送りだしていいのだろうか。
「妖夢、妖夢」
台所から間の抜けた声が聞こえる。いつものあの子らしい、半分死んでいる声がする。
「お団子ですか?お饅頭?」
「梅干しがいいな、甘いのとしょっぱいの」
全てを盆にのせてこちらに帰ってきた瞳は私と、あの桜の木を見比べた後、じっと茶碗を見つめている。
「幽々子様」
「ん?」
「なんであの桜を咲かせたかったんですか?」
「だって咲いてるのを見たことないんだもん」
「もうやめましょうね」
「なんで?」
「だって、また巫女が来ますよ、他にも魔法使いやメイドも」
「来てほしくないの?」
「そりゃそうですよ、疲れるし」
「じゃあ会いに行きたいの?」
「なんでそうなるんですか」
「だって人間達と話している時、生き生きしてたから。霊だけじゃなくて人も切りたくなった?」
[いやいや」
苦笑いした横顔に少しだけ幽霊の香りがする、桜の匂いだ。
「ねえ妖夢、あなたはこのままここで生きていきたい?それとも死んでいたい?」
「それどっちにしろ同じでしょう、私はここにお仕えしてるんですからここで生きながら死んでいきますよ」
「そっか。それはあなたがそうしたいの?」
「ええ、それ以外に生き方を知りませんし、全部死ぬのはまだ嫌ですし。でもあの巫女とメイドにもう一度挑んでみたいとは思いますけど」
「じゃあとりあえず明後日から手あたり次第に斬ってきなさい、霊も人も妖怪も。そうすれば腕試しにもなるし」
この子がこれからどうしていくのかはわからないけれど、あの巫女と接することで得るものはあると思う。あの少女は集めた春をほとんど持って帰ったけれど、それ以外に何も持っていかず、置いていかなかった。あの桜もただの桜としか扱わず、どうでもいいと帰って行った。あれは幽霊では無いけれど人間とも言えないかもしれない。
そのどっちでもある妖夢にはどう映っただろう? 私は本当はどうしたかったんだろう?
「妖夢」
「はい」
「もっと色んなこと、知りなさい」
「はあ、頑張ります」
「それでもっと強くなって、なにがあっても私を助けてくれる?」
「ええ、もちろんです。どうしたんですか?泣いてるんですか?」
おろおろしているこの子がしっかりする頃に、もう一度あの桜を咲かせてみようか。また、誰かが止めに来るんだろうか。私は何を求めているんだろう。
「妖夢、あの桜好き?」
「西行妖ですか?そんなに咲かせたかったんですか」
「うん、なんでだろうね」
この子はいつか助けてくれるだろうか、私があの桜に訳も分からず心を囚われている事に気づいてくれるだろうか。あの桜が私を呼んでいる、人で無くなった私を何故呼ぶの?
この子は、いつになればもう少ししっかりしてくれるのだろう。いつまでたっても桜の妖しさが美しいように、この幼さは私を不安にさせる。
「何ですか?」
「春を集めてきてといったけど、春っぽい人達を集めてこいとは言ってないのに」
私もこの子も疲れ切っている。あの桜は結局咲かなかった。
「勝手に来たんですよ、ここが春っぽいから」
「そうかな、あなたが春っぽいからつられて来たんじゃないの?」
少しむくれた様に俯くのがいつものやり方だった。この子はこうして愛情表現をするけれど、幼すぎるのではないか。そしてそれをうけいれる私はまるで生きているみたい。
「妖夢、あなたはまるで生きてるみたいね」
「半分生きてますよ、とりあえずお茶いれてきますね。庭は明日から片付け始めますから」
小走りで台所へ向かう後ろ姿には、桜の様にぼろぼろになった服の切れ端が舞っていた。
「妖夢」
あの子はいつかここを出ていくかもしれない。さっきの巫女や他の人間達に出会ってから明らかに何かが変わった、人間側の心にあの少女達が深く刻まれたんだろう。それはきっといいことでもあるのだろうけど、あの幼さのままに送りだしていいのだろうか。
「妖夢、妖夢」
台所から間の抜けた声が聞こえる。いつものあの子らしい、半分死んでいる声がする。
「お団子ですか?お饅頭?」
「梅干しがいいな、甘いのとしょっぱいの」
全てを盆にのせてこちらに帰ってきた瞳は私と、あの桜の木を見比べた後、じっと茶碗を見つめている。
「幽々子様」
「ん?」
「なんであの桜を咲かせたかったんですか?」
「だって咲いてるのを見たことないんだもん」
「もうやめましょうね」
「なんで?」
「だって、また巫女が来ますよ、他にも魔法使いやメイドも」
「来てほしくないの?」
「そりゃそうですよ、疲れるし」
「じゃあ会いに行きたいの?」
「なんでそうなるんですか」
「だって人間達と話している時、生き生きしてたから。霊だけじゃなくて人も切りたくなった?」
[いやいや」
苦笑いした横顔に少しだけ幽霊の香りがする、桜の匂いだ。
「ねえ妖夢、あなたはこのままここで生きていきたい?それとも死んでいたい?」
「それどっちにしろ同じでしょう、私はここにお仕えしてるんですからここで生きながら死んでいきますよ」
「そっか。それはあなたがそうしたいの?」
「ええ、それ以外に生き方を知りませんし、全部死ぬのはまだ嫌ですし。でもあの巫女とメイドにもう一度挑んでみたいとは思いますけど」
「じゃあとりあえず明後日から手あたり次第に斬ってきなさい、霊も人も妖怪も。そうすれば腕試しにもなるし」
この子がこれからどうしていくのかはわからないけれど、あの巫女と接することで得るものはあると思う。あの少女は集めた春をほとんど持って帰ったけれど、それ以外に何も持っていかず、置いていかなかった。あの桜もただの桜としか扱わず、どうでもいいと帰って行った。あれは幽霊では無いけれど人間とも言えないかもしれない。
そのどっちでもある妖夢にはどう映っただろう? 私は本当はどうしたかったんだろう?
「妖夢」
「はい」
「もっと色んなこと、知りなさい」
「はあ、頑張ります」
「それでもっと強くなって、なにがあっても私を助けてくれる?」
「ええ、もちろんです。どうしたんですか?泣いてるんですか?」
おろおろしているこの子がしっかりする頃に、もう一度あの桜を咲かせてみようか。また、誰かが止めに来るんだろうか。私は何を求めているんだろう。
「妖夢、あの桜好き?」
「西行妖ですか?そんなに咲かせたかったんですか」
「うん、なんでだろうね」
この子はいつか助けてくれるだろうか、私があの桜に訳も分からず心を囚われている事に気づいてくれるだろうか。あの桜が私を呼んでいる、人で無くなった私を何故呼ぶの?
ゆゆさまの喋り方がもう少し優雅だったら満点でした。
原作妖々夢の物語においての幽々子の不安定な立場は、当人には空恐ろしいものなのかもしれませんね。
東方の物語の面白さを再確認させていただきました。
優しい視点だね