橙曰く、私はどんな時も自信満々で完璧……だそうだ。
常に一緒にいるわけではないので彼女は私の本心等知らない。私は彼女より上の立場でいなければならない。
だから弱い所や泣いている所なんて当然見せる事なんて出来ない。もし、そのような所を彼女に見られたら…………彼女はどのような反応をとるだろうか。
私に対する視線が尊敬の眼差しから、捨てられた子犬を見る目に変わってしまうのだろうか。
主の気紛れに付き合わされ、機嫌を損ねれば理不尽な八つ当たりを受ける。それも一度や二度じゃない。
明らかに一日じゃこなせないような量の雑務を言い渡されたので何とか日付が変わる前に終わらせたが、彼女は納得がいかないようで
「遅すぎる」、「もっとテキパキ出来ないのか」等と暴言を吐かれながらお茶を掛けられた事もあった。
それでも私は嘗て橙が言った「弱虫や泣き虫はお庭に咲いてるひまわりに笑われちゃうから、私は絶対に人前で泣いたりしないです。」の言葉を思い出して堪えてきた。
式が耐えられる物が、私に耐えられなくてどうする。それに………………あの人(紫様)の前で涙なんて見せたら後でさらに弄られるに違いない。
お説教タイムが終わった後紫様は散歩に出かけ、橙もマヨヒガに帰り、部屋で一人になった後、声を殺して布団にくるまって泣く。
いつからだろうか…………泣いた後は顔を洗うついでにそのままお風呂へ直行するというのが習慣のようになっていた。
鏡の前ってなんだか不思議。勇気が出る日もあればそうでない日もある。
勇気をもらっても、その日の自分の容姿に百パーセント自信がなければ、前髪の向きを変えるだけで何とかなりそう。そんな気がする。
紫様の式になってからというもの単純で平平凡凡な毎日を送っている所為か、奇跡が起こるような刺激が欲しいと思う事だってある。
だけどね、男に振り回されて生きるなんて事は絶対にあり得ない。枕一つ(房中術)で幾つもの国を潰してきたというプライドがあるもの。
あの頃のような昼ドラの世界をそのまま切り取ったかのような、人によっては「格好良い」とも言われるような生き方は今の私には出来ないが、
今現在をどのように生きるか、誰とどんな風に過ごすかを迷って、適当にやりたいこと探しなんかをするのは「私流」なのかもしれない。
「従順」というイメージを持たれがちな私だって、誰にでも理解できる(わかる)ような簡単な問題ですら素直に答えるのが嫌になる時だってある。
かといって難しい問題ばかりやっている程余裕なんてないんだよ。それを表に出さないから皆は分からないだけで。
人前では常に「デキる女」というのを演じているけど本当はね、休みの日に庭で掃き掃除をするようなラフな格好で外を出歩けるような自信が欲しいんだ。
時々お風呂上がりのスッピン顔に「もっと綺麗になればいいのに。」と言い聞かせたりもする。コンプレックスが多いものだから大声で叫んで誤魔化したくもなる。
今の自分に満足しているとは決して言えない。どうしたら良いのか………………そこで出した答えが「今自分に出来る事を精一杯頑張っていこう。」
言い訳にしか聞こえないかもしれない。けれど、そうする事で少しは楽になれるような、心なしか軽くなったような気がした。
もしも願いが叶うのなら、「傾国の美女」と呼ばれていたあの頃に戻るのではなくて、一日でもいいから、
いつものような上等な絹で出来た道士服ではなく、死装束のような質素な格好で過ごしながら、好きな事だけをして適当にぐうたら過ごしていたい。
最初で、最後で、最大の……………………私のお願い。
――――――「らんさまー! ひまわりが咲きましたよ! 」
うつらうつらしていた時、橙に呼ばれて目が覚めたから声の方へと歩いて行くと、数ヶ月前彼女と植えた向日葵の種が
私の背丈とほぼ変わらない程度の大きさなるまで成長し、立派に花を咲かせ、庭に小さな向日葵畑が出来ていた。
「ほう……綺麗に咲いているじゃないか。」
「えへへ~。毎日お水あげたり雑草抜いてあげた甲斐がありました! ……あ、そうだ! 三本くらいマヨヒガの猫達にお裾分けしてもいいですかー? 」
「ああ。引っこ抜く時アブラムシには気をつけなさい。」
「はーい! 」
………………昔あの子が言ったように、ひまわりに笑われないようにしないとね。あの頃のように好き勝手生きろとは言わないけど、
もっと自分を好きにならないと。………………先ずはそこから始めよう。
常に一緒にいるわけではないので彼女は私の本心等知らない。私は彼女より上の立場でいなければならない。
だから弱い所や泣いている所なんて当然見せる事なんて出来ない。もし、そのような所を彼女に見られたら…………彼女はどのような反応をとるだろうか。
私に対する視線が尊敬の眼差しから、捨てられた子犬を見る目に変わってしまうのだろうか。
主の気紛れに付き合わされ、機嫌を損ねれば理不尽な八つ当たりを受ける。それも一度や二度じゃない。
明らかに一日じゃこなせないような量の雑務を言い渡されたので何とか日付が変わる前に終わらせたが、彼女は納得がいかないようで
「遅すぎる」、「もっとテキパキ出来ないのか」等と暴言を吐かれながらお茶を掛けられた事もあった。
それでも私は嘗て橙が言った「弱虫や泣き虫はお庭に咲いてるひまわりに笑われちゃうから、私は絶対に人前で泣いたりしないです。」の言葉を思い出して堪えてきた。
式が耐えられる物が、私に耐えられなくてどうする。それに………………あの人(紫様)の前で涙なんて見せたら後でさらに弄られるに違いない。
お説教タイムが終わった後紫様は散歩に出かけ、橙もマヨヒガに帰り、部屋で一人になった後、声を殺して布団にくるまって泣く。
いつからだろうか…………泣いた後は顔を洗うついでにそのままお風呂へ直行するというのが習慣のようになっていた。
鏡の前ってなんだか不思議。勇気が出る日もあればそうでない日もある。
勇気をもらっても、その日の自分の容姿に百パーセント自信がなければ、前髪の向きを変えるだけで何とかなりそう。そんな気がする。
紫様の式になってからというもの単純で平平凡凡な毎日を送っている所為か、奇跡が起こるような刺激が欲しいと思う事だってある。
だけどね、男に振り回されて生きるなんて事は絶対にあり得ない。枕一つ(房中術)で幾つもの国を潰してきたというプライドがあるもの。
あの頃のような昼ドラの世界をそのまま切り取ったかのような、人によっては「格好良い」とも言われるような生き方は今の私には出来ないが、
今現在をどのように生きるか、誰とどんな風に過ごすかを迷って、適当にやりたいこと探しなんかをするのは「私流」なのかもしれない。
「従順」というイメージを持たれがちな私だって、誰にでも理解できる(わかる)ような簡単な問題ですら素直に答えるのが嫌になる時だってある。
かといって難しい問題ばかりやっている程余裕なんてないんだよ。それを表に出さないから皆は分からないだけで。
人前では常に「デキる女」というのを演じているけど本当はね、休みの日に庭で掃き掃除をするようなラフな格好で外を出歩けるような自信が欲しいんだ。
時々お風呂上がりのスッピン顔に「もっと綺麗になればいいのに。」と言い聞かせたりもする。コンプレックスが多いものだから大声で叫んで誤魔化したくもなる。
今の自分に満足しているとは決して言えない。どうしたら良いのか………………そこで出した答えが「今自分に出来る事を精一杯頑張っていこう。」
言い訳にしか聞こえないかもしれない。けれど、そうする事で少しは楽になれるような、心なしか軽くなったような気がした。
もしも願いが叶うのなら、「傾国の美女」と呼ばれていたあの頃に戻るのではなくて、一日でもいいから、
いつものような上等な絹で出来た道士服ではなく、死装束のような質素な格好で過ごしながら、好きな事だけをして適当にぐうたら過ごしていたい。
最初で、最後で、最大の……………………私のお願い。
――――――「らんさまー! ひまわりが咲きましたよ! 」
うつらうつらしていた時、橙に呼ばれて目が覚めたから声の方へと歩いて行くと、数ヶ月前彼女と植えた向日葵の種が
私の背丈とほぼ変わらない程度の大きさなるまで成長し、立派に花を咲かせ、庭に小さな向日葵畑が出来ていた。
「ほう……綺麗に咲いているじゃないか。」
「えへへ~。毎日お水あげたり雑草抜いてあげた甲斐がありました! ……あ、そうだ! 三本くらいマヨヒガの猫達にお裾分けしてもいいですかー? 」
「ああ。引っこ抜く時アブラムシには気をつけなさい。」
「はーい! 」
………………昔あの子が言ったように、ひまわりに笑われないようにしないとね。あの頃のように好き勝手生きろとは言わないけど、
もっと自分を好きにならないと。………………先ずはそこから始めよう。
それしか思わなかった。
別に藍が嫌いとかそういう訳じゃないです。寧ろ好きな方です。
藍みたいなデキる女でも悩みや苦労はあるという事が書きたかったのです。
苦しみにもめげない姿を書くつもりが後味悪い作品になってしまって申し訳ありません。。。
>2
私の中で衣玖さんはぐうたらOLのようなイメージ(ファンの方いたらすいません)があるのです。
衣玖さんより藍様の方が女性的なイメージが少ないからか、内面とのギャップを描いてみたくてこのような物になりました。
なんというか藍様はこうでなくっちゃいけない気がする
そして紫様もこうでなくっちゃ
しっくりくる八雲でした
ただのモノローグで藍の心情を説明するだけではなく
この題材をいかせるストーリーをみてみたいとおもいました