『恋符!マスタースパーク!!!』
音となった宣言が周囲にぶつかる。
そしてそれを追うように、宣言は光の奔流となって空を震わせる。
時刻は大体早朝。細かい時間で動く奴らがそうそういない幻想郷ならそのくらいの認識で十分だ。
約数秒ほど続いた八卦炉からの魔力の放出が終わると、手に残っている閃光の余韻を味わいながら空を仰ぎ見た。
見渡す限りの快晴。
わずかにあった雲の塊も、スペルカードの的にしたらすっかり飛び散ってしまったようだ。
「よーし!今日も八卦炉の調子は絶好調だぜ!…いや、"私と八卦炉"の調子は絶好調だぜ!!」
少し熱を帯びた相棒…八卦炉をくるくると弄びながら、自分の今日の勢いの良さを実感する。
放ったスペルは恋符「マスタースパーク」
自らの体現。主張。存在意義。夢。
色んな意味をもたせて生まれたそのスペルは十八番であり、最も霧雨魔理沙という存在を知らせるに適しているだろう。
朝起きた時にまるで"伸び"をするような感覚で、それを空へと放つ。
もちろん燃料を用意したり、魔力で調整して綺麗に放てるようにしたりとそこまで気軽に出来るもんじゃない。
それでもほぼ毎日、日課のようにしている理由…それは
「やっぱり"気持ちいい"から…だろうな」
スペルカードには意味が篭めてある。それは言葉なんかで表せば本一冊で済まない。収まらないような強く、複雑で、純粋な想い。
今日の想いのパワーは満足行くものになったようだ。
と、家の中に戻ろうと振り返った瞬間。視界の端に白い塊が見えた。
ただひたすらに蒼い一色の中に、自由に浮かぶ白一点。
まるで何者にも捕らわれずにそこに存在しているそれを見ていると、よく見知った誰かのように思えてくる。
アイツは如何なるものにも平等で執着しない。周囲の話からそういう存在だと知っていたし、最初の出会いで直接本人にもそう言われたのだから間違い無いのだろう。
確かにそれを嘘偽りなく体現しているし、その表裏の無い様子には好意を抱いている。
そっけなく対応してきたり、面倒そうにあしらわれたり、かといえば自然とお茶を入れてくれたり。
自分のように強い自己主張や我儘を押し付けたりせずに、ただそこに浮いているだけのあの雲はまさにそんなアイツそっくりだった。
「…もう一発撃ってみるか」
その崩れない余裕をちょっとだけ崩してやりたい。その不変に、ちょっとだけ霧雨魔理沙という存在を魅せつけてやりたい。
そう思った。
雑な寸法でも分かるほど距離は遠く、狙いが当たるかなんて問題どころか届くかどうかすら分からない。
気ままに、自由にしか見えない浮雲一つ。しかし、自分との距離は計り知れない。
だけど、だからこそ試してみたくなった。
「恋符ッ!マスタァ…スパーーク!!」
先ほどよりも威力を込めて放つ恋の魔砲。
自分と浮雲をつなぐように、一本の道をかけるように、と願いを込めて放ったそれは、口惜しい事に道半ばで散ってしまっている。
「…ッ!オーケー。なら今日は特別サービスだ!」
宣言しなおすのも面倒だとそのまま八卦炉から閃光を放ちつつ、片手でマスタースパーク一発分よりも多い燃料を八卦炉に充填する。
これから放つ魔砲は、質も量も込めた想いもマスタースパークを超えた魔砲。
最後の別れ瞬間に伝えるような、より凝縮されている想い。
「魔砲ッ!!ファイナルゥゥッ…スパァァァァクッ!!!」」
宣言し、魔力を操作し、スペルを再発動させる。
途端に重くのしかかる身体への反動。
そして、すでに放たれている閃光すら飲み込むように、更なる光の奔流が八卦炉から生まれた。
今度こそ、今度こそあの浮雲に届くようにと。
威力が上がったことで更に遠くまで届く光の道。
…だがそれでもまだ届かなかった。
後もう少しだと言うのに…ほんの僅かにしか見えないその距離は、まるで大きな壁のように。アイツと自分を隔てている大きな障壁のように思えた。
曰く、アレは人間ではなく、幻想郷の管理者なのだと。
曰く、アレは妖怪すらも恐れる超越者なのだと。
曰く…人間"霧雨魔理沙"とは遠く遠く異なる次元に住まう、手の届きようが無い存在なのだと。
―やっぱり届くはずがない。
才能なんてもんがあるやつでも届くかどうか分からない存在なんだ。
か弱いだけの人間が努力した所で横に並べる訳がないんだ。
最初から恵まれていてそうあるべくして在るのだから。
いつしか心に湧いて出た諦めの言葉。いや…最初からあったのだろう。なるべく見ないようにしてきただけだったのかもしれない。
その言葉に呼応するように八卦炉からの輝きが弱まっていく。
もう充分だ…。もっと小さい目標にすればいい。全部を投げだすわけじゃないんだ…もっと人間が出来そうな目標へと変えるだけさ。
先ほどまでの巨大な閃光の塊はすでに、最初に放ったマスタースパークよりも小さく弱くなってしまっていた。
事実、アイツはどんな異変をも解決してきた。私はそれを横取りできないかとチョロチョロしていただけだ…。
―ああ、私は結局無力なままなんだな―
そう、諦めかけたその時だった。
"しっかりしなさいよ魔理沙。…らしくないじゃないの"
それは記憶の中にあった言葉なのか、自分の空想が創りだした言葉なのか分からなかったが、間違いなくアイツの言葉だった。
思わず、自分の弱さを見られてしまっているような気がして自嘲気味に笑ってしまった
「…ここまで来て諦めるだなんて何考えてたんだか」
自分の心に、スペルに、力がもどって来てるような気がした。
「ああそうさ、私は弱い。無力なのかもしれない。アイツにはまだ遠く及ばないだろうさ」
誰に言うわけでもなく…いや、自分自身の弱さに対してそう声に出す。
「異変の時だってそうだぜ。アイツの邪魔してんじゃないかだなんて何回思った事だか」
ずっと放ち続けていた八卦炉の反動を受け止めていた身体が悲鳴を上げている。
燃料が尽きかけているのか、スペルも安定しなくなって来ている。
このままでは結果は目に見えている通りだろう。
「まぁ、このくらいの位置が今の私には精々だろうさ。よーく分かっているぜ。」
「…だからどうした!私は"普通の魔法使い"…"霧雨魔理沙"!!障害があるなら自慢の魔砲で道を切り開くだけだぜ!!!」
連続での高レベルスペル発動で熱くなって来ている八卦炉に、特性の燃料を打ち込む。
マスタースパーク一発なら一月分…いやもっとになるだろう濃度と質の虎の子の高凝縮魔砲燃料。それを惜しげも無く全部。
続いて自らの身体の魔力障壁と八卦炉への魔力干渉レベルを最大に。頭と身体へかかる魔力行使の反動は上手く受け流す。
足場を安定させるために、地面にめり込めせるくらいの勢いで足を地面に踏ん張る。そして簡易魔法で位置を固定。
―準備は全部整った。これからやろうとする事で身体にかかる衝撃はかなりきついだろう。後は―
「"想い"の強さが物を言う…ってなぁ!!」
宣言するスペルは恋の魔砲の最強呪文。
まっすぐな想いを素直に伝えても伝わらない。
より多くの想いを凝縮して伝えても伝わらない。
…だったらどうすればいいか?
なぁに簡単だ。
想いが実る事を信じ抜いて、相手に伝わるまで限界を超えて放てば良い。
それは、霧雨魔理沙を。その想いを限界を超えて伝える為のスペルカード。その名を―
「魔砲ッ!!!ファイナルマスターァァァァァ……スパァァァァァァァクッ!!!!!」
大いなる想いの閃光は、マスタースパークよりも、ファイナルスパークよりも巨大な光の魔砲となって八卦炉の限界を超えるように放たれた。
周囲はすでに澄んだ轟音と恋色に染め切られ、あらゆる物がこのスペルによって震えた。
瞬間、身体にかかる負荷も比例するようにかかり、魔法で固定されているはずの足場もジリジリと後ろへと下げられる。
予想以上の反動に意識が持ってかれそうになるが、それを気合だけでカバー。八卦炉を握る手も、顔に浮かべたままの軽い笑みも決して崩さない。
「うおおおおおおォォォォォォ…!」
込めた想いはただ一つ。霧雨魔理沙の中で、最も純粋で力強い…全てのスペルの元。
それを表現するに適した言葉は知らない。おそらく存在しないのだ。これからも…そしてこの先も。
ただただ澄み切っているその想いは、望む未来へ世界を塗り替えようとするかの如く、行く手の全てを光で照らし塗り替えていた。
…やがてスペルの輝きは、流星のように一層強く輝くと、同じように消えていった。
同時に視界が暗転し、重力に惹かれるまま地面へと倒れていくのを感じる。
体内の魔力も、身体の筋力も、肺の空気も…そして想いもスペルとして全て出し切った。心はとても晴れやかで、疲労や痛みすらも心地良い。
そのまま次に来るだろう地面への衝撃を待った。
「…何バカやってんのよ。魔理沙」
…だが予想に反して、来たのはふわっとしたやわらかな感触と匂いだった。
魔理沙はすでに開けるのも億劫になった眼をつむったまま、ニカッと笑った。
「…よう、そっちの方こそこんな所で何やってんだ?迷子だってんなら私の事をバカ呼ばわり出来ないぜ」
「さぁ何やってんでしょうね。強いて言うなら、なんとなくここに来たほうが良いと思っただけよ」
満身創痍になりながらも軽口は忘れない。
それに対してふわりとした声も自然に返す。
長年一緒に居たからこそ繋がる会話。そして平穏がここにあった。
魔理沙は誰に対してでもなく息を漏らすように笑うと、軽く焦げた手を空へと伸ばした。
「…届けてみせたぜ」
魔理沙の声が染みていった幻想郷の空は、雲ひとつ無い蒼穹だった。
音となった宣言が周囲にぶつかる。
そしてそれを追うように、宣言は光の奔流となって空を震わせる。
時刻は大体早朝。細かい時間で動く奴らがそうそういない幻想郷ならそのくらいの認識で十分だ。
約数秒ほど続いた八卦炉からの魔力の放出が終わると、手に残っている閃光の余韻を味わいながら空を仰ぎ見た。
見渡す限りの快晴。
わずかにあった雲の塊も、スペルカードの的にしたらすっかり飛び散ってしまったようだ。
「よーし!今日も八卦炉の調子は絶好調だぜ!…いや、"私と八卦炉"の調子は絶好調だぜ!!」
少し熱を帯びた相棒…八卦炉をくるくると弄びながら、自分の今日の勢いの良さを実感する。
放ったスペルは恋符「マスタースパーク」
自らの体現。主張。存在意義。夢。
色んな意味をもたせて生まれたそのスペルは十八番であり、最も霧雨魔理沙という存在を知らせるに適しているだろう。
朝起きた時にまるで"伸び"をするような感覚で、それを空へと放つ。
もちろん燃料を用意したり、魔力で調整して綺麗に放てるようにしたりとそこまで気軽に出来るもんじゃない。
それでもほぼ毎日、日課のようにしている理由…それは
「やっぱり"気持ちいい"から…だろうな」
スペルカードには意味が篭めてある。それは言葉なんかで表せば本一冊で済まない。収まらないような強く、複雑で、純粋な想い。
今日の想いのパワーは満足行くものになったようだ。
と、家の中に戻ろうと振り返った瞬間。視界の端に白い塊が見えた。
ただひたすらに蒼い一色の中に、自由に浮かぶ白一点。
まるで何者にも捕らわれずにそこに存在しているそれを見ていると、よく見知った誰かのように思えてくる。
アイツは如何なるものにも平等で執着しない。周囲の話からそういう存在だと知っていたし、最初の出会いで直接本人にもそう言われたのだから間違い無いのだろう。
確かにそれを嘘偽りなく体現しているし、その表裏の無い様子には好意を抱いている。
そっけなく対応してきたり、面倒そうにあしらわれたり、かといえば自然とお茶を入れてくれたり。
自分のように強い自己主張や我儘を押し付けたりせずに、ただそこに浮いているだけのあの雲はまさにそんなアイツそっくりだった。
「…もう一発撃ってみるか」
その崩れない余裕をちょっとだけ崩してやりたい。その不変に、ちょっとだけ霧雨魔理沙という存在を魅せつけてやりたい。
そう思った。
雑な寸法でも分かるほど距離は遠く、狙いが当たるかなんて問題どころか届くかどうかすら分からない。
気ままに、自由にしか見えない浮雲一つ。しかし、自分との距離は計り知れない。
だけど、だからこそ試してみたくなった。
「恋符ッ!マスタァ…スパーーク!!」
先ほどよりも威力を込めて放つ恋の魔砲。
自分と浮雲をつなぐように、一本の道をかけるように、と願いを込めて放ったそれは、口惜しい事に道半ばで散ってしまっている。
「…ッ!オーケー。なら今日は特別サービスだ!」
宣言しなおすのも面倒だとそのまま八卦炉から閃光を放ちつつ、片手でマスタースパーク一発分よりも多い燃料を八卦炉に充填する。
これから放つ魔砲は、質も量も込めた想いもマスタースパークを超えた魔砲。
最後の別れ瞬間に伝えるような、より凝縮されている想い。
「魔砲ッ!!ファイナルゥゥッ…スパァァァァクッ!!!」」
宣言し、魔力を操作し、スペルを再発動させる。
途端に重くのしかかる身体への反動。
そして、すでに放たれている閃光すら飲み込むように、更なる光の奔流が八卦炉から生まれた。
今度こそ、今度こそあの浮雲に届くようにと。
威力が上がったことで更に遠くまで届く光の道。
…だがそれでもまだ届かなかった。
後もう少しだと言うのに…ほんの僅かにしか見えないその距離は、まるで大きな壁のように。アイツと自分を隔てている大きな障壁のように思えた。
曰く、アレは人間ではなく、幻想郷の管理者なのだと。
曰く、アレは妖怪すらも恐れる超越者なのだと。
曰く…人間"霧雨魔理沙"とは遠く遠く異なる次元に住まう、手の届きようが無い存在なのだと。
―やっぱり届くはずがない。
才能なんてもんがあるやつでも届くかどうか分からない存在なんだ。
か弱いだけの人間が努力した所で横に並べる訳がないんだ。
最初から恵まれていてそうあるべくして在るのだから。
いつしか心に湧いて出た諦めの言葉。いや…最初からあったのだろう。なるべく見ないようにしてきただけだったのかもしれない。
その言葉に呼応するように八卦炉からの輝きが弱まっていく。
もう充分だ…。もっと小さい目標にすればいい。全部を投げだすわけじゃないんだ…もっと人間が出来そうな目標へと変えるだけさ。
先ほどまでの巨大な閃光の塊はすでに、最初に放ったマスタースパークよりも小さく弱くなってしまっていた。
事実、アイツはどんな異変をも解決してきた。私はそれを横取りできないかとチョロチョロしていただけだ…。
―ああ、私は結局無力なままなんだな―
そう、諦めかけたその時だった。
"しっかりしなさいよ魔理沙。…らしくないじゃないの"
それは記憶の中にあった言葉なのか、自分の空想が創りだした言葉なのか分からなかったが、間違いなくアイツの言葉だった。
思わず、自分の弱さを見られてしまっているような気がして自嘲気味に笑ってしまった
「…ここまで来て諦めるだなんて何考えてたんだか」
自分の心に、スペルに、力がもどって来てるような気がした。
「ああそうさ、私は弱い。無力なのかもしれない。アイツにはまだ遠く及ばないだろうさ」
誰に言うわけでもなく…いや、自分自身の弱さに対してそう声に出す。
「異変の時だってそうだぜ。アイツの邪魔してんじゃないかだなんて何回思った事だか」
ずっと放ち続けていた八卦炉の反動を受け止めていた身体が悲鳴を上げている。
燃料が尽きかけているのか、スペルも安定しなくなって来ている。
このままでは結果は目に見えている通りだろう。
「まぁ、このくらいの位置が今の私には精々だろうさ。よーく分かっているぜ。」
「…だからどうした!私は"普通の魔法使い"…"霧雨魔理沙"!!障害があるなら自慢の魔砲で道を切り開くだけだぜ!!!」
連続での高レベルスペル発動で熱くなって来ている八卦炉に、特性の燃料を打ち込む。
マスタースパーク一発なら一月分…いやもっとになるだろう濃度と質の虎の子の高凝縮魔砲燃料。それを惜しげも無く全部。
続いて自らの身体の魔力障壁と八卦炉への魔力干渉レベルを最大に。頭と身体へかかる魔力行使の反動は上手く受け流す。
足場を安定させるために、地面にめり込めせるくらいの勢いで足を地面に踏ん張る。そして簡易魔法で位置を固定。
―準備は全部整った。これからやろうとする事で身体にかかる衝撃はかなりきついだろう。後は―
「"想い"の強さが物を言う…ってなぁ!!」
宣言するスペルは恋の魔砲の最強呪文。
まっすぐな想いを素直に伝えても伝わらない。
より多くの想いを凝縮して伝えても伝わらない。
…だったらどうすればいいか?
なぁに簡単だ。
想いが実る事を信じ抜いて、相手に伝わるまで限界を超えて放てば良い。
それは、霧雨魔理沙を。その想いを限界を超えて伝える為のスペルカード。その名を―
「魔砲ッ!!!ファイナルマスターァァァァァ……スパァァァァァァァクッ!!!!!」
大いなる想いの閃光は、マスタースパークよりも、ファイナルスパークよりも巨大な光の魔砲となって八卦炉の限界を超えるように放たれた。
周囲はすでに澄んだ轟音と恋色に染め切られ、あらゆる物がこのスペルによって震えた。
瞬間、身体にかかる負荷も比例するようにかかり、魔法で固定されているはずの足場もジリジリと後ろへと下げられる。
予想以上の反動に意識が持ってかれそうになるが、それを気合だけでカバー。八卦炉を握る手も、顔に浮かべたままの軽い笑みも決して崩さない。
「うおおおおおおォォォォォォ…!」
込めた想いはただ一つ。霧雨魔理沙の中で、最も純粋で力強い…全てのスペルの元。
それを表現するに適した言葉は知らない。おそらく存在しないのだ。これからも…そしてこの先も。
ただただ澄み切っているその想いは、望む未来へ世界を塗り替えようとするかの如く、行く手の全てを光で照らし塗り替えていた。
…やがてスペルの輝きは、流星のように一層強く輝くと、同じように消えていった。
同時に視界が暗転し、重力に惹かれるまま地面へと倒れていくのを感じる。
体内の魔力も、身体の筋力も、肺の空気も…そして想いもスペルとして全て出し切った。心はとても晴れやかで、疲労や痛みすらも心地良い。
そのまま次に来るだろう地面への衝撃を待った。
「…何バカやってんのよ。魔理沙」
…だが予想に反して、来たのはふわっとしたやわらかな感触と匂いだった。
魔理沙はすでに開けるのも億劫になった眼をつむったまま、ニカッと笑った。
「…よう、そっちの方こそこんな所で何やってんだ?迷子だってんなら私の事をバカ呼ばわり出来ないぜ」
「さぁ何やってんでしょうね。強いて言うなら、なんとなくここに来たほうが良いと思っただけよ」
満身創痍になりながらも軽口は忘れない。
それに対してふわりとした声も自然に返す。
長年一緒に居たからこそ繋がる会話。そして平穏がここにあった。
魔理沙は誰に対してでもなく息を漏らすように笑うと、軽く焦げた手を空へと伸ばした。
「…届けてみせたぜ」
魔理沙の声が染みていった幻想郷の空は、雲ひとつ無い蒼穹だった。
魔理沙らしいと思いました。
こんなの作品とは呼べないし、魔理沙の行動はキチガイにしか見えない