Coolier - 新生・東方創想話

幻想大戦記 “EPISODE 2  妖夢”

2005/09/16 14:52:10
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【このお話は、創想話18に在る『幻想大戦記 第一話“月が吠える”』の続きです。
 先に書いておきます。色々ごめんなさい(汗

 ≪前回の荒筋≫
  変態薬師は美少女だらけの一大ハーレムを作る為、紅魔館に不意打ちかましてめぼしいのをかっ攫って行きました
 が、ガキん子には興味が無かったので、れみりゃやフランはシカトしました】






                “パソコンを見るときは、部屋を明るくして
                 画面に近づきすぎないよう注意してください”






「……ったく、何で私がこの馬鹿姫たま(notさま)と仲良く楽しくスリーマンセルで空飛んでなきゃならないのよ…
 あぁ~~、殺したいなぁ――――」

「馬鹿とは何よ馬鹿とは~!
 貴方も元大和の貴族の端くれなら、それらしく『馬鹿』じゃなくて『うつけ』とか言うべきでしょう!?
 若しくは『阿呆』とか『呆け』とか、更には『ダラ』とか『ダラズ』とか『はんかくせぇ』とか??」

「五月蝿い黙れ! っつか、『阿呆』や『呆け』ならまだ何とか判るとしても、『ダラ』とか『ダラズ』とか『はんか
くせぇ』は明らかに大和とも貴族とも関係無いだろ!?」

「いやいや。最近の研究では、竹取物語の舞台は実は石川とか鳥取とか北海道辺りだったらしいという噂が無きにしも
非ずとエジプトと味噌汁が大好きな某大学の教授が言っていたと一昨日のレッドフラッグ新聞に書いてあったわ?」

「……あのなぁ、あの教授が何で竹取物語についてあーだこーだを言うのよ? それ以前に、そんな話があの新聞に
書いてある訳が無いし、って言うか、お前の家ってあの新聞とってたの?」

「ああ、ほら、ウチの非常しょkゲフンゴフン兵隊達ってみんな共産主義者だし」

「……あっそ。んじゃぁその内に革命が起こって、お前は吊るし上げ若しくはギロチンな訳だ。おめでとう」

「私は貴族って言うかお姫様であってブルジョアジーじゃないから、革命起きてもノープロブレム☆」

「………露西亜革命ってのがどういうものだったのか、今そこに居る歴史の先生に訊いて来い、お前。
 先生、この馬鹿に一つ講釈お願い」

「―――それについては後程な。
 それより二人とも、気を付けろ。『春』が強くなってきたぞ……」

「あ――っ、えーりんが言ってた目標その一ね♪
 ちゃっちゃと済ませちゃうわよ! 二人ともお願い!」

「…………
 断る。あの程度の相手、お前一人で充分だろう。まぁ、どの程度の相手であっても、初めから手助けするつもりは
微塵も無いが」

「同じく。て言うかぶっちゃけ、私としてはお前が負けて死んでくれればそれはそれで万々歳だし」

「ひっ、ぐうぅ……
 ふわぁ~~~ん! えーりんえーりん助けてえーりん!! 邪威暗と酢根汚が苛めるよ~~っぅ!!!」

((どっちが邪威暗で、どっちが酢根汚なんだ……??))

♪(キィ――――ジャジャッ ジャジャンッ! ジャ――――――……)

 畏れるだけの 歴史をゼロに巻き戻す(キモドス)
 付き人はぁただ、一人ぃでいい――
 今ぁー、 先代を飛び越えてぇ!――……
 (ギュリリュン ジャジャー ジャジャー)

 ヨウム お嬢の声が
 ヨウム 君を呼んでるぅー
 ヨウム 庭師の証明―――
 (ジャジャジャジャジャジャジャジャジャ)

 No Fear No Pain
 食すうぅ者と作る者
 No Fear No Pain
 答えはすべてそこにあるぅ

 西行春風ぅー! キミがぁ変えてやれぇー!
 桜観剣! 子供剣士ヨウム!―――……
 (ンチャラッチャッチャッチャラッチャッチャッチャ ンチャラッチャッチャッチャラッチャッチャッチャ ジャヴゥ――――――………)♪

                     “幻想大戦記”

                           A New Gardener.A New Legend.











 
                      【幻想郷 幽明の境界
                          01:03 p.m. 】



 脚本 大根大蛇



                    “EPISODE 2  妖夢”

「――――よしっ! 今の演奏、イイ感じだったわね」

 幻想郷で最も高い山を越えて更に更に上、雲海をすら眼下に見下ろすその場所に、生と死の境を分かつ巨大な結界、
冥府門が在る。其処で鳴り響いていた音楽が、赤い装束を纏った少女の快活な声によって締められた。

「……ねぇリリカ、いくら同じ弦楽器とは言え、流石にエレキは私には合わないと思うんだけど」

 片手で持ったギターを木刀か何かの様にブンブンと振り回しながら、開いているかどうかも怪しいくらいの細目をした
金髪の少女が、末の妹に不満を告げる。

「いいじゃない、ルナサ姉さん。どっちも糸いじって音出すんだから」

「いや、でも、アコギならまだしも、やっぱり機械は苦手なのよねぇ…
 それになんかさ、ギターって、先っぽから機関銃とか何かが出てきそうで怖くない?」

 言いながら尚も楽器を振り回している姉を見つつ、リリカと呼ばれた赤い少女は、ストラディヴァリウスから弾幕発射
する様な輩が言う事じゃないでしょ、と心の中で毒づく。

「姉さんなんかまだ良いじゃないー。私なんて、管楽器担当の筈が何故かヴォーカルよ?」

 白い服の柔らかそうな髪をした少女が、やけに間延びした、且つ不必要に大きな声で、姉と妹の間に割って入る。

「メルラン姉さんはいつもラッパ吹いてるんだから、息吐く仕事は適任でしょ? だからヴォーカル」

「酷いわリリカ。その言い草だと、まるで私が何処かの素兎みたいじゃない」

「いや、メルラン、それ『ラッパを吹く』の意味が違うから」

 一見屁理屈の様に見えてその実リッパな屁理屈で話を煙に巻こうとする三女と、それを天然モノのボケで返す次女、
そして、何処ぞのチャイナや兎に比べ明らかにパワー不足なツッコミを入れる長女。
 血の繋がった姉妹ならではの抜群のコンビネーションを見せる彼女等、プリズムリバー三姉妹。
 アーティストという肩書きを持つ者達の殆どと同じ様に、デビュー時にはそれなりに人気があってチヤホヤされたもの
の、結局は一発屋で終わってしまい、その後はメジャーな出演依頼からは縁遠く、地方のイベントで日銭を稼ぐ毎日を
強いられているという、哀しき時代の落し子達。同じ三姉妹でも、TVにも出て大人気になった喫茶店経営者の某三姉妹
とはエラい違いだ。

「兎にも角にも、姉さん達あんまりグダグダ言わない! 三人組の騒霊(ポルターガイスト)と言ったら、ギターと
ヴォーカルとキーボードって相場が決まってるじゃない! 具体的に言うと10年程前から」

「いや、初めて聞いたわよ。何処のローカルルール?それ。横浜辺り?
 て言うかそもそもリリカ、今の曲って、一体何なの?」

 上の姉の質問に対し、待ってましたと言わんばかりの勢いで答える。

「今のはね、魂魄妖夢、彼女に対する応援歌よ!」

「応援歌?」
「Oh! 演歌?」

 きょとんとした顔の長女と、何かを待っている風の次女。そんな二人を前に、リリカは話を続ける。

「未だ若輩ながらも幽居した先代の後を継いで、あの広いお屋敷の中、食いしん嬢の為に毎日一生懸命頑張っている、
そんな彼女への応援歌よ。今度宴会が開かれたら、その時に演奏してあげたいなって」

「今度の宴会って…」
「ボンドの旋回って…」

 そこで長女は言葉を濁らせた。今年も既に、何度か西行寺の宴会に呼ばれてはいたのだが、今はもう既に如月も過ぎて
弥生に入り、桜の見頃には少し遅い。この先に、また宴会に呼ばれる機会があるのだろうか。
 そう考えるルナサの隣でメルランは、何かを期待している様子でニコニコしている。

「大丈夫よ姉さん。彼処のお嬢さんは、桜が完全に散る迄は何度でも宴会を開くって」

 姉の考えている事を見抜いたリリカは、珍しく屁ではない理屈でルナサを納得させた。

「なるほど、確かにそうね……
 うん、良いんじゃない? リリカが誰かの為に何かするっていうのは珍しいけど、それはとても良い事だし、それが
切っ掛けになって彼女と仲良くなれるかも知れないしね。何しろ、貴方、友達少ないから……」
「貴方、ホモだしスク水河馬……」

「でしょでしょ?
 彼女、宴会ではいっつも色んなのにからかわれてたり何だりで、ちょっと可哀想じゃない。そこで、私達がさっきの
歌を演奏する。きっと、大喜びするわよ」

「うん、そうね」
「運、送寝」

「若しかしたら、感極まって泣いちゃったり!」

「ああ、確かに。あの子って、そういう所ありそう」
「穴掘って、喪失おぼこが理想」

「でねでね。最後は姉さんのソロ演奏! 妖夢の前に立って、ギターを構えてね……」

「ふんふん」
「プンプン!」












「――ギターのケツを奴のドテッ腹にブッ刺す」

「あー、なるほ…………って、何で!?」
「アー、ナル掘…………って、噛んで!?」

「あとは有りっ丈の霊力を込めながら、ジャギゾゴジャギゾゴジャギゾゴジャギゾゴ!ッてな感じで雷電が激震する程の
激しく熱いビートをかませば、あの半人前は木っ端微塵に吹っ飛ぶってぇ寸法よ! 姉さん、殺っちゃいな!」

「いや、ちょ、待ってリリカ! 何で話がいきなり物騒な方に飛んでるわけ!?」






「……ねぇ、ルナサ姉さん。プンプンてのはネタ的ににどーよって感じなんだけど。
 中村なんちゃらって言う芸能人の真似だっけ、それ?」

「あは~、やっとツッコんでくれた♪」

「あのまま放っといたら、どんどん下品な方に行きそうだったから仕方なくよ。
 いくら若者ウケがいいからって、安易な下ネタばかりに走るのは芸人としてどーかと思うわよ?」

「ごめんねぇ、リリカ…」






「ガン無視!? 長女の私を放置して二人仲良く秘密のお喋り!?
 これはあれか!?

 『ん~? 二人とも、何を話してるんだい? パパにも教えて?』
 『え゛~? 嫌よ、何でお父さんに話さなきゃならないの。口臭いから近寄らないでよ。
  あっち行こう、お姉ちゃん』
 『そうね。って言うか、いい年こいてパパとか言って、流石にキモいし』

 とかそーいう、『昔は一緒にお風呂に入ってた可愛い娘二人にシカトされて傷心な父親の気持ち』ってヤツなの!?」

 三人姉妹(いや別に姉妹に限らないが)の落とし穴、『二人が仲良くすると残り一人がハブられる』を目の当たりに
して、泣き叫びながらギターをかき鳴らす長女。このまま放っておいたらロックの神様になってしまうのではないかと
思われる程に、熱く激しく、けれども哀しいシャウトをかます彼女の肩に、静かに、そして優しく、末妹の手が乗せ
られた。
 温かく微笑むリリカ。それを、涙に濡れた瞳を(珍しく)大きく見開き、ルナサが見上げる。

「ルナサ姉さん……」

「リリカ……」












「喧しいウザい黙れ」
























「……魔王~が居る~ こーわーいよぉ~~……♪」

 木柱の上に腰をかけ、ギターソロでシューベルトの『魔王』(日本語訳)を歌うルナサ。周囲に比べて明らかに気圧が
低い。その後ろで、リリカが大きく溜め息を吐く。

「何でまた、『魔王』だなんて、中学校の音楽教科書に載ってる割にヤケに陰惨で気の滅入る曲を奏でるかねぇ、この
騒霊は」

「リリカが苛めるからでしょう?
 でも、安易に『ドナドナ』なんて有りがちな曲に走らない辺りは、流石姉さんって所かしら」

 妹達の話が聞こえているのかいないのか、無限ループで『魔王』を奏でる長女。子は既に五回ほど息絶えている。

「ねぇリリカ。このままだと、姉さんを中心に風が渦巻状に吹き込んで、上昇気流をもち、雲を生じ、仕舞いには雨が
降ってきそうだから、何とかしてよ」

「はぁ、メンドいけど仕方ないか……」

 自身の髪の毛にくしゃりと手を突っ込み、露骨にやる気の無い面を隠そうともせず、姉の前に飛んで行く。そして、

「坊や、坊や……♪」

 壊れた蓄音機の様に音を垂れ流し続ける姉の頭へ向けて、






「チイィエストオォォ―――ッッ!!」
「はぶろあ!!??」

 手にしたキーボードを思いっ切り叩きつけた。

「!いきなり何するのよ、リリ………カ?」

 姉が起き上がると、間髪入れずにその顔を両手で掴んで固定し、更に自分の顔を近付ける。
 鼻と鼻が触れ合いそうな距離。そこで一言。






「お姉ちゃん……





 だぁーい好きっ(はぁと)」



 満面の笑顔を忘れさえしなければ、これで充分。

「…………リ、リ、リ、リ、リリリリリリクゥァア゛ァァ―――――ッッ!!!」

 先程のテンションの低さは何処へやら、漫画の様な細い目から漫画の様な滝涙を流しながら、末妹を力一杯抱き締める
長女。あぁ美しき哉、姉妹の愛情。

「私も大好きだよリリカ! 私も大好きだよリリカ!! も一つオマケに私も大好きだよリリカ!!!」

「ホント? リリカ、嬉しいっ!
 ……ところでお姉ちゃん、リリカ、今月ちょっと苦しくってぇ……
 一万円と二千円くれたら、お風呂で流しっこしてあげるッ♪」

「な、ながながながながながながながなが………」

「あ、ゴメン…… ウチ、今あんまりお金ないし、無理言ったらダメだよね……」

「そ、そんな事無いわよ! 一万二千円くらい安い安い!!」

「ホントー!? お姉ちゃん、大好きぃー!!
 あ、八千円追加してくれたら、今日一緒のお布団で寝たげるぅ☆」

「おっけーおっけー、お姉ちゃんにドーんと任せなさぁーっい!」

「ぃやぁ~ん! お姉ちゃん素敵! 最高!!」

 仲睦まじく笑い合う姉と妹を見ながら、メルランは優しい微笑を顔に浮かべる。
 ツッコミ役というものが居ない以上、彼女達三人は今、間違いなく幸せな風景の中に居るのであった。












「ところでリリカー?」

 木柱の上に腰を下ろし両の足をブラブラとさせながら、思い出した様にメルランが訊ねる。

「何? メルラン姉さん」

「話が大分逸れたけど、結局、何であの魂魄の子を抹殺しようとしてる訳?」

「!?そ、そうよ、リリカ。危うく話をずらされる所だったけど、私はそれを訊きたかったのよ!」

 先程まで百合な女学院も真っ青な妹ラブっぷりを見せていたルナサも、メルランの言葉で自分を取り戻した。

「……ちっ、巧く誤魔化せたと思ったのに」

 上の姉、ルナサは、所謂秀才タイプであり、頭は良いが根が真面目な為、軽い変化球を混ぜてやればコロッと騙せる。
 だが下の姉、メルランは、頭が良いか悪いかと問われれば何とも答えづらいが、まるで昔のRPGのキャラクターを
彷彿とさせる程に会話に一貫性というものが無い。その為、如何に話をずらし本題から遠ざけようとしても、何の脈絡も
無く本筋に戻ってきたりするのだから性質が悪い。そういう意味では、リリカはメルランが苦手だった。

「そもそも、何で私が手を下す役なの? いっつもそうだけど、何か企みがあるならリリカが直接やr
「Don’t say four or five!」

 キーボードの鍵盤を叩き、上の姉の文句を一蹴する。

「日本語に訳すと『四の五の言うな』!」

「いや、それ、絶対に違うと思うけど……」

「そんな事はどーでもいいの! んな事いちいち気にしてるから鬱病だとか引き籠りだとか言われるのよ!!」

「いや、引き籠りは別の人じゃ……」

「黙らっしゃい! そんな事よりも、いい、姉さん達!?
 二人は、私達姉妹が今置かれている状況を、一体どう思ってるの!?」

 突然の妹の質問の意味が理解できず、姉二人の頭の上に?が浮かぶ。

「今の状況って……」

「あ~、もうっ!」

 気の抜けたルナサの反応に、リリカは苛立ちを隠そうともせず自身の髪をかき回す。

「つまり、妖々夢4面でボスとして登場して以降、全く出番の無い私達の扱いについて、どう思うかって事ッ!!」

「どうって……
 のんびり出来ていいんじゃない?」

「気ままに自由にやれて、いいわよね」

「……っはぁ、これだからこの馬鹿姉どもは―――」

 やる気とか、若しくは危機感とかいうものを全く持っていない風な姉達を前に、頭を抱えて溜め息を吐く。

 歴代の4ボスと言えば、主人公に昇格したり、逆に主人公が4ボスに入ったり、後はEX中ボスを経てプレイヤー
キャラになったりと、プリズムリバーとあと一つの例を除けば、皆現役一線級で活躍していると言うのに……
 そう言えば、とリリカは思う。プリズムリバーと『あと一つの例』には、他の4ボスには無い共通点がある。それは、
『複数のボスが同時に出現する』と言う事。
 という事は、自分達も単体のみの登場をしていれば、他の4ボスと同じ様に扱ってもらえたのではないのだろうか?

「……ううん、今からでも遅くはないわ。姉さん達を亡き者にして私『だけ』が妖々夢の4ボスとなれば、私だって
きっとプレイヤーキャラになれる筈……」

「ねぇリリカ。さっきの質問と姉さんが妖夢を木っ端微塵にする事と、どう繋がるのー?」

「え!? 殺気? 無いわよ?? 殺気なんて全然出してないわよ??」

「? 私には、妖夢を殺っちゃえとか言ってなかったっけ?」

「え? あ、うん。妖夢は殺っちゃうわよ、うん」

「「??」」

 微妙に態度のおかしい妹に対し、訝りはすれど深く追求はしない姉二人。
 そんな二人の優しさが、後に大きな悲劇に繋がろうとは、この時は誰も想像できなかったのだが、それはまた別の
お話。

「じゃあ、話を戻すわね」

 コホンと咳払いを一つ、それで先程の慌てた表情からいつもの(裏に何かを隠した)笑顔に戻り、リリカが話を
始めた。

「何故に妖夢を亡き者にするかと言えば、理由は一つ、花映塚よっ!!」

「「はい?」」

 話を全く理解できていない二人を前に、リリカは続ける。

「あの半人前は、5ボスという立場をいい事に、永夜抄、萃夢想と立て続けにプレイヤーキャラとして参戦しているわ。
今度の花映塚でも、当然の様に『妖々夢組の代表です』みたいな顔して出て来る筈よ。
 そこで、あの娘を亡き者にすれば、私達に花映塚に於ける妖々夢組代表としての出場権が回って来るってぇ寸法よ!
 どう! この、ユナ・ナンシィ・オーエンでさえ自分の左と右の靴下の色が違う事に気付かぬ程の狼狽ップリを曝し
つつパッヘルベルのカノンを一人輪唱しながらムーンウォークで逃げ出しそうな位の完全な犯罪計画はッ!!
 私ってばえらいねェ~~~、ウシッ! ウシッ! ウシッ! ウシッ!」

「いや、でも、若し仮に妖夢を倒したとしても、そうしたら今度は西行寺のお嬢さんに出番が回る様な……
 或いは、八雲家の誰かとか」

「何を弱気になってるのルナサ姉さん! そうなったら、今度は西行寺もマヨヒガも倒すのみよ!!」

「いや、それは流石に無理だって」

 メルランだってそう思うでしょう、とルナサは妹に話を向ける。当のメルラン本人は、何が可笑しいのかただニコニコ
と笑っているのみ。

「……何だかよゆー有りげね、メルラン姉さん。何かいい策でも有るの?」

 訝る妹に対して、策なんて無いわよ、と言いつつ、でも、と続ける。

「私、












 花映塚の出場決定してるから」

「「な、なんだって―――!!」」

 偉く口が達者でちょいと妄想癖の有る眼鏡の青年に人類滅亡宣言をされた時のMMR(メルラン マジで ラッパが大
好き)のメンバーが如く、驚愕の叫びを上げるルナサとリリカ。全てはノストラダムスの予言通りなのか?

「ほらほら、これ見て二人ともー♪」

 言いながら取り出したのは、串揚げの下に敷いたり、ガラスを綺麗に拭く時などに重宝しそうな紙切れ。

「これって……あの天狗の新聞じゃない。これがどうしたのよメルラン?」

「これこれ♪」

 嬉しそうに、文芸欄の片隅に在る小さなコラムを指差す。其処には、新作に収録されている曲に関した文章が書かれて
いた。

「ここ、読んでみて。『この曲がトランペットメインなのは…』ってあるでしょう?
 ここで言うトランペットっていうのは、トランペットの使い手である私自身を指していると考えられる。その『私』が
『メイン』である『曲』が花映塚に収録されている……
 判る!? つまりこのコラムは、新作に於けるメルラン・プリズムリバーの復活を予言するものだったのよ!!!」






「……だからさリリカ。妖夢だけならまだ何とかなったとしても、西行寺やマヨヒガを敵に回したら絶対に勝ち目は無い
って。飲茶がFreezerに勝負を挑む様なものよ」

「何を言うの姉さん! そこ迄の力の違いは無いわ! もっと自分を信じようよ!
 私等とあいつ等の差だなんて、餃子と菜っ葉くらいのもんだって!!」

「いや、どっちにしろ負けるし」

「大丈夫! 命賭けて自爆するくらいすれば何とかなる筈よッ!!」

「いや、無駄だと思う」






「ちょっと~、二人とも。ここは、

 『な、そんな馬鹿な!』

 『いくらなんでも話が飛躍しすぎじゃ…』

 『いや、これだけじゃない。この他にも、私が花映塚に出場する事を示す決定的な証拠があるのよ……!』

 とかいう流れで話が弾んでいく所でしょう? もっと家庭内の会話というものを大切にしないと、リリカが最近流行の
キレ易い若者になるんじゃないかと姉さん心配だわ?」

「五月蝿い。黙れ。
 メルラン姉さんみたいな人が居るから、○バヤシの○は○チガイのキだとか言われるのよ。
 文京区音羽に行って、編集部前で腹切って詫びろ」

「あぁ~、もう手遅れだったのね…
 リリカってば、お巡りさんに見せても恥ずかしくない位に立派なイマドキの若い人に育って――
 ――姉さん嬉しいわ……」

「うん。ありがとう。
 お礼と言っちゃなんだけど、病院紹介するから今度そこで頭診てもらってよ。そうすれば、家庭内の会話ってのももう
少し円滑に実行できる様になると思うからさ。今のままだと、何かフツーに会話それ自体が成立させづらいし」

 リリカの毒舌を流石に酷すぎるのではないかと思いつつ、ルナサもメルランの仮説は全く信じていない。これだったら、
『トランペットメインなのは、風を吹き込むから』⇒『伊吹く鬼』⇒『萃香出場』という連想の方がまだ信憑性がある。
と言うより、曲の題名からして天狗のテーマという気がしないでもないが。

「……ったく」

 頭に手を当て、舌を打つリリカ。そんな妹を見て、人前では舌打ちはしないほうが良い、印象が悪い、と言おうとした
ルナサだが、この末妹が人前でボロを出す筈も無いかと、何も言わず黙っていた。

「こんな、『細目キャラ=腹黒』なんて図式を完全シカトしてる黒い根暗と、脳味噌の模様がぐるぐる渦巻きになってる
白い風狂と、こんなのが姉じゃあ、プリズムリバーの明日は暗いわね……」

「酷い言われ様ね。それに、虚人ウーは細目だけど良い人よ?」

「そうよぅ。ぐるぐると言うのは古のムー大陸に於いては『神なるもの』を象徴する聖なる紋様だったと明後日の聖なる
教えの新聞に書いてあると素敵よね?」

「黒い方は、トウチャを漢字で書ける人以外には判りにくい言い訳をしない。
 白い方は、早くお医者さんに診てもらって下さい。

 ………って言うかさ、私が言いたいのは、姉さん達には危機感が感じられないって事!

 私等って、本当ならもっと人気が有っていい筈なのよ?
 外見的にも、東方じゃ珍しいスカートに生足! 他の奴らがロングスカートやらドロワーズやら穿いてる中、スカート
生足白のソックスよ!?
 他の生足どもと言ったら、やれ萃夢想でのメイドのバックステップが見えそうだとか、饂飩は縞々おfaんつだとかで
エラいもてはやされようだってのに、ウチらなんか最萌一回戦三人仲良く全滅よッ!?
 その上、私達の前座だったあの妖精ですら新作に出ているってのに、ボスキャラには出番が無いって事になったり
したら、流石にいくら何でもそれはどーよ、とか思うでしょう!!?」

 まぁ、あの娘はぶっちゃけ貴方より人気あるからね。そう言いかけて、慌ててルナサは口を塞ぐ。

「あークソッ! 思い出したら腹が立ってきた!
 あんな、スペカはおろか科白すらない中ボスが、ピルピルピルピル音鳴らしながら乱入かまして…………」

 選挙か何かの演説の如く、大仰な身振り手振りを交えながら続くリリカの説教を、空の彼方から響いてくる、まるで
警報の様にも聞こえる奇妙な音が遮った。

「そうそう、このピルピルって音が…………って、え?」

 次の瞬間、

「きゃああぁ―――!?」

 轟音が、そして爆風が巻き起こる。

 幽明の結界の前には四本の柱が立つ。その内の三本の上は三姉妹がそれぞれ占拠していたが、残りの一本が、空の
彼方から猛スピードで飛んで来た何者かを受け止める形となっていた。

「あ~、吃驚したぁ………って、こいつ!」

 自分を驚かせてくれた何者かの顔を拝んでやろうと近付いたリリカが、驚嘆の声を上げた。

「どうしたのリリカ―――あれ、これって……リリー?」

 リリカに続いてルナサが、そしてメルランが、一本の柱の周りに集まる。

「あらー、この娘。両の目がぐるぐるになってるわ、素敵♪」

 飛んで来た何者かは、今まさに姉妹の話題に上っていた『春を運ぶ妖精』、リリーホワイト。
 その彼女が、木柱の上で完全にノックダウンしている。
 タフが売り物の彼女がここ迄になった理由。風精の暴走にでも巻き込まれたか、若しくは―――



「―――何者かの襲撃を受けた………?」

 突然の異状によって緊張に包まれる中、誰へとも無く呟くリリカの背後に、






「ご名答☆」






 明らかに場違いな、何とも間の抜けた声が響いた。






「ったく、やり過ぎじゃないの?」



 聞こえてくるのは、少女達の話し声。けれども肩にのしかかるは、恐ろしいまでの霊的圧力。



「全くだ。あいつが言っていただろう、なるべく傷を付けずに連れて来る様にと」



 緊張で固まった身体を何とか動かし、ゆっくりと振り向く。其処には―――












「―――ねぇちょっと、何であんた達がこんな所に来てる訳……?」

 『永遠と須臾の罪人』蓬莱山 輝夜、『知識と歴史の半獣』上白沢 慧音、そして『蓬莱の人の形』藤原 妹紅……!



「もぅ~、もこタンもけいねッチも酷ぉーい。手助けもしてくれなかったくせに文句ばっか……
 お蔭で随分てこずったわ。何度堕としても復活するんだもん」

「もこタンって言うな、もこタンって。それより、まさか死んじゃいないでしょうね、そいつ?」

「大丈夫よぅ☆ いくらなんでも殺しはしないわ」

「どうだかな。お前は不死のせいか、生き死にというものに疎い所が有る。随分とヒートアップしていた様だし、私と
妹紅が止めていなければどうなっていたか……
 あと、けいねッチというのはやめてくれ」

「二人共イケズぅ~~……」



 リリカの質問などまるで聞こえていないといった風で話を続ける三人。会話の内容自体は全くもってたわいないもの
だが、そこから感じられる霊圧は少しも衰えてはいない。いや、それどころか、圧力は更に増大している様にさえ感じ
られた。

「ちょっと! 何しに来たのかって訊いてるでしょうッ!!」

 先程とは違って大きな声で叫ぶ。余り良くはない状況である様には思えたが、兎に角、相手の目的を知らぬ事には
対処の仕様が無い。

「因みにイケズっていうのは、『○』クラちゃん『ケ』ンカで『ズ』タボロの………
 って、ああ、何? 何か言った?」

 完全に馬鹿にされているな。リリカは歯軋りをする。
 だが、ここでカッとなって短絡的行動に出る者などプリズムリバー三姉妹には居ない。リリカはそれほど愚かでは
ないし、上の二人はそもそも馬鹿にされたと思っていない。

「何の用が有って此処に来たのか、って訊いているの」

 努めて冷静に、三度リリカが声を掛けた。

「用? 用はね……」

 蓬莱山 輝夜が応える。

「…………
 え~とねぇ。えーりんがアレでナニがこーして、それでもって私達がナニしてそーして――――」

 身振り手振りを交え、何故だか妙に必死な顔で説明を始めるが、まるで要領を得ない。

「………メルラン姉さん。同じ風狂同士、あいつが何を言ってるのか判る?」

「ん~。カレーにお魚を入れる時、お肉の時と同じ感じでテキトーに炒めてそのまま煮込むと、物凄く臭くなるから注意
してね、って言ってるみたい」

「うん。ありがとう。病院の予約はしておくから早く行ってね」

 夢見る少女の様な瞳で同時通訳をこなすメルランと、哀れみに満ち満ちた瞳で姉を見下ろすリリカ。
 そんな二人に対し、輝夜は、まるで子供がするかの様に手足をばたつかせ顔を左右にブンブンと振りながら、違う違う
と反論する。

「そーじゃなくてぇ! 私が言いたいのはぁ!!
 沖縄名物ちんすこうって予備知識無しで発音だけ聞くと何だかちょっとエッチょべきゃらひぎゃふッッ!!」

 輝夜の言葉が、彼女の左頬に叩き込まれた炎の右ストレートによって遮られる。
 その余りの威力により、彼女の頭は骨の砕ける嫌な音と共に胴体に別れを告げた。更には、肉の焼ける香ばしい臭いが
辺りに立ち込めていたりもする。

「どけ輝夜。お前に任せていたら話が進みやしない」

 炎の消えた右手をポケットに直し、妹紅が話を引き継いだ。
 蓬莱人以外には真似の出来ないドツキ漫才を前に、リリカは声も出ない。ルナサは余り動じない。メルランは
嬉しそうに拍手を送っている。

「一々細かいこと話すのもメンドーだから、簡潔にいくわよ。………












 ………お前達、私の物になりな」













 沈黙。






 かなり気まずい沈黙。






「―――あの、なぁ妹紅。その言い方だとちょっと誤解があr
「酷いわもこタ――――ンッッッ!!
 私という者がありながら二号さんだけに飽き足らず、一挙に三から五号さんまで作ろーだなんて!!
 離婚よ精神的苦痛に対する慰謝料請求よ子供は私が育てるから養育費は毎月忘れずにぃ―――ッ!!
 あぁでももこタンってばお薬のお蔭で幾らでもいつ迄でもオッケーだから6(ピーッ)くらい全然平気なのかしらだっ
たらそれはそれで私としても構わないかモぎゅるげしゃべッッ!!!」

 自身の腕に抱かれる形で散々喚き散らしていた輝夜の顔面鼻の下へ、燃え盛る手刀が深々と突き刺さる。

「お前は黙ってろ。つーか、出来ればそのまま一生死んでろ!」

「も、妹紅…… お前、いつのまに輝夜との間に子供が…………
 い、いや、良いんだ! 妹紅さえ幸せであれば、私は、わた…し………っふ、うぅ――――」

「ちょっと! 泣かないでよ慧音! こんな奴の言う事なんか真に受けないで!」

「でも、妹紅って、何のかんの言いつつ、輝夜と会っている時が一番活き活きしてる気がするし……」

「そんなこと無いって! アイツはただの殺し相手で、別に慧音が考えてる様な変な仲じゃないから!」

「……本当?」

「本当!」

「…………」

 慧音は応えない。ただ、涙に濡れた瞳で上目遣いに妹紅をじっと睨んでいるだけ。

「あー、もうっ! どうしたら信用してくれるの?」

 頭を掻きむしる妹紅に対し、慧音は小さく、聞き取れない程のか細い声で言った。

「…………ス……して…くれたら……」

「え? 何?」

 耳まで真っ赤になる慧音。

「いや、だから………その……あの、……………してくれたら…」

 指先をモジモジさせながら話すその様が余りに可愛くて、妹紅は意地悪な笑みを浮かべながら、再び訊き返した。

「聞こえないわよー? さっきよりも小さくなってない? ほら、もっと大きな声で!」

「………ワザとだろう、それ。本当は聞こえているんじゃないか……?」

「あ、バレた?」

「妹紅っ!」

 もう知らん、と背を向ける慧音。
 その肩に手を置き、少し乱暴に引き寄せた。

「ちょっ、何をする!」

「ごめんごめん! 慧音が余りにも可愛くってつい、さ?」

 先程よりも更に紅く染まった慧音の顔を、後ろから妹紅が覗き込む形。

「お詫びよ、慧音……」

「妹紅……」

 二人の顔が、少しづつ、少しづつ近付いていって―――――












「あのー、先程の話なんだけど、大分逸れてるみたいだけど?」

「「わきゃっ!!」」

 突如掛けられた声に驚いて二人が飛び退く。

「あーっ! あとちょっとだったのに! ルナサ姉さんってば余計な事を!!」

「余計って……この七十行程の方がよっぽど余計な気がするんだけど」

「ZZZzzz………」

 ブーたれるリリカ、それをあしらうルナサ、いつの間にやら舟を漕ぎ始めたメルラン。
 そんな三姉妹に向かって声を荒げる妹紅。

「お前達ッ! 一体いつから見ていた!?」

「いつからって……」

 ソッチの方こそ、いつからコッチが見えなくなってたんスか、つーか今のあんたの顔って正に名は体を表すですね、等
心の中で毒づくリリカ。下手に怒らせても拙いので、口には出さないが。

「ま、まぁ良い。話を元に戻すぞ!」

 ワザとらしく咳払いを一つ、今度は慧音が説明を始める。

「………妹紅が先程も言った通り、我々の目的はお前達自身だ。
 八意 永琳の依頼でな。お前達三人とリリーホワイト、そして魂魄妖夢を捕獲、永遠亭まで連れて来る様に、と。
 我々が此処に来た理由については以上だ。他に何か質問は?」

「はーい、先生!」

「……誰が先生だ。
 で、何だ、リリカ・プリズムリバー?」

「永琳は、私達を捕まえて、それでどうしようって言うワケ?
 配下になれって事? それともまさか、実験材料として使おう、とかそんなんじゃぁないでしょうね?」

「さあな。よく判らん。とりあえず、危害を加えるつもりは無いそうだが。
 むしろ、気持ち良くて身体にもいい事をする、とか言っていたぞ」

「それって―――」

 何だかスッゴク怪しくない? そう言うリリカに、だからよく判らんと言ったろう、と答える。実際、慧音自身、捕獲
してきた少女達に対して永琳が何をするつもりなのかは余り理解できていない。一応説明はされたのだが、マッサージが
どうとか針治療がこうだとか、それ自体は特に問題の有りそうな事は言っていなかったと思っている。一緒に話を
聞いていた月兎が、この世の終わりが来たのかという様な顔でガクガクブルブルしていたのが気にはなっていたが。

「判ったな。じゃあ他は―――」

「はいはーい! 先生、しつもーん」

「よし、メルラン」

 何のかんのと先生ぶりが板に付いている様子の慧音。リリカの家庭教師なんかに良いのではないだろうか、とルナサは
思う。ただ、それには――――

「あのねぇ先生。先生には何で………そんな角やら尻尾やらが生えてるんですかぁ?」

 ――――そうそう、メルランの言う通り。尻尾は兎も角としても、あの角は、可愛い妹を任せるにはちょっと不安が
有る。何だかこう、少し目を離した隙に、妹の大事なモノが散ったりなんだりしそうでどうにも安心がならない。

「あ、それ私も気になる。今日は新月で、日だってまだ沈んでないのに、何でハクタクフォームなワケ?」

「気になるって……ちょっとリリカ! 何? 貴方こーいうのが好みなの!?
 駄目よ! 家庭教師と教え子の禁断の関係だなんて私は許さないよ?」

「安心して、私もあーゆうキモいのは苦手だから。
 ってか、妄想ばっかしてないでちょっとは人の話聞いてなよ細目だから目は見えないだろーとは思ってたけど耳まで
遠いんだイヤだねこれだから年寄りは頭の方ももうかなりマズいんですかもう先は長くないッポイですね財産は全て
末の妹に譲りますって遺書残す迄は死なないでよね遺書書いたらソッコー死んでもいーけどっつーか私ちょうど今ボール
ペンとあとこないだ買い物した時のレシートが有るからその裏にでもちょちょいと遺書書いてとっとと逝ってくれない
かしらルナサ姉さん大好き」

「……んもー! 仕方ないわねリリカは☆ ちょっと待ってて♪」

 妹のマシンガンの様な罵詈雑言を、最後の一言のみで自分へのラブコールと受け取り、いそいそと遺書を書き始める
ルナサ。紙が小さいものだから、書き辛い事この上ない。

「……なぁ妹紅。やっぱり、私って………気持ち…悪いのかな………」

 一方の慧音と言えば、今にも零れ落ちそうな涙を堪えるのに必死で、まともに喋る事も出来ない。

「ちょっとせんせー? 少しばかり悪口言われたくらいで、何マジ泣き入ってんスかーぁ?
 いいから、とっとと質問に答えて下さいよー。何で先生はそんなキモいんですかぁー」

「うう…… 妹紅ーっ! 私もう駄目! もう教師辞める!!」

「落ち着きなよ慧音。向こうのペースに呑まれちゃ駄目だって」

「でも、でもぅ………」

 リリカの口責めに、今や完全に泣き出してしまっている慧音。
 その小さく震える肩を、妹紅は優しく包み込んだ。

「あっ……」

「ねぇ慧音?
 私が、元気の出るおまじないをs
「ハイ!カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットォ―――!」

 そこに割って入る月姫さま。千切れた首もいつのまにか元通り身体にくっ付いている。

「ちょ、邪魔しないでよ輝夜!」

「はいはい! 開幕直後から無駄話乱舞なお蔭で、時間が押しまくってるのよ!
 ってな訳で、回せ回せ回せ回せ回せ回せ――!でいくわよ!
 けいねッチについても私がさっさか説明するわ!
 えーりん特製BY胡坐を飲んだからこんなにビンビンなのよッ! 以上ッッ!!」

 一気に捲くし立てた輝夜。その左胸の上に、

「輝夜……」

 優しく微笑みながら、妹紅の右手がそっと置かれる。

「え? ちょ、ちょっと!?

 やっ! 手、中に入れないで! こんな、人の見ている前で……
 あっ…… ひぐぅぅ! そんな直接…くぁっ!
 はっ、はぁ…… もっと、優しく…… …痛いよぅ、そんなに強く揉んだりしたらぁ――――












 ――――心臓を」

「このまま握り潰されたくなかったら、真面目にちゃんと一生懸命に説明しろ………!」

「判ったわよぅ……」

 文字通り他人の手に命を握られた状態で、渋々と話し出す。

「月の光は太陽光が月にはねかえったものだということは知っているでしょう………
 けれど、月に照り返されたときのみ、その太陽光にはブルーツ波が含まれる…
 そのブルーツ波が満月になると、1700万ゼノという数値を超えるのよ……
 1700万ゼノ以上のブルーツ波を目から吸収すると、角に反応して変身がはじまる……!
 宇宙じゅうの惑星に月は数多くあるけど、その大きさにかかわらず、なぜかかならず満月にならないと1700万
ゼノを超えるブルーツ波はでないのよ。
 しかし……
 月人の姫である私は、常に1700万ゼノを超えるブルーツ波を身体から放出しているの。要は、私自身が小さな
満月みたいなものだという事。その私が近くに居るから、けいねッチはハクタクフォームになってる、という訳」

「「「…………?」」」

「まぁ簡単に言えば、輝夜の顔があんまりにも丸々してるもんだから、それを満月と勘違いしちゃって慧音が変身してる、
って事よ」

「……もこタンってば、私にはちゃんと説明しろって言ったクセに、自分はテキトーな事ばっか言ってる……」

 丸い顔を更に丸く膨らませながら文句を垂れる輝夜を無視して、三姉妹へと向き直る。

「―――さて、楽しいお喋りはここ迄。で、どうする? 大人しく捕まってもらえる?」

「………嫌だ、と言ったら?」

 リリカの問い掛けに、

「力ずくでお持ち帰り」

 焔立つ不死鳥の赤羽が応える。

 美しささえ覚えるその威容を前に、リリカは思考を巡らせる。

 通常のワーハクタクのみが相手なら、三姉妹の力でも充分相手が出来る。
 だが今の相手は、満月の力を得たハクタクと、更には月人の姫に蓬莱人の三人。三対三だから対等、等とはとてもでは
ないが思えない。正直、三対一ででやっと何とかなるかどうか、と言った所だろう。
 無策のまま正面からぶつかれば、百パーセント負けるという確信が有る。

 ならば――

「……ねぇ上白沢 慧音。あんたって、ボランティアで人助け、みたいな事してるんでしょう?
 そんなあんたが、こんな理不尽を許しちゃって良いのかしら……?」

 口八丁で不協和音を作り出してやる。そもそも、輝夜と他の二人は本来敵同士である筈。どういった理由で行動を共に
しているのかは知らないが、巧くすれば仲間割れも期待できる。

「――やれやれ。先程散々に罵った相手へ助けを求めるのか。随分と都合の良い話だな?」

 こんにゃろう、さっきキモいって言った事まだ根に持ってやがる、等と考えながら、そんな事はおくびにも出さずに
続ける。目の前の三人の中では、この真面目な半獣が最も組し易い筈だ。

「さっきは……ごめんなさい、私が悪かったわ。
 でも、あんたの悪口を言ったのは私だけよ。姉さん達は悪くない。
 だから、私はどうなっても良いから、この二人だけでも見逃してくれない?」

「リリカ、貴方って子は……」

 敵の標的は三姉妹全員なのだから、内二人を逃がすという話に慧音が同意しさえすれば、充分に内紛は狙える筈なので
結果オーライ。わざわざ三人全員逃がしてくれ、等と言う必要は無い。そう計算してのリリカの言葉なのだが、素直な
長女は素直に妹の献身に対して涙している。

「なるほど、確かに……」

 顎に手を当て、考え込む様子を見せる慧音。心の中でほくそ笑むリリカ。



「だが……



 ……済まないな」



 予想外の返答。

「何で!?」

「こちらにもちょっとした事情があってな。非常に腹立たしい事だが、今は永琳の言う事に逆らえないんだ」

 言いながら、ばつが悪そうに顔を背ける。その様子からして、永琳に逆らえない、という言葉に嘘や間違いは
無さそうであった。

「それに――」

 再び姉妹の方に顔を向け、今度はやや強い口調で話を続ける。

「お前達は一度、懲らしめておかねば、と思っていたしな」

「ちょっと、私達が何をしたって言うの? 別に、人間を襲ったり何だりした覚えは無いけど」

 リリカが反論する。騒霊である彼女らは、別に人間に対して好意的という訳でもないが、さりとてわざわざ殺して
喰ったり等をする事も無い。尤も、宴席で人肉が出てくれば、それはそれで普通に食べたりはするが。

「確かに、襲ってはいないな。だがな……

 …毎晩毎晩、里の近くまで下りてきては草木も眠る丑三つ時だというのにドンチャンドンチャン騒いで……!!
 お蔭で里の人間は睡眠不足だ! 度の過ぎた騒音で住民を体調不良にさせれば、それは立派に傷害なんだぞ!?」

「そんなこと言ったって……私達は騒霊なんだから、騒音を出すのは当然でしょう?
 蛙や蟋蟀が夜中に鳴いたからって、それを五月蝿いと咎める人は居ないわ。それと同じよ。別にいいじゃない」

「……演奏する曲が子守唄や、そう迄は言わなくとも何かしら静かな曲なら、お前達騒霊の習性、という事で我慢も
出来よう。

 が、あんな真夜中に大音量で『軍艦マーチ』だの『愛をとりもどせ!!』だのを演奏されて、それをお前、蛙や蟋蟀と
一緒に思えと言うのか!? 何処のパチンコ屋だお前等は!! 風営法というものを知らんのかっ!?」

「パチンコって言えば、ベタベタだけど『パチンコ大回転!』とか言ってるのを『パ』が抜けたりしたら何だか物凄い
速さでグルグルブンブン回ってそうで素敵よぎゅしゅぐぅぁばはぁッッ!!??」

 心臓を握り潰されて口から大量の血液が逆流しているお姫様を尻目に、慧音が続ける。

「そもそも最近のパチンコ屋といったら、キャラクターものの台が多いせいでチラシなんかを見ると一瞬オタク向け
ショップの広告かと勘違いしそうなくらいだ! キャラクターものが悪いとは思わん、実際楽しんでいる人も多い。が、
いくら何でも多過ぎはしないか!?
 と言う訳でプリズムリバー三姉妹、お前達には少しばかり痛い目に遭って反省してもらおう!」

 何が『と言う訳』なのか今一判り辛いが、兎に角作戦は失敗。

「まっ、私は別にどうでも良いのだけど、慧音がやるっていうなら私もやるわ」

 返り血で紅く染まった妹紅も慧音に追従する。

 この蓬莱人を焚き付けて輝夜にぶつけるよう仕向けてみるか、いや、それより……
 リリカは、即座に頭を切り替える。

「ちょっとタンマ!
 判ったわ。抵抗しないで大人しく軍門に下る事にするから、ね?」

 今にも弾幕を展開しようとしていた二人の動きが止まる。

「……だとさ。どうする、慧音?」

「……そうだな。何のかんのと言ったが、戦わないで済むのであれば、まぁそれが一番な訳だし」

「さっきの妖精は、話も聞かずに笑いながらいきなり弾幕張ってきたけどね」

「んー、あれは彼女なりの自己表現みたいなものなのかも知れないが……
 兎に角、大人しく付いて来るのであれば、コチラも何もしない。
 だが……私が言うのもなんだけど……本当に良いのか? お前達は一応、西行寺に縁ある者なのだろう?」

「縁って言っても、たまに宴会の時なんかにお呼ばれして演奏する程度の付き合いよ。私達は騒霊であって幽霊では
ないから、別に冥界の者って訳でもないし、西行寺のお嬢様に忠義を立てる筋合いは無いの」

「そうか……判った」

 慧音の了解の言葉を聞き、リリカの口から安堵の息が漏れた。

「ちょっとリリカ! 確かに私達は西行寺の者じゃないけれど、それでも一宿一飯の恩義くらいのものは有るでしょう?
 それを……」

「いいから! ルナサ姉さんは黙ってて!」

 そう、これでいいのだ。今はこれで―――

「そうよ、黙ってて姉さん」

「……メルラン?」

 妹に続き、いつに無く真剣な表情で姉を制するメルラン。

「こーゆーのにはヘイヘイうなずいといて後で寝首かけばいいのよねーッ、リリカ♪」

「そうそうその通………って、ちょっとメルラン姉さん、何を!?」

「何をって、リリカの顔に書いてある事をそのまま言っただけよー」

「いや確かに取り合えずヘーコラしといて後でとかって…ってそうじゃなくて!!」

 リリカは、特別に頭の回転が速いか猜疑心の強い相手でない限りは、大概の者を騙し通せる自信が有る。だが、彼女の
姉メルランは、その『特別に頭の回転が速い』者の一人であったりする。妹はその事に気付いていないが、下手をすれば
リリカをも上回るかも知れないくらいだ。だが、メルランはその使い道を誤る。と言うより、常人とは全く違う方向に
その頭の良さを発揮したりする。それが吉と出るか凶と出るかは場合によりけりだが、今回に限れば間違いなく『大
凶』であった。

「――詳しい説明を、お願い出来るかな……?」

 背後から聞こえる、僅かに怒気を孕んだ半獣の声。こうなれば……

「姉さん!」

 相手に背を向けたまま、二人の姉に向かって目配せをする。
 ルナサ、メルラン、共に瞬時にしてその意を察し、カードを取り出す。

「いくわよッ!」

 姉妹が一斉に振り返る。と同時に、

「「「大合葬『霊車コンチェルトグロッソ怪』!!!」」」

 三人の陣形がデルタを形作った。発動する、プリズムリバー最大最強の弾幕。

 機先を制し、初撃に最大の奥義を放つ。
 これで輝夜達を倒せはしないとしても、相当の打撃を、取り合えず逃げ出すのには充分な位のダメージは与えられる。
























 …………筈だった。






 リリカのキーボードが、この世のものならざる幻想の音を奏でる。それに重なるのは、












 ルナサの弾く、






 アレンビックの音色と、






「パプゥ――――――――ッ!」





 メルランが必死になって出しているトランペットの口真似。






………………






………






「くぅぅぉおのブゥァクァ姉どもおおおおぉぉぉおおぅぅ――――――――!!!!」

 プリズムリバー三姉妹は、音楽を以て弾幕を為す。故に、得意の楽器が無ければ自在に音を出す事が出来ず、弾幕の
性能も低下する。
 本来ヴァイオリニストであるルナサが現在持っているのはエレキギター。トランペットが得意なメルランに至っては、
楽器そのものを持っていない。
 そんな状態で、まともな曲が演奏できる訳が無い。「霊車コンチェルトグロッソ怪」は、完全に不発だった。

「何で得意楽器を持って来てないのよ二人とも――――――!!」

「いや、だって、リリカが今日はギターにしろって言ったから……」

「パプ――――ッ! パパラパラパ――――――ッ!!」

 不意打ち、見事な迄に大失敗。



「貴方達の出し物ははこれで終わり? なら、今度はコチラの番ね♪」

 三度目の蘇生を果たした輝夜が、喉の奥に手を突っ込んで符を取り出す。自身の血で赤くなっているカード。

「……お前その符、なんて所にしまってるのよ」

「あーこれ? えーりんに教わったタネ無し手品。本当にタネも仕掛けも無しに、そのまま飲み込んだカードを直接喉に
手を入れて取り出すの。もこタンにも教えてあげよっか?」

「遠慮する。
 そんな事より、後は任せたわよ」

「え゛~~、またぁ? けいねッチは?」

「右に同じ。くれぐれも言っておくが、無茶はするなよ?」

「むぅ~… 手伝いもしないのにお小言なんて……
 人が死んで為った幽霊と違って、幻影が意思を持った騒霊であるこの娘達が『死ぬ』のかどうか、試してみたい
のにぃ~~…」

 緊張感の無い顔と声で物騒な事を話しながら、ゆっくりと三姉妹に向かって近付いていく。そんな輝夜に向かって、

「こうなったら………

 ………エイッ!」

「わっ!?」
「めぽっ!?」

 姉二人を輝夜に向かって突き出し、一人飛び去ろうとする末の妹。

「何するのリリカ!?」

「姉さん達! 冥界一硬い盾×2になって、可愛い妹を護ってちょうだいっ!
 そして永遠亭の諸君! 今日の所は引き分けにしておいてあげるわ! 私ってば偉い!!」

「あはは、逃がさないわよ~」

 輝夜を中心に、それぞれが違った色を放つ五つの光の矢が発生した。

「難題『龍の頸の玉 -五色の弾丸-』☆」

 直線的に走る五色の光線が、

「貴方達の弾幕も色鮮やかだけど、私のこれも綺麗でしょう~♪
 ねぇねぇ、私ってば偉い~~?」

 必死になって逃げるリリカの背後に迫る。

「えらくない! えらくない! ぜんぜーんえらくない―――ッ!!」
















































                       【冥界内 白玉楼
                           01:27 p.m. 】

「――――平和、だなぁ………」

 縁側に腰掛けながら、緑茶の入った湯呑みをゆっくりと口元へ運ぶ。屋敷の掃除や庭木の剪定等、やるべき仕事は午前
中に全て終えてしまっている。
 あの巫女は、いつもこんなにゆったりとした時を過ごしているのだろうか。そう思うと、ここ白玉楼の庭師である魂魄
妖夢は、少しばかり羨ましいな、等と考えつつも、でもやっぱり寂しいかな、と小さく息を吐いた。

「幽々子さま、向こうで迷惑かけていたりしないかなぁ……」

 今は友人の家に出掛けている主人の事を考えながら、庭に在る海棠の木へと目を遣る。

 冥界の白玉楼と言えば、新聞の幻想郷名所案内で紹介されている通り、何と言ってもその広大な庭を埋め尽くす程の
桜の海で有名である。春になれば幽霊は勿論、生きた人間さえもが花見に訪れる。
 けれども、如月が過ぎて弥生に入り、そうした桜の見頃も過ぎて、花見の観光客も途切れる今の時期になると、まるで
桜と入れ替わる様にして花を咲かせ始めるのが、妖夢が今見ているこの老樹なのである。妖夢は桜も勿論好きではあるが、
白玉楼の住人である彼女とその主しか知らない、この海棠の花の美しさも大好きだった。
 以前、書架の整理の時ふと見た書物によれば、この樹は少なくとも三百年以上前から此処にこうして在ると言う。
 その様な昔から、変わらずに白玉楼を見守り続けるこの老樹に、妖夢は尊敬の様な感情すら抱いていた。

「………にしても、暇だなぁ――――」

 つい数日前迄は、幽々子の主催する、妖怪や変な人間達を集めての花見が毎日の様に行われていた。その宴の準備や後
片付けで、それこそ半霊じゃなくて普通の人間だったら倒れてもおかしくない位に忙しく動き回っていた妖夢だが、そう
した宴会も今では行われていない。
 桜はまだ散ってはいない、と言うより、今が正に満開、と言った具合なのだが、「桜は八分咲きが最も美しい」と言う
幽々子は、花が満開に近くなると、きっぱりと庭園の一般公開をやめてしまう。
 彼女曰く、満開になった桜は、後はただ散り行くのみ、その散り際を見届ける事が出来るのは、その樹と最も近しい
者だけ、と言う事だった。だから、白玉楼の桜が散る様を見る事が出来るのは、毎年毎年、白玉楼の主である幽々子と、
その従者である魂魄の者のみであった。

「静か、ねぇ………―――」

 空になった湯飲みを自身の脇に置いてある盆の上に戻し、替わりに団子を一本手に取る。
 先日迄の馬鹿騒ぎよ再び、等とは冗談にも思えないが、かと言ってここまで静か過ぎると流石に物淋しい。
 元々白玉楼には、彼女と主人である幽々子の二人しか居ないのだが、その主人は、昨晩から友人である八雲紫の家に
遊びに行っている。明日の昼には帰ると言っていたが、何でも『愛は幻想郷を救う! 24時間耐久ゴロ寝勝負』という
のをやっているらしく、勝負の状況によっては多少の延長もあるらしい。
 尤も、桜の散り際を見逃す、という事はしないのであろうから、そう何日も留守にする事はないだろう。

「それにしてもホント、24時間耐久ゴロ寝勝負って、要はそれ、朝から晩まで食っちゃ寝、食っちゃ寝するって言う事
よね……
 愛は幻想郷を救うどころか、食料難でマヨヒガが崩壊するんじゃないかなぁ……」

 マヨヒガの主である紫は、幽々子と一緒にゴロゴロしているだけなのだろうから、食料の用意やダメ妖怪どもの世話
なんかは、全て八雲 藍がするのであろう。彼女は戦闘に関しては勿論、家事全般に関しても半人前である妖夢よりも
ずっと上手であるから、恐らく問題はないだろう、とは思うのだが………
























『ねぇ~紫ぃ~、お腹が空いたわ~~』

 ゴロゴロ。

『藍~。料理の追加、持って来てぇ~~』

 ゴロゴロ。

『印度象が丸ごと入ったカレーライスに白長須鯨のお刺身各種、それとオメイサウルスの姿煮地中海風味!
 今さっき持って行ったばかりですよ!?』

『あんなんじゃ前菜にもならないわよ~~』

 ゴロゴロ。

『と言う訳で、藍、お願い~~』

 プチッ。

『いい加減にして下さいお二人とも!!
 ただでさえ今の時期は、冬眠明けでお腹を空かせている紫様のせいで、食料の調達が追いつかないというのに……
 私は兎も角、育ち盛りの橙までが、昨日からお米の一粒すら口に入れていないのですよッ!?』

『ら、藍様! 大丈夫、私は大丈夫だから………』

『五月蝿いわねぇ~~。お米が無かったら、お饅頭を食べれば良いじゃないの。
 あ、そうだ藍。お饅頭追加、お願いね』

『取り敢えずは五百皿位でいいわぁ~~』

『駄目です! お二人にお出しする料理は、もうありませんっ!!』

『………ねぇ紫。
 猫って… …赤身が美味しいのだったかしら……?』

『違うわよ幽々子。赤身が美味しいのは犬よ』

『狐って確か………イヌ科の哺乳類よね? ああでも、肉を食べる動物って、やっぱり生臭いのかしら~』

『大丈夫。ウチのは肉は少なめ野菜メインで飼育しているから。
 それに、子猫なんてきっと、肉が軟らかくて美味しいわよ?』

 じゅるり。

『ら、藍様ぁ~』

『な、何ですかお二人とも! 脅しのつもりですか!?』

『脅し? って言うか……ねぇ、紫?』

『そうね幽々子。脅しって言うよりは既に………決定事項?』

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

『!?逃げろ、橙ッ!! 此処は私が抑えるッ!!!』

『そんな、でも!?』

『早くしろ! 死にたいのか!?』

『藍様ああぁぁあ――――ッ!!!』
























「……………………



 うわああああぁぁぁあああ――――――――!!??

 は、早まるな八雲 藍ッ!! この魂魄妖夢、今すぐ助太刀に参るッッ!!!!」

 普通に考えるなら、全くもってあり得る筈も無い様な妄想。だが、普通ではない主とその友人ならば、それを現実と
してしまっても何らおかしくはない。
 二本の愛刀を脇に差し、今まさに失われんとする二つの命を助ける為、マヨヒガへ向かって飛び立とうとする妖夢。

 その目の前に、



「!?」

 突如、巻き起こる爆風。

「一体何が………!?」

 砂埃に目をまたたく妖夢の眼前に、先程までは無かった筈の四つのオブジェが屹立する。

「な…! リリーに、プリズムリバー三姉妹!?」

 白玉楼の庭に追加されたのは、妖夢もよく見知った四つの下半身。それが、逆しまになって地面から生えているという
異様。

「大丈夫か、お前達!!」

 駆け寄ろうとしたその刹那、

「!……これは――――!!」

 強大な力を持つ何者かが結界を越えたのを察知し、妖夢の足が止まる。接近してくるのは二つ、いや、三つか。しかも
これは、以前にも感じた事のある力。それは――――



「コンパクゥゥ――――――ッッ!!!」

 叫び声と共に、まるで隕石の様な速度で落下してくる月の姫。

「おいこら輝夜、勝手に先走るな!」

「全く、少しは落ち着け」

 輝夜の作り出したクレーターに少し遅れて舞い降りる、不死鳥の羽を広げた人間と、妖の証である角を生やした少女。

「お前達三人が何故ここに? いや、それより、プリズムリバー達をこんなにしたのはお前達か!?」

 庭師の問いに、

「イエス(はい)・アイ(その通り)・ドゥ――(です)!」

 平らな胸を勢いよく叩いて応える輝夜。

「何故こんな!?」

「何故っグホッ!! ってゲホッ、ゴホッ! それ……ヴェホッ、ガホッ、ア゛ハァッ………!!
 ごめ…、ちょ……、待って」

「………あの、大丈夫?」

 心配そうに背中をさする妖夢と、

「……強く叩き過ぎだ」

「ったく、いっそそのまま死んでしまえ!」

 冷たい目をした1.5人と0.5匹。

「ああ……有難う。もう大丈夫、落ち着いたから……」

「そう、良かった…」

 少し涙目ながらもしっかりとした口調で話す輝夜を見て、妖夢は安堵の息を漏らす。

「では、改めて……



 ………何故こんな!?」

「何故って? フフフフ…… それはねぇ………」

 口元に手を当てて、妖しげに微笑む輝夜。

「まぁ、ヘッドハンティング交渉の結果、と言うところかしら?」

「ヘッドハンティング……?」

「そ、ヘッドハンティング♪」

 笑いながら、ゆっくりと近付いてくる。帯刀した刀の柄に手を当てた体勢のまま、少しづつ後退る妖夢。

「貴方も、こんな寂れた家の庭師なんか辞めて、ウチに来ない?
 貴方は歳の割りに腕も立つし家事も得意だし、少なくとも今以上の待遇は保障するわよぅ?」

 妖夢がピタリと動きを止める。俯いたその顔から表情は窺い知れない。それを見詰める輝夜は、袖に隠れた口の端を
嬉しそうに歪めた。

「知ってるわよ? 貴方は、いつでもあの亡霊嬢の我侭に振り回されてばかり。
 たった二人しか居ないこの屋敷で、貴方一人が全ての雑事を任せられておきながら、その報いとして一体何が与え
られているのかしら?
 あのお嬢さんは、貴方の事なんて、所詮ただの便利な小間使い程度にしか考えていないんでしょうね。
 でも、私達は違うわ。私達は、貴方の力を高く評価している。永遠亭に来るのであれば、相応の地位と報酬は約束する
わ。どう? 悪い話ではないと思うけど?」



「………



 ――――確かに、その通りなんでしょうね」

 低く呟くその声を聞き、勝利を確信する輝夜。



「でも……



 …………私の答えは、プリズムリバー達と同じよ!!」

「!?………答えが同じ、という事は、その結果として起こる事態も同じ、という事になるけれど――――
 ――――其処に突き刺さっている犬神家を見ても、それでも答は変わらない、のかしら?」

「愚問!!」

「………主への忠心、か。ウチのイナバ達にも見習わせたいものだわ」



 妖夢は思い出していた。先代の庭師であり自分の剣の師でもある魂魄妖忌が、妖夢と幽々子、二人の前からその姿を
消したあの日の事を―――――
























「―――――と言う訳で妖夢、今日の鍛錬にはこの道具を使う」

「この道具って………」

 何ですか、と質問しかけて、幼き日の妖夢(以下、幼夢)は口を閉じる。訊いたところで、どう考えてもろくな答が
返って来るとは思えない。そう感じられる程に、師匠、魂魄妖忌が用意したそれは、怪しさと禍々しさに満ち溢れていた。

 この道具、どうやら扇風機を改造したものらしかったが、枠の金具は外され、更にその羽は鋼の刃へと取り替えられて
いる。刃と刃の間からは、その後ろに在る、小さな台に乗せられた水晶玉が見えた。

「妖夢。羽のむこう側にある水晶玉をとれい」

「エ!? いや無理! 絶対無理だって!!」

「何を言う! これは日本男児に代々伝わる由緒正しき訓練法ぞ!
 これを見事成し遂げた者は、一時に三発のパンチを同時に放ちてその姿まるで転がる稲妻の如し!と言われておる」

「いや、わけがわかんないですよ!? わたしは男児じゃないし、剣士だからパンチも関係ないしッ!!
 て言うか転がる稲妻って何? 英語にするとローリングサンダー!?」

 涙目で反論する幼夢を他所に、既にやる気満々といった風の妖忌は、遠慮も躊躇も無く改造扇風機のスイッチを入れる。

「羽の回転は0.7秒間隔でまわっておる。
 0.7秒のあいだに水晶玉をとってこなければ、腕はまっぷたつなるぞ。よいか」

「で…できませんお師匠さま… わ…わたしにはできません」

「できなければこの場でおまえをまっぷたつにしてやる」

 楼観剣を鞘から抜き放ち、その剣先を幼夢の喉元に突き付ける。

「んな無茶苦茶な!?」

「どうした妖夢。臆せば……死ぬぞ…?」

 完全に目が据わっている妖忌。普段は真面目で気のいい好々爺なのだが、こと剣に関する事となると、まるで人が
変わったかの様に無理無茶を始めだす。
 これ迄にも幼夢は、手足にとんでもない重さのアンクルを付けさせられたままロードワークをさせれらたり、火山
ガスの噴出する危険な場所で修行させられたりといったスパルタに耐えてきた。幼児虐待という概念は、外の世界に
於いて現在進行形で使われている言葉であり、幻想郷には未だ入って来てはいないらしい。

「はぁ… 仕方ない、か……」

 覚悟を決める幼夢。確かにどう考えても成功は不可能な荒行だが、この間の「発電施設内で必殺技を完成させろ!」と
言う、どう考えてもまともな神経の持ち主には考え付かない無理難題に比べれば、まだ幾分かはマシというものだ。

「ふううぅぅ―――――…………」

 大きく息を吐き、精神を集中させる。もし失敗したら……いや、そんな弱気ではいけない。今自分に必要なのは、無事
成功した自分の姿をイメージする事。最高の自分を、最高の動きを幻視し、それに現実の自分の動きを合わせる。
 ――――大丈夫。自分は、魂魄の名を継ぐ者だ………!

「ハアアァァァアア―――!」

 気合一閃、突き出された幼夢の小さな手は、






「うぎゃああぁぁ~~~ッ!!」

 叫び声と共に赤く染まる。現実は漫画みたいに甘くはない。

「な、何と言う事じゃ! 妖夢の、わしの妖夢の可愛いお手々がこんな………
 あぁーっ! わしはなんて馬鹿な事をしてしまったのかっ!!!」

 今更ながらに狼狽する妖忌に、端から判りきってた事でしょうがとツッコミの一つや二つも入れたい幼夢だったが、
手の傷の痛みのせいでそれどころではない。

「痛いぃ――――ッ!!」

「おおっ、妖夢、妖夢~~!!」

 痛さにのた打ち回る弟子と、己の所業を悔いて泣き叫ぶ師匠。そんな地獄絵図の中へ、



「ねぇ妖忌~、お腹減ったわ~。お八つちょうだい~」

 場の空気といったものを、全く気にせずに首を突っ込む若き日の幽々子。

「お八つなら戸棚の中にたっぷり一時間以上牛乳に浸けておいたケ○ッグチョコクリスピーが在るのでそれをどうぞ!
 儂は今、それどころではないのです!!」

「あれならもう食べたわよぅ。でも、フニャフニャしてて全然食べた気がしない……」

「何を言いますか! アレは、牛乳に長く浸ければ浸ける程、チョコの味が染み出して美味しくなるのですぞ!?」

「私としては、牛乳をかけた直後の、あのサクサクした食感の方が好きだわ~。
 ねぇ、他に食べる物は無いの?」

「夕餉の為の買出しには後ほど行こうと考えていた為、今は他に何も在りませぬ!
 そんな事より、ああ、妖夢! 妖夢うぅ~~!!」

「そんな事、って……」

 不満気な顔で腹を鳴らす幽々子の目が、妖忌の周りを飛ぶ白い塊へと動く。

「……前々から思っていたのだけれど…… 貴方達魂魄の半霊って―――



 ―――お餅みたいで美味しそうよね」

 じゅるり、という不穏な音を背後に聞く妖忌。



「……あうぅ、痛いよう………」

 一方幼夢は、痛みが引いてきたのか、涙目で手にふぅふぅと息を吹きかけながらも、大分落ち着いた様子である。
人間よりも回復の早い半分幽霊の身体に、半分感謝する幼夢。
 そんな彼女の肩の上に、大きくて暖かい手が乗せられる。

「……お師匠様?」

 見上げた師の顔は、とても優しくて、けれども、何処か寂しそうにも見えて……

「妖夢よ……」

 己が愛刀二本を幼い弟子の手に乗せ、妖忌は続ける。

「この楼観剣白楼剣をお前に託す儂はこれから修行の旅に出るお前は儂の代わりにこの白玉楼をそして幽々子お嬢様を
お護りするのだ良いかお前はまだまだ未熟これからも決して日々の鍛錬精進を怠ってはならぬぞ魂魄の名を汚さぬよう
常に全身全霊をもって事に当たれいきなりこんな事を言われて不安も有るだろうがなに大丈夫お前なら出来る儂は信じて
おるぞでは幽々子様を頼んだぞサラバだッ!」

 息継ぎもせずに早回しで長科白を締め括り、そのまま猛スピードで空の彼方へ消えて行く。西行妖と幽々子の関係等、
伝えねばならぬ事は本来まだまだあるが、今はそれどころではない。

「…………はへ??」

 その小さな身体には余りにも不釣合いな大きさの刀を持ったまま、事の重大さも判らず立ち尽くす幼夢。

 その後ろで、



「………ふ~~ん、貴方が妖忌の替わり、ねぇ」



 お腹を空かせた亡霊が、



「大分小さくなっちゃったけれど……まぁ我慢しますか…………」

「ほえ? 幽々子さま?」



 その大きな口を開けて……………………






「……………………いただきまあす」













 パクリ。
























「ううううおああぁぁぁぁあああ――――――――!!!!」



「な、何!? ちょっと慧音、あの庭師、いきなり爆発的に霊力が上がったわよ!?」

「……ふ~む、なるほど………
 あの娘、感情によって大きく霊力が上昇する様だ。興味深いな…………」

「!っへぇ~~…… 主との絆を護ろうという強い想いが、あいつの潜在能力を引き出したって訳か…
 いいわね、嫌いじゃないわよ、そういうの………!」

「……それは大分誤解の様な気もするぞ、妹紅」



「永遠亭の者達よ!」

「はっ、はひっ!?」

 月人の姫である輝夜をすら圧倒する程のオーラを纏いながら、妖夢が楼観剣を抜き放つ。

「私はこれからマヨヒガに赴き、あのお天気頭に誅罰を下すッ!
 邪魔立てをするつもりならば、先ずお前達から斬り潰すぞ!!」

「え!? ちょ、まっ……話の流れが何だかサッパリ??」

「――退く気は無い様だな。ならば仕方ない……」

「私の話を聞けぇー! 五分だけでもいいーっ!」

 貸した金の事はどうでもいいから、等と意味不明の事をがなり立てる輝夜の声など、まるで聞こえていないといった
様子で刀を正眼に構える。

「白玉楼御庭番衆が筆頭、魂魄妖夢、推して参る! お覚悟、宜しいなっ!!」

「宜しくない~! って言うか、貴方は庭師であって御庭番ではないと言うか一人しか居ないのに筆頭も何も……
 ……って、ぅきゃあ―――!?」

 文字通り、目にも止まらぬ速さでの一閃。間一髪でかわした輝夜の髪の先端が、切れ切れになって宙を舞う。

「助けてもこタン! これは本気でヤバい! 本気で死ぬって! 全然動きが目で追えないしッ!!」

「ああそうね。私も、そいつとはちょっと戦ってみたいし。

 ……まぁでも、取り敢えずお前が死んでからね」

「けいねッチ――――!!」

「さっきも言ったと思うが、どれ位のレベルの敵が相手であろうとも、お前を助けるつもりは毛の頭ほども無い」

「うわああぁぁ~~ん! えーりんえーりん助けてえーりん!!」

 泣きながらも、次々と襲い来る斬撃を紙一重でかわしていく。だがこのスピード、いつまでも避け続けていられるもの
ではない。

「くぅ~~ッ! こうなったら、あんまり使いたくはなかったけど、奥の手発動よ!」

 自身を中心に、四方に向かって四体の使い魔を飛ばす。

「燃え尽きるがいいわッ! 神宝『サラマンダーシールド』!!」

 宣言と同時に、輝夜の周りを包み込む炎の壁。

「……笑わせる! この程度がお前の奥の手か!!」

 正面に居る輝夜を無視し、左手側に飛び退く妖夢。

「ハアァァッ!!」

 気合一閃。楼観剣を振り下ろす。発生した衝撃波は、直線状に在る二体の使い魔を一瞬にして両断した。

「次っ!」

 残る二体の使い魔から発射された光線をかわしながら、今度は右手に向かって高速で移動する。

「セィヤァアッ!」

 先程と同じく、瞬時に残りの使い魔を破壊する。

「………思った通り、ね」

 「サラマンダーシールド」は、その圧倒的なボリュームで迫る炎の壁よりも、実際には使い魔から発せられる熱線の
方がより厄介なスペルである。その最大の武器とも言える使い魔が速攻で潰された以上、この弾幕で妖夢を墜とす事は
不可能だろう。だが、取り敢えずはこれで良い。間合いを確保する事が出来たし、仕掛けを用意する時間も稼げた。

「さぁ~て、お次の弾幕はぁー♪」

 炎の壁が一瞬にして消え失せ、替わりに輝夜の前面を護る様に出現した無数の使い魔が、白色魔力弾を連続して発生
させる。

「貴方の攻撃、威力こそ一級品だけど、射程範囲はまた随分と狭いわよねぇ?
 そんな貴方が、これだけの数の使い魔を墜とす事が出来るかしら☆」

 楽しそうに笑う輝夜を前に、妖夢は刀は鞘に戻す。

「あら、観念したの?」

 応えず、楼観剣の柄に手を当てたままピクリとも動かない。
 その間にも、空間中を埋め尽くす程に増大した白色弾が妖夢に迫る。

 被弾まであと一間。まだだ、まだ遠すぎる。静止したまま、静かに力を溜めてゆく。



 あと一尺。

 まだ。あともう少し。






 あと一寸――――












「――――今だ!」

 弾が身体に触れたその刹那、溜められていた力を一気に解放する。



「人鬼『未来永劫斬』ッ!!」






 ―――光が見えた、と輝夜は思った。



 次の瞬間、全くの一時に、十数もの斬撃がその身に刻まれる。自身の前方を固めていた筈の使い魔達は、ただの一体も
残ってはいなかった。

「手応え……あったな」

 輝夜が地面に膝をつく音を背中で聞く。とは言え、蓬莱の薬を服用している輝夜は、多少の傷ならすぐに回復して
しまう筈。その前に、連続攻撃で一気に戦闘不能まで追い込む。
 そう考え、間髪入れずに次の攻撃へと転じようとした妖夢の、






「!?……なきゃっ!?」

 右肘と左膝で小さな爆発が起きた。

「ッつぅ、何処から!?」

 輝夜が攻撃可能な状態にまで回復するには、まだ少々の間がある筈。使い魔も、先程の「未来永劫斬」で全て破壊して
いる。ならば………



 蓬莱人とハクタクの居る方へ目を遣る。だが、

「ねぇねぇ慧音♪」

「!わっ、ちょっと、何するんだ妹紅!?」

「向こうばっかり盛り上がっててコッチはちょっと暇だから、ね?」

「や、やめろ!」

「やめろ!って…………そっかぁ――、慧音は私の事が嫌いなんだぁー…」

「そ、そうじゃなくて! 今は仕事中だから、後で、仕事が終わってから、な?
 別に妹紅が嫌いとかそういう訳じゃあ………」

「だったらオッケーね♪」

「や、ちょ、そうじゃなくて…て、わひゃあ!
 あ、おい! ま………あ、くぅん!」

「良好良好、感度良好♪」

 今一つ何をやっているのかは判らないが、取り敢えず二人から攻撃を仕掛けてきた様子は窺えない。

「!?」

 背後に何かしらの気配を感じ、咄嗟に前方へと受身を取る。その直後、妖夢の居た場所で小規模の爆発が連続して巻き
起こった。

「な……んだ、これ?」

 今度は見えた。爆発は、空中を高速で飛ぶ、二つの小さな物体が放った光弾によるものだった。

「使い魔?……にしては動きが早いし、それに何より小さ過ぎる……!」

 考えている間にも、止むこと無く攻撃は続く。余計な詮索をしている暇は無さそうだ。

「――余り魂魄を舐めるな!」

 光弾を放ちながら突進してくる二つの物体を、

「天界法輪斬ッ!」

 擦れ違いざまに、二つ同時に撃墜する。

「……これは――――!!」

 破壊された筈の二つの物体は、瞬時に再生を開始した。だが、その過程で、それが何であるかを見て取る事が出来た。

「これは――――






 ――――手首!?」

「あぁ――――はっはっはっ!! ようやく気付いたみたいねぇ!!」

 高笑いに振り向いてみれば、其処には既に完全回復を果たした状態で立ちはだかる輝夜の姿。
 彼女が、普段は長い袖に隠れて見えない自身の両腕を曝す。だがその先端は、手首から先には何も無く、只ゴポゴポと
血が流れ出るのみ。

「『サラマンダーシールド』もその後の弾幕も、全てはコレの配置を悟られない為の囮!
 コレはねぇ、切り離した両の手を私の脳波で自在に操る奥の手よ!
 使い魔と違って食らい判定が極小の上、小さいとは言え私の一部だから、何度破壊してもすぐに再生する!
 まぁ、もの凄く痛くってしかも出血多量で頭がフラフラするのが欠点だけどねッ!!」

「くっ………!」

 刀を構え、猛然と突進する妖夢。が、

「無駄無駄ァ!」

「きゃああ!」

 空中を自在に飛び回る両の手と輝夜自身、三方からの攻撃に為す術も無く吹き飛ばされる。

「さっきの技の硬直に、右手と左足をやらせてもらったからね。
 その状態で、この三点同時攻撃をかわしきるのは不可能よ♪」

 楼観剣を杖代わりに、何とか立ち上がる妖夢。だが、もはや先程までの力が残っていない事は、誰の目にも明らか
だった。

「手を切り離してのオールレンジ攻撃って、なんて無茶苦茶な……
 これじゃあ、まるで……」

「ふふふ……気付いたみたいね? そうよ、これは――」

 妖夢の言葉に、嬉しそうな声で応える。

「これじゃあ、まるで………」

「そうよ、これは―――」












「『破壊』頑駄無みたいじゃない!」
「『足なんか飾りです!』のアレみたいでしょう!…………って、え?」

「……足なんて飾り………?」

 何それ、と言った感じで見詰め返してくる妖夢に、少し苛立った口調で輝夜が文句をつける。

「ちょっと、あんなサイコのパチモンと一緒にしないでよぅ!
 アレよ、最終決戦で出てきたアレ! 仮面のアイツが乗ってたアレよ!!」

「最終決戦? 仮面のアイツ? …………ああ、『天帝』頑駄無か!」

「違ぁ~~う! ちょっと何? あなた若しかして、サイ○ミュとか知らないクチ!?」

「?………竜騎兵システムの事?」

「だ~か~らぁ~~!!
 何でそう、新しい物ばっかに話が行くのよ! そうじゃなくて、もっと昔のッ!!」

「昔のって………あっ!」

「ん!? 何、判った? 言ってみ!?」

「昔のヤツで、最終決戦に出てきて!」

「そう!」

「手が本体から分離して自在に攻撃を仕掛ける!」

「そうそう!!」






「○ーンXだ!!」

「違うわああぁあぁぁあああ~~~~~~~~!!!」

 自信満々の答を否定されて少々不満気な妖夢と、貧血気味な上に大きな声の出し過ぎで、肩で息をしだす輝夜。

「―――ぜぇ、はあぁ……… あー、ちょっと、魂魄妖夢? 貴方に少し、質問したい事が有るんだけど……
 ハンドルの値段って、幾らだか判る?」

「?何、突然。知らないけど、そんなの」

「何言ってるのよ! ハンドルっつったら一ドルの半分なんだから、百八十円に決まってるじゃない!」

 先っぽの無い腕をブンブン振りながらHAHAHAHAHA……と笑う輝夜に、

「一ドルって……あんまり詳しい事は知らないけれど、大体百円ちょっと位なんじゃないの?
 半分にして百八十円、って言うのはないと思うんだけど」

 真顔で訊き返す妖夢。凍符でも喰らったかの様に、輝夜の表情が凍りつく。

「あー、えっと……魂魄妖夢?
 …貴方が始めて買ってもらったゲーム機って、何かしら?」

「『夢の配役』。本当は『遊びの駅』が良かったけど、幽々子様がどうしても、って言うから……」

「……ティーエムと言ったら?」

「『革命』」

「………ジャ○ーズで一番古いのは?」

「一番って言うか、知ってる限りではSM○P」

「…………タカと言えば?」

「ダイ……じゃなくて、『柔らかい銀行』か、今は」

「……………九州の球団と言えば?」

「それって、今の質問の答と同じでしょう?」

「………………三種の神器、と言ったら?」

「剣・玉・鏡の事? それとも、薄型テレビ・デジカメ・DVDレコーダーの方?」



 妖夢の質問には耳を貸さず、フラフラと慧音に向かって飛んで行く輝夜。



「ねぇ、けいねッチ………」

「……ひゃう!…………く……ぁはあぁっ!

 …………って、な!?何だ、何か用か輝夜!? コラ、妹紅、やめろ!!」

「チッ、いい所で割り込んできて………



 ………慧音の尻尾って、フサフサしてて気持ちいいのに」

「けいねッチ………」

「だから何だ、輝夜?」






「う、うう……
 う~~~、ううう、あんまりだ…



 HEEEEYYYY!
 あァァァんまりだアァアァ!!」

 いきなり大粒の涙を流して、ダダッ子のように泣きわめく輝夜。

「な…なんだ? いったい?」

「けいねッチ~~~!!
 歴史の先生として、ここは一発あの若侍の根性を叩き直してやってよ――――ッ!!」

「ちょっと待て! 訳が判らん!
 落ち着け! 先ずは落ち着いて詳しい説明をしろ!!」

「ヒック……グズッ……… あのね、そのね、かくかくしかじかでね…………」

 先の無い手首で涙と鼻水を拭きながら話し始める。傷口に涙と鼻水が垂れて、それが痛くてまた涙と鼻水が流れてくる
という悪循環。

「なるほど……」

 話を聴き終えた慧音は、暫く腕組をして考える素振りを見せ、そして一言。



「そりゃ仕方ない。お前とあいつとじゃ明らかに年代が違う」

「酷いわけいねッチ――――――ッ!!
 それって何!? けいねッチも、私の事をオバさんって言いたい訳!?
 そんなこと言ってると、♪私がー オバさんにぃなあぁっても~♪ とか可愛らしく歌いだしちゃうわよ!!??」

「その歌自体が、既に随分と古いネタだろう。
 と言うか、千年以上生きている輩が自分を『オバさん』呼ばわりとは、また随分と虫のいい話だな」

「ちょっと聞きましたもこタン!?
 この牛っ娘ったら、少しくらい自分の方が若いからって、私達の事を年寄り扱いですよ!?」

「いや、私は別に構わんよ。実際、そんだけ長く生きてる訳だし」

「ムキ―――――ッ!!
 いいわよいいわよ! もこタンもけいねッチももう知らない!!」

 地面に転がり、駄々をこねる子供の様に手足をばたつかせる。いつの間にやら両手が元に戻っている為、血が辺りに
撒き散らされるという事こそないが、単純に見ていて見苦しいなと、慧音と妹紅、二人同時に溜め息が出た。

「!?」

 そんな輝夜の動きが、ピタリと止まる。直後、

「とうおるるるるるるるるるるるるるるるるるるん」

 奇妙な声を出しながらむっくりと起き上がる。
 そのまま地面に突き刺さっているプリズムリバーのもとまで行き、其処に落ちている、リリカの物であるキーボードを
手に取って耳に当てた。

「もしもし……ボス?」

 辺りを気にしながら、小さな声で話し出す。電話をかけているつもりの様だが、それにしては余りにも受話器が大きく
て、見ていて滑稽どころか流石に気味が悪い。そんな周りの視線を気にもせず、キーボードに向かって一人会話を続ける
輝夜。

「もしもし? オレオレ。え、誰かって? だからオレだって!
 ……そう! オレだぜ魔梨沙だぜ! 今幻想卿の外の冥界の白玉桜に来てるんだぜ! 因みに八雲紫の式の名前は
『やくもあい』だぜ紅魔館の引き籠りの名前はパチェリーだぜ略してパチュだぜ門番の本名は紅 美鈴だぜじゃあな
アバヨ!ガチャン」

 誰かとの意味不明な会話を終え、キーボードを地面に置いた。
 手で額の汗を拭い、一仕事終えた後の爽やかな表情で、ふぅ~っ、と気持ち良く息を吐く輝夜。

 その後頭部を狙って、

「!?あぁぶなっ!」

 水平に薙ぎ払われる手刀。間一髪、亀の様に首を引っ込めてそれをかわす輝夜。

「ちょっともこタン! いきなり何するのよ危ないじゃない!?」

「ん? ああ、いや……
 お前の頭がおかしいのは前々から知ってたけど、流石に今みたいな訳判らん行動を見せ付けられると、どうもこれは
頭の中がのっぴきならぬ事になってるみたい、と思ってさ。かっ捌いて中身を検査してやろうとしたのよ。有り難く
思いな。
 そんな事より輝夜。一体何だったのよ、今の奇行は? 言ってる事も間違いと言うか、嘘ばかりだったし……」

「あら、一つだけ本当の事もあったわよ?………






 ………あの魔法使いの名前、初登場の時は確か―――――」

 言いかけた言葉を、片手で輝夜の口を塞ぎ閉じ込める慧音。

「――――やめよう。誰にだって、触れられたくない過去と言うものは有るさ………」

 幻想郷の全ての歴史を知る彼女は、当然の如く「おっけ~、ここは○梨○にまかせて」とか言っていた赤い少女の事は
知っている。
 だが、それがどうしたと言うのだ。既に起きてしまった過去は、誰にも変える事は出来ない。ハクタクである彼女で
さえ、『歴史的に無かった事にする』事は出来ても、『実際に起こった事を完全に無にする』事は不可能なのだ。
 そんな厄介な『過去』というものに、いつまでも囚われる事に、一体どれ程の意味があるのだろう。誰が決めたかは
知らないが、時は未来に進むのだ。なれば、人も妖も、ただ前を見据えて生きてゆけば良いではないか。
 そうしていつか、全てを受け容れる事が出来る様になったら、その時に初めて、ゆっくりと過去を振り返れば良い――

「『歴史ばっかり見ているお前には、運命は変えられないよ』、か。フッ、誰の言葉だったかな………」

「………あのー、もしもし、けいねッチ?
 今の『きゃはっ』に関しての話とかは、まぁ所謂一つのウィットに富んだジョークと言うヤツでして、あんまり
真面目な反応を返されてもツラいんだけど………って、聞こえてる?
 ―――ああ因みに、『ウィットに富んだジョーク』って言うと何だか知的なイメージがあるけど、『ウェットに富んだ
ジョーク』だとむしろ痴的な………―――――――!!」

 言葉を紡ぎ終える前に、何かを察知して飛び退く輝夜。

「……ちっ、また外したか」

 手をポケットに突っ込んだままの状態から居合い抜きの様にに放った貫き手を躱され、妹紅が舌を打つ。

「ま、どうでもいいか。
 んで、結局さっきの奇行はなんだったワケ?」

「……さっきもそうだけど、人を殺そうとしておいて『そんな事』とか『どうでもいい』で済ませるもこタンって―――



 ―――素敵(はぁと)」

 ルーズに恋する乙女の瞳が正直ウザいが、一々反応している時間も勿体無いのでスルーする。

「ハイハイ、判った判った。
 で、さっきの電話ごっこは何?」

「ああ、アレ? アレはえーりんからの念話。所謂『テレパシー下さい♪』ってヤツよ」

「テレパシーって……一々声を出さなきゃならんものなの?」

「いや全然」

「………で、何の用だったのさ?」

「ああ。紅魔館が無事に堕とせました、って」



 ―――紅魔館が堕ちた―――

 妹紅と輝夜の会話に出てきたその一言が、満身創痍の妖夢の耳にも届いた。

 ―――主の吸血鬼はどうした? 従者のあのメイドは、十六夜咲夜はどうした………!?



「小悪魔、紅 美鈴、パチュリー・ノーレッジ、そして十六夜咲夜。目標の四人は無事確保。
 スカーレット姉妹は、死んだんだか逃げたんだか、まぁ兎に角姿を消したみたい」

「………そうか。で、永琳は? やっぱり、こっちに向かって来てるの?」

「うん、もうすぐ到ちゃ………






 ………ッ!?」

「!な、何だ!?」

 全くの不意に巻き起こった、恐ろしい迄の力の奔流。
 咄嗟に振り向く妹紅と輝夜。千を越える年月を生きる彼女達でさえ、幾度もの覚えは無い程の極大な霊圧。
 冥界の大気が鳴き、大地が揺れ動く。それは全て、一個体の放出する霊力によるもの。それは―――



「―――魂魄妖夢………!?」

 二本の足でしっかりと立つ庭師の姿。



「しつこいわね~!
 大人しく冥府魔道に堕ちるが良いわ!」

 一瞬驚きはしたが、あれだけのダメージを与えたのだ。敵は既に、立っているだけで精一杯の筈。
 止めを刺そうとスペルを宣言する。

「神宝『ブリリアントドラゴンバレッタ』!!」



「――――冥府魔道、だと?」



 高速で迫り来る数多の光の矢を、



「笑わせる……」

「!!」

 二本の刀で一本残らず切り墜とす。



「お前達の居る此処こそが、既に冥界だと言うのに――――!」






「何よこれ!? 一体、何なのこれは……――――――!!」

 輝夜は絶句する。

 つい先程まで、確かにこの庭師は、右手と左足を撃たれまともに身動きすら出来ない状態であった筈だ。
 だが、そうした傷は、今の妖夢には只の一つとして残っていない。蓬莱の薬を服用しているなら兎も角、この回復
スピードは尋常ではない。

「……なるほどな―――」

 いつの間にか隣に居た慧音が低く唸る。

「けいねッチ?」

「見てみろ輝夜。お前、何か気が付かないか?」

 言われて、改めて庭師に目を遣る。一瞬にして癒えた無数の傷。心臓が圧迫されそうな程のプレッシャー。

「……気付くも気付かないも、どう見たって明らかなくらいに異常じゃない?」

「そうじゃない。あの、半霊の部分だ」

「半霊って…………あ、れ?」

 小さく声を上げる。気のせいか、庭師の周りに浮かぶ白い塊が、先程迄より僅かに小さい気が………

「気付いたか。
 恐らくあいつは、自身の半霊部分の霊子質量を一部さいて、それを半人部分の傷の修復に充てたのだろう」

「な…んて―――」

 ―――無茶苦茶な、と思ったが、現実に目の前で起きている事を見てしまえば、納得せざるを得ない。

「―――傷が全快した理由は、まぁ判ったけど………

 ………それより、あの馬鹿みたいな霊力の大きさは何なの!?
 何か、下手をしなくても、本気モードの私やもこタンに匹敵すると言うかそれ以上と言うか…………」

「――それについてはさっきも言っただろう。あの庭師、感情によって大幅に霊力が増大する様だ、とな」

「!?………でも―――」

 ………一体何が、あの庭師の感情をそこまで昂らせたというのか。輝夜には、まるで見当がつかなかった。






 ………妖夢も同じだった。自分が何故ここまで昂っているのか、よく判らなかった。

 紅魔館の事を聞いた為だろうか。だが、彼女は別に、紅魔館の面々とそれほど親しいという訳でもない。西行妖の
一件の事もあり、若しかしたら僅かの苦手意識すら有るかも知れない。



 ………けれども。



 ―――それでも。



 人間であるメイドと一緒に在る事を楽しんでいる吸血鬼が、吸血鬼である主人の事を心から想っている人間が、妖夢は
やはり好きだったのかも知れない。悪魔と妖怪と人間とが一緒になって暮らしているあの館が、好きだったのかも知れ
ない。
 こんな事を言ったら、あの館の住人達には間違いなく笑われるのだろうが、彼女達の間には、やっぱり『絆』という
ものが在った、と妖夢は思う。自分と主との間に在るものと同じ様に………



 ――だがそれを、目の前の相手が断ち切った。紅魔館の絆を、こいつ等がバラバラにした。
 それが、妖夢には許せなかった。



「……こんな奴等の為に、これ以上誰かの涙を見たくない。だから――――」

 静かに目を瞑る。今はこの場に居ない主に対して、心の中で呼びかける。

「…………だから、見てて下さい。私の、『戦い』―――――!」

 先代から伝えられた、魂魄の最大奥義。一人前になる迄、決して使ってはならぬと固く禁ぜられたあの技。
 その封印を、今こそ解き放つ。
 未だ自分は、一人前と言うには程遠いだろう。だが、それでも、ここは退く訳にはいかない。退きたくはない。
 例えこの身が燃え尽きようとも、心だけは負けてしまわぬ様に………

「申し訳ありません、お師匠様…… 魂魄妖夢、貴方の戒めを今、破ります――――」



「!?ッ来るぞ! 妹紅、輝夜ッ!!」

 符を掲げる妖夢の動きに、三人の顔が緊張に固まる。

「符の壱『二重の苦輪』-Lunatic-!」

 白い塊が二つに割れ、瞬時に少女の姿を形作る。

「どんな大技が来るのかと思えば…………何、その程度?」

 こけおどしも良い所ね、と、鼻で笑う輝夜。三体による同時攻撃を可能とする『二重の苦輪』は、一対一の戦いに
於いては非常に強力なスペルではあるが、そもそもが三人組で来ている輝夜達にとっては、さほどの脅威にはならない。

 だが、

「六道剣『一念無量劫』!」「奥義『西行春風斬』!」「『待宵反射衛星斬』!」

「なあぁ!?」

 三人の妖夢が、それぞれ違ったスペルを発動させた。

「一時に三つ、いえ、四つのスペルを同時発動だなんて………そんなのアリエナ~~イ!!」

 今や完全に自身の力を凌駕した相手を前に、輝夜はただただ狼狽するのみ。

「これは……」

 俄かには信じ難い目前の光景を、冷静に分析しようとする慧音。
 魂魄の一族は、半人半霊という、他の人間や妖怪には無い特殊な体質を持つ。それは取りも直さず、一つの個体が
複数の『からだ』を持つという事でもある。その特質を利用したのが『二重の苦輪』であり、それを最大限まで極めれば、
分身の一体一体が本体と同等の力を持つに至り、この様な離れ業が可能となるのだろう。
 この庭師は未だ半人前の筈だが、今居る此処が、幽霊がその力を最大限に発揮できる冥界という場所であるという事も、
この大技を実現させる為の後押しとなっていると思える。
 だが、それにしても………

「………我々の常識というものを、完全に超越しているな。これが、魂魄か――――」



「あー、え~と、そのぉ………

 ちぇっ、こんなしつこい奴、もう知らねーぜっ! ケッ!」

 捨て台詞を残してUターンしようとする輝夜の首根っこを、

「ぐぇっ!」

「おい待て。何、漫画に出てくる不良みたいなこと言ってやがるんだ?
 おまえ今、『INABAの力』を使って逃げようとしただろ?」

 むんずと捕まえる妹紅。

「いや、だって、もこタンだって判るでしょう!
 アイツの力! ホントこれ、いくら何でも洒落にならないって! 死ぬ! 喰らったら跡形も残らず消し飛ぶ!」

「敵が全身全霊の大技でぶつかってこようっていうのよ。真正面から受け止めるのが漢ってぇものでしょう!!」

「私ももこタンも女の子よぉ~~!
 て言うか、もこタンのそのノリ、全然貴族の娘ッポクないって!
 元貴族なら貴族らしく、『まろ』とか『おじゃる』とか言ってマッタリしようよぅ~~~っ!!」

「妹紅!」

「慧音! あんたは早く、『別のチャンネル』に避難して!」

「だが!?」

「この攻撃、慧音じゃ耐えられないでしょう!? 大丈夫、ここは私と輝夜に任せて!」

「クッ……判った………」

「イ゛ヤ゛―――――ッ! 私も逃げるウ゛ウゥゥゥ――――!!」

 慧音の姿が、まるでノイズがかったモニター画面の様にブレたかと思うと、次の瞬間、完全にその場から消え失せた。
 サムズアップで見送る妹紅と、泣いて喚いてジタバタする輝夜。



「『天』より降るは月の光、そに吠え立つのは畜生共と!」
「『地』にて根を張る桜の花に、そがもと眠るは餓鬼魂の!」
「『人』が歩くは六道の、三途が一本地獄道!」

 楼観剣と白楼剣、二刀を構え霊力を極大まで高めながら、妖夢の心は今、自身でも不思議な位に静かだった。

 怒りは、既に無かった。ただ―――



 満開の桜と、間もなく花盛りを迎える海棠とを、そっと見る。

 ―――私はただ―――

 今年も幽々子様と一緒に、舞い散る桜吹雪の中を歩きたい。
 今年も幽々子様と一緒に、この老樹が咲かせる薄紅色の壮観を眺めたい。



 ただ――それだけ――――












「――――行くぞ! 魂魄流剣術最終極技!!」

「来ぉい! 魂魄ウゥ!!」

「来ないでぇー! 魂魄ぅ――――ッ!!」
























                    「天地人『三途川渡し』!!!」
















































「―――どうしました、幽々子様?」

 庭に持ち出された縁台に腰掛けたままボーッと空を見詰め続けている幽々子に、此処マヨヒガの主、八雲紫の使役する
式神の八雲 藍は、少し心配になって声を掛ける。

 『愛は幻想郷を救う! 24時間耐久ゴロ寝勝負』は、開始十三時間二十四分の時点で紫が熟睡してしまった為、失格、
幽々子の勝利で幕を閉じていた。ゴロ寝というのは、横になってゴロゴロしながら、お菓子を食べたり本を読んだり
ダベッたりする事であって、完全に眠ってしまえばそれは只の睡眠に過ぎない、とは幽々子の弁。
 その後、話相手の居なくなった幽々子の為、藍は庭に縁台を出して、外で気分転換などはどうですか、と誘った。
 それから暫くは、団子を食べ煎餅を食べ草餅を食べながら、藍を相手にウチの庭師があーだこーだと楽しそうに話を
していた幽々子だったが、少し前からこうして、何もせずに只じっと宙を見ている。
 初めの内は特に気にも留めていなかった藍だったが、そうした状態が二十分、三十分と続くと、流石にちょと心配に
なって、それで声を掛けた次第であった。

「幽々子様? 大丈夫……ですか?」

 幽々子は応えない。



 ――――寂しいのだろうか、やはり。藍は、そう思った。

 桜が散ろうと言うこの季節に、御供も付けず幽々子一人でマヨヒガに来た理由。藍には、それが判る気がしていた。
 先日迄の、数日にわたった宴会騒ぎの中、引っ切り無しに働き続けていた妖夢。彼女に、少しばかりの休日を贈りたい、
そういう事なのだろう。
 主が屋敷に居ては、たとえ幽々子がいくら「ゆっくりしていても良い」と言った所で、妖夢は彼女の世話を焼いて
あれやこれやと動き回る事となろう。それを幽々子は嬉しく思っているのだろうが、出来れば今日一日くらいはゆっくり
休んで欲しい。そう考えているのだろう。

 別に幽々子がその様な事を言った訳ではないのだが、少なくとも藍はそう感じていた。
 そんな幽々子の、従者への心遣いが、藍には少し羨ましくもあった。ウチのスキマ様にも、少しは見習ってもらいたい
ものだ。

 尤も、その『心遣い』のお蔭で、今日一日、特に食料面に於いては、藍はとんでもない苦労を強いられた訳だが。
 事前に幽々子の食欲を計算して、それに充分足るだけの食料を用意したので、食べる物が無くなるという事態こそ
無かったが、それだけの食料を掻き集めること自体が先ず困難を極めたし、更にはそれだけの食材を料理として次から
次へと出さねばならない。昨晩からずっと手伝いをしてくれていた橙は、今では疲れ切って部屋でお昼寝中だった。



「――――お茶のお替り、持って来ますね」

 空になった自分の湯飲みと、そしてすっかり中身の冷めてしまったもう一つ、二つを盆に載せ、ゆっくりと腰を上げる。
 今は一人にしておこう。そう考えて藍は席を外した。



 藍の足音が聞こえなくなってもなお、幽々子はじっと宙を見続けている。



 暫くして、そんな彼女の唇が小さく動いた。












「………白玉楼の桜が、散ったわ――――――」






 幽々子の声は、誰の耳に届くともなく、ただ中空へと消えて行った。
















































「姫! ご無事ですか姫ッ!」

 視界を埋め尽くす程の桜吹雪が舞い降る白玉楼の庭に、蓬莱山 輝夜の一の従者、永遠亭の薬師、八意 永琳が降り
立った。

「えーりんえーりん―――――ッ!」

 従者の豊かな胸に頭から突っ込む輝夜。その身体に傷は無いが、その身を覆っていた衣服も糸の一本残ってはいない。

「あああ大丈夫ですか姫! お怪我はありませんか姫! 白いお肌がすべすべしてキレイキモチイイですわ姫!?
 ………じゃあなくて………こんな事もあろうかと召し物を用意しております。どうぞ、姫」

 着物の胸元を開け、そこから少し大きめの白いYシャツを取り出し、それを主人の肩にそっと乗せる。

「………ありがと、えーりん」

「オイオイ。ラブラブなところ悪いけど、コッチにも何か着る物、貰えない?」

 輝夜と同じく一糸纏わぬその身を、自身の背中から生じる炎の羽で覆った妹紅が、主の頭を優しく撫でている薬師に
声を掛けた。

「はい、どーぞ」

 妹紅の方を全く見ずに、無造作に布の塊を投げる。

「おっ、有難う………



 ………って、何でエプロン? もうちょっとまともな物は無いの?」

「黙りなさい。姫をこんな危険な目に遭わせておいて……
 貴方なんて裸エプロンでも充分すぎるわ! 決して私の趣味とかそーいう事ではなく!! て言うかぶっちゃけ完全
マッパよりもちょっとだけ何かを着けている方がより少女の魅力は強調されると言ーますか!!! 若し良かったら
靴下も有るけどどーぅおッ!!??」

「…………あ゛――、ハイハイ。判った判った。判ったから黙ってくれ」

「判ってくれたなら良いのよ。ああ所で、ここに其処の半獣とお揃いになれる素敵な付け尻尾があるのだけど、良かっ
たら………」

「要らんッ!!」

 力一杯に拒否する妹紅を見て、

「!!………妹紅、それって、私とお揃いじゃ嫌って事…………?
 やっぱり妹紅も、私の角や尻尾はキモイって思って―――――」

 軽くショックを受ける半獣。

「違う違う! そうじゃなくて! て言うか、あんな接続部分がヤケに太くてブツブツまで付いてる怪しい物体、女の
子としてちょっと着けるワケにゃーいかないでしょう!?」

「……でも………」

「……ッハァ――――」

 軽く溜め息を吐きながら、少し乱暴に慧音の両肩を掴む。

「ちょ、やだっ! 痛いぞ妹紅!」

「ねぇ慧音! 私の目をちゃんと見て………
 私はいつだっt
「ハイハイハイハイ! 夫婦漫才はそこ迄になさい! このままじゃあ、いつまで経っても話が進みやしない」

 話を大きく逸らす原因を作ったその張本人が、偉そうな顔をして話を切ってきた。

「―――それにしても……
 私は貴方達二人に、姫が無理をしないようサポートしろ、と言いつけた筈よ?
 だと言うのに……この体たらくは一体どういう事?」

 輝夜の身体に傷の一つもついてはいないが、それは蓬莱の薬を飲んでいるが故の事。周りの状況を少し見てみれば、
輝夜がどれだけ危険な状態におかれていたか、容易に想像できた。

 白玉楼の庭の美しい白い地面へ、無数に刻まれた巨大な傷。大地が断ち割られているという凄まじい光景。誇張では
ない。桜の花弁に埋もれる様にして倒れるこの未熟な庭師が、その手に握ったまま放さない二刀で、ここ迄の事をやって
のけた。

「……私達は、お前の言った事はしっかりと守ったつもりだが?
 言われた通り、輝夜が『無理をして』やり過ぎないよう監視していたのだから」

「曲解も良い所ね。貴方も白沢なら、もう少しマシな屁理屈をこねたらどう……?
 『無理をさせるな』と言うのは、姫を危険な目に遭わせるなって事に決まっているでしょう?
 何で私が、姫より先に敵の身の安全を心配しなければいけない訳?」

「私はお前の言葉の、より深い意を汲んでやったつもりだったんだが。
 そうか。私の勘違いか。それはすまなかったな」

 白沢の言葉に、永琳はただ強い視線を返すだけで口を開かない。

「それよりも……
 其処の庭師、放って置くつもりか?
 その娘、自分の限界を完全に超える技を使ってしまっている。このままでは、霊子質量が減少して、肉も魂も、彼女の
存在自体が消滅してしまいかねないぞ?」

「判っているわ」

 慧音の言葉を顔の横で聞き流し、倒れ伏した妖夢の背に手を当てて治癒法術を施す。
 そんな永琳の背中に、

「それにしてもさ」

 エプロンでその身体の前面を、炎の羽で背面を隠すという微妙に面白い格好の妹紅が声を掛ける。

「もうちょっと早く来れなかったのか?
 お前も悪の組織の女幹部なら女幹部らしく、瞬間移動とか使ってさっさと来れば良かったのに。
 空間を弄るの、得意なんだろう?」

「……仕方ないでしょう。
 確かに、私は空間を弄っての転移術を使えるけれど、幻想郷と冥界の様に結界で隔てられた所の場合だと、一旦結界の
前まで行って解除して、それからまた移動する手間がかかるのよ」

 妖夢の治療を続けながら応えるその言葉に嘘は無い。
 だが、それが全てという訳でもない。

 確かに結界を解除する手間はあるが、紅魔館から幽明の境界まで瞬間移動して、大して強固な訳でもない結界を解除
し、それから白玉楼まで到達する。その程度の事に、本来ならこれ程の時間はかかりはしない。
 紅魔館での戦いで傷付いたINABA部隊、そして、十六夜咲夜。彼女達の治療に思いのほか時間をとられてしまって
いたのが、白玉楼への到着が遅れた一番の原因だった。
 だが、そんな事を口に出す訳にはいかない。姫よりもあの娘を優先させた。そんな事が、八意 永琳にあって良い訳が
無かった。

「私だって、出来ればもっと早くに来たかったわ。冥界で何がどうなっているか、把握は出来ていなかったのだし……」

「あ……? 何、お前、『天網蜘網捕蝶の法』でずっと監視してたんじゃないの?」

 八意 永琳のラストワード、「天網蜘網捕蝶の法」。彼女は常に、このスペルで幻想郷中を監視している。妹紅はそう
認識していた。

「………こちらも、それだけの余裕が無かったの。力の使い過ぎで、天網の再構築には暫く時間を要するわ」

 余裕が無い。その言葉を耳にした慧音は、一瞬自分の耳を疑った。

 八意 永琳、鈴仙・優曇華院・イナバ、因幡 てゐ。永遠亭のNo.2から4迄と、そして、永琳によって特殊能力を
付与された千に及ぶINABA部隊。
 それだけの兵力を以て、しかも新月の昼間に奇襲をかけて、それでなお余裕が無いと永琳に言わしめる。
 紅魔館構成員の個々の能力の高さは、知識としては充分理解しているつもりだったが、それがここ迄のものだった
とは………
 改めて慧音は、紅魔館の怖ろしさを思い知った。



「――――さて、と。これで取り敢えず、応急処置はOKね」

 額の汗を拭いながら永琳が立ち上がる。

「とは言え、衰弱が激しいし、急いで永遠亭に移送しないと」

「……そいつを運ぶのは、私がやるよ」

 ゆっくりと妖夢を抱え上げる妹紅。

 生きるか死ぬか、それが即ち勝ちと負けだと言うのであれば、この戦い、妹紅達の勝ちと言って良いのだろう。
 だが、妹紅と輝夜が今生きているのは、蓬莱の薬を飲んでいたが為。慧音が逃げ切れたのは、永琳に与えられた
『INABAの特殊能力』、『チャンネル操作』のお蔭。
 妖夢の奥義に真っ向からぶつかった妹紅は、塵も残さず消滅させられていた。とてもではないが、自分が勝利したなど
と思えはしなかった。



「で、えーりん? 紅魔館も白玉楼も堕としたワケだし、これからどうするの?」

 永遠亭の主である輝夜は、この計画の全てを理解している訳ではない。
 発案も実行指揮も、全て永琳の手によるもの。今回の白玉楼への侵攻も、本来なら妹紅と慧音の二人だけで当たる筈
だったものを、無理を言って輝夜も参加したのだった。



 ―――それで良い―――

 そう永琳は考えていた。

「現時点をもって、永遠亭美少女ハーレム化計画の第一段階は無事終了。
 第二段階に関しましては、家に帰ってからゆっくりと説明させていただきますわ」

 姫は、何も知る必要は無い。

 姫は、私の成す事を見て只満足してくれれば良い。



 そんな事を考えながら、暗くなり始めた空を見上げる。そうして、遥か彼方に在る筈の、とうの昔に捨てた故郷の姿を
幻視する。

 自分は既に、彼処への未練など微塵も無い。姫だってそうだろう。






 けれど―――――――
















































 ―――――――夕暮れの迫る神社の境内に、鴉達の鳴き声が響き渡る。

「――――平和、だなぁ………」

 縁側に腰掛けながら、緑茶の入った湯呑みをゆっくりと口元へ運ぶ。

 博麗霊夢。

 掃除は未だ、終わってはいない。
レミリア「かなりのダメージを受けて、今療養中だわ」
幽々子「霊力の使い過ぎで普通なら死んでる所よ」
紫「似てるのよ。彼女は私に」
萃香「こっちかぁ、こっちか? じゃあ、その時の、状況次第だ」
フラン「お姉さま」
咲夜「お嬢様アァ!」
レミリア「ウッ!」
リグル「あった…」
藍「紅い血の戦士! 龍の影を纏いて敵を薙ぎ払え!!」
??「そうだ! うりゃあ! とぅあ!!」

 “EPISODE 3  紅龍”






 お盆は普通に働いてました。と言う訳で、花の本編はまだやってません。ネタばれを踏まない様、最近は東方系サイト
巡りも控えています。
 某同人ショップのHP見たら九月上旬発売予定とかあったので、「ならいっそ、花をやってからこの話を投稿しよう
かな~」等と思っていたのですが、他の店のを見たら中旬になっていたので、今投稿しました。
 てな訳で、本文中の登場キャラ予測なんかは、全て自分の予想(て言うか希望)です。自分の脳内花映塚では、
「コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実じゃッ!」って勢いで虹川さん達が大活躍です。基本はルナサ、で
低速ボタンを押しながらレバーを上下に入れれば、メルポとリリカも使えます。EX攻撃でへにょりレーザー、カード
攻撃は鍵霊「ベーゼンドルファー神奏」、ボスは当然、三人揃って大合葬「霊車コンチェルトグロッソ怪」!
 凄い! 素敵!!

 あーホント、委託発売開始が楽しみで、今からガクガクブルブル震えてます(ぇ

 …まぁ実際に出てきそうなのと言ったら、先ず妖夢(妖々夢代表)、アリス(やっぱ『アリス』だし)、永夜代表で
饂飩(5ボスだし)か妹紅(人間で、しかも『蓬莱』だから或いは…)、萃香(希望)、あと天狗と三月精の三人組か。
ゆかりんは、萃夢みたいに中ボスか、或いは一定条件で出てくる乱入キャラとか。若しくは、代理で橙(2ボスだし)が
出てきて、デモのみの登場かも。

 ―――虹川さん……? 出ると良いなぁ………

 大根大蛇でした。



9/17(土)

 ぶっちゃけアリエナイ!!(マックスハーッ)くらいゴッツいミスを発見、訂正。それに関連して、旧暦と新暦がゴッチャに
なってたのも、旧暦に統一しました。ツッコミ入る前に訂正できて良かったぁ~~(汗 あ、後、誤字その他もちょっと。
 旧暦表示なのは文々。新聞に倣っての事なのですが、時刻については萃夢と同じく今風の表示なので、変に思うかも
知れませんがそれはご勘弁を(謝
 にしても、久々に創想話を見てみれば、何だか以前より更にレベルが上がってる気が……
 そりゃ、前から文章の巧い方は沢山いらっしゃいましたが、何か今は、一から十まで殆どの作品がエラい質の高い
ものになっていて、何だか自分の未熟さがより鮮明に…… 精進あるのみだ、自分ッ!

 てな訳で、こんな1/8人前な話を読んで下さった方、本当に有難う御座いますッ!
大根大蛇
[email protected]
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コメント



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どんどどんどどん、どんどどんどどん、どんどどんどどん、どんどどんどどん。ちゃ~ちゃららららららぁ~(略)「オロチじゃあ~オロチが出たぞぉ~」「響忌さん!! これが新しい貴方の剣です。バOダイ製の」「よし、少年。今から『響忌と7人の愉快な仲間達』の生ライブを見せるぞ。曲名は『トライゴウラムはビバ最高ー!!』ちなみに歌詞はオンドゥルberだ行くぞ皆!! 」「「「「「「「ウェ~イ!!」」」」」」」
 読んでいて妖夢が究極の黒い力を身に付けるのかと思いました。
「幽々子様、私の半霊まだ完全に治っていないんです。だから、狙うならここを」「妖夢・・・・・・ 」みたいな。今回もお腹いっぱいで満腹です。次は何が来るのでしょう。モックス、いやMAX???
16.80懐兎きっさ削除
妖夢、大往生!! って死んでませんね。半分しか。
しかし……一体何処まで行くのか永遠亭。続きがやたらと楽しみです。