夏が過ぎ、秋も盛りの魔法の森。
その入り口に居を構える香霖堂に、
珍しいと言えば、幻想郷でもっとも珍しいとも言えるお客がやって来た時のお話―――
―――からんからん。
そんな音がして目が覚めた。誰かが来たらしい。
本に突っ伏していた顔を上げる。
「あのー、誰か居ませんかー?森近さんー?」
―――何時の間にか寝てしまっていた様だ。
(―――昨日の夜更かしが祟ったか?これから夜の読書は少し控えるとしよう―――)
胡乱な頭でそんなことを考えながら店の方に向かう。と、
「留守じゃないの~?もしくは奥の方で死んでるとか」
「このお店に限って留守ってのはあり得ませんよ。―――まあ、本当に本の下敷きになって死んでいる可能性も、無くは無いですが……」
(何だか、物騒な話が聞こえるな)
一応、生きてはいるので店の方向に声を上げる。
「生きてはいるから待っててくれー、直ぐに行くからー」
―――家の奥から店に入ると、そこには顔見知りの鴉天狗の少女(たしか射命丸文、と言う名前だった)と、頭から二本の角を生やした見慣れない少女が立っていた。
「やあ、いらっしゃい。今日は何の用事だい?」
「森近さんご無沙汰してます。今日は、ちょっと取材じゃなくて。あ、こっちは鬼の妖怪で伊吹萃香さん。この前新聞の記事にも書いたでしょう?」
「ああ、魔理沙からも聞いてる。この前の連続宴会騒ぎは彼女の仕業だったとか」
―――この前の宴会騒ぎ。僕は参加してないが、たしか一年くらい前に、3日置きに11回連続で宴会をやって、魔理沙と霊夢が売り物のお酒とつまみを一つ残らず持って行った時の事だったか。
お酒を持って行くときに霊夢が、
「……まさか霖之助さんじゃないわよね?」
とか言っていたので多分僕も疑われてはいたのだろうけど。
「ああ、あれ?ここは宴会が少な過ぎるのよ。宴会はあの位の頻度でやるのがちょうど良いの。常識ね。」
「あなたの基準で宴会をやったらそれこそ毎日百鬼夜行でしょう。鬼の常識で物を考えないでください。―――と、それより森近さん、珍しいお酒、ありますか?」
―――ああ、ビックリした。本当にお客さんだったのか。
「あ?ああ、あそこの棚だよ。魔理沙と霊夢のせいでちょっと数が減ってるけど。しかし、なんでこんな急に?」
そう言うと、天狗の少女は少し照れた様に笑って、
「ああ、いや、ちょっと彼女に珍しいお酒の紹介を頼まれまして、珍しい物って言ったらやっぱりこのお店だろう、と言うことで来させてもらったんんですけど」
―――うん、いい娘だ。ちょっと感動した。
これが魔理沙なら、
「あー?ああ、あそこは駄目だな。品物は非売品ばっかりだし、そもそも店主にやる気が無い。珍しい物もあんまり無いし、普通だぜ」
ぐらいの事は言いかねない。
と、僕がちょっと感動している間に、二人は棚の前に移動して店にある酒の品定めに入ったようだ。
「珍しいお酒珍しいお酒―――と言っても、本当に珍しいものしかありませんね。あ、ほらほら萃香さん、これなんかどうです?『清酒・鬼ごろし』」
「文、それは何かの当てつけ~?―――まあ、私は珍しくて美味しいお酒が飲めればそれでいいんだけど」
「ああ、駄目だよそれは料理酒だ。―――それより、珍しいお酒が飲みたいのならとっておきがある、ちょっと待っててくれ」
―うん、そう。たしかこの辺に―――あった。
この、古い古い木箱に入った、とても古いお酒の名前は、確か―――
その入り口に居を構える香霖堂に、
珍しいと言えば、幻想郷でもっとも珍しいとも言えるお客がやって来た時のお話―――
―――からんからん。
そんな音がして目が覚めた。誰かが来たらしい。
本に突っ伏していた顔を上げる。
「あのー、誰か居ませんかー?森近さんー?」
―――何時の間にか寝てしまっていた様だ。
(―――昨日の夜更かしが祟ったか?これから夜の読書は少し控えるとしよう―――)
胡乱な頭でそんなことを考えながら店の方に向かう。と、
「留守じゃないの~?もしくは奥の方で死んでるとか」
「このお店に限って留守ってのはあり得ませんよ。―――まあ、本当に本の下敷きになって死んでいる可能性も、無くは無いですが……」
(何だか、物騒な話が聞こえるな)
一応、生きてはいるので店の方向に声を上げる。
「生きてはいるから待っててくれー、直ぐに行くからー」
―――家の奥から店に入ると、そこには顔見知りの鴉天狗の少女(たしか射命丸文、と言う名前だった)と、頭から二本の角を生やした見慣れない少女が立っていた。
「やあ、いらっしゃい。今日は何の用事だい?」
「森近さんご無沙汰してます。今日は、ちょっと取材じゃなくて。あ、こっちは鬼の妖怪で伊吹萃香さん。この前新聞の記事にも書いたでしょう?」
「ああ、魔理沙からも聞いてる。この前の連続宴会騒ぎは彼女の仕業だったとか」
―――この前の宴会騒ぎ。僕は参加してないが、たしか一年くらい前に、3日置きに11回連続で宴会をやって、魔理沙と霊夢が売り物のお酒とつまみを一つ残らず持って行った時の事だったか。
お酒を持って行くときに霊夢が、
「……まさか霖之助さんじゃないわよね?」
とか言っていたので多分僕も疑われてはいたのだろうけど。
「ああ、あれ?ここは宴会が少な過ぎるのよ。宴会はあの位の頻度でやるのがちょうど良いの。常識ね。」
「あなたの基準で宴会をやったらそれこそ毎日百鬼夜行でしょう。鬼の常識で物を考えないでください。―――と、それより森近さん、珍しいお酒、ありますか?」
―――ああ、ビックリした。本当にお客さんだったのか。
「あ?ああ、あそこの棚だよ。魔理沙と霊夢のせいでちょっと数が減ってるけど。しかし、なんでこんな急に?」
そう言うと、天狗の少女は少し照れた様に笑って、
「ああ、いや、ちょっと彼女に珍しいお酒の紹介を頼まれまして、珍しい物って言ったらやっぱりこのお店だろう、と言うことで来させてもらったんんですけど」
―――うん、いい娘だ。ちょっと感動した。
これが魔理沙なら、
「あー?ああ、あそこは駄目だな。品物は非売品ばっかりだし、そもそも店主にやる気が無い。珍しい物もあんまり無いし、普通だぜ」
ぐらいの事は言いかねない。
と、僕がちょっと感動している間に、二人は棚の前に移動して店にある酒の品定めに入ったようだ。
「珍しいお酒珍しいお酒―――と言っても、本当に珍しいものしかありませんね。あ、ほらほら萃香さん、これなんかどうです?『清酒・鬼ごろし』」
「文、それは何かの当てつけ~?―――まあ、私は珍しくて美味しいお酒が飲めればそれでいいんだけど」
「ああ、駄目だよそれは料理酒だ。―――それより、珍しいお酒が飲みたいのならとっておきがある、ちょっと待っててくれ」
―うん、そう。たしかこの辺に―――あった。
この、古い古い木箱に入った、とても古いお酒の名前は、確か―――
これがひと区切りという事で。
なんかヘタレの佐山をよろしく。
後半楽しみにしてます。