Coolier - 新生・東方創想話

上海紅茶物語

2005/09/09 07:41:19
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今日もいい天気だ。
紅魔館の数少ない窓のうちの一つ、紅美鈴の部屋の窓。
いつもの起床時間にはカーテンごしに日が照っている。

秋が近づいてあの朝の刺すような日はどこへやら。
今は雨のような静かな日がしとしとと入ってきていて、実にさわやかだ。

「ううん、ちょっと肩痛いな・・・・・・」

昨日の氷精と夜鳥の奇襲で無理しすぎたかな、と。

今日も一日がんばるために活力補充に向かう美鈴。










「おはようございますー」
「おはよう、美鈴」

食堂には既に咲夜が朝のコーヒーブレイクといったところか。

「いただきますー」

いつものスープとパンを頬張って

「ごちそうさま」
「相変わらず早いわね」

いつの間にか食べ終わっている美鈴。
私が時を止めて食べるよりも早いんじゃないと咲夜。

そこで気づいたことだが

「それどうするの?」
「ああ、これですか?」

と、見れば美鈴の手にはパンのひとちぎりがあって。

「鳥さんにあげるんですよー」
「鳥っていつもいる、あの鳥のこと?」
「ええ、そうですけどどうかしたんですか?」
「いえ何でもないわ」

そういって顎においた手を元のカップに戻す咲夜。

さて、今日も一日がんばろうと美鈴は門へと向かう。
と、その前に。





「うずらさーん。ごはんですよー?」

と庭に呼びかける。
こうしてパンのひとかけらをうずらにあげることが美鈴の日課であった。

小さくてかわいい小鳥。ペットなどではない。空を自由に飛び立つ小鳥。
小さきながらも美鈴が持っていないものをいくつも持っている。
そんなところも含めて、美鈴は小鳥を愛でていた。

「うずらさーん?」

ちゅんちゅんとの声はせず、シンと庭は静まり返っている。
今日はいないのかなと。
仕方が無いので小皿において庭に置いておいた。

またあとで来てみよう。





昼になって再び庭にきたけれど、うずらさんが来た様子はなく。

うーん、どうしたのかな。
氷精は毎日のように来るのに。

「また明日、来よう」

そう言って午後の職務に戻る。





午後の職務を終え、紅魔館内へ戻る美鈴。
とはいえまだしばらくしたあと、夜に勤務があるのでまだまだ気を抜いてはいられない。

と、そこで咲夜が美鈴の前に現れて

「美鈴、今日はお嬢様が皆で食事をしましょうって」
「わかりましたー」

こうして久々に揃って食事をすることとなった。
パチュリー様は出てくるのだろうか。










「「いただきます」」

声をそろえて今日も生きとし生けるものを喰らいて生きていることに感謝。

「・・・いただきます」

パチュリー様も出てきて紅魔館、主力(?)メンバー勢ぞろい。

「あら、おいしい。これは咲夜が?」
「はい」

と、レミリアは真ん中に置かれた肉を切って口に放り込む。

「ほんと、おいしいですねぇ」

美鈴もそれに続く、が

「どこから捕ってきたのかしら」
「館の周りをうろちょろとしていたので・・・・・・」

と咲夜は淡々と話す。

「ほら、美鈴がいつも相手にしている」
「え・・・・・・?」

パチュリーと咲夜の会話でそれも止まる。

「・・・・・・美鈴?」

咲夜がこちらを怪訝そうに見つめて一時。

まさかとは思ったが、すでに口からは

「うずらさん?」

名前が出ていた。
フォークが手から落ちる。

「そんな・・・咲夜さん!!私があの子たちを大事にしてるのを知ってて・・・!!」
「ちょっ、美鈴。この鶏肉は違っ・・・・・・!!」
「鶏肉・・・・・・!!?」
「っ!!」

しまったと口を押さえる咲夜。
そうですね。
そうなんですね。

これは
コレハ―――

自らの食器の上には食べかけの―――
そして自分の胃には、うずらさ―――

「ぅ・・・・・・ぐっ・・・・・・」
「美鈴!!」

美鈴は溶けかけの昼食もろともすべてを吐いて倒れた。










「美鈴?起きてるかしら?」
「・・・・・・はい」

倒れたあとは何も覚えていない。
でも、私の別の着替えさせられているところを見ると咲夜が運んでくれたらしい。
ベッドの上に寝かされて―――じっとしていればふつふつと感情がこみ上げて。

その咲夜にも今はただ怒りと憎しみを覚えるばかりだ。
ちょうど今、扉の前に立って・・・・・・何をするつもりだろう。

「・・・・・・入ってもいいかしら」
「・・・気分が悪いので、また明日にしてもらえませんか?」

時間は私の勤務時間をとうに過ぎていた。
誰かが代わりに―――でも、もううずらさんは・・・・・・。

「ああ・・・・・・」

カーテンの向こうから中途半端に広がった月が美鈴を笑っている。

「美鈴―――いただきますの意味を知っているかしら?」
「当たり前です」

しかし咲夜はそれ以上に残酷ですでに部屋に入ってきている。
時を止めて?いや、多分私が気づかなかっただけだと思う。

『生きとし生けるものを喰らいて生きていることに感謝』

「それを貴方が問うか!!?」

ベッドから飛び出して咲夜を押し倒して、両手で首を掴む。

「私がどんな思いで!!」

咲夜は静かに美鈴を見上げている。

月明かりは美鈴を狂気に染める。
かくいう咲夜の顔は照らされて笑っているのかただの無表情か。

この怒りの中、深くにも美しいと思ってしまった。
そしてそれは壊す狂気をさらに増す。

「・・・・・・絞めないのかしら?」

美鈴の目は真っ赤に染まりすでに門番としてではなく一人の妖怪であった。
華麗に伸びた爪が咲夜の首に食い込む。

それでも咲夜は表情を変えない。ただの、ニンゲンだというのに。

それにしても何て美しい肌だろう。さっきも思ったが白く透き通って。
メイドとしても過労のなかでも綺麗に輝き続ける宝石。
爪で線をつけたらどんな色になるだろう。
その皮は?肉は?骨はどんな色をしているだろう。
どんな味がして―――――

目が縦に、口が横に広がる。どこまでも、裂けてしまいそうなほどに。
でもそれは止められた。

頬に手のひら。咲夜の手。

「貴方は―――何に怒っているの?」
「あ―――」

気づいた。これはただの八つ当たりだ、と。
気づき終わる前に美鈴は後ろへ飛ぶようにあとずさる。
手足を蜘蛛のように、体を滑らして。美鈴は恐怖した。

咲夜は立たず、膝を立てて歩く。メイド服のスカートを床に擦らせながら。

「クルナ!!来るな!!」
「・・・」

声はすっかり妖怪のごとくかすれた覇気のある声。
それでも咲夜は膝で歩むことを辞めない。

「くるな!!来ないでって言ってるだろ!!」
「・・・・・・」

あいも変わらず咲夜は表情を変えない。笑っているのか、ただ無いのか。
ベッドに背をつけて手をぶんぶんと振るものの止まらない。

「頼むから―――――」
「美鈴」

初めて名前を呼ばれた気がした。
ああ、今まで私は私じゃなかったんだ、と。

脇から手を入れられて抱きしめられた時には

「来ないでって・・・言ってるじゃないですかぁ・・・・・・」

目は元の青に戻っていた。
頭を咲夜の肩に預けて、流れた涙が月夜に光る。










抱きしめられたまま美鈴はしばらくじっとしていた。

「美鈴がこんなに取り乱すとは思ってもみなかったわ」
「すみません」

目は元の青に泣き果たして赤で変な感じ。
今は何だかすべてが流れたせいか。咲夜には怒りも憎しみも湧かない。
それは、うずらさんがいなくなったってことは悲しい。
いくらこの世の摂理とはいえ

「だからって大切にしてたのに、食べちゃうなんて・・・・・・」
「ああ、それなんだけどね」

あなた勘違いしてるわね、と。

「ほらほら、そこの布・・・・・・取ってみなさい」

と、咲夜。見れば朝見なかった大きな箱?
立ってみれば腰からした少々の大きさ。どうやって部屋に入れたんだろう。

「何でしょうか」

布をばさりと取ってみれば。

「うずらさん・・・!!」

籠の中、何匹もの小鳥がちゅんちゅんと。
なんで今まで鳴いているのに気づかなかったんだろう。

自由の羽を持って、つぶらな瞳。
可愛らしい、美鈴の愛してやまない姿は確かにそこにあった。

「どうして・・・・・・」
「そんな館の庭でうろうろしてたら他の妖怪に食べられると思って」

他のメイドが保護していた、と。

「・・・・・・なんだ」

私が馬鹿なだけだったんだ、と。
あはは、何だか笑っちゃいますね。

「ごめんなさいね。私が勘違いするようなことを言ったから」
「いいんです。でも・・・・・・」

そういうと窓を開けて

「うずらさんには、これはちょっと狭すぎる空ですね」

籠を開けて逃がす美鈴。
月の明かりが照らす中で小鳥たちは飛び立つ。

これでよかったんですよねと、美鈴。

「美鈴」
「あれ、どうして私・・・・・・」

涙は枯れないものらしい。
喉はカラカラに渇いているのに。

「胸、貸しましょうか?」
「ぁ・・・・・・うわあぁあぁぁああああん!!」

青い目はさらに赤く、メイド服を濡らす。

「私・・・!!咲夜さんに・・・・・・!!何てこと・・・・・・・・・!!!」
「―――――」

紅魔館に月時計はゆっくりと回りだした。










今日も日はしんしんとカーテンから降り注いでいる。
ちゅんちゅんと小鳥が外で鳴いている。

「うずらさん、おはよう」

窓越しにそう言って美鈴は起きる。

今日も一日の活力を得るために食堂へと向かう。





「ごちそうさまでした」

と、いつものスピードで食事をして、いつも通り片手にパン。

今日は朝から忙しいのか咲夜は食堂には見えない。

それでも、今日がんばるだけの活力はもう貰っているから。





「うずらさーん。おいしいですか?」

ちゅんちゅんとパンの欠片をつつく小鳥たちを幸せそうに見つめる美鈴。

あの時、咲夜さんはこんなところではこの子たちは危ないといったけど

「私は門番。紅魔館の門番なんですよ?」

この子たちの平和が犯されることなんてあるものですか。
そんなもの私が全部止めてみせる。

「むむ?侵入者の気配が!!」

キッと目を鋭くさせ、向こう彼方へと。

「うずらさーん。またあとで~」

手を振ってかける美鈴。





この私が居る限り外より来たる災害はすべて止めてみせる。
自らの大切なもののために。

「もちろんうずらさんだけじゃないですよ?咲夜さん」

誰へともなく呟く。
紅魔館はきっと、今日も平和なはずだ。















「チルノ参上ー!!」
「あれ?最近はあの鳥は来ないんですね」
「あー、ミスティア???うーん、それがさー。一昨日の夜にアンタんとこのメイドが
来てさー、連れて行ったきり見てないんだよ。どこいったのかなー」
「―――――え?」

・・・・・・多分、紅魔館はきっと、今日も平和なはずだ。











お粗末。

はて、ギャグのつもりで書いていたのに・・・・・・どうして。
と、最近のも書き途中のものにも紅魔館の登場が少なめなので。

これだけ書けば満足かなと。

・・・・・・鶏肉食べたいなぁ。
唐々素
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コメント



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1.70おやつ削除
ヤベ!
落ちが来た!!
というか取り乱した美鈴のせいで落ちが読めませんでした。
良い意味で勢いのある話だったと思います。
8.80無為削除
―――こうして、今日もみすちーは非捕食者として生きているのです。

あれ?
21.70名前が無い程度の能力削除
み、みすちーーーーー!!

・・・・・ああっ 遅かった・・・・・・・・。
22.無評価まっぴー削除
…今更ながら、中国も妖怪なんだなぁと再認識。
やっぱ『愛するものを失って暴走、それを止める』というシチュはいいですね。

……アレ?みすちーって誰?(ぉ
27.70名前が無い程度の能力削除
ちょ、ちょっと待てー!!?
まさかこういう落ちだとは。後で考えてみりゃ成る程ー、って感じですが、読んでるときは思いもよらなかったという。

みすちー、冥界に行っても元気に喰われてくれ。。。(ぇ
30.70名無し毛玉削除
…なんというか、その小骨が多いので下処理は大変だったろう……。
オチが読まれないような文章にナイスと言いたいです。

31.50まんぼう削除
やっぱりミスちーは食用なのですか、そうですか。

いただきますの意味なんて考えた事無かったですねえ。
36.70no削除
美鈴やアリスは、ときたま妖怪であることを忘れそうになりますので、
こういったお話はとてもいいものですね。
47.60名前が無い程度の能力削除
最初の10文くらいでオチが読めてしまう人も何人かは居るんだろうか?

って、うずら肉やすずめ肉は「鳥肉」であって「鶏肉」では無いような・・・ま、いいか
75.80名前が無い程度の能力削除
み…みすちぃいいいいいいいいいいいい
76.80無を有に変える程度の能力削除
みすちーーーーーー!!!
食用夜雀・・・そんなのあんまりじゃないか・・・・
78.70名前が無い程度の能力削除
みすちいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!
81.80名前が無い程度の能力削除
ちょ、みすちーがwwww
84.80名前が無い程度の能力削除
みすちいいいいいいいいいいいいいいい!!!!