※まず、キャラ壊れちゃったりしちゃってます。お嫌いな方はちょん避けしちゃってやって下さい。
ここは白玉楼。
縁側でお茶啜りながら広大な庭を眺める幽々子。
冥界でも空は青く澄み切っていた。
庭の離れた場所では妖夢が掃除をしている。
白玉楼の庭はどこぞの紅白のようにのんびりと掃除していては日が暮れるどころか次の日の朝になる程広い。
故に妖夢はその持ち前の速さを生かして掃除する。
そんな風景を見つめながら幽々子はある事を思いつき、掃除中の妖夢を呼んだ。
幽々子「秋よ、妖夢。秋が来たわ」
『いきなり呼び出されて何の用だろう?』と思いながら来てみれば主から出た言葉がこれだ。
妖夢「はぁ・・・まあ確かに朝夕の気温は下がってきましたが・・・」
幽々子「それが秋なのよ」
妖夢「そうなんですか?」
幽々子「そーなのよー」
妖夢「そーなのかー」
・・・・・・・・・・・・・・・
妖夢「で?何の御用ですか?」
少し寒い風を感じたので話を進める。決して秋の涼しい風ではないだろう。
幽々子「秋よ?秋」
妖夢「ええ、それはわかりました」
幽々子「秋にはいろんな楽しみがあるじゃない?」
妖夢「はぁ・・・そうですね」
幽々子「私はね、秋を楽しみたいの」
もしやとは思うがこの御方の言わんとすることがだんだん読めてきた。
妖夢「ええ・・・と、どのようにお楽しみになられたいのでしょうか?」
幽々子「鈍いわねぇ、妖夢。足の速さとは別に頭はトロいのねぇ」
あんた程じゃないよ。
幽々子「何か言った?」
妖夢「いえ、何も?」
幽々子「いえ、絶対にさっきの顔は何か失礼な事を思ってる顔だったわ」
妖夢「いえいえ、そんなことありませんって」
幽々子「そう。まあ、いいわ。それでね、秋はいろいろあるでしょ?芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋」
妖夢「・・・・・」
幽々子「その中でも輝くのは食欲の秋!!これに限るじゃない!」
やはり・・・そうなるか・・・。
妖夢「でも幽々子様は万年食欲旺盛では」
幽々子「お黙りなさい。半人前」
妖夢「みょん」
幽々子「さっきから言ってるじゃない。秋だって。私は秋の味覚を食したいの」
妖夢「はぁ・・・」
幽々子「ほら、『天高く馬肥ゆる秋』って言うじゃない?」
あんた一応人の幽霊でしょ。馬違うやん。てか肥えてどうするよ。一応女性でしょ。
幽々子「何?」
妖夢「いえ別に何も?」
幽々子「何かさっきからひっかかるわね・・・」
妖夢「気のせいですよ。で、秋の味覚を手に入れよう、という訳ですね?」
幽々子「そうよ。だから川へ釣りに行くわよ」
妖夢「狙うは秋の川魚ですか。わかりました。御用意致しますのでしばしお待ちを」
◇◆◇◆◇
訪れたのは博麗神社からそう遠くない山中に流れる渓流。
きらきらと光る川の水は透き通り、魚の泳ぐ姿も見れる。
深さはまあまあ深い。川の流れはそれほど速くはない。
周囲には大きな岩が多くあり、この岩の上に乗りながら釣ったほうがよさそうだ。
まだ昼間なので飛んでいる最中は暑かったが、山に入ると驚くほどに涼しかった。
まだ山の色は緑一色で、秋の色が見れるのはもう少し後になりそうであった。
幽々子「さあ、たくさん釣り上げてね。妖夢」
川辺の岩に腰掛けながら持ってきた煎餅を食べる幽々子。
妖夢「幽々子様も手伝って下さい!」
幽々子「えー」
妖夢「えー、じゃありません。たくさん魚食べたくないんですか?」
幽々子「食べたい」
妖夢「では一人で釣るよりも二人で釣ったほうが良いでしょう」
幽々子「仕方が無いわね」
よいしょといった感じで立ち上がる幽々子。
妖夢は持ってきた袋の中から釣竿を出して幽々子に渡す。
妖夢「はい。では始めましょうか」
幽々子「釣り上げた魚はどうするの?」
妖夢「あ、はい。この籠に入れて下さい」
幽々子「わかったわ」
妖夢「くれぐれもその場で食べたりしないで下さいね?」
幽々子「それくらいわかってるわよ」
釣り開始。
川を挟んで岩の上に座りながら向かい合う二人。
特に会話も無く聞こえるのは川の音と風の音だけで静かなものである。
夏なら蝉の鳴き声が響き渡っていたが、今はもう聞こえない。
夏から秋への季節の移り変わりを感じれるというものだ。
が、幽々子の煎餅の食べる音が雰囲気をぶち壊していたりする。
妖夢「幽々子様・・・お行儀が悪いのでお止め下さい」
幽々子「ふぁっふぇー(だってー)」
もごもごと煎餅を口に頬張りながら喋ろうとする。
妖夢「食べながら喋らない!」
幽々子「ん」
もぐもぐごくん。
幽々子「お腹がすいたんだものー」
と、お腹を押さえて空腹を表す。
妖夢「ハァ・・・。来る前に昼食をお食べになられたでしょう」
幽々子「あの程度じゃ足りないわ」
あの程度と言っても実際には妖夢が作ったラーメン&ライスを共に6杯食べてきたのだが。
妖夢「あれだけ食べておきながら・・・。でも、今我慢すれば後の魚が格別に美味しくなりますよ」
幽々子「空腹で死んじゃうわ」
妖夢「幽々子様は既に死んでいます・・・っと、かかった!」
妖夢の持つ竿の先が大きく曲がり、震える。
途端に妖夢は立ち上がり、竿を思いっきり上げる。
水面から勢いよく飛び出し、妖夢の手に収まったのは鮎であった。
幽々子「まあ、美味しそう」
釣り上げられた鮎を見て幽々子は顔を輝かせている。
妖夢「ええ。まずは一匹目ですね」
ポイっと箱の中に鮎を放り込む。
幽々子「たくさん釣ってね♪」
妖夢「努力します」
???「お?先客がいると思ったらお前さん達か」
ふと妖夢の背後から声がかかる。
振り返るとそこには釣り竿を肩に掲げた魔理沙と霊夢がいた。
魔理沙「調子はどうだ?」
幽々子「私達もついさっき来たとこよ。妖夢が一匹釣り上げたわ」
幽々子が指をを一本立てる。
魔理沙「やるじゃないか」
妖夢「まだ一匹だ。幽々子様を満足させるには遠く及ばない・・・」
霊夢「それ一体何匹必要なのかしら・・・?」
妖夢「う・・・・・」
霊夢「そういえばさっき来る前に山の中で藍にあったわ」
幽々子「藍?」
魔理沙「ああ、何か山菜や木の実を集めていたぜ」
霊夢「『まだ少し早いが気の早いやつはもう実っていたりもする』って言ってね」
幽々子「ふーん」
魔理沙「しかしこの鮎は旨そうだな」
繁々と妖夢の釣った鮎を見る魔理沙。
妖夢「やらないぞ」
魔理沙「何だケチだな」
妖夢「ケチで結構」
魔理沙「半人前」
妖夢「みょん!おまえに言われる筋合いは無い!!」
立ち上がり講義する妖夢。
魔理沙「そんな狭い心じゃいつまでたっても半人前だぜ」
やれやれといった感じで手をひらひらとする魔理沙。
妖夢「おまえも魚を釣りに来たんだろう!?自分で獲ればいいじゃないか!」
魔理沙「ああ、そうだな。へ、ここいらの魚は全て私が釣り上げてやるぜ」
妖夢「そうはさせるか!貴様には一匹たりとも魚はやらない!この川の砂利でも袋に詰めて帰るがいい!」
ビシっと釣竿の先を魔理沙に向ける。
霊夢「甲子園じゃないんだから・・・」
魔理沙「フン、じゃあ勝負と行くかい?どちらがより多く魚を釣り上げられるか」
妖夢「望むところだ・・・」
睨み合う魔理沙と妖夢の間に見えない火花が飛び散る。
霊夢「馬鹿馬鹿しい。私は上流で一人のんびりと釣ってるわよ」
そう言うと霊夢はスタスタと歩いていった。
魔理沙「フン、お前さん達は二人でかかって来な」
妖夢「いいのか?そんなことを言って後で後悔しても知らないぞ?」
魔理沙「ククク、『幻想郷の釣りきち三平』と呼ばれた私のせめてものハンデってやつだぜ」
初耳です・・・。
魔理沙「その最初に釣った鮎もカウントしていいぜ。これもハンデだ」
クククと笑う魔理沙。
魔理沙「あと、負けた方が釣り上げた魚を全て勝者に差し出すんだぜ」
妖夢「いいだろう・・・相手にとって不足無し。勝負!」
こうしてまた平和で馬鹿らしい勝負が始まった。
魔理沙は妖夢、幽々子より下流で釣りを始めた。
妖夢「幽々子様、この勝負絶対に負けられませんよ」
幽々子「そーねー」
意気込む妖夢とは裏腹にのほほんとした幽々子。
妖夢「もう少しやる気を出して下さい!負けたら魚を全て獲られるんですよ!?」
幽々子「そー、なの、かー!?」
妖夢「随分余裕ありますね・・・」
幽々子「じゃあ、頑張りましょう」
妖夢「ええ、あの黒白に一泡吹かせてやりましょう!」
魔理沙「おっしゃーーーー!!一匹目だぜぇーーーー!!」
妖夢「何ですとぉ!?」
振り向くと離れた場所で魔理沙が高々と釣り上げたやまめを掲げている。
魔理沙「ふふふ、のんびりお話なんかしてていいのか?」
妖夢「く・・・」
幽々子「わー。凄い凄い」
パチパチと笑顔で手を叩く幽々子。
妖夢「幽々子様!感心してどうするんですか!」
キっと幽々子を睨む妖夢。
魔理沙「妖夢、もうこの勝負・・・降りることは出来ないぜ?」
妖夢「誰が降りると言った!?勝負は始まったばかりだ!」
そういって腕を振り上げて拳を握り締める妖夢。
幽々子「妖夢ー」
ふと幽々子から声がかかる。
振り向くと幽々子の竿が大きくしなっている。
そして竿を振り上げると空高く岩魚が舞っていた。
太陽の光で岩魚の体が輝く。
それを難なくキャッチする幽々子。
幽々子「釣れたわ」
えへへー、といった感じで微笑む幽々子。
妖夢「さすがは幽々子様!」
それに妖夢は大きくガッツポーズ。
魔理沙「ふん、やるじゃないか」
そういって釣りに戻る魔理沙。
同じく妖夢も竿を手に釣りを始める。
妖夢「ふふ、まずはこっちがリードしている。このまま差を開いてやればいいんだ・・・」
幽々子「妖夢ー」
幽々子の方を見ると何と竿が折れんばかりにしなっている。
妖夢「な!?大物ですか!?幽々子様!」
幽々子「うん、大物ー。ぬぬぬ・・・」
そういって賢明に戦う幽々子。
妖夢「だ、大丈夫ですか?釣り上げられますか?」
見ている妖夢の手にも汗が握られる。
幽々子「う~ん、難しいかも」
妖夢「そんなに大きいのですか!?いったい何が・・・!?」
幽々子「地球ー」
妖夢「はい・・・?」
今何と言ったのだろう?
幽々子「地球ー」
同じ言葉を繰り返す幽々子。
妖夢「それは『根がかり』と言うんですよ!!」
幽々子「そーなのかー」
そう言いながらもブンブンと竿を振って地球と戦う幽々子。
妖夢「それはもういいですって!ああ!そんなに振り回したら竿が・・・!!」
バキ!
幽々子「・・・折れちゃったわ」
苦笑する幽々子、うなだれる妖夢。
魔理沙「ハハハ!!冥界組、恐るるに足らずだな!見ろ!」
そういう魔理沙の手にはいつの間にやらやまめや岩魚が合計4匹。
妖夢「な・・・!?」
幽々子「わー」
驚く妖夢に感心する幽々子。
魔理沙「これで合計5匹だぜ?そんな調子じゃ勝負あったな」
妖夢「くそ・・・」
思わず愕然とする妖夢。
早過ぎる。魔理沙の釣りの腕は確かだということがこれでわかった。
そして妖夢には珍しく『諦め』の言葉が頭に浮かんでいた。
勝てない・・・。
自分達が一匹釣ろうとしている間に魔理沙は数匹釣っているのだ。
勝てるはずがない。
しかし、このままでは魚を食べるのを楽しみにしている幽々子に申し訳ない。
どうすれば・・・。
幽々子「妖夢ー、引いてるわよー」
ハッと気付くと自分の竿がしなっている。
急いで釣り上げると妖夢の手の上に鮎が乗せられた。
妖夢「5対3・・・いける」
微かに希望の光が見えた。
妖夢「幽々子様!新しい竿です!」
ヒュっと投げられた竿を幽々子が片手で掴み取る。
妖夢「魔理沙!!」
む、と妖夢を見つめる魔理沙。
妖夢「西行寺に代々仕える魂魄の血・・・あなどるな!」
妖夢の周りにいつも漂っている魂が人型に変わっていく。
魔理沙「!!」
妖夢「『二重の苦輪』!!」
そして妖夢が二人になった。
袋の中から新たな竿を出して分身に渡す。
妖夢「改めて・・・勝負だ!!」
二人の妖夢が竿を魔理沙に向ける。
魔理沙「やるな・・・しかし、何本予備の竿持って来てるんだよ」
妖夢「策は二重三重と張って初めて功を成す、だ」
幽々子「ただ単に私が折ると見越して持ってきたのよね」
冷静に突っ込む幽々子。
妖夢「いくぞ!!」
魔理沙「第二幕開始・・・ってか」
◇◆◇◆◇
ぐいぐい、と幽々子の竿が引っ張られる。
竿を上げて釣り上げた獲物を手に取る。
幽々子「妖夢、釣れたわ」
手に持つ岩魚を見せる幽々子。
妖夢「さすがです!」
復活した妖夢。
その瞳には燃える闘魂の炎を宿していたりする。
妖夢「よし!かかったぁーーー!!」
妖夢の分身が竿を思いっきり振り上げる。
すとん、と釣り上げられたやまめが箱の中に落ちる。
魔理沙「く・・・さすがに一人増えた分早いぜ」
あれから一刻程経った今現在の釣果は・・・
魔理沙:6匹
妖夢:4匹
幽々子:2匹
同点である。
このままいけば勝てる!
妖夢はそう確信しながら糸を垂らしていた。
魔理沙「お、釣れたぜ!」
魔理沙7匹目。
妖夢「やるな・・・。と、こっちもだ!」
妖夢5匹目。
両者一歩も引かず、同点のままである。
魔理沙「ち・・・」
苦戦の表情の魔理沙が釣りに戻る。
対する妖夢は笑みが止まらない。
妖夢「フフフ、あの魔理沙の顔・・・」
釣りに戻りながら確実に近付く勝利の喜びに心の中で舞い踊る。
しかもこのまま勝てば魚の数は15匹以上はいくだろう。
幽々子にも満足してもらえる・・・かは分からないが、きっと喜ぶだろう。
自分は魔理沙に勝ったという優越感に浸り、そして主人はたくさんの魚を食べて喜ぶ・・・完璧だ。
妖夢「幽々子様、このままの調子で頑張りましょうね」
湧き出る喜びに笑みをこぼしながら幽々子に声をかける。
幽々子「・・・・・」
返事は無い。
妖夢「幽々子様?」
少し顔を下げて離れた幽々子の顔を見る。
幽々子「・・・く~」
寝ていた。座ったまま釣りをしながら寝ていた。
頭はフラフラと前後に揺れている。
妖夢「寝てるし・・・」
苦笑いの表情で見つめる。
平和なものだ・・・と妖夢は心の底から思った。
くぃくぃ、と幽々子の竿が引っ張られる。
妖夢「あ、幽々子様!引いてますよ!?」
幽々子「く~」
~少女爆睡中~
妖夢「え!いや、起きて下さい!起きて下さい、幽々子様!」
しかし幽々子が起きる気配は無い。
そして一際大きく竿が引っ張られた時。
妖夢「あぁ!?」
ばしゃ~~ん。
幽々子は川に落ちた。
ぷかぷかとうつ伏せのまま流れていく。
それでも幽々子は起きない。
妖夢「うわ!!大変・・・!てか川に落ちても寝ますか貴方は!?」
竿を置いて流れる幽々子と平行になって走って追いかける。
幽々子、どざえもんとなる。
妖夢「ああ!そんな水死体みたいに・・・って幽々子様は既に死んでいますけど!」
そしてそのまま魔理沙のところへ・・・。
魔理沙「同点か・・・このままじゃやばいぜ・・・」
ぶつぶつと独り言を話す魔理沙。
妖夢「魔理沙!!」
途端に声が掛けられる。
魔理沙「あー?何だよ?」
対戦相手に呼ばれて顔をそちらへ向ける。
妖夢が走ってきていた。
妖夢「それ!下に流れてるの釣り上げて!」
魔理沙「は?」
自分の座っている岩から身を乗り出して下を見ると丁度幽々子が流れてきたところであった。
その瞬間に魔理沙の竿が大きくしなる。
魔理沙「げ!」
幽々子に魔理沙の釣り針が引っ掛かったのだ。
魔理沙「うわ!ちょっと待て・・・!」
咄嗟のことで釣竿をつかむ。
しかし、魚を釣るための釣竿であるために人の体重にはそう耐えれるものでは無い。
魔理沙「うわ!重いぜ・・・何食ってるんだこの幽霊・・・!」
ギリギリと竿が悲鳴をあげる。
妖夢「失礼な事を言うな!!何とかそのまま耐えてくれ!」
妖夢が魔理沙の座る岩の下にまで降りる。
魔理沙「無茶言うな!駄目だ・・・折れる!」
バキン!!
妖夢「掴んだ!!」
魔理沙「うわ!!」
竿が折れるのと同時に妖夢が幽々子の腕を掴んだ。
一方魔理沙は折れた反動で盛大に尻餅をついていた。
そしてその拍子に今まで自分が釣り上げた魚を入れていた籠を川に落としてしまった。
魔理沙「ああああああああああああああああああああああああああ!!?」
流れる籠。弱々しくも川に戻っていく魚達。
さすがに立ち直れずに岩に手をつく魔理沙。
そうとは知らず妖夢が幽々子をおぶさって魔理沙のとこまで上がってきた。
妖夢「いや、助かった。礼を言う。ありがとう・・・ってどうしたの?」
魔理沙「・・・・・・」
妖夢「どうかしたか?ああ、竿か・・・すまない。代わりに新しいのを渡そう」
頭を下げる妖夢。
魔理沙「違う・・・魚の入った籠を落とした・・・」
妖夢「え・・・?」
さすがの妖夢も間抜けな顔で聞き返してしまう。
魔理沙「だから魚に逃げられたんだ!お前らのせいだぞ!バカヤロー!!」
泣きそうな・・・てか泣いている魔理沙。
子供のように腕を振り回している。
そうして妖夢に掴みかかり、前後に揺さぶる。
妖夢「そ、それはすまない!わかった、私達が釣り上げたのを分けよう」
魔理沙「当たり前だ!!」
妖夢「すまない・・・」
◇◆◇◆◇
そうして歩いて妖夢の籠の所まで戻ると・・・。
妖夢「え・・・?な、無い!?魚が!え!?」
魔理沙「何だとっ!!?」
妖夢が幽々子を降ろし、辺りを見回す。
すると籠から少し離れた場所に動物の足跡があった。
妖夢「あー!!やられた!!」
どうやら動物に持っていかれたらしい。
頭を抱えて地面に膝をつく妖夢。
魔理沙「ははは・・・今日は晩飯抜きか・・・」
乾いた笑いを発しながら遠くを見つめる魔理沙。
妖夢「くぅ・・・すいません、幽々子様・・・こうなれば腹を切るしか・・・!!」
スラリと楼観剣を抜く妖夢。
そして潔く上着を脱ぐと上はサラシだけになった。
魔理沙「おう!もう切れ切れ!切っちまえ!!」
両手を振り上げて人差し指を立てながら飛び跳ねながら煽る魔理沙。
もうやけくそでひゃっほーーーいといった感じである。
妖夢「少しは止めてよ!?」
止めて欲しいんかい。
魔理沙「うるせぇ!おまえに晩御飯を無くした気持ちがわかるのか!?酒の肴を失った気持ちがっ・・・!」
妖夢の胸ぐらを掴もうとするがいかんせん、上着が無けりゃ胸も無い。なので肩を掴む。
妖夢「くぅぅ・・・!」
涙を流し俯く妖夢。
霊夢「何してるの?あんた達・・・?」
ふと妖夢の背後から声がかかり、見ると霊夢がいた。
幽々子「うん・・・ふぁ・・・おはよう・・・って何してるの?・・・妖夢、その格好は・・・?」
幽々子が目を覚ます、が、目の前の光景に思考がついていかない。
涙を流しながら上半身サラシのみの妖夢。
かたや、その妖夢の白い両肩を掴んでいる魔理沙。心なしか鼻息が荒い。
妖夢「・・・え?あ!」
魔理沙「これは違うぜ、霊夢!これには訳が」
霊夢「どんな訳なのよ・・・」
呆れた顔の霊夢。
妖夢「幽々子様!これは複雑な事情で」
幽々子「二人の複雑な情事ですって!?」
霊夢「何ですって!?」
妖夢「違います!これは脱がされたのではなく自分で」
幽々子「てことは妖夢から誘ったのね!?」
霊夢「妖夢!!?」
妖夢「違う!!」
魔理沙「これは胸ぐらを掴んでやろうとしたら上着が無くて仕方なく肩をだな」
幽々子「いきなり妖夢の胸を鷲掴みにしようとしたの!?」
霊夢「魔理沙!!!?」
妖夢&魔理沙「「ちっがぁぁぁーーーーーーーぅう!!!!!!!」」
~少女説明中~
魔理沙「と、言う訳だ・・・・・疲れた・・・・」
幽々子「なぁ~んだ」
妖夢「偉く『つまらない』って顔してますね・・・幽々子様」
霊夢「馬鹿ねぇ。ほら」
三人を呼び寄せて自分の籠の中を見せる。
その中には所狭しと大量の魚がいた。
妖夢「うわ!たくさんいる!」
幽々子「あらあら、美味しそうねぇ」
魔理沙「これ全部一人で獲ったのか・・・?」
三人がそれぞれの反応をする。
霊夢「ええ、どうせあんたたちの事だからロクなことになってないと思ってね」
腕を組んで溜息をつく霊夢。
霊夢「これ、分けてあげてもいいわよ?」
妖夢&魔理沙「「本当か!?」」
二人の顔がこっちを向いて輝く。
霊夢「ええ。料理の手伝いとその後の宴会の後片付けの手伝いをしてくれるならね?」
妖夢「そんなことでいいなら!」
魔理沙「任せてくれ!」
霊夢「じゃあ、いいわよ」
妖夢&魔理沙「「やった!」」
と、二人でパンッと互いの手の平を合わせる。
幽々子「やった~」
涎を垂らしながら喜ぶ幽々子。
霊夢「幽々子、あんたも当然手伝うのよ?」
やれやれといった表情の霊夢。
???「おや?やけに賑やかだと思えば」
振り向けばそこには藍がいた。
霊夢「あら?山菜採りはどうだった?」
藍「うん?ああ、大量だ」
ほら、と籠の中の今日の収穫を見せる。
霊夢「あら、本当」
妖夢「うわー」
幽々子「美味しそうねぇ」
藍「よろしければお裾分けしますよ?幽々子様」
幽々子「あらそう?じゃあ、遠慮無く」
霊夢「じゃあ、あんたもこれからうちに来なさい。こっちも大漁だから宴会でもするわよ」
そして霊夢も自分の今日の収穫を見せる。
藍「おお~、それはありがたい。紫様や橙も呼んでも構わんか?」
霊夢「ええ、構わないわ」
魔理沙「おい。ついでだからアリスと紅魔館の連中も呼ぼうぜ」
ナイスアイデアとばかりに魔理沙が指を立てて微笑む。
霊夢「もう何人来ても構わないわよ。ただし、お酒を各自一本は持ってくること」
魔理沙「おーし、決まりだぜ。早速私はアリスの家と紅魔館までひとっ飛びしてくるぜ」
愛用の箒に跨る魔理沙。
藍「私も紫様と橙を呼んでくるとしよう」
霊夢「ええ、じゃあ私達は先に準備をしておくわ。行くわよ二人とも」
妖夢&幽々子「「はーい」」
そうして霊夢&冥界組と魔理沙と藍はそれぞれの方向へと飛んでいった。
博麗神社へ向かう途中・・・
妖夢「霊夢、すまないな」
苦笑いをしながら霊夢に言う。
対する霊夢はケロっとして、
霊夢「うん?構わないわよ。今日は楽しむわよ」
と言って笑顔を見せる。
妖夢「ああ、ありがとう」
霊夢「さ、急いで準備しなくっちゃねー」
~End~
さらりと大人な霊夢も素敵でございました。
ただ、脚本のような体裁(キャラ名「台詞・・・」)が少しだけ気になりました。
普通に結構あるのも確かなんですが、「読み物」という感があまりなくて・・・まあただの好みの問題かも知れません。すみません。
釣れません。鮎→山女→岩魚の順でより上流に居ます。そもそも鮎は成長すると苔を食べるので、友釣りのような釣法が必要になります。ですから山女と岩魚が同じ場所,道具で釣れる場合はありますが,鮎だけは別です。
ゆゆ様なら、釣りをするよりも長良川の鵜(≠鵜飼)のようにして鮎を取る方が
もっと効率よく獲れるんじゃないか・・・と思ってみたり。
幻想郷なのでそんな川もあるでしょうきっと・・・