十六夜咲夜というメイドが来てから紅魔館の中は活気に満ちていた。そんな感想をパチュリー・ノーレッジが抱いたのは無理もない事かも知れない。彼女が来る前の紅魔館といえばただ広いばかりの屋敷に吸血鬼が二人と居候が一人あと屋外に一人。持て余した館で隠遁生活に近い暮らしをしていたわけだ。
それが今やどうだろうか。日々の食事にお茶、身の回りの世話を咲夜が一手に引き受け、外に出る時は日傘を差してもらい、帰って来るとどこから捕まえてきたのか大量の妖精メイドが「お帰りなさいませ。お嬢様」の大合唱。人間一人を登用しただけでまるでお姫様のような暮らしを手に入れたのだ。
と、それは彼女の親友レミリア・スカーレットの話。パチュリー自身は未だに地下の陰気で掃除の行き届かない図書館暮らしをしている。咲夜の力を借りるのもよかったが、レミリアの従者を働かせるのは何となく気が引けるし、親友の手前いつも強がって「私は大丈夫よ」とか言ってしまう。しかしながら、レミリアが咲夜に紅茶を淹れてもらっているのを見ると、自分にも読書中に紅茶の一杯でも淹れてくれる使用人が欲しいという思いは日に日に強くなっていくのである。
パチュリーは次第に使い魔召喚に関する本を読みふけるようになっていった。
使い魔にも様々な種類が存在する。
フクロウや蛇などそこらへんの一般動物を魔法で使役するタイプ。この方法は最も楽なのだが使役対象がただの動物という点でペットの域を出ない。もちろん実用的な使い道も存在する。海の向こう英国では昔ながらのフクロウを使った手紙のやり取りをする魔法使いの一団が存在すると聞き及んでいる。また、蛇を使役して図書館を這い回せば埃取りにはなるかもしれない。あまり見ていて気味のよい光景ではないのでそうするつもりはない。
使役する動物を自ら作ってしまうという手もある。キメラと呼ばれる手法だ。幻想郷の外の世界では娘と犬を使ってキメラを作った男の伝記本がある。この方法は高度な技術があれば確実に優秀な小間使いが手に入るのだがかの伝記本では男は碌な末路を辿ってはおらず、なんとなくパチュリーは倦厭した。
パチュリーが最良とした手法は悪魔の召喚である。悪魔は一般的に他の怪物・妖怪よりも強い力と知識を持つ。召喚者に対して一生を持ってしても得られない程の知識を与え、彼等の与える軍隊は一国を容易く蹂躙するという。と言ってもパチュリーは紅茶と本を運んでくれる小間使いが欲しいわけでそんな大それた悪魔など召喚しても契約の見返りの方が高くつく。
パチュリーが召喚しようとしているのは悪魔は悪魔でも力の弱い小悪魔である。
初心者にも簡単に使役できそれでいて従順、体は頑丈で知識も豊富、ある程度の魔力素養を持ち合わせ、召喚者の個性に合わせてカスタマイズも可能。習得言語は英語、日本語、中国語であるという。これなら紅魔館でも問題なくコミュニケーションがとれる。最も幻想郷に入る際に全員が日本語を習得している点からすれば言語の問題は日本語一点となるのだが。
こうした経緯でパチュリーが小悪魔召喚の研究を進めていたある日、陰湿な図書館に親友のレミリアが訪ねてきた。後ろ手に何かを隠し持っていたがパチュリーは特に気にも留めなかった。短剣を隠し持って来られる程の喧嘩をした覚えはとんと無い。
「相変わらず陰気な図書館ね」
親友からの言葉にパチュリーは羊皮紙に走らせていたペンを止める。
「日の光嫌う吸血鬼にとってはその方がいいでしょう?」
「そうかもしれないわね」
レミリアは椅子の埃を払ってからドカッと座った。
「今日は何の用?レミィが面白がるような本はないわよ」
「今日は私がパチェの興味を誘うような本を持ってきたのよ」
そう言うとレミリアは今まで見せないようにと後ろ手に持っていた雑誌を「ジャジャジャーン」と効果音を口ずさみながら掲げた。
それは魔女のトレンドや最新ファッションを取り扱った魔女界では有名な月刊誌。世の男どもを魅了する魔女からパチュリーのような陰湿に研究を進める魔女まで幅広く取り扱う人気魔女雑誌だ。
「パチェには多分無縁よね。こういう本は」
「そうね。そういったチャラチャラした本には興味ないわね」
「やっぱりね。パチェは硬派な魔女だもの」
そういいながらレミリアは持ってきた雑誌をパラパラと捲る。
パチュリーは書き終わった羊皮紙を整理するフリをしてテーブルの端っこに置いていた自前の雑誌をレミリアに見られないようしまった。
「ほらこのページ見て。絶対パチェも興味を持つから」
レミリアがパチュリーの前に雑誌を広げる。
「これがそんな興味深い記事だとは思わないけど」
「違うわよ。その契約魔法少女の募集記事じゃないわ。こっち」
レミリアが指さしたのはイマドキの魔女トレンド、小悪魔使役の記事である。
頭からピョコンと生えた羽、黒のブレザーにロングスカートのキュートな小悪魔がこちらに向かってウインクしていた。
「初心者にも簡単に使役できて、それでいて従順、体は頑丈で知識も豊富、ある程度の魔力素養を持ち合わせていて、召喚者の個性に合わせてカスタマイズまでできるそうよ。しかも習得言語は英語、日本語、中国語。これなら紅魔館でも問題なくコミュニケーションがとれるわ」
「……そのようね」
今まで幾度となく眺めてきた写真と謳い文句。
「どう?今魔女界ではすごい人気らしいし、パチェも使い魔に興味があるだろう?」
確かにレミリアの言うとおりであった。しかし、つい今し方「チャラチャラした」などど評してその雑誌を否定した立場上「ええ、そのつもりだったわ」とは言いだしにくくパチュリーはあまり興味なさげな反応を返さざるを得なかった。強がった報いである。
「私は今のままで満足してるから小悪魔なんていらないわ。なんかめんどくさそうだし」
そのめんどくさそうな研究をしていた羊皮紙をパチュリーはそっと引き出しに。あと二百年もすれば小悪魔ブームは時代遅れのレッテルさえ通り越して懐古の対象になるかもしれない。そうしたらこの研究書も役に立つだろう。
「そう?パチェがそういうなら仕方ないわね」
というレミリアは残念そうに背中の羽を力なく落とした。パチュリーにはその親友の反応が気になった。というよりむしろ食い付いた。
「レミィは小悪魔が欲しかったのかしら?何なら召喚しようかしら?私はいらないけどレミィが欲しいなら小悪魔の二匹や三匹ぐらい召喚するわよ。飽きたら引きとるから心配しないで」
「そうじゃないわ。私には咲夜がいるから小悪魔なんていらないけど……」
「あぁ!レミィは小悪魔がブームだから一度見てみたいわけね。親友のたっての希望なら私も重い腰を上げるわ。使用人としていらないなら折角だから私が引きとるけど」
「別にそんなに見たいわけでもないわ。それにしてもパチェ今日はよく喋るわね」
「そんな事ないわ。でもレミィが私に小悪魔を召喚して欲しいのなら私は吝かではないわよ。とだけ伝えておきたいの。私はいらないけど」
「私は別に小悪魔はいらないしパチェの負担になるような事をさせるつもりもないわ。でも……」
と、レミリアはまた力なく羽を落とした。
「何か悩みでもあるの?話なら聞くわ」
パチュリーの申し出にレミリアは「実は……」と続ける。
「私が昔世話をした悪魔に今小悪魔製造工場を経営している奴がいるのよ」
「小悪魔製造工場?」
「小悪魔を召喚して使い魔として育成する工場よ。雑誌に出ているような小悪魔はその工場で育った連中らしい。天然召喚された小悪魔はイタズラ好きでとても手に負えないらしいわ」
「あ、そうだったのね……それでっ、その小悪魔製造工場を経営してる悪魔がどうしたのかしら?」
「ん、そいつから便りが来てね。工場を見学に来ないかって誘いが来たのよ。小悪魔ブームだからそいつも鼻が高いんだろう」
「レミィは行かないの?」
「私は小悪魔には興味がないから。無理して行ってもあいつも嬉しくないだろう」
なんとなくパチュリーは親友の思惑が読めてきた。あわよくば自分を代理に立てようというつもりだったのだ。それは渡りに舟だったが、もっと直接的に言って来て欲しかったものだ。妙な強がりをしたパチュリーは内心舌打ちをした。
「それで私の所に話を振りに来たのね」
「流石パチェね。理解が早くて助かるわ。でもそのパチェがあんまり興味がないんじゃ、折角の誘いだけど断るしかないわね」
そんな事はなかった。本当は小悪魔にはとても興味があるし、むしろ欲しいのだ。工場の見学にいけば恩人のレミリアには小悪魔の一匹ぐらいお土産にくれるかもしれない。
何としても小悪魔製造工場に行く。パチュリーは決心したのである。
「レミィ、折角のお誘いなんだから断ったりしては悪いわ。レミィが行かないのなら代わりに私が」
「興味のないパチェを無理に行かせるわけにはいかないわ。やっぱり断ろうかしら」
「レミィの昔の友人なら私も一度見てみたいわ」
「アルバムに写真があったわね」
「会って話もしてみたい」
「今度紅魔館にも遊びに来るって手紙にあったわ」
「今すぐ」
「確か工場の電話番号が雑誌に」
雑誌を捲るレミリア。パチュリーは若干せき込みながら、それでもまだ諦めるわけにはいかない。このチャンスを逃せば次にパチュリーが流行りの小悪魔を手に入れるのは二百年後。昔懐かしの小悪魔愛好者として新聞の地域コラムに載せられるのは強がって生きた代償としてはやや高い。
その時、パチュリーの頭に妙策が浮かんだ。
「そうよ!レミィ、社会見学よ!フランの社会見学に工場はもってこいだわ!」
「それは確かにいいかもしれないわね。でも、フランが暴れて工場を壊したりしたら……正直私の手には負えないわ」
「レミィの手に負えなくても私なら何とかなるわ。フランの周りに小さな台風を起こす事ぐらいわけないもの」
「じゃあパチェもついてくるの?」
「当然じゃない。私達は親友よ」
「いや、いくらフランのためとはいえパチェを無理矢理連れて行く事はできないわ。やっぱり……」
と、言いかけるレミリアの肩をパチュリーががっしりと掴んだ。
「工場見学に行かなかったらフランはきっと何か大切なものを学ばないまま育つ事になるわ。そうなればレミィは必ず後悔する。レミィの後悔は私の後悔。これは私の為でもあるのよ!」
パチュリーは自分が喘息であるのも忘れて力説した。レミリアは何より肩を掴むパチュリーの力が思いの外強い事に驚きながら、頷く以外の事ができなかった。
「パ、パチェがそこまで言うのなら工場見学に行こうかしら」
「そう。それがいいわ。それが最善よ」
「……何だか嫌な予感がするけど、私もそう信じたいわ」
かくして小悪魔工場見学の当日、魔法により異界の境を越えたのはパチュリー、レミリアにフラン、それとレミリアのお付きで咲夜が同行している。
工場は魔界の地方都市からさらに郊外に立っていた。
「ようこそお越しくださいました。レミリア様」
一行を出迎えたのは赤い髪をした小悪魔といった風貌の女性であった。
「久しいわね。あの時はただの小悪魔だったのに、今じゃ『小』がとれて立派な悪魔になったそうじゃない。でも見た目は昔と変わらずね」
レミリアは再会を懐かしみ小悪魔然とした悪魔の手を握った。
「まだまだレミリア様には遠く及びません。こちらの方々は?」
と、悪魔が訊ねたのでレミリアは一通りの紹介を始めた。
「妹のフランは知ってるわよね。これはメイドの咲夜。それから私の親友のパチェ、これでも魔女よ」
「パチュリー・ノーレッジよ。よろしく」
「魔女!今、魔女界では小悪魔がブームですよ。今日は是非とも楽しんでいってください」
パチュリーは目を輝かせるのを我慢して「楽しませてもらうわ」と無表情に返す。
それがいけなかったのか、悪魔はパチュリーの顔を窺って少し表情を固くした。
「パチェは日頃から表情に変化がないのよ。気にしないでね」
「ああ!そうだったんですか。てっきり小悪魔には興味がないのかと心配しちゃいました」
そんな事はない!パチュリーは心の中で思いっきり首を横に振った。もちろんそんな様子を表に出すことなくクールを装っている。パチュリーが小悪魔には興味が無いと思っているレミリアもフォローをいれつつ苦笑いをするしかなかった。
「もし退屈でしたらこれで遊んでください。今開発中のゲームができる魔導書です」
悪魔はどこからともなく一冊の魔導書を取り出した。しかしゲームという言葉に反応したフランによってその魔導書がパチュリーの手に渡る事はなかった。
「ゲーム!私に頂戴」
飛びついたフランであったが今度は咲夜がそれを取り上げる。
「ゲームというのはどういった内容でしょうか?これは妹様の教育に関わる事なので」
「それなら私がチェックを……」
というパチュリーの声は小さすぎた。
悪魔は快活に答える。
「『艦隊こぁくま』略して『艦こぁ』という16世紀スペイン無敵艦隊の船舶を擬小悪魔化してライミー(英国海軍)を撃破するゲームですよ」
それはおもしろそうだ。と、パチュリーは思った。しかし咲夜の評価は芳しくない。
「そういった破壊衝動を感化させるようなゲームはあまり好ましくないと」
「そうですか?それなら仕方ありません」
咲夜が魔導書を返すのをフランは残念そうに眺める。それ以上にパチュリーが内心地団太を踏んでいたわけだが、真の目的は『艦こぁ』ではない。『艦こぁ』はそのうち正式版をこっそり出に入れれば済む話で、本当の目的はレミィへのお土産となるであろう小悪魔を何とかして我が物にする事である。小義に拘り大義を忘れる事がないよう自分に言い聞かせ、パチュリー達一向は工場のライン見学へと建物の門をくぐった。
「これから皆さんには小悪魔が召喚されてから一流の使い魔となるまでの工程をご覧になっていただきます」
まず案内されたのは一番最初の工程、小悪魔を召喚する現場である。
床には複雑な魔方陣が書きこまれ、黒のブレザーを着こんだ小悪魔が魔方陣の上に儀式の供物となる様々な物を置く。そして魔力を込めれば小悪魔一人が魔方陣の上に立っているという寸法である。魔術反応で欠損した魔方陣は小悪魔達がマニュアル片手に書きなおしている。
「実はこの小悪魔召喚が最も気を使います。供物にはトカゲの干物とカエルのスープを使っていますが分量を間違えると性格に難のある小悪魔が召喚されてしまいます」
「その配合をしている工程を見る事はできるのかしら?」
パチュリーの申し出に悪魔は困った顔をした。
「そればかりは企業秘密でして魔界でも調合レシピを知っているのは五人だけなんです」
召喚された小悪魔達は状況がよくわからないままベルトコンベアに乗せられて次の工程に。
「ここでは一般的な小悪魔の規格に適合しているかどうかをチェックします」
ベルトコンベアで流されてきた小悪魔達は小悪魔の手によって身長や体重、胸囲を計られている。
「まるで学校の身体測定みたいですわ」
これは咲夜の反応である。
「規格外と判断された小悪魔は強制送還用の魔方陣で実家に帰されます」
ここで適応と判断された小悪魔は一般的な小悪魔のイメージとされる黒ブレザーに着替えて次の工程に行く。
「次は基礎教育です。使い魔として最低限必要な礼義と教養を身につけます」
学校の教室のような部屋で教師然とした小悪魔がその他大勢の小悪魔に教鞭を振るっている。パチュリー達はその光景を窓の外から眺めていた。
「個人差はありますがこの工程を終えるまでに大体一年の年月を要します。つまり今小悪魔ブームで世に出回っている小悪魔は少なくとも一年以上前に召喚された者達なのです」
「紅魔館のメイド達にもこうした教育を受けさせては如何でしょう?」
咲夜の提案にレミリアは首を傾げて
「妖精に何を教えたってすぐに忘れるわよ。それに誰が教えるかっていう問題があるわ」
「私は嫌ですわ」
「咲夜が匙を投げるならもう駄目ね。それにしても、ここでは小悪魔を召喚するのも小悪魔を教育するのもみんな小悪魔ね。何だか変な感じ。もしかしてそいつらもここで育成された小悪魔なの?」
レミリアが質問すると悪魔はニコニコと答えた。
「もちろんそうです。この工場の労働力はここで育った小悪魔達です。倍々ゲームで増えて行きますから小悪魔ブームが去ったら大量の小悪魔を生かしたビジネスを展開します」
大量の妖精メイドを従える咲夜は共感めいた物を感じたのかしきりに頷いた。
「組合でも結成すれば選挙の集票組織にもなりますわね」
「魔界に選挙があればですけどね。さ、次の工程に行きましょう。ここからが面白い所です」
ちょうど一年間の基礎教育を終えた小悪魔は次の部屋にていくつかの違った工程に仕分けされている。
「基礎教育を受けた小悪魔はもう立派な使い魔ですが世の魔女さん達のニーズに応えるためにこの工場では小悪魔のオーダーメイドも取り扱っています」
それよ!
パチュリーは心の中で声を上げた。それこそ今回の工場見学において最も見るべき点である。一番の目的はお土産の小悪魔を掠めとる事。しかしながら見学という点において最も興味を誘うのはオーダーメイドで小悪魔を教育する工程である。
「お姉さま、私疲れちゃった」
水を差すようなフランの呟きもパチュリーは聞き洩らさない。
「我慢しなさいフラン。折角だから見せてもらいましょう」
まるで姉のように言い聞かせそれ以上を言わせない。
「パチュリーさんは小悪魔に大変興味があるようですね」
悪魔が質問するとパチュリーは軽く頷いた。
「私も魔女だから多少の興味はあるわ」
これはパチュリーが始めて口にした本音であったがレミリアには悪魔の顔を立てた社交辞令として映るわけで、面目を失う事なく上手く悪魔の機嫌をとってお土産小悪魔へと繋げようというパチュリーの高度な作戦である。
「でしたら折角ですので小悪魔を一人オーダーメイドして行きませんか?もちろんお代は結構です」
計 画 通 り。
パチュリーは必死に笑いを堪えていた。
その横でレミリアが首を振る。
「いや、流石にそれは悪いわ」
もちろんレミリアがこう言う事もパチュリーにはすでに織り込み済みである。
「遠慮する方が失礼よ。レミィ、折角だからお言葉に甘えるべきよ」
そのお言葉に甘えるのはパチュリーなのであるが。
「うーん、パチェがそう言うならそうしようかしら」
レミリアが同意すると悪魔の顔がパッと華やぐ。
「決まりですね。ではみなさんこちらにどうぞ」
悪魔に案内され一行は別の部屋へ。
そこでは様々なモニターに一般的な小悪魔が表示されている。
「オーダーメイド小悪魔では小悪魔の容姿から変更ができます。例えば髪の色。今一番人気はピンクのショートです」
「じゃあ、私とお揃……レミィは赤が好きだから髪の色は赤のままでいいわ小悪魔標準の」
あまり食いつくと本当は小悪魔に凄く興味があったのではないかと疑われてしまう。パチュリーはここでも強がって妥協した。本当は自分とお揃いの紫の髪がよかったのだがそれは本質ではない。
「そうですか。では赤のロングのままにしますね」
「他には何が変更できるのかしら?」
それとなく訊ねる。悪魔はモニターを操作して画面を切り替えた。
「背丈は変えられませんが胸の大きさなら何とかなりますよ。パッドですけど。あれ?後ろのメイドの方、顔が強張ってますよ」
パチュリーは画面を一通り見たがこれといったものはなかった。メイクで目を大きく見せたり頬に陰影をつけたりだとかの技術はパチュリーにはとんと理解の範疇を越えていたのである。
「身体的な変更は特にないわ」
「そうですか?特別仕様のクマ耳、こぁクマーもありますよ」
「う……」
一瞬ぐらりとしたが首を横に振った。そういうのが好きだというのがばれるのが怖かったのだ。パチュリーはあくまでも硬派なキャラを貫いた。
「パチュリーさんは見ためよりも中身で勝負するタイプですね」
言いながら悪魔はモニターを操作する。
「オーダーメイド小悪魔では魔女さんのニーズに合わせて小悪魔の個別教育を行います。小悪魔に習得させたい技能を選択してください」
画面には『画面をタッチするクマー』という吹き出し付きのこぁクマーイラスト。パチュリーはそちらに何度か目を奪われながら習得項目をチェックした。
戦闘向け項目では投擲や剣技といった物理的戦闘手段の他弾幕関連の技術も習得ができるようだ。特に戦闘をさせるつもりはないが折角なので「大玉」の項目にチェックを入れて次へ。
家事関連の項目。ここは様々な物がパチュリーの興味を引いた。美味しい紅茶の入れ方や料理の腕前、掃除の他にも事務仕事。チェック項目を読み進める度パチュリーは何度も心の中で頷いた。
静かな図書館で小説を読んでいる時、魔法研究が一段落して一息つきたい時、そんな時に淹れたての熱い紅茶とちょっとしたお茶菓子を運んでくれる小悪魔。夜寝る前にはホットココアを持ってきてくれて、飲み終わったらナイトガウンを肩にかけてもらう。朝起きたらコーンスープにサンドイッチ、それを食べながら図書館に新しく入って来た本の目録を読み上げてもらう。あぁ憧れの小悪魔ライフ。これで私もイマドキなトレンディー魔女の仲間入り。
結局家事関連の項目には全部チェックを入れる。
次に記されていたのは主に三十歳以上の魔法使いを対象にした項目であった。パチュリーは多少の興味を持って内容だけ確認しようとしたが、咲夜が覗きこんできたのでやめた。ここまで来て「フランの教育上好ましくない」という理由で取り上げられるのは御免だ。
決定ボタンを押してオーダーメイドを完了。
「パチュリーさんのオーダーメイド小悪魔承りましたー!ではオーダーメイド小悪魔の教育完了までおよそ……」
悪魔は計算結果を画面に表示させた。
「二十年です」
「二十年!?」
パチュリーはこの日初めて取り乱したような素っ頓狂な声を上げた。
「はい二十年です」
パチュリーとは裏腹に至って平然と悪魔は答えた。確かに彼女達にとって二十年とは長いようであっという間な期間かもしれない。しかしパチュリーにとっては二十年はやはり長いのだ。ブームが去ってしまうかもしれない。
そんな不安を悪魔は察したようで
「ただ、やはり二十年も待てないという魔女さんが大半でして、実はこんなものを準備しております」
案内された部屋には今まで以上にごてごてとした機械の類、いくつもの魔方陣が張り巡らされた禍々しさが漂う部屋だった。
「何だか嫌な感じだな……」
レミリアは呟くが対称的に明るい調子で悪魔が説明を始める。
「通常の教育では小悪魔を思い通りに育て上げるまで時間がかかります。しかし、この機械を使えばほんの一瞬で完了しちゃうんです」
「それは凄いわね。一体どんな仕組みなのかしら」
「これはソウルリンクマシーンと言って小悪魔の精神と召喚者の精神を一時的に繋げる機械なんです」
悪魔が喋っていると一体の小悪魔がカプセルに入った状態で一同の前に運ばれてきた。安らかな寝息を立てている。
「これがパチュリーさんの小悪魔になる予定の小悪魔です。この小悪魔にはこれからパチュリーさんの所で働く夢を見てもらいます」
「成程。夢の中で私が直に教育を施すわけね」
「その通り、そうすることで思い通りの小悪魔に育てる事が可能なんです。ただしそのためにはパチュリーさんの精神と小悪魔の精神を繋げなくてはなりません」
気付くとパチュリーの前にも人一人入れそうなカプセルが運ばれてきていた。
パチュリーがそれに手をかけると流石にレミリアは不安に思い始めた。
「精神を繋げるって危険じゃないの?」
「ご安心を。すでに百名以上の魔女さんが使用して事故なくきてますから」
「だが……」
「大丈夫よレミィ。すぐ終わるわ」
親友に声をかけてパチュリーはカプセルに入った。
「では魔方陣を起動しますのでみなさん外に」
一同が部屋の外に出て残ったのはパチュリーと悪魔、それからパチュリーの使い魔となる小悪魔だけ。閉じたカプセルの中はガスで充満されだんだんと眠気が誘われる。
パチュリーは顔を横に向けた。そして隣のカプセルで眠る小悪魔に向かって微笑みかけた。
やがてパチュリーは自分の意識が大図書館にある事に気付いた。
「ところでお嬢様。あの悪魔さんとはどのようにして出会ったのですか?」
パチュリーを待つ隣室。すっかりくたびれて寝息を立てるフランは咲夜の背中の中。妹をあやす従者にレミリアは遠い過去を思い出しながら答えた。
「悪い魔女に奴隷のようにこき使われていた所を助けたのよ」
「お嬢様が人助けですか?」
「意外?でもそうしたくもなるわ。あれは酷いものだった。暫くは世の中の魔女を根絶やしにするとか言ってたわ。それを思うと変わったものね」
「私もお嬢様にお会いして人生が変わりましたわ。もしかしてお嬢様会う人会う人みんな運命弄ってます?」
やはりレミリアは何か奇妙な不安感を拭いきれずにいた。
しかし、そんな不安もパチュリーと悪魔が何事もない無事な姿で出てくると杞憂に過ぎなかったような気がした。
「全てのオーダーメイドは無事に終わりました。完成した小悪魔は三日後に転送魔法で送り届けますね。転送の魔方陣はパチュリーさんに教えておきましたから」
悪魔が快活に説明するとパチュリーは静かに頷く。その表情は今日始めて笑っているようにレミリアには思えた。
それから三日後、レミリア立ち会いのもとパチュリーが魔方陣を描いていた。転送の魔方陣は予定通りの時間になると白く輝き始める。
その眩しい閃光の中に一人の小悪魔が立っていた。
――ここは……
いかにも小悪魔らしい風貌と服を身に纏った正真正銘の小悪魔。
頭がボーっとするのを感じながら小悪魔は目の前に二人の人物を捉える。そのどちらが自分の主人なのか小悪魔は誰からも聞かされていなかった。しかし、小悪魔は視界の中心にパチュリーの姿を捉えて離さなかった。名前も容姿も知らない。それでも主人だと解っている事に小悪魔は別段疑問を差し挟むことなどなかった。
「ふーん、これがパチェの小悪魔ね。なんとなくパチェに似た雰囲気があるわ」
そう語るのは主人ではない方。
小悪魔は彼女の名を知っている。レミィ。主の友人。
――私は、小悪魔?
「似てるだなんてそんなわけ。気のせいよ」
主となる少女は一歩前へと進み出て手を翳す。
「今日からあなたを使役する魔女。パチュリー・ノーレッジよ」
小悪魔は新しい主を前にして緊張しているのか。体を強張らせ、そしてまだ上手く喋れないでいた。
「あ、あの……」
――私が
振るえる唇。パチュリーは優しく小悪魔の肩を抱く。
「楽にしていいのよ。まだ慣れてないだけでしょうから。それとも私の後ろにいるのが怖いの?心配しなくてもみんな優しくしてくれるわ」
「パチェ、あんまりの云い様ね。私はそんなに怖くない」
――違う。レミィ違うの
しかし小悪魔の口をついたのは彼女の心とは違う言葉。
「私は……小悪魔です。主、パチュリー様に召喚された忠実なる使い魔」
――そうじゃない!私は小悪魔じゃない!レミィ助けて!
パチュリーは微笑んだ。
「その通りよ。これからしっかり働いてもらうから。パチュリー・ノーレッジは小悪魔を召喚するために悪魔に魂を売ったのだもの」
――私は……
小悪魔は主の前に膝をついた。誰がそうしろと命じたものでもない。ただ、体がそう動いた。
踵を返すパチュリーの背中は正しく主のそれであり、
――私は、小悪魔?
小悪魔の意識は正しく小悪魔のそれとなった。
それが今やどうだろうか。日々の食事にお茶、身の回りの世話を咲夜が一手に引き受け、外に出る時は日傘を差してもらい、帰って来るとどこから捕まえてきたのか大量の妖精メイドが「お帰りなさいませ。お嬢様」の大合唱。人間一人を登用しただけでまるでお姫様のような暮らしを手に入れたのだ。
と、それは彼女の親友レミリア・スカーレットの話。パチュリー自身は未だに地下の陰気で掃除の行き届かない図書館暮らしをしている。咲夜の力を借りるのもよかったが、レミリアの従者を働かせるのは何となく気が引けるし、親友の手前いつも強がって「私は大丈夫よ」とか言ってしまう。しかしながら、レミリアが咲夜に紅茶を淹れてもらっているのを見ると、自分にも読書中に紅茶の一杯でも淹れてくれる使用人が欲しいという思いは日に日に強くなっていくのである。
パチュリーは次第に使い魔召喚に関する本を読みふけるようになっていった。
使い魔にも様々な種類が存在する。
フクロウや蛇などそこらへんの一般動物を魔法で使役するタイプ。この方法は最も楽なのだが使役対象がただの動物という点でペットの域を出ない。もちろん実用的な使い道も存在する。海の向こう英国では昔ながらのフクロウを使った手紙のやり取りをする魔法使いの一団が存在すると聞き及んでいる。また、蛇を使役して図書館を這い回せば埃取りにはなるかもしれない。あまり見ていて気味のよい光景ではないのでそうするつもりはない。
使役する動物を自ら作ってしまうという手もある。キメラと呼ばれる手法だ。幻想郷の外の世界では娘と犬を使ってキメラを作った男の伝記本がある。この方法は高度な技術があれば確実に優秀な小間使いが手に入るのだがかの伝記本では男は碌な末路を辿ってはおらず、なんとなくパチュリーは倦厭した。
パチュリーが最良とした手法は悪魔の召喚である。悪魔は一般的に他の怪物・妖怪よりも強い力と知識を持つ。召喚者に対して一生を持ってしても得られない程の知識を与え、彼等の与える軍隊は一国を容易く蹂躙するという。と言ってもパチュリーは紅茶と本を運んでくれる小間使いが欲しいわけでそんな大それた悪魔など召喚しても契約の見返りの方が高くつく。
パチュリーが召喚しようとしているのは悪魔は悪魔でも力の弱い小悪魔である。
初心者にも簡単に使役できそれでいて従順、体は頑丈で知識も豊富、ある程度の魔力素養を持ち合わせ、召喚者の個性に合わせてカスタマイズも可能。習得言語は英語、日本語、中国語であるという。これなら紅魔館でも問題なくコミュニケーションがとれる。最も幻想郷に入る際に全員が日本語を習得している点からすれば言語の問題は日本語一点となるのだが。
こうした経緯でパチュリーが小悪魔召喚の研究を進めていたある日、陰湿な図書館に親友のレミリアが訪ねてきた。後ろ手に何かを隠し持っていたがパチュリーは特に気にも留めなかった。短剣を隠し持って来られる程の喧嘩をした覚えはとんと無い。
「相変わらず陰気な図書館ね」
親友からの言葉にパチュリーは羊皮紙に走らせていたペンを止める。
「日の光嫌う吸血鬼にとってはその方がいいでしょう?」
「そうかもしれないわね」
レミリアは椅子の埃を払ってからドカッと座った。
「今日は何の用?レミィが面白がるような本はないわよ」
「今日は私がパチェの興味を誘うような本を持ってきたのよ」
そう言うとレミリアは今まで見せないようにと後ろ手に持っていた雑誌を「ジャジャジャーン」と効果音を口ずさみながら掲げた。
それは魔女のトレンドや最新ファッションを取り扱った魔女界では有名な月刊誌。世の男どもを魅了する魔女からパチュリーのような陰湿に研究を進める魔女まで幅広く取り扱う人気魔女雑誌だ。
「パチェには多分無縁よね。こういう本は」
「そうね。そういったチャラチャラした本には興味ないわね」
「やっぱりね。パチェは硬派な魔女だもの」
そういいながらレミリアは持ってきた雑誌をパラパラと捲る。
パチュリーは書き終わった羊皮紙を整理するフリをしてテーブルの端っこに置いていた自前の雑誌をレミリアに見られないようしまった。
「ほらこのページ見て。絶対パチェも興味を持つから」
レミリアがパチュリーの前に雑誌を広げる。
「これがそんな興味深い記事だとは思わないけど」
「違うわよ。その契約魔法少女の募集記事じゃないわ。こっち」
レミリアが指さしたのはイマドキの魔女トレンド、小悪魔使役の記事である。
頭からピョコンと生えた羽、黒のブレザーにロングスカートのキュートな小悪魔がこちらに向かってウインクしていた。
「初心者にも簡単に使役できて、それでいて従順、体は頑丈で知識も豊富、ある程度の魔力素養を持ち合わせていて、召喚者の個性に合わせてカスタマイズまでできるそうよ。しかも習得言語は英語、日本語、中国語。これなら紅魔館でも問題なくコミュニケーションがとれるわ」
「……そのようね」
今まで幾度となく眺めてきた写真と謳い文句。
「どう?今魔女界ではすごい人気らしいし、パチェも使い魔に興味があるだろう?」
確かにレミリアの言うとおりであった。しかし、つい今し方「チャラチャラした」などど評してその雑誌を否定した立場上「ええ、そのつもりだったわ」とは言いだしにくくパチュリーはあまり興味なさげな反応を返さざるを得なかった。強がった報いである。
「私は今のままで満足してるから小悪魔なんていらないわ。なんかめんどくさそうだし」
そのめんどくさそうな研究をしていた羊皮紙をパチュリーはそっと引き出しに。あと二百年もすれば小悪魔ブームは時代遅れのレッテルさえ通り越して懐古の対象になるかもしれない。そうしたらこの研究書も役に立つだろう。
「そう?パチェがそういうなら仕方ないわね」
というレミリアは残念そうに背中の羽を力なく落とした。パチュリーにはその親友の反応が気になった。というよりむしろ食い付いた。
「レミィは小悪魔が欲しかったのかしら?何なら召喚しようかしら?私はいらないけどレミィが欲しいなら小悪魔の二匹や三匹ぐらい召喚するわよ。飽きたら引きとるから心配しないで」
「そうじゃないわ。私には咲夜がいるから小悪魔なんていらないけど……」
「あぁ!レミィは小悪魔がブームだから一度見てみたいわけね。親友のたっての希望なら私も重い腰を上げるわ。使用人としていらないなら折角だから私が引きとるけど」
「別にそんなに見たいわけでもないわ。それにしてもパチェ今日はよく喋るわね」
「そんな事ないわ。でもレミィが私に小悪魔を召喚して欲しいのなら私は吝かではないわよ。とだけ伝えておきたいの。私はいらないけど」
「私は別に小悪魔はいらないしパチェの負担になるような事をさせるつもりもないわ。でも……」
と、レミリアはまた力なく羽を落とした。
「何か悩みでもあるの?話なら聞くわ」
パチュリーの申し出にレミリアは「実は……」と続ける。
「私が昔世話をした悪魔に今小悪魔製造工場を経営している奴がいるのよ」
「小悪魔製造工場?」
「小悪魔を召喚して使い魔として育成する工場よ。雑誌に出ているような小悪魔はその工場で育った連中らしい。天然召喚された小悪魔はイタズラ好きでとても手に負えないらしいわ」
「あ、そうだったのね……それでっ、その小悪魔製造工場を経営してる悪魔がどうしたのかしら?」
「ん、そいつから便りが来てね。工場を見学に来ないかって誘いが来たのよ。小悪魔ブームだからそいつも鼻が高いんだろう」
「レミィは行かないの?」
「私は小悪魔には興味がないから。無理して行ってもあいつも嬉しくないだろう」
なんとなくパチュリーは親友の思惑が読めてきた。あわよくば自分を代理に立てようというつもりだったのだ。それは渡りに舟だったが、もっと直接的に言って来て欲しかったものだ。妙な強がりをしたパチュリーは内心舌打ちをした。
「それで私の所に話を振りに来たのね」
「流石パチェね。理解が早くて助かるわ。でもそのパチェがあんまり興味がないんじゃ、折角の誘いだけど断るしかないわね」
そんな事はなかった。本当は小悪魔にはとても興味があるし、むしろ欲しいのだ。工場の見学にいけば恩人のレミリアには小悪魔の一匹ぐらいお土産にくれるかもしれない。
何としても小悪魔製造工場に行く。パチュリーは決心したのである。
「レミィ、折角のお誘いなんだから断ったりしては悪いわ。レミィが行かないのなら代わりに私が」
「興味のないパチェを無理に行かせるわけにはいかないわ。やっぱり断ろうかしら」
「レミィの昔の友人なら私も一度見てみたいわ」
「アルバムに写真があったわね」
「会って話もしてみたい」
「今度紅魔館にも遊びに来るって手紙にあったわ」
「今すぐ」
「確か工場の電話番号が雑誌に」
雑誌を捲るレミリア。パチュリーは若干せき込みながら、それでもまだ諦めるわけにはいかない。このチャンスを逃せば次にパチュリーが流行りの小悪魔を手に入れるのは二百年後。昔懐かしの小悪魔愛好者として新聞の地域コラムに載せられるのは強がって生きた代償としてはやや高い。
その時、パチュリーの頭に妙策が浮かんだ。
「そうよ!レミィ、社会見学よ!フランの社会見学に工場はもってこいだわ!」
「それは確かにいいかもしれないわね。でも、フランが暴れて工場を壊したりしたら……正直私の手には負えないわ」
「レミィの手に負えなくても私なら何とかなるわ。フランの周りに小さな台風を起こす事ぐらいわけないもの」
「じゃあパチェもついてくるの?」
「当然じゃない。私達は親友よ」
「いや、いくらフランのためとはいえパチェを無理矢理連れて行く事はできないわ。やっぱり……」
と、言いかけるレミリアの肩をパチュリーががっしりと掴んだ。
「工場見学に行かなかったらフランはきっと何か大切なものを学ばないまま育つ事になるわ。そうなればレミィは必ず後悔する。レミィの後悔は私の後悔。これは私の為でもあるのよ!」
パチュリーは自分が喘息であるのも忘れて力説した。レミリアは何より肩を掴むパチュリーの力が思いの外強い事に驚きながら、頷く以外の事ができなかった。
「パ、パチェがそこまで言うのなら工場見学に行こうかしら」
「そう。それがいいわ。それが最善よ」
「……何だか嫌な予感がするけど、私もそう信じたいわ」
かくして小悪魔工場見学の当日、魔法により異界の境を越えたのはパチュリー、レミリアにフラン、それとレミリアのお付きで咲夜が同行している。
工場は魔界の地方都市からさらに郊外に立っていた。
「ようこそお越しくださいました。レミリア様」
一行を出迎えたのは赤い髪をした小悪魔といった風貌の女性であった。
「久しいわね。あの時はただの小悪魔だったのに、今じゃ『小』がとれて立派な悪魔になったそうじゃない。でも見た目は昔と変わらずね」
レミリアは再会を懐かしみ小悪魔然とした悪魔の手を握った。
「まだまだレミリア様には遠く及びません。こちらの方々は?」
と、悪魔が訊ねたのでレミリアは一通りの紹介を始めた。
「妹のフランは知ってるわよね。これはメイドの咲夜。それから私の親友のパチェ、これでも魔女よ」
「パチュリー・ノーレッジよ。よろしく」
「魔女!今、魔女界では小悪魔がブームですよ。今日は是非とも楽しんでいってください」
パチュリーは目を輝かせるのを我慢して「楽しませてもらうわ」と無表情に返す。
それがいけなかったのか、悪魔はパチュリーの顔を窺って少し表情を固くした。
「パチェは日頃から表情に変化がないのよ。気にしないでね」
「ああ!そうだったんですか。てっきり小悪魔には興味がないのかと心配しちゃいました」
そんな事はない!パチュリーは心の中で思いっきり首を横に振った。もちろんそんな様子を表に出すことなくクールを装っている。パチュリーが小悪魔には興味が無いと思っているレミリアもフォローをいれつつ苦笑いをするしかなかった。
「もし退屈でしたらこれで遊んでください。今開発中のゲームができる魔導書です」
悪魔はどこからともなく一冊の魔導書を取り出した。しかしゲームという言葉に反応したフランによってその魔導書がパチュリーの手に渡る事はなかった。
「ゲーム!私に頂戴」
飛びついたフランであったが今度は咲夜がそれを取り上げる。
「ゲームというのはどういった内容でしょうか?これは妹様の教育に関わる事なので」
「それなら私がチェックを……」
というパチュリーの声は小さすぎた。
悪魔は快活に答える。
「『艦隊こぁくま』略して『艦こぁ』という16世紀スペイン無敵艦隊の船舶を擬小悪魔化してライミー(英国海軍)を撃破するゲームですよ」
それはおもしろそうだ。と、パチュリーは思った。しかし咲夜の評価は芳しくない。
「そういった破壊衝動を感化させるようなゲームはあまり好ましくないと」
「そうですか?それなら仕方ありません」
咲夜が魔導書を返すのをフランは残念そうに眺める。それ以上にパチュリーが内心地団太を踏んでいたわけだが、真の目的は『艦こぁ』ではない。『艦こぁ』はそのうち正式版をこっそり出に入れれば済む話で、本当の目的はレミィへのお土産となるであろう小悪魔を何とかして我が物にする事である。小義に拘り大義を忘れる事がないよう自分に言い聞かせ、パチュリー達一向は工場のライン見学へと建物の門をくぐった。
「これから皆さんには小悪魔が召喚されてから一流の使い魔となるまでの工程をご覧になっていただきます」
まず案内されたのは一番最初の工程、小悪魔を召喚する現場である。
床には複雑な魔方陣が書きこまれ、黒のブレザーを着こんだ小悪魔が魔方陣の上に儀式の供物となる様々な物を置く。そして魔力を込めれば小悪魔一人が魔方陣の上に立っているという寸法である。魔術反応で欠損した魔方陣は小悪魔達がマニュアル片手に書きなおしている。
「実はこの小悪魔召喚が最も気を使います。供物にはトカゲの干物とカエルのスープを使っていますが分量を間違えると性格に難のある小悪魔が召喚されてしまいます」
「その配合をしている工程を見る事はできるのかしら?」
パチュリーの申し出に悪魔は困った顔をした。
「そればかりは企業秘密でして魔界でも調合レシピを知っているのは五人だけなんです」
召喚された小悪魔達は状況がよくわからないままベルトコンベアに乗せられて次の工程に。
「ここでは一般的な小悪魔の規格に適合しているかどうかをチェックします」
ベルトコンベアで流されてきた小悪魔達は小悪魔の手によって身長や体重、胸囲を計られている。
「まるで学校の身体測定みたいですわ」
これは咲夜の反応である。
「規格外と判断された小悪魔は強制送還用の魔方陣で実家に帰されます」
ここで適応と判断された小悪魔は一般的な小悪魔のイメージとされる黒ブレザーに着替えて次の工程に行く。
「次は基礎教育です。使い魔として最低限必要な礼義と教養を身につけます」
学校の教室のような部屋で教師然とした小悪魔がその他大勢の小悪魔に教鞭を振るっている。パチュリー達はその光景を窓の外から眺めていた。
「個人差はありますがこの工程を終えるまでに大体一年の年月を要します。つまり今小悪魔ブームで世に出回っている小悪魔は少なくとも一年以上前に召喚された者達なのです」
「紅魔館のメイド達にもこうした教育を受けさせては如何でしょう?」
咲夜の提案にレミリアは首を傾げて
「妖精に何を教えたってすぐに忘れるわよ。それに誰が教えるかっていう問題があるわ」
「私は嫌ですわ」
「咲夜が匙を投げるならもう駄目ね。それにしても、ここでは小悪魔を召喚するのも小悪魔を教育するのもみんな小悪魔ね。何だか変な感じ。もしかしてそいつらもここで育成された小悪魔なの?」
レミリアが質問すると悪魔はニコニコと答えた。
「もちろんそうです。この工場の労働力はここで育った小悪魔達です。倍々ゲームで増えて行きますから小悪魔ブームが去ったら大量の小悪魔を生かしたビジネスを展開します」
大量の妖精メイドを従える咲夜は共感めいた物を感じたのかしきりに頷いた。
「組合でも結成すれば選挙の集票組織にもなりますわね」
「魔界に選挙があればですけどね。さ、次の工程に行きましょう。ここからが面白い所です」
ちょうど一年間の基礎教育を終えた小悪魔は次の部屋にていくつかの違った工程に仕分けされている。
「基礎教育を受けた小悪魔はもう立派な使い魔ですが世の魔女さん達のニーズに応えるためにこの工場では小悪魔のオーダーメイドも取り扱っています」
それよ!
パチュリーは心の中で声を上げた。それこそ今回の工場見学において最も見るべき点である。一番の目的はお土産の小悪魔を掠めとる事。しかしながら見学という点において最も興味を誘うのはオーダーメイドで小悪魔を教育する工程である。
「お姉さま、私疲れちゃった」
水を差すようなフランの呟きもパチュリーは聞き洩らさない。
「我慢しなさいフラン。折角だから見せてもらいましょう」
まるで姉のように言い聞かせそれ以上を言わせない。
「パチュリーさんは小悪魔に大変興味があるようですね」
悪魔が質問するとパチュリーは軽く頷いた。
「私も魔女だから多少の興味はあるわ」
これはパチュリーが始めて口にした本音であったがレミリアには悪魔の顔を立てた社交辞令として映るわけで、面目を失う事なく上手く悪魔の機嫌をとってお土産小悪魔へと繋げようというパチュリーの高度な作戦である。
「でしたら折角ですので小悪魔を一人オーダーメイドして行きませんか?もちろんお代は結構です」
計 画 通 り。
パチュリーは必死に笑いを堪えていた。
その横でレミリアが首を振る。
「いや、流石にそれは悪いわ」
もちろんレミリアがこう言う事もパチュリーにはすでに織り込み済みである。
「遠慮する方が失礼よ。レミィ、折角だからお言葉に甘えるべきよ」
そのお言葉に甘えるのはパチュリーなのであるが。
「うーん、パチェがそう言うならそうしようかしら」
レミリアが同意すると悪魔の顔がパッと華やぐ。
「決まりですね。ではみなさんこちらにどうぞ」
悪魔に案内され一行は別の部屋へ。
そこでは様々なモニターに一般的な小悪魔が表示されている。
「オーダーメイド小悪魔では小悪魔の容姿から変更ができます。例えば髪の色。今一番人気はピンクのショートです」
「じゃあ、私とお揃……レミィは赤が好きだから髪の色は赤のままでいいわ小悪魔標準の」
あまり食いつくと本当は小悪魔に凄く興味があったのではないかと疑われてしまう。パチュリーはここでも強がって妥協した。本当は自分とお揃いの紫の髪がよかったのだがそれは本質ではない。
「そうですか。では赤のロングのままにしますね」
「他には何が変更できるのかしら?」
それとなく訊ねる。悪魔はモニターを操作して画面を切り替えた。
「背丈は変えられませんが胸の大きさなら何とかなりますよ。パッドですけど。あれ?後ろのメイドの方、顔が強張ってますよ」
パチュリーは画面を一通り見たがこれといったものはなかった。メイクで目を大きく見せたり頬に陰影をつけたりだとかの技術はパチュリーにはとんと理解の範疇を越えていたのである。
「身体的な変更は特にないわ」
「そうですか?特別仕様のクマ耳、こぁクマーもありますよ」
「う……」
一瞬ぐらりとしたが首を横に振った。そういうのが好きだというのがばれるのが怖かったのだ。パチュリーはあくまでも硬派なキャラを貫いた。
「パチュリーさんは見ためよりも中身で勝負するタイプですね」
言いながら悪魔はモニターを操作する。
「オーダーメイド小悪魔では魔女さんのニーズに合わせて小悪魔の個別教育を行います。小悪魔に習得させたい技能を選択してください」
画面には『画面をタッチするクマー』という吹き出し付きのこぁクマーイラスト。パチュリーはそちらに何度か目を奪われながら習得項目をチェックした。
戦闘向け項目では投擲や剣技といった物理的戦闘手段の他弾幕関連の技術も習得ができるようだ。特に戦闘をさせるつもりはないが折角なので「大玉」の項目にチェックを入れて次へ。
家事関連の項目。ここは様々な物がパチュリーの興味を引いた。美味しい紅茶の入れ方や料理の腕前、掃除の他にも事務仕事。チェック項目を読み進める度パチュリーは何度も心の中で頷いた。
静かな図書館で小説を読んでいる時、魔法研究が一段落して一息つきたい時、そんな時に淹れたての熱い紅茶とちょっとしたお茶菓子を運んでくれる小悪魔。夜寝る前にはホットココアを持ってきてくれて、飲み終わったらナイトガウンを肩にかけてもらう。朝起きたらコーンスープにサンドイッチ、それを食べながら図書館に新しく入って来た本の目録を読み上げてもらう。あぁ憧れの小悪魔ライフ。これで私もイマドキなトレンディー魔女の仲間入り。
結局家事関連の項目には全部チェックを入れる。
次に記されていたのは主に三十歳以上の魔法使いを対象にした項目であった。パチュリーは多少の興味を持って内容だけ確認しようとしたが、咲夜が覗きこんできたのでやめた。ここまで来て「フランの教育上好ましくない」という理由で取り上げられるのは御免だ。
決定ボタンを押してオーダーメイドを完了。
「パチュリーさんのオーダーメイド小悪魔承りましたー!ではオーダーメイド小悪魔の教育完了までおよそ……」
悪魔は計算結果を画面に表示させた。
「二十年です」
「二十年!?」
パチュリーはこの日初めて取り乱したような素っ頓狂な声を上げた。
「はい二十年です」
パチュリーとは裏腹に至って平然と悪魔は答えた。確かに彼女達にとって二十年とは長いようであっという間な期間かもしれない。しかしパチュリーにとっては二十年はやはり長いのだ。ブームが去ってしまうかもしれない。
そんな不安を悪魔は察したようで
「ただ、やはり二十年も待てないという魔女さんが大半でして、実はこんなものを準備しております」
案内された部屋には今まで以上にごてごてとした機械の類、いくつもの魔方陣が張り巡らされた禍々しさが漂う部屋だった。
「何だか嫌な感じだな……」
レミリアは呟くが対称的に明るい調子で悪魔が説明を始める。
「通常の教育では小悪魔を思い通りに育て上げるまで時間がかかります。しかし、この機械を使えばほんの一瞬で完了しちゃうんです」
「それは凄いわね。一体どんな仕組みなのかしら」
「これはソウルリンクマシーンと言って小悪魔の精神と召喚者の精神を一時的に繋げる機械なんです」
悪魔が喋っていると一体の小悪魔がカプセルに入った状態で一同の前に運ばれてきた。安らかな寝息を立てている。
「これがパチュリーさんの小悪魔になる予定の小悪魔です。この小悪魔にはこれからパチュリーさんの所で働く夢を見てもらいます」
「成程。夢の中で私が直に教育を施すわけね」
「その通り、そうすることで思い通りの小悪魔に育てる事が可能なんです。ただしそのためにはパチュリーさんの精神と小悪魔の精神を繋げなくてはなりません」
気付くとパチュリーの前にも人一人入れそうなカプセルが運ばれてきていた。
パチュリーがそれに手をかけると流石にレミリアは不安に思い始めた。
「精神を繋げるって危険じゃないの?」
「ご安心を。すでに百名以上の魔女さんが使用して事故なくきてますから」
「だが……」
「大丈夫よレミィ。すぐ終わるわ」
親友に声をかけてパチュリーはカプセルに入った。
「では魔方陣を起動しますのでみなさん外に」
一同が部屋の外に出て残ったのはパチュリーと悪魔、それからパチュリーの使い魔となる小悪魔だけ。閉じたカプセルの中はガスで充満されだんだんと眠気が誘われる。
パチュリーは顔を横に向けた。そして隣のカプセルで眠る小悪魔に向かって微笑みかけた。
やがてパチュリーは自分の意識が大図書館にある事に気付いた。
「ところでお嬢様。あの悪魔さんとはどのようにして出会ったのですか?」
パチュリーを待つ隣室。すっかりくたびれて寝息を立てるフランは咲夜の背中の中。妹をあやす従者にレミリアは遠い過去を思い出しながら答えた。
「悪い魔女に奴隷のようにこき使われていた所を助けたのよ」
「お嬢様が人助けですか?」
「意外?でもそうしたくもなるわ。あれは酷いものだった。暫くは世の中の魔女を根絶やしにするとか言ってたわ。それを思うと変わったものね」
「私もお嬢様にお会いして人生が変わりましたわ。もしかしてお嬢様会う人会う人みんな運命弄ってます?」
やはりレミリアは何か奇妙な不安感を拭いきれずにいた。
しかし、そんな不安もパチュリーと悪魔が何事もない無事な姿で出てくると杞憂に過ぎなかったような気がした。
「全てのオーダーメイドは無事に終わりました。完成した小悪魔は三日後に転送魔法で送り届けますね。転送の魔方陣はパチュリーさんに教えておきましたから」
悪魔が快活に説明するとパチュリーは静かに頷く。その表情は今日始めて笑っているようにレミリアには思えた。
それから三日後、レミリア立ち会いのもとパチュリーが魔方陣を描いていた。転送の魔方陣は予定通りの時間になると白く輝き始める。
その眩しい閃光の中に一人の小悪魔が立っていた。
――ここは……
いかにも小悪魔らしい風貌と服を身に纏った正真正銘の小悪魔。
頭がボーっとするのを感じながら小悪魔は目の前に二人の人物を捉える。そのどちらが自分の主人なのか小悪魔は誰からも聞かされていなかった。しかし、小悪魔は視界の中心にパチュリーの姿を捉えて離さなかった。名前も容姿も知らない。それでも主人だと解っている事に小悪魔は別段疑問を差し挟むことなどなかった。
「ふーん、これがパチェの小悪魔ね。なんとなくパチェに似た雰囲気があるわ」
そう語るのは主人ではない方。
小悪魔は彼女の名を知っている。レミィ。主の友人。
――私は、小悪魔?
「似てるだなんてそんなわけ。気のせいよ」
主となる少女は一歩前へと進み出て手を翳す。
「今日からあなたを使役する魔女。パチュリー・ノーレッジよ」
小悪魔は新しい主を前にして緊張しているのか。体を強張らせ、そしてまだ上手く喋れないでいた。
「あ、あの……」
――私が
振るえる唇。パチュリーは優しく小悪魔の肩を抱く。
「楽にしていいのよ。まだ慣れてないだけでしょうから。それとも私の後ろにいるのが怖いの?心配しなくてもみんな優しくしてくれるわ」
「パチェ、あんまりの云い様ね。私はそんなに怖くない」
――違う。レミィ違うの
しかし小悪魔の口をついたのは彼女の心とは違う言葉。
「私は……小悪魔です。主、パチュリー様に召喚された忠実なる使い魔」
――そうじゃない!私は小悪魔じゃない!レミィ助けて!
パチュリーは微笑んだ。
「その通りよ。これからしっかり働いてもらうから。パチュリー・ノーレッジは小悪魔を召喚するために悪魔に魂を売ったのだもの」
――私は……
小悪魔は主の前に膝をついた。誰がそうしろと命じたものでもない。ただ、体がそう動いた。
踵を返すパチュリーの背中は正しく主のそれであり、
――私は、小悪魔?
小悪魔の意識は正しく小悪魔のそれとなった。
悪魔が相手なら尚更だ。
悪魔らしくえげつないやり方で面白かったです。
悪魔怖すぎィ!
ショートショートのお手本のような素晴らしいオチと退屈させない話の運びが上手く、読んでよかったと満足できる作品でした
期待とはちょっと違いましたが
ああ、恐ろしい……
面白かったんだけど勘弁してほしいぜ。
きますねw面白かったです。
タイトルの抜群の吸引力と、星新一チックなビジネスの話とかコメディ的内容で安心してたらオチまで後に不安をあおる様なモノだとはw
最初から最後までがオチへの伏線なんだけど、何の違和感もないからすっかりのめりこんでしまった。
こりゃパチェも騙されるわ。
悪魔が悪魔らしいのは、なかなかに恐いものです。
とても面白かったです。
うまい落ちを考えましたねぇ。
とても良かったです!!
面白いなあ。
今回からコメント返信していこうと思っていたら予想外の反響の多さに面喰ってます。
全コメに返信できる程マメではないのでおおまかに。
>悪魔怖い 等のコメントを戴きました皆さんへ
こういう悪い小悪魔は結構好きなんです。良い小悪魔も好きなんですが悪いのもいいですよね。
>コメディパート小ネタが良かった。飽きない展開だった。 旨のコメントを頂きました皆さんへ
そう言って頂けると嬉しいです。今回はギャグ話を展開している裏側でこっそり進行する本編というのが1つのテーマ。まことに楽しく書く事ができました。
>オチが良い。 旨のコメントを頂きました。
冥利に尽きます。一枚どんでん返しをしないと気が済まない性質は昔からです。次は安心して読めるお話を書きたいです。
>パラシュートの話
つまり成功してるという事はそう言う事ですからね。「苦情は一件もありませんよ」
こんな形のコメント返信で申し訳ないですがこれで。
また創想話でお目にかかれれば幸いです。
悪魔怖い。
非常に点数を貰いやすそうな作りですね。勿論褒め言葉です。
まずタイトルが良いですね。「憧れの小悪魔製造ライン見学会」。ん? なんだこのタイトル。
パチュリーの一貫してブレない姿勢。パッチェさんも頑固だなぁ。
随所に入る、不快にならない程度の小ネタ。ああ、僕と契約して~なんてのもあったね。
……そして、それを全部吹き飛ばすような、ラスト。
ラストに繋がる伏線も撒いてありますし、何とも悪魔的で説得力もあります。
>すでに百名以上の魔女さんが使用して事故なくきてますから
このあたりの言い回しいいですね。「仕様」なのですから事故にはなりようがない。
ただ一点だけ言うならば、タイトルで期待した
「たくさんの小悪魔がわたわたと動くさま」が見られなかったところですかね。
これは勝手な好みですので気になさらないで下さい。