PROJECT X PHANTASM
第1話、第2話(上) 等
第2話 犬鍋(中)
☆☆☆
西方村という名の村がある。
大都会である”西の都”から、近くもなく遠くもない、微妙な所に位置する小さな村だ。
主産業は農業の村だ。
名所や名産が何も無いつまらない村だ。
バスや鉄道といった、公共交通機関が無い村だ。
主要道路から外れ、訪れる者がほとんどいない村だ。
若いモンは見切りをつけ、都会へ出ていく、所謂過疎化が進む村だ。
そんな良い所が何も無い寂し過ぎる村に、赤い髪の女性が引越して来た。
女性の名は、ホン・メイリン。
村の住人達はどちらかと言えば、余所者に対し排他的であった。
しかし、歳若く見えて、美人であり、器量良しであるメイリン。
村人達の中に打ち解けるまで、時間はさほどかからなかった。
そして、メイリンが村に住むようになって1年程たったある日、メイリンは”運命”と出会う……。
☆☆☆
うららかな日の昼時。
メイリンは、昼食をとるために自宅へと歩いていた。
ちなみに、メイリンの現在の職業は、農家である。
過疎が進んだ西方村には、耕作放棄地がたくさん有り、格安で借りることができるのだ。
自宅からほど近い農地を借りた彼女は、毎日のように畑へと通っていた。
朝早く、そして夜遅くまで働き、また、年寄りの仕事も手伝うメイリン。
裏表がなく、誰にでも優しく接し、働き者のメイリンのことを、村人達は好意を抱いていた。
その為、メイリンは村人とは誰とでも仲が良く、特に仲が良いのは、近所に住むシムラ婆さんである。
シムラの趣味は花の栽培であり、家の正面の通りに面して育てているバラをしょっちゅういじっていた。
そして今日もせっせとバラの枝を剪定しているシムラに、メイリンは声をかける。
「シムラさん、精がでますね」
「おや、メイリンちゃん。 相変わらず、べっぴんさんだべや~。 オラの孫の嫁さ、なってくれねぇか~?」
「え、え~と、私なんかとても……。 あ、可愛いワンちゃんですね!」
唐突に言われたことに戸惑うメイリン。
話題を摩り替えようとした彼女の目に留まったのは、シムラの足元で放置プレイされている手足を縛られた子犬だ。
その子犬は、お目々がクリクリしており、毛並みは全身真っ白で、大きな尻尾がふもふもしており、なんとも可愛らしい。
「ん~? ああ、ウチの納屋に野良犬が住み着いてたみたいでな~。 納屋でコイツを産んだダヨ~。 ウチにはポチがいるから、もうこれ以上犬はいらなくての~。 剪定が終わったら川にでも捨てに行くつもりなのよ~」
「えっ!? それを捨てるなんてとんでもない! ……その子、私に頂けませんか?」
「いいとも、いいとも~。 笑っていいとm(ry! 野良ちゃん、良かったの~。 ドザえもんにならなくての~。 メイリンちゃんに可愛がってもらいなよ~」
「はい! 大切に育てますね! よ~し、アナタの名前はメンチ。 よろしくね!」
「安くて、油っこくて、美味しそ~な名前やね~。 今日の晩飯はメンチカツにでもしようかね~。 あ、回覧板も持っててチョ~だい!」
☆☆☆
シムラとの会話をそこそこにし別れ、メンチを抱きかかえたメイリンは自宅のドアを開けた。
メイリンの家は、赤い屋根が映える築30年程の木造住宅だ。
元々、年老いた夫婦とその息子(職業:自宅警備員)が住んでいたが……。
行先に絶望した父親が、シエスタ(昼寝)中の息子を猟銃で射殺。
息子の死体を抱いて泣きじゃくる妻も射殺。
そして、父親も銃身を咥え、おフェ〇豚となった自分を自分で射殺。
住む者達が凄惨な最期を遂げたその家は、心中した一家の親戚により売りに出された。
価格はかなり安かったが、寂れた村にある上に、所謂『事故物件』の為、全然買い手がつかなかった。
曰くつきの物件価格は、メイリンが購入時には、ユキチ君数枚分にまで安くなっていた。
「結婚か……」
リビングの机の上に、メンチを載せ、椅子に座ったメイリンは、おもむろにドス黒くなった血がこびりついたままの壁を見つめた。
世俗に疎いこの村だ。
シムラや他の村人達は想像だにしないだろう。
メイリンが世界を渡り歩き、猛者達と対戦してきたストリートファイターだったということに。
それだけではない。
メイリンのストリートファイター暦は数百年であり、付いたあだ名は”不死の(ノスフェラトゥ)メイリン”。
ストリートファイター達の間では伝説的存在のファイターである。
そう、メイリンの外見はどこから見てもヒトだが、妖怪であり、数百年もの間、放浪の旅を続けているのだ。
だが、時折今のように人間社会に混じって暮らすことがある。
不老なので歳を経ても外見が変わらない為、同じ地に長く留まることが無理であっても。
妖怪のメイリンが何故このような行動をとるのか。
それは、メイリン自身、よく分かっていない。
メイリンが物思いにふけっていると、お腹が空いたのだろうか、メンチがご飯をねだるかのように鳴く。
「ヒャン! ヒャン!」
「あらあら。 ……”非常食”にしようか迷ったけれど、やっぱりガマンできない! お腹が空いたから、すぐに私の食事にするからね!!」
メンチを抱いて台所に向かうメイリン。
30分後、鍋を持ってリビングに戻ってきたメイリン。
鼻歌を唄いながら、鍋をテーブルの上に置くメイリン。
手を合わせてから、満面の笑みを浮かべて鍋の蓋を取るメイリン。
鍋はお肉たっぷりであったが、アッというまに平らげたメイリン。
「ああ、おいしかった~♪ ……うん、メンチは逃げちゃったことにしておこう。 さてと……」
メイリンは空になった鍋と食器を片付け、シムラから受け取った回覧板に目を通す。
「ふむふむ……。 ”ゆらぎ”から現れたドラゴンによって、隣村が壊滅しました。 ドラゴンは逃走中なので、ご注意下さい……、か。 ……? 外が騒がしいような……」
「か、怪物だー!!」
☆☆☆
悲鳴を聞き、家を飛び出したメイリンが見たモノ。
「トカゲ!? ……違う!」
それは、トカゲと言うにはあまりにも大きすぎた。
体が大きく、皮がぶ厚く、目方が重く、そして圧倒的すぎた。
それは、正にドラゴンだった。
「キシャァァァ~!! (※訳: ヒャッハー! 汚物は消毒だ~!!)」
ドラゴンは、トチ狂ったように火を吹きまくっていた。
火は次々と村の家々に燃え移り、のどかな村は灼熱の地獄へと化す。
「へ、へぁ~。 家がぁ~。 家がぁ~」
シムラの家もド派手に炎上し、家の前でシムラ婆さんが泣き叫んでいた。
長年暮らした愛着いっぱいの家を失うショックによるためか、シムラは背後に近づくドラゴンに気付かない。
ドラゴンは、その大きな口を開ける。
「ブロロロロ! (※訳: いただきマンモス!)」
「シムラさん、うしろー! ええい、気功拳!!」
メイリンは、ドラゴンへ向かって掌を突き出しオーラを放出した。
放出された念弾は、ドラゴンに命中!
「グルルル? (※訳: あ~?)」
ドラゴンは、念弾が飛んできた方向、メイリンへと注意を向けた。
さほどダメージを与えることはできなかったが、シムラが捕食されるのを見事防ぐ。
「竜退治は、もう飽きたというのに……ッ! しょうがありません、快ホウ!」
メイリンは、妖怪であると同時に、強化系の念能力者だ。
しかも、素手で何匹ものドラゴンを屠った凄腕のストリートファイターである。
全身にオーラをまとうと、姿が見えなくなるほどの速さでドラゴンのアゴの下へと踏み込む。
「行きますよッ! 蛇翼崩天刃!!」
蛇翼崩天刃(じゃよくほうてんじん)。
中二病まるだし全開の技名であるが、発生から画面暗転まで全身無敵である強力な蹴り技だ。
メイリンは技名を叫びつつ、踏み込みながら体をひねり、ドラゴンのアゴめがけて、足を勢いよく上げ、鋭い蹴りを放つ。
「ガァッ!? (※訳: あべし!?)」
オーラによって強化された蹴りの威力はバツグンで、ドラゴンのアゴを砕き、その巨体を上空へと高く打ち上げた。
空中で完全に無防備となったドラゴンに向かい、メイリンは追撃をかけるべく跳ぶ。
「トオ!! 天に輝く七星よ! 七星閃空脚!!」
「グギャアアアーーッ!! (※訳: ひでぶっ!!)」
メイリンの渾身の飛び蹴りは、ドラゴンの胸部を貫く。
心臓を貫かれたドラゴンは、断末魔を上げて逝った。
「へぇ~、蹴りでドラゴンを仕留めるなんて、なかなかやるじゃないの」
「なッ!? 」
異様なオーラに気付き、メイリンがそちらに目を向けると、テイクアウトしたくなるような、かぁいい幼女が浮かんでいた。
コウモリの翼を背に生やした飛行幼女は、嗜虐的な笑みを浮かべながらメイリンへと突撃する。
「ねえ、赤髪。 私とも手合わせ願おうかッ!」
HERE COMES A NEW CHALLENGER!
☆☆☆
<次回予告>
バチュリー特製の『魔導器・妖精の素』。
妖精を召還するステキな魔導器さ!
やり方は、とってもカンタン!
レミリア
「ねって、ねるねるねる~♪ う~☆」
妖精の素に水を混ぜ、よ~くねってからオーラを込めるだけ!
『魔導器・小悪魔の素』もヨロシク!!
エクセルネタや格ゲネタも、入れたから面白くなるってもんでもない
次回頑張って下さい
次回もネタだらけになる予定です。(汗)
それで+10点です。
ここまで来たらどこまで突っ走ってくれるか見てみたいですね。
点数にはあまり反映されないかもしれませんが……。