何故私は箒に乗り続けるのか?だと。
そうだな。確かにその気になれば箒に乗らずとも他の手段を用いて、お前みたいに人間でありながら自由に飛べるかもしれないな。魔法ってのはすごいから。
だが私は箒以外の方法で飛ぶ気なんて一切無いね。
理由?あるに決まってるだろ。
んー…まあいいぜ、今日は何かする気分でも無いし、話してやるよ。
その代わり、茶をくれ。
私を指してガサツ、無神経、能天気にやりたい放題にその他諸々、言いたい放題言ってくれる奴等がいるだろ?
ちょっと傷つくこともあるがありがたい話だよな。私が私の生きたいように生きてる証拠みたいなもんだから。
たまに本当にただの暴言も混じってるが。
短い人生、暗い顔して陰気に生きててもしょうがないだろ?
だが今でこそそんなことを言ってるが、私にだって落ち込みたくなることはあった。
それもどん底もどん底。真剣に死ぬことを考える程に、だ。
それがいつのことだったかは忘れたが、とにかく魔法使いになる前の頃だ。なんせその件があったからこそ魔法使いになるわけだからな。
その時私は…なんでだかな、酷く沈んでた。本当に死にたいと思ってたよ。
あの時以外は考えたことも無いが、とにかくあの時は本当に死にたかったんだ。
そんな死にたがりの私は、森の、普段は入らない奥の方まで入って行った。人食い妖怪でも、変な病気を持った獣でも、遭難して餓死でも霊に呪い殺されるでも崖から落ちるでも、なんでもいいから死にたかった。
だが死ねなかった。
怖くて引き返した?馬鹿言え。そんなわけないだろ。今も昔も私はそんな半端な気持ちで行動したりしないよ、死ぬ程落ち込んでようがな。
気がついたら森を抜けてたんだ。服も髪もボサボサのボロボロで目は虚ろ。あの時の私は見る奴が見たら亡霊かなんかと勘違いされてただろうな。生きてるけど。
森を抜けた私はまだ死にたかったんだが、そんなボロボロになるくらいだ。森の中は結構ハードでな、もう疲れ果ててたんだよ。まだ少女も少女。筋金入りの普通の少女だったからな。当然だな。
そんな普通の少女でありながら単身森を抜けるんだから私は大した奴だよ。
自画自賛はやめろだと?嫉妬は醜いぜ、すごい所は素直にすごいと褒めろよ。
なんだよその顔。別に私は話さなくったっていいんだぜ?今回はこの茶に免じて許してやるけど。
どこまで話したっけか。
そうそう、森を抜けた私は満身創痍になりながらもまた森の中に戻ろうとしたんだ。もう一度入れば今度こそ…ってな。
だがまあ体は正直だよ。私はそこに倒れちまったんだ。こう、仰向けに、大の字になってな。
妙に広い所だったよ。もう一人ボロボロになって倒れてる奴がいれば、場所も相まって殴り合いの決闘した後の、清々しい光景に見えたかもな。
少女が二人ボロボロで倒れてたら暴漢に襲われたように見えるか。確かにそうだな。あの時の私は目が虚ろだったろうし、そっちの方が近いかもしれん。
仰向けになりながらも、私は死ぬことを考え続けたよ。何とか起き上がって森に入る。もしくは這ってでも、転がってでも森に…だが体は動かない。私に出来るのは目を開いて空を見上げるか、目を閉じるか。その二択だけだった。
体は疲れきっていたわけだが、不思議と眠くはなかった。眠れれば何も考えないでも寝てる間に獣に襲ってもらえるかもしれないのにと歯ぎしりもした。
とにかく眠れないもしない動けもしないでどうにもならん。仕方がないから隕石でも降ってきて私を押し潰してくれと願ったよ。
で、その願いは叶うことになる。
一応な。
星が流れた。それは一瞬、本当に一瞬で消えてしまったが、それだけでよかった。
流れ星を見た瞬間、私を満たしていた黒い物。死にたいって気持ちが、あっという間に消えてしまった。
何を言っているかわからないだと!?お前流れ星見たこと無いのか!
なんて哀れな奴だ…。
妖怪と酒と宴会の事しか考えないで外に出るからそうなるんだよ。今度から外に出る時はもっと空を見上げてみろよ。あれは、本当に素晴らしい物なんだぜ。
私はあれを見て、文字通り人生が変わったんだ。
心の底から死にたいと思っていた私が、今こうして生きているのはあの流れ星のおかげだよ。お前は、言い過ぎとか、大袈裟とか言うんだろうが、これは本当に、紛れもない事実だ。
あの流れ星で、死にたがりの馬鹿な少女は望み通り死んだのさ。
生きたいと思いはじめた私は、寝ることにした。体が動かないんじゃどうにもならないからな。
しかし生きたいと思うと途端に怖くなってくる。寝てる間に獣がやってきて襲われてしまうのではないかとか、寝たら二度と目覚めないんじゃないか、とかな。さっきまで望んでいた事が、今度は不安でしょうがなかった。疲れてるから結局寝るんだけど。
まあ何事もなく私は目覚めた。そして来た時と同じように森の中に入った訳だが、やはり生きたいと思ってるから何もかもが怖い。死のうとしてなきゃ、まず近寄らない場所だからな。
幸い、抜けるまで危険な事なんて何一つ無かったし、道に迷う事も無かった。
あの流れ星の、星の導きだと思ったもんだよ。普通の少女らしくてかわいいもんだろ?
そうか、笑うか。お前にはそういう可愛げってものが本当に無いな。
素敵だよ、ホント。
森を抜けて帰った私は、環境を一変させる事にした。同じ生活に戻ったら、また同じ様に死にたくなるかもしれないからな。
環境を変えて生まれ変わった私は、色々やったなあ…懐かしいぜ。まあその辺は割愛して。
何でだったかな…ちょっと忘れちまったが、箒に乗って飛ぶ方法が書かれた本を見つけてな。本に乗っているその姿は、まるで流れ星のようだった。
同じ様に箒に乗る私を想像したら、まさに流れ星だったね。
そして私は、魔法使いになることを決意したよ。
それから適当に特訓なんかしてな、マジックアイテムを集めたりして。私は魔法使いになった。
魔法使いになって初めて箒に乗った時、あまりに気分がよくて思わず泣きそうになったよ。あの時の感覚は、今でも思い出せる。
流れ星になりたくて、箒に乗ったわけだが憧れとか関係無しに箒に乗るのは純粋に楽しくて、気分がよかった。
だがやはり箒と共にあれば、私はあの流れ星のようになれる。だから私は箒に乗り続けるのさ。
箒以外でも気持ちよく飛べるかもしれないが、流れ星にはなれないからな。
だから私は箒に乗り続ける。箒に乗り続ける限り、私はあの流れ星を描き続けられるから。
私に、生きる希望をくれたあの流れ星を。
どうだ?いい話だったろ。お前も箒に乗って流れ星になりたくなったんじゃないのか?
ふふん。なんなら、私がお前の希望を描く流れ星になってやろうか?
あ!?な、なんだよそれ!冗談に決まってるだろ!プロポーズなんてするわけあるか!
せっかく誰にも話したことないとっておきの話をしてやったのに!なんだよこの仕打ち!あー、もう!帰る!
くそっ、覚えてろ!いつか私の箒で、流れ星を見たことの無い哀れなお前にその素晴らしさを伝えてやる!絶対にな!!
そうだな。確かにその気になれば箒に乗らずとも他の手段を用いて、お前みたいに人間でありながら自由に飛べるかもしれないな。魔法ってのはすごいから。
だが私は箒以外の方法で飛ぶ気なんて一切無いね。
理由?あるに決まってるだろ。
んー…まあいいぜ、今日は何かする気分でも無いし、話してやるよ。
その代わり、茶をくれ。
私を指してガサツ、無神経、能天気にやりたい放題にその他諸々、言いたい放題言ってくれる奴等がいるだろ?
ちょっと傷つくこともあるがありがたい話だよな。私が私の生きたいように生きてる証拠みたいなもんだから。
たまに本当にただの暴言も混じってるが。
短い人生、暗い顔して陰気に生きててもしょうがないだろ?
だが今でこそそんなことを言ってるが、私にだって落ち込みたくなることはあった。
それもどん底もどん底。真剣に死ぬことを考える程に、だ。
それがいつのことだったかは忘れたが、とにかく魔法使いになる前の頃だ。なんせその件があったからこそ魔法使いになるわけだからな。
その時私は…なんでだかな、酷く沈んでた。本当に死にたいと思ってたよ。
あの時以外は考えたことも無いが、とにかくあの時は本当に死にたかったんだ。
そんな死にたがりの私は、森の、普段は入らない奥の方まで入って行った。人食い妖怪でも、変な病気を持った獣でも、遭難して餓死でも霊に呪い殺されるでも崖から落ちるでも、なんでもいいから死にたかった。
だが死ねなかった。
怖くて引き返した?馬鹿言え。そんなわけないだろ。今も昔も私はそんな半端な気持ちで行動したりしないよ、死ぬ程落ち込んでようがな。
気がついたら森を抜けてたんだ。服も髪もボサボサのボロボロで目は虚ろ。あの時の私は見る奴が見たら亡霊かなんかと勘違いされてただろうな。生きてるけど。
森を抜けた私はまだ死にたかったんだが、そんなボロボロになるくらいだ。森の中は結構ハードでな、もう疲れ果ててたんだよ。まだ少女も少女。筋金入りの普通の少女だったからな。当然だな。
そんな普通の少女でありながら単身森を抜けるんだから私は大した奴だよ。
自画自賛はやめろだと?嫉妬は醜いぜ、すごい所は素直にすごいと褒めろよ。
なんだよその顔。別に私は話さなくったっていいんだぜ?今回はこの茶に免じて許してやるけど。
どこまで話したっけか。
そうそう、森を抜けた私は満身創痍になりながらもまた森の中に戻ろうとしたんだ。もう一度入れば今度こそ…ってな。
だがまあ体は正直だよ。私はそこに倒れちまったんだ。こう、仰向けに、大の字になってな。
妙に広い所だったよ。もう一人ボロボロになって倒れてる奴がいれば、場所も相まって殴り合いの決闘した後の、清々しい光景に見えたかもな。
少女が二人ボロボロで倒れてたら暴漢に襲われたように見えるか。確かにそうだな。あの時の私は目が虚ろだったろうし、そっちの方が近いかもしれん。
仰向けになりながらも、私は死ぬことを考え続けたよ。何とか起き上がって森に入る。もしくは這ってでも、転がってでも森に…だが体は動かない。私に出来るのは目を開いて空を見上げるか、目を閉じるか。その二択だけだった。
体は疲れきっていたわけだが、不思議と眠くはなかった。眠れれば何も考えないでも寝てる間に獣に襲ってもらえるかもしれないのにと歯ぎしりもした。
とにかく眠れないもしない動けもしないでどうにもならん。仕方がないから隕石でも降ってきて私を押し潰してくれと願ったよ。
で、その願いは叶うことになる。
一応な。
星が流れた。それは一瞬、本当に一瞬で消えてしまったが、それだけでよかった。
流れ星を見た瞬間、私を満たしていた黒い物。死にたいって気持ちが、あっという間に消えてしまった。
何を言っているかわからないだと!?お前流れ星見たこと無いのか!
なんて哀れな奴だ…。
妖怪と酒と宴会の事しか考えないで外に出るからそうなるんだよ。今度から外に出る時はもっと空を見上げてみろよ。あれは、本当に素晴らしい物なんだぜ。
私はあれを見て、文字通り人生が変わったんだ。
心の底から死にたいと思っていた私が、今こうして生きているのはあの流れ星のおかげだよ。お前は、言い過ぎとか、大袈裟とか言うんだろうが、これは本当に、紛れもない事実だ。
あの流れ星で、死にたがりの馬鹿な少女は望み通り死んだのさ。
生きたいと思いはじめた私は、寝ることにした。体が動かないんじゃどうにもならないからな。
しかし生きたいと思うと途端に怖くなってくる。寝てる間に獣がやってきて襲われてしまうのではないかとか、寝たら二度と目覚めないんじゃないか、とかな。さっきまで望んでいた事が、今度は不安でしょうがなかった。疲れてるから結局寝るんだけど。
まあ何事もなく私は目覚めた。そして来た時と同じように森の中に入った訳だが、やはり生きたいと思ってるから何もかもが怖い。死のうとしてなきゃ、まず近寄らない場所だからな。
幸い、抜けるまで危険な事なんて何一つ無かったし、道に迷う事も無かった。
あの流れ星の、星の導きだと思ったもんだよ。普通の少女らしくてかわいいもんだろ?
そうか、笑うか。お前にはそういう可愛げってものが本当に無いな。
素敵だよ、ホント。
森を抜けて帰った私は、環境を一変させる事にした。同じ生活に戻ったら、また同じ様に死にたくなるかもしれないからな。
環境を変えて生まれ変わった私は、色々やったなあ…懐かしいぜ。まあその辺は割愛して。
何でだったかな…ちょっと忘れちまったが、箒に乗って飛ぶ方法が書かれた本を見つけてな。本に乗っているその姿は、まるで流れ星のようだった。
同じ様に箒に乗る私を想像したら、まさに流れ星だったね。
そして私は、魔法使いになることを決意したよ。
それから適当に特訓なんかしてな、マジックアイテムを集めたりして。私は魔法使いになった。
魔法使いになって初めて箒に乗った時、あまりに気分がよくて思わず泣きそうになったよ。あの時の感覚は、今でも思い出せる。
流れ星になりたくて、箒に乗ったわけだが憧れとか関係無しに箒に乗るのは純粋に楽しくて、気分がよかった。
だがやはり箒と共にあれば、私はあの流れ星のようになれる。だから私は箒に乗り続けるのさ。
箒以外でも気持ちよく飛べるかもしれないが、流れ星にはなれないからな。
だから私は箒に乗り続ける。箒に乗り続ける限り、私はあの流れ星を描き続けられるから。
私に、生きる希望をくれたあの流れ星を。
どうだ?いい話だったろ。お前も箒に乗って流れ星になりたくなったんじゃないのか?
ふふん。なんなら、私がお前の希望を描く流れ星になってやろうか?
あ!?な、なんだよそれ!冗談に決まってるだろ!プロポーズなんてするわけあるか!
せっかく誰にも話したことないとっておきの話をしてやったのに!なんだよこの仕打ち!あー、もう!帰る!
くそっ、覚えてろ!いつか私の箒で、流れ星を見たことの無い哀れなお前にその素晴らしさを伝えてやる!絶対にな!!
しかし、魔理沙が死にたくなるような出来事って何だったのか……?
いい事を思い出させてくれたSSに100点。
それはともかくとして、面白かったです
彗星規模の流れ星、それだけ魔理沙の流れ星に対する想いは強いということですね。
流れ星見たのは小学生の時に行ったキャンプの時だけですね。
山でしたから綺麗に見えました。
良い作品でした。
そもそも星自体、最近見えないもんなあ。見えたところで、流れ星を待って上をぼうっと見上げることもないし。
とまれ、いいお話でした。
だけど、魔理沙が流れ星を見て感動した、という部分があっさりしすぎていてちょっと拍子抜けした感じ。その流れ星はどういうもので、どういう部分が魔理沙にそこまでの影響を与えたのか伝わってこなかったのが残念。
箒で飛ぶ理由をこのように理由付けする作品は初めて見ました。
もしかしたら本筋と関係ないと思って削ったのかもしれませんが、
魔理沙が死にたくなっていた理由や流れ星を見た時の魔理沙の心の動きなどを書き込んでくれると、
より説得力があったかもしれません。