PROJECT X PHANTASM
第1話 等
第2話 犬鍋 (上)
こんにちわ~。
随分とお疲れの上に、お悩みを抱えておられるようですね~。
もしよろしければ、貴女の悩み事を私にお聞かせください。
おっと、これは失礼。
申し遅れました、私の名は喪〇福〇。
セールスマンをしております。
私が取り扱う品物はココロ。
心でございます。
世の中、貴女のように悩みを抱えている方は大勢いらっしゃいます。
そんな皆様のココロのスキマを、お埋めします。
いいえ、お金は一銭も頂きません。
お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございますゆえ。
さあ、ご相談にのりましょう。
━━それはそれは、災難でしたな~。
飢饉ですか……。
村中に人骨が大量に散らばっているのは、村人同士で共食いをしたからだったんですね。
それにしても、人に犬の頭部を模した被り物を付けてから殺害し、その肉を鍋で煮込んで、”犬鍋”と称して食べちゃうなんて……。
家族や仲間……、そう、人間を食べるという行為に対する良心の呵責を少しでも減らそうとするそのセコさ、泣かせる話じゃありませんか~。
で、貴女は、ご自分の娘さんも”犬鍋”にして食べちゃったんですね。
ああ、泣かないでくださいよ~。
極限状態だったんですから~。
食欲、いえ、生への渇望が、我が子への愛情を超越したことに対し、誰も貴女を責めることはできません、って。
まあ、この話を聞けば、「まさに外道!」と罵る心無い方がいるかもしれませんがね~。
ほら、このハンカチをお使いください。
涙と鼻水と返り血で、キレイなお顔がグッチャングッチャンじゃありませんか~。
よっぼど、娘さんのことを大切にされていたんですな~。
ほほう……、娘さんの髪の毛は、貴女と同じくキレイな赤髪で、それをお団子にしていたんですか。
それはそれは、さぞかし可愛らしい娘さんだったんでしょうな~。
ほら、よく言うじゃありませんか。
食べちゃいたいくらいカワイイ、って~。w
あっ……、食べちゃったんでしたっけ。w
貴女の胃袋に収まった、親孝行な娘さんにカンパーイ!w
ホーホッホッホッホ~!!w
━━そう言えば、貴女は鬼畜同然の行為をしてしまったので、人間でいることが耐えられないとおっしゃられましたね?
種族『魔法使い』になるための『捨虫の法』。
厳しい修行を積み、仙人や天人を目指す道。
飲めば不老不死になれる『蓬莱の薬』。
『リッチ』にクラスチェンジできる『死者の指輪』。
などなど……。
古今東西、世界の境界を越えて、ニンゲンを”卒業”するための方法はたくさんございます。
……貴女は本当に運がよろしいですよ。
生への執着の為に、実の娘を喰らった、そのおぞましい業。
妖怪に転生する資格を十分に満たしておりますよ。
さあ、あと一歩を”押して”さしあげましょう!
ドーン!!!
━━妖怪に生まれ変わったご気分は、いかがですか~?
そうそう、サービスで、ニンゲンであった頃の記憶は封印しておきましたよ~。
辛い記憶は無い方が良いですものね~。
それほど強い封印ではないので、何かのキッカケで思い出されてしまうかもしれませんが……。
やり過ぎると、くるくるパーになる可能性が高いンですよ~。w
あ、そうだ。
お手数をお掛け致しますが、この水の入ったコップを両手に持って、強く念じてみてください。
お~、水が溢れる~、溢れる~。
貴女のオーラの質は、強化系ですか……。
残念です~。
なかなかの素質をお持ちの方のようでしたのに。
実は、私、有給休暇を全然使っていないんです。
で、溜まった分の1万と2千年分の有給休暇を早く使うようにと、 ”上” から言われていまして。
私の仕事を引き継いでくれる方を探しているんですよ。
いえね、数多のお客様の所へ訪問する為には、 『世界』 や 『時間』 の 『境界』 を越えなければなりません。
ですから、 『スキマ』 を操れるようになって頂かないと、お話になりませんので、出来れば操作系、もしくは、操作系と相性の良い放出系か特質系の方。
さらに欲を言えば、最低でも 『結界の境目が見える程度の能力』 をお持ちの方が望ましいのですが……。
どこかにいらっしゃいませんかね~。
……さてと、そろそろ 『別世界の西暦21XX年 京都』 へ行かなければなりません。
ホン・メイリンさん、妖怪として素晴らしい人生、もとい、妖生を歩むことをお祈りしていますよ~。
ホーホッホッホッホ~!!w
☆☆☆
胡散臭い笑みを湛え、黒い帽子を被り、黒いスーツを着たセールスマンに妖怪にされたホン・メイリン。
長い寿命と老いることの無い肉体を手に入れた彼女は、レミリアと出会うまでの数百年間、世界をさすらうのであった……。
コメントを書いて頂き、ありがとうございます!
分類タグを変更致しました。
題材は好み
まあアリだと思った、過去話がシリアスなのは鉄板だけど好み
(下)は、会話を盛り込むタイプのSSの予定です。
ギャグとシリアスが上手く混ざり合ったSSを目指したんですが……。(汗)
非常に混沌とした印象を受けました。
これはこれで作品の味が出ているような気もします。