Coolier - 新生・東方創想話

友情は見返りを

2013/08/05 01:03:24
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 今になって思い出す。あの日の自分、そしてお前。
 自分が怖くて、他人が怖くて、何処ともなく逃げ出した。

 走り疲れてしゃがみ込んだ自分。
 それを見たお前は、それはもう面倒くさそうに足音を立てながら、私に手を差し出した。

「近寄らないで。私、化け物だから」

 そう言って、差し伸べられた手を拒む自分。ああ、なんて可愛げがない。
 けれどお前は、一度は引っ込めた手を今度は嬉しそうに伸ばしてきた。

「そうか、お前化け物なのか。私と同じだね」

 この話をすると「そんなこと言ったっけ? 酷いことを言う奴も居るんだな」とお前は自嘲する。
 だけど、その〝酷いこと〟があの時どれほど嬉しかったか。

 それからは、月が満ちる度にお前の家へ向かった。
 お前は何も言わずに私を匿ってくれた。体が言うことを聞かず暴れまわると、お前は涼しい顔で私を地面に叩きつけた。

 いつも迷惑かけてごめん。そう言うとお前は「迷惑じゃないよ。私は死なないしね」と軽く笑った。
 その時に初めてお前のことを知って、泣いてしまったのを覚えている。
 お前が怖かったんじゃない。お前を待ち受けるものが、とても怖く見えた。それは私には、感じることはできないのだけど。

「満月じゃない時にも来なよ。そうしないと、怪しまれるよ」

 何度目の満月の晩だったろう。お前がそう言ったのは。
 寂しかったんだな。私がからかうように笑うと、「そういうわけじゃないけど」と照れた。

 ――友情は見返りを求めない。
 そう言う人がいるが、それは本当なんだろうか。
 少なくとも私がひとつ信じることは、そんな友情を育むために見返りが必要だということだ。

 私は自分の姿を晒さないために。
 お前は寂しさを紛らわすために。

 きっとそうしなければ、私たちの友情はなかった。
 そうして生まれた友情に、見返りを求めない純真さはあるのだろうか。

「慧音、死ぬんだってね」

 割り切ったような笑顔で、お前が問う。
 そんな顔しなくてもいいのに。涙の痕を消すためにお前が死んでいるのは、知っている。

「やっぱり慧音は化け物じゃないね。酷いこと言ってごめん」

 ああ、なんてことだろう。それを聞いてホッとしてしまうなんて。
 私はずっとその言葉が聞きたかったんだろうか。
 だとしたら、この期に及んで、私は友情に見返りを求めていたようだ。

 ならば、その友情の終りに私は見返りを求めよう。
 どうかこの不死人が、幸せになれるように。

「「ありがとう」」

 涙の落ちる音がした。
お久しぶりです。
「友情は見返りを求めない」ってかっこいい言葉だけど、僕はそこまで純になれないです。
いろいろ落ち着いたのでまたポツポツ書いて行きたいと思いますので、よろしくお願いします。
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コメント



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1.50名前が無い程度の能力削除
お互い見返りを求めれてこそ真の友情(私見)
「お前が困難なとき俺がお前を助ける、その代わり俺が助けを求める時、お前が俺を助けろ」
とか。自分としてはこっちの方が好き。
ともあれお久しぶりです。
5.80名前が無い程度の能力削除
短い中にもしっかり切なさ。
友情が必ず見返りを求めることが分かったらそこから本当に始まるのかもしれない、なんて思いました。
7.80とーなす削除
じんわりと暖かくて、切ない話でした。
8.803削除
投稿されて何ヶ月も経つSSに書いても意味が無いかもしれませんが、
お待ちしておりました。貴方の書くSSが好きです。