最初に言っておくけど、わたしは断じて変態などではないわ。
変なフェチズムなんてもってないし、偏った恋愛観をもっているわけでもない。
でも、だけど、これは仕方ないのよ。
「あ、あの幽香さん、どうか……わたしとお医者さんごっこをしてくれませんか?」
我が家にやってきたリグルが顔を赤くしながら突然こんなこと言ってきたら、ついつい顔を縦に振っちゃうじゃない。
これはあれなのよ。だってせっかく一緒に遊ぼうって言ってきたのに断ったら可哀想でしょう?
だから、年上として、大人の対応をしたまでのことよ。
「わあ、ありがとうございます!」
ほら、おかげでリグルがすごくいい笑顔になったじゃない。かわいい。
さっきまで恥ずかしそうにおどおどしてたのに、こんなにも満面の笑みなのよ。かわいい。
それに、あれよ。お医者さんごっこなんて、おままごとの延長線上よ。やらしいことを考えた奴は心が汚れてるのよ。わたしはそんなこと一切考えていないわ。
「じゃあ、幽香さんちのベッドを借りてもいいですか?」
はぁ!? ベ、ベッドってリグル、貴女本気なの!? いくとこまでいっちゃう気なの!?
別にこっちはやぶさかじゃ……なくて、そ、そうよね、お医者さんごっこってことは病院の中って設定だから、ベッドくらい必要よね。
お姉さん勘違いしちゃ……ってないわ。そうよ、お医者さんごっこでやらしいことを考えるやつは心が腐ってるのよ。わたしはやらしいことなんて微塵も思っちゃいないわ。
だから、ベッドの一つや二つ貸してあげるわよ。
「本当にありがとうございます!」
清々しいくらいの笑顔だわ。かわいい。
こんな清らか笑顔(かわいい)をしている子が、やらしいことなんて考えてるわけないじゃない。
だからわたしも何一つ期待なんてしちゃいないわ。ほんと、何も期待してないわ。逆に何に期待すればいいか聞きたいくらいだわ。
「それじゃあですね、幽香さんはお医者さん役をやってください!」
……っ!?
わたしがお医者さん役ってことはつまり貴女が患者さん役ってことで、わたしは医者としておでこごっつんこして熱を測ったり聴診器を胸にあてたり触診したり……
いや、これは医者として何一つおかしくないわ。患者のリグルのためにやることなのよ。
だからやらしいことなんて何も無い。だからわたしは変態じゃない。
「わたしは小道具を用意しますので一旦失礼します。でもすぐに戻りますからちょっと待ってて下さい。あ、ちなみに幽香さんの立ち位置はベッドのすぐ傍です」
行っちゃった。これまた呆れるくらいの笑顔ね。かわいい。
まあ、待ってろっていうんなら待っててあげるわ。お医者さんごっこと聞いてもやらしいことなんてちっとも頭によぎらない清い大人として、これくらいの余裕は必要よ。とりあえず寝室に移っておきましょう。
ところで小道具って何かしら? 聴診器とか注射器とか白衣とか医者っぽいものかしらね。あとはマスクとかガーゼとか包帯とか患者っぽいものかも。
ああ、そういえば細かな設定を何も聞いていなかったわね。リグルはどれくらいの症状の患者なのかしら。
でもわざわざベッドが必要になるってことは、ひょっとしたら入院患者かしらね。
じゃ、じゃあ例えば、腕を怪我しちゃって自分ではご飯を食べられないリグルのために医者としてあーんってしてあげたり、お風呂に入れないリグルのために医者として体を拭いてあげたり、ベッドから出られなくて体がかたくなっちゃったリグルのために医者としてマッサージしてあげたり……
よし、医者としてまっとうな業務ね。だからわたしが鼻息を荒げる原因はお医者さんごっこじゃないわ。きっと今朝食べたお味噌汁のせいね。ちょっと塩辛くし過ぎて血圧が上がっちゃったの。
「おまたせしました~!」
あ、リグルが戻ってきた。意外と早かったわね。
スタンバイしないと。えーっと、ベッドの傍に立ってればいいのね。
わたしがお医者さんでリグルが患者……落ち着きなさいわたし、これはただのお遊びなのよ。そう、やましいことも、やらしいことも何も無い。
そんなこんなしてたら、勝手知ったる他人の家ってことかしら、リグルってば真っすぐ寝室まで来てくれた。
さあ始めましょうリグル。心の準備は万全よ。体の方は流れの中で一緒に仕上げていきましょう。やらしい意味なんてないわ。
「ベッドお借りしますね。よいしょっと……」
あら? ……あら? 何かしら、思ってたのと違うんだけど。
リグルったらどうしてわたしのベッドにマネキンなんて寝かしているのかしら? ひょっとして用意してきた小道具ってそのマネキン?
それで、どうしてわたしと並んでベッドの傍に突っ立ってるのかしら? そんな深刻そうな顔して。
「お医者様! どうなんですか!? ジェニファーは助かるんですか!?」
え? ……え? 何この展開?
そんな悲しそうな顔(かわいい)して急に掴みかかってきたらびっくりするじゃない。
びっくりしたせいでつい首を横に振っちゃったじゃない。というかジェニファーって誰よ。
「そ、そんな……ねえジェニファー、返事してよ! 一緒にサラダを食べるんじゃなかったの!?」
だからジェニファーって誰よ。サラダって何なのよ。
何でそんなわんわん泣きながらマネキンに寄り添ってるのよ。
「それに、貴女はようやく幸せを掴んだじゃないの……ブラッドリーがこれを知ったら何て顔するか……」
新キャラ登場ですかよ。
察するところあれかしら、ジェニファーとブラッドリーが婚約でもしてたのかしら。
ところでいい加減ジェニファーってどこの誰なのよ。新キャラブラッドリーは何者よ。何ホタルなのよ。
源ジェニファーと平ブラッドリー?
「こんな……こんな水虫なんかで……ジェニファァァァァァァァァァ!!!」
死因が水虫? リグルの頭の中では一体どんなストーリーができてるのかしら?
そして、水虫で首を横に振ったわたしって一体どこのヤブ医者よ。
「……ふう、やっぱり楽しいですね。お医者さんごっこ」
あ、またいつもの笑顔に戻った。かわいい。
え、何? お医者さんごっこって、これがお医者さんごっこ? お医者さん要素なんてほとんど皆無じゃない。どっちかというとお友人さんごっこじゃない。
「最近流行ってるんですよ、お医者さんごっこ。それで是非幽香さんとも一緒にやりたいなって思って。それにしても幽香さんの首の振り方、とっても臨場感がありました」
え、そういうことなの……?
つまりわたし一人で勝手に盛り上がっていたってこと? いや、別に何の期待もしてなかったけど。
「もしかして幽香さん、知りませんでした? じゃあ何の説明も無しに始めちゃってびっくりさせちゃいました?」
そそそそ、そんなことないわよ最初から全て知っていたわそうよお医者さんごっこ最近流行ってるのよねだからわたしがお医者さん役でリグルがお友人さん役だってことも分かっていたわリグルが患者役なんてそんなことありえるわけないじゃないそんな可能性1パーセントも頭の中には無かったわええそうよリグルが患者役だと勘違いしてどきどきする奴なんて心が曲がってるのよわたしの場合は今朝のお味噌汁のせいでちょっとあれだったけどお味噌汁さえなければ血圧も心拍数も正常値に決まっていたわそうに違いない。
……はぁ。
「んぎゅっ!? きゅ、急にどうしたんですか幽香さん?」
なんだかとっても疲れたわ。だからリグル、今日はわたしの抱き枕になってちょうだい。
ああジェニファー、貴女も一緒に眠る? でも残念、リグルはわたし専用の抱き枕なの。この抱き心地は誰にもあげられないわ。悪いわね。
そうそう、これだけはリグルに伝えておかないと。
「医学的に見て我慢できないと判断したらその時はごめんね」
「え、それってどういう……?」
――むぎゅ
変なフェチズムなんてもってないし、偏った恋愛観をもっているわけでもない。
でも、だけど、これは仕方ないのよ。
「あ、あの幽香さん、どうか……わたしとお医者さんごっこをしてくれませんか?」
我が家にやってきたリグルが顔を赤くしながら突然こんなこと言ってきたら、ついつい顔を縦に振っちゃうじゃない。
これはあれなのよ。だってせっかく一緒に遊ぼうって言ってきたのに断ったら可哀想でしょう?
だから、年上として、大人の対応をしたまでのことよ。
「わあ、ありがとうございます!」
ほら、おかげでリグルがすごくいい笑顔になったじゃない。かわいい。
さっきまで恥ずかしそうにおどおどしてたのに、こんなにも満面の笑みなのよ。かわいい。
それに、あれよ。お医者さんごっこなんて、おままごとの延長線上よ。やらしいことを考えた奴は心が汚れてるのよ。わたしはそんなこと一切考えていないわ。
「じゃあ、幽香さんちのベッドを借りてもいいですか?」
はぁ!? ベ、ベッドってリグル、貴女本気なの!? いくとこまでいっちゃう気なの!?
別にこっちはやぶさかじゃ……なくて、そ、そうよね、お医者さんごっこってことは病院の中って設定だから、ベッドくらい必要よね。
お姉さん勘違いしちゃ……ってないわ。そうよ、お医者さんごっこでやらしいことを考えるやつは心が腐ってるのよ。わたしはやらしいことなんて微塵も思っちゃいないわ。
だから、ベッドの一つや二つ貸してあげるわよ。
「本当にありがとうございます!」
清々しいくらいの笑顔だわ。かわいい。
こんな清らか笑顔(かわいい)をしている子が、やらしいことなんて考えてるわけないじゃない。
だからわたしも何一つ期待なんてしちゃいないわ。ほんと、何も期待してないわ。逆に何に期待すればいいか聞きたいくらいだわ。
「それじゃあですね、幽香さんはお医者さん役をやってください!」
……っ!?
わたしがお医者さん役ってことはつまり貴女が患者さん役ってことで、わたしは医者としておでこごっつんこして熱を測ったり聴診器を胸にあてたり触診したり……
いや、これは医者として何一つおかしくないわ。患者のリグルのためにやることなのよ。
だからやらしいことなんて何も無い。だからわたしは変態じゃない。
「わたしは小道具を用意しますので一旦失礼します。でもすぐに戻りますからちょっと待ってて下さい。あ、ちなみに幽香さんの立ち位置はベッドのすぐ傍です」
行っちゃった。これまた呆れるくらいの笑顔ね。かわいい。
まあ、待ってろっていうんなら待っててあげるわ。お医者さんごっこと聞いてもやらしいことなんてちっとも頭によぎらない清い大人として、これくらいの余裕は必要よ。とりあえず寝室に移っておきましょう。
ところで小道具って何かしら? 聴診器とか注射器とか白衣とか医者っぽいものかしらね。あとはマスクとかガーゼとか包帯とか患者っぽいものかも。
ああ、そういえば細かな設定を何も聞いていなかったわね。リグルはどれくらいの症状の患者なのかしら。
でもわざわざベッドが必要になるってことは、ひょっとしたら入院患者かしらね。
じゃ、じゃあ例えば、腕を怪我しちゃって自分ではご飯を食べられないリグルのために医者としてあーんってしてあげたり、お風呂に入れないリグルのために医者として体を拭いてあげたり、ベッドから出られなくて体がかたくなっちゃったリグルのために医者としてマッサージしてあげたり……
よし、医者としてまっとうな業務ね。だからわたしが鼻息を荒げる原因はお医者さんごっこじゃないわ。きっと今朝食べたお味噌汁のせいね。ちょっと塩辛くし過ぎて血圧が上がっちゃったの。
「おまたせしました~!」
あ、リグルが戻ってきた。意外と早かったわね。
スタンバイしないと。えーっと、ベッドの傍に立ってればいいのね。
わたしがお医者さんでリグルが患者……落ち着きなさいわたし、これはただのお遊びなのよ。そう、やましいことも、やらしいことも何も無い。
そんなこんなしてたら、勝手知ったる他人の家ってことかしら、リグルってば真っすぐ寝室まで来てくれた。
さあ始めましょうリグル。心の準備は万全よ。体の方は流れの中で一緒に仕上げていきましょう。やらしい意味なんてないわ。
「ベッドお借りしますね。よいしょっと……」
あら? ……あら? 何かしら、思ってたのと違うんだけど。
リグルったらどうしてわたしのベッドにマネキンなんて寝かしているのかしら? ひょっとして用意してきた小道具ってそのマネキン?
それで、どうしてわたしと並んでベッドの傍に突っ立ってるのかしら? そんな深刻そうな顔して。
「お医者様! どうなんですか!? ジェニファーは助かるんですか!?」
え? ……え? 何この展開?
そんな悲しそうな顔(かわいい)して急に掴みかかってきたらびっくりするじゃない。
びっくりしたせいでつい首を横に振っちゃったじゃない。というかジェニファーって誰よ。
「そ、そんな……ねえジェニファー、返事してよ! 一緒にサラダを食べるんじゃなかったの!?」
だからジェニファーって誰よ。サラダって何なのよ。
何でそんなわんわん泣きながらマネキンに寄り添ってるのよ。
「それに、貴女はようやく幸せを掴んだじゃないの……ブラッドリーがこれを知ったら何て顔するか……」
新キャラ登場ですかよ。
察するところあれかしら、ジェニファーとブラッドリーが婚約でもしてたのかしら。
ところでいい加減ジェニファーってどこの誰なのよ。新キャラブラッドリーは何者よ。何ホタルなのよ。
源ジェニファーと平ブラッドリー?
「こんな……こんな水虫なんかで……ジェニファァァァァァァァァァ!!!」
死因が水虫? リグルの頭の中では一体どんなストーリーができてるのかしら?
そして、水虫で首を横に振ったわたしって一体どこのヤブ医者よ。
「……ふう、やっぱり楽しいですね。お医者さんごっこ」
あ、またいつもの笑顔に戻った。かわいい。
え、何? お医者さんごっこって、これがお医者さんごっこ? お医者さん要素なんてほとんど皆無じゃない。どっちかというとお友人さんごっこじゃない。
「最近流行ってるんですよ、お医者さんごっこ。それで是非幽香さんとも一緒にやりたいなって思って。それにしても幽香さんの首の振り方、とっても臨場感がありました」
え、そういうことなの……?
つまりわたし一人で勝手に盛り上がっていたってこと? いや、別に何の期待もしてなかったけど。
「もしかして幽香さん、知りませんでした? じゃあ何の説明も無しに始めちゃってびっくりさせちゃいました?」
そそそそ、そんなことないわよ最初から全て知っていたわそうよお医者さんごっこ最近流行ってるのよねだからわたしがお医者さん役でリグルがお友人さん役だってことも分かっていたわリグルが患者役なんてそんなことありえるわけないじゃないそんな可能性1パーセントも頭の中には無かったわええそうよリグルが患者役だと勘違いしてどきどきする奴なんて心が曲がってるのよわたしの場合は今朝のお味噌汁のせいでちょっとあれだったけどお味噌汁さえなければ血圧も心拍数も正常値に決まっていたわそうに違いない。
……はぁ。
「んぎゅっ!? きゅ、急にどうしたんですか幽香さん?」
なんだかとっても疲れたわ。だからリグル、今日はわたしの抱き枕になってちょうだい。
ああジェニファー、貴女も一緒に眠る? でも残念、リグルはわたし専用の抱き枕なの。この抱き心地は誰にもあげられないわ。悪いわね。
そうそう、これだけはリグルに伝えておかないと。
「医学的に見て我慢できないと判断したらその時はごめんね」
「え、それってどういう……?」
――むぎゅ
とても我慢できる状態ではないでしょうわっふるわっふる
天然リグルとウブゆうかりん、どちらも可愛いです。
でもこのままじゃちょっと物足りないから、今度は幽香さん主導でお医者さんごっこをするのがフェアだと思うよ
あと、幻想郷にお医者さんごっこを流行させたオロカモノは出てきなさい。なぜ患者役を人形にする形式を流行らせたのか、みっちり説教してやる。
幽香はあれだなぁ、別け隔てなく接するイメージがあるなぁ。