Coolier - 新生・東方創想話

こころおどるよ

2013/06/24 01:10:48
最終更新
サイズ
6.73KB
ページ数
1
閲覧数
3883
評価数
14/37
POINT
2350
Rate
12.50

分類タグ

「ガッツポーズしようず」
「ガッツポーズなにそれ?」
「こうして、こうして、こう」
「ふむふむ」

 こころがこいしに教えてもらってるのは、ガッツポーズのやり方である。

「こうかな?」
「違う。そうじゃなくて、こう、ガッシーン。ガッシーンって感じで」
「こう? ガッシーン」
「口で言っちゃ意味ないじゃない」
「そうはおっしゃいましても……」

 たじたじ。

「こいし先生は、ガッツポーズとは言語だと考えます」
「先生、意味がわかりません」
「ボディランゲージって言ってね。それもひとつの言葉なの」
「それはわかるけど、別にこれといって必要ないように思う」
「そう?」
「そうです」
「でも必要だと思う」
「どうして思われるのですか」
「どうしてもそう思われるのです」

 きゃっきゃうふふしているだけでした。

 ところで、このところこころが思うのは
 言葉というものがあるから感情があるのか、感情があるから言葉が生まれるのかということだった。
 こころはいままで感情らしい感情がなかったが、しかし、それでも言葉がなかったというとそんなことはなかった。
 どちらが先なのかよくわからない。
 感情を学んでいくというのは言葉を学んでいくということと同じなのだろうか。
 例えば、人間はうれしいという感情を学ぶときにはうれしいという言葉があるからこそ、その感情の正体がつかめているように思う。
 あれ?
 では、やはり感情が先か?
 でも感情だけで言葉のない状態だと、なんだかそれらしき何かがあるってだけで、それが嬉しい感情だと判別がつかないのではないだろうか。

「あのね、こころちゃん、それはすごく正しいよ」

 最近、こいしが絶妙のタイミングで目の前に現れるのはどうしてだろう。
 ついでに言えば、聖と神子もよく現れるのだが、
 彼女たちの場合、決まってこころが何かに困っていたりするときに颯爽と現れては、いがみあい、喧嘩して、
 しかし、こころを無視するわけでもなく問題をついでのように解決してかえっていくのである。
 正直意味がわからない。
 わからぬ。わからぬ。
 こいしにそんなふうなんだけどと伝えたら、あははと笑いながら
「すとーきんぐされてるね」
 と答えてくれた。
 すとーきんぐなるものがなんなのかわからなかったので、マミゾウに聞いたら
「確か、外界のおなごが履く足袋のようなものじゃ」
 と答えてくれた。
 それもよく意味がわからなかったので、にとりに聞いたら
「かわいい子にはたびを履かせろって言うしね。足フェチなんじゃない?」
 と答えてくれた。
 ますます謎ですな。

「神さまー」
「ん。どうしたこころ」

 神子はあいかわらずこころの前ではキリっとした顔をしている。
 ドヤ顔のお面が欲しいな、なんて思うこころである。
 でもそんなことより聞きたいことがある。

「神さまは足フェチなのですか」
「ぶふっ! いったいなにがどうなった!?」

 肩を掴まれ、ものすごい勢いでシェイクされた。
 えらいこっちゃえらいこっちゃ。

「こころさんを虐待するなんて、やはり人間は残虐至極なり」

 今度現れたのは聖である。

「聖も足フェチなの?」
「え???」
「足袋を履かせたい?」
「えええええ?」
「違う?」
「無表情で無自覚で迫ってくるなんて、誠に可愛らしく、欲望全開であるッ! 南無三ーッ」
「やめんか。坊主」
「あ、いたんですか。ゾンビ道士様」
「そういやどこかの寺では、やたらとかわいらしい妖怪ばかり集めてるらしいなぁ」
「どこぞの霊廟では屍体臭いって聞いてますよ」
「まず仏教という名前が気に入らない。ぶつという言葉は打つに通じる。ここに相手を打ち負かしてしまおうという傲慢さが見て取れる。傲慢に過ぎる。死ぬがよい」
「とりあえずそのふざけた幻想をぶちのめす」
「レベルを上げて物理で殴ればいいと考える時点で、宗教家としての底が知れる」
「和をもって貴しとなすとか言いながら、全力で戦っちゃってるあなたに言われたくありません」
「あーあーきこえなーい。ヘッドホンのせいで何もきこえなーい」
 やいのやいのと喧嘩しはじめた二人。

「ふたりとも教えてくれない」

 (´・ω・`)のお面をつけて、すごすごと退散する。




 足フェチというものがなんなのかはわからずじまいだった。
 そうだ。やはりこういうのはもともとの言葉を教えてくれたこいしに聞くべきなのではないだろうか。
 そんなふうに思っていると、やっぱりこいしが絶妙のタイミングで現れた。

「足フェチ?」
「そう、神様と聖はどっちも足フェチって言ってた」
「そーなんだ。えっとね。それはね。こころちゃんの履いてるスカートのスリットから見える素足が魅力的って意味だよ」
「足限定?」
「そう足限定」
「変態?」
「違うよ。むしろ正常よりだよ。フェチなのは正常の証なの」



 フェチというのは神格化らしい。
 要するにこころをフィギュア化して手元に置きたいとかそんな感情のことを言うらしく、
 つまりどう考えても変態そのものなのであるが、その選択は無意識的になされるらしく、
 パラノイア的な妄想が暴発するのを防ぐための一種の安全弁のようなものらしい。
 らしいの連発でよくわからない。
 ともかく、こころは理解を放棄した。



「ついでに聞きたいのだけど、よろしいでしょうか?」
「なーに?」
「感情と言葉、どちらが先なのでしょうか」
「感情が先だよ」
「そうだとすれば、言葉のない状態でも感情があるということになりますが、嬉しいやら哀しいやらの言葉が無い状態で、どうやってその感情を名づけるのでしょうか」
「あははー、おかしなこと聞くねー。こころちゃんはもう言葉を持ってるでしょ。だからそんなことを考えても無意味だよ。でも教えてあげるね」

 いいかなー?

「いいともー」
「言葉のない状態では世界は未分化なの、アメーバ状のモノがそのまま目の前にあるの。感情もその中のひとつだよ。色とかで表すことが多いかな。怒りだと赤とか。まあどうでもいい表現だけどね」
「ふむふむ」
「それで、言葉というのはそのアメーバを切り分ける刃物なの。切り分けて、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、こころちゃん殺して、殺して、ようやく生まれるのが意味なの」
「意味ってなんですか?」
「言い換えることかな?」

 おそらく普通の人にはその『言い換える』バランサーがほとんど同じ度量衡なのである。
 天秤のサイズがほぼほぼ同じであるから、情動交換が可能になります。
 こころちゃんの交流だ。
 やったね、こころちゃん。友達が増えるよ!

「よくわからん」
 と、こころは頭を抱えた。
 かぶってるのが狐面なのはちょっとシリアス入ってるからだ。

「でもね。よく考えてみて、超巨大な天秤を持ってる人がいたとしてね、小さい天秤の上にのっかっている小さな情動というおもりを乗せても全然動かないよ。逆にでっかい天秤にのってるおもりを小さい天秤のうえに乗せちゃうと壊れちゃうよ」

「こいしは壊れた?」

「わたしはでっかい方なの!」

「それは申し訳なかった」

 たじたじ。


 とりあえず、意味はわからなかったが、
 やるべきことは見つかったような気がする。

「そうだね。こころちゃんは単に重りを見つけていけばいいだけだよ。天秤のサイズはたぶんみんなといっしょだから」
「わかった。でも時々はこいしにあうサイズの重りも見つけてみる」

 こいしは一瞬あっけにとられ

「こころちゃんやめてよね。殺しちゃうよ」

 と、手をパタパタと振って、やたらと照れているように見えた。

「ふむー。いろいろと重りを見つけていくぞー」
「元気そうね?」
「一輪?」
「なんだか聖姐さんが落ち込んでるみたいだったから、またあなたが妙なことになっているんじゃないかって思ったんだけど」
「すっごく元気だよ」
「かわいくてなにより」
「もしかして一輪も足フェチ?」
「私はどっちかというと二の腕フェチだわ」
「ならば、生まれ変わった私を見よ!」



 ガッシーン、ガッシーン、ガッシーーーーン!!



 こころおどるだろう?
 言い忘れていたが、
 この物語は、完全勝利したこころの完全勝利したSSである。
こころちゃんをかわいく書くことだけに専念したこころちゃんSS
超空気作家まるきゅー
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1130簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
さすがまるきゅーさん!
東方らしさとオリジナリティのバランスが絶妙,そして軽妙でした.
今日も安眠できそうです.
2.90奇声を発する程度の能力削除
面白くテンポも良かったです
3.100名前が無い程度の能力削除
負けん、易々と新キャラなんぞに屈さぬぞ!
って思っていたんだが、それもここまでのようだ……
4.80名前が無い程度の能力削除
そのための左手
5.100非現実世界に棲む者削除
相変わらず可愛いこころちゃん。
こいしちゃんとはこれからも良好な関係を築けそうです。
前作の話ですが、あれはただの愚痴ですね。ハイ。
望むならすぐ削除いたします。
あと、今作では個人的にひじみこの痴話喧嘩が一番面白かったです。
ては、失礼いたします。
6.100絶望を司る程度の能力削除
二人の喧嘩内容がアホみたいで笑ってしまったww
9.90名前が無い程度の能力削除
さらっと、すごい話書きますね
10.80名前が無い程度の能力削除
完全勝利ネタに草不可避
15.100名前が無い程度の能力削除
ソシュール!ウィトゲンシュタイン!
16.90名前が無い程度の能力削除
まるきゅーさんのこここいキマシタワー
こいしとこころほど哲学要素が似合う二人はいませんて。
こころの哲学考からはじまってストーキングがストッキングになり変な方向に転がっていくのが楽しいかったです
一輪さん二の腕フェチだとぅ?!
あと神子ちんの頭に装着してるアレはヘッドホンでなく防音イヤーマフだと思うのです
22.20名前が無い程度の能力削除
ネットスラングやネットのネタが多すぎで、内容が霞むくらいに萎えてしまいました
それを楽しむ作品かもしれませんが、ネタを脈絡もひねりなく詰めただけと感じました
23.90名前が無い程度の能力削除
こころちゃん可愛いという前に神子と聖の会話に
全てを持っていっていかれたww
面白かったです。
27.100名前が無い程度の能力削除
こころちゃんは元々とっても可愛いので、可愛いこころちゃんを可愛く事だけに専念してSSを書いた場合、その可愛さは有頂天を突破してこころちゃん可愛い。
32.803削除
軽妙な語り口に騙されそうになりますが案外難しいこと言ってますぞ、これ。