「ふぅ……」
「全く酷い雨だぜ」
急に降ってきた強い雨に小さな小屋の軒下へと逃げ込む。
ザーザーという雨音と屋根を叩く音が耳に煩い。
私はまだ帽子を被っていたから良かったが真横に立つ香霖は髪までずぶ濡れになってしまって。
「全く、たまにはと魔理沙の言うことを聞いてみたけど……えらい目にあったな」
「なんだよ、私が悪いっていうのか!?」
悪いさ、と小さく呟いてため息を吐く。
なんだよ、客も来ないくせに店を開けないから誘ってやったのに。
まぁこんな天気予想してなかったけどさ。
「そもそも僕は雨が降ると言ったはずだけどね……」
「嘘付け。あの時は仕方ないとしか言ってなかったじゃないか」
「しかし酷い雨だ。にわか雨かもしれないが」
「何度も言うなよ。嫌になるだろ」
雨と共にどこまでもローテンションになっていく香霖。
まぁ外に出るのも嫌なんだからこんなのはまっぴらだろうけどさ。
少しはいい顔しろってんだ。
「こんな里の端じゃ人も来ないだろうからなぁ」
「いいだろ別に。どうせこの後帰るんだから」
小さな屋根の下には二人しかいない。
横幅も狭くて互いに肩をくっつけて。
屋根から落ちる水が怖くて壁に背をつけて私は少し目を上げる。
濡れた銀髪。青の着物が淡く染まって。
水滴がポタポタと落ちるたびに私の帽子に当たる。
それほど近く並んでいる。
そんなの慣れたことなのに。
少し呆けていたその時、目線を上げていたからか香霖の髪から垂れた水滴が私の顔に当たった。
「わひゃぁ!」
「ん?あぁごめんよ魔理沙」
思わず声を出した私に更に寄って、屈んで目線を近づけて。
ずぶ濡れの袖からどうやったのかあまり濡れていない布を出して私の顔を拭う。
そうすれば必然的に……濡れた顔が目の前に来るわけで。
見慣れたはずの顔になぜか急に驚いて。
ついつい目なんか閉じてしまって。
こそばゆい布と手の感触を感じながら、雨の音だけを聞いている。
「……これでよし。ん? どうしたんだい魔理沙」
「な、なんでもない」
よし、という言葉に目を開けて、満足そうな微笑みが前にあった。
濡れないように、なんて言い聞かせながら帽子を深く被り直す。
「そうかい。……さて、なら帰ろうか」
は?
そういうと香霖はよくわからない金属と透明の筒を取り出す。
それが傘だと気づくのに10秒、そして。
「さぁ、帰ろうか」
相合傘に気づくまで2秒。
なんでもないはずなのに、慣れたことなはずなのに。
急に心が小さく弾んで。
顔が少し赤くなる。
それを小さく隠しながら。私も傘に入り込む。
「なんだよ、最初からそれを試したかったんじゃないか」
「雨だとわかっていたんだ、傘を用意するのは当たり前さ」
「そんな透明な傘じゃ外から全部見えちゃうぜ?」
「それも機能性というやつさ、傘をしながら周囲が……」
不思議な素材の傘は二人で使うには少し小さく、私は香霖の横に引っ付いた。
いつもどおりに引っ付くように、濡れた袖に両手を絡ませ乙女チックに。
薀蓄を語ってるこいつは歩みが遅い、ゆっくりゆっくり歩いて帰れる。
ペラペラ語る濡れ顔を見上げるように目を合わせて。
今感じてる高揚を、少し染まった私の顔も、透明傘は隠さない。
まぁまぁ今くらいいいだろう。
私は恋色なんだから。
そんな解釈して2分。
雨すぐさま止んでしまった。
これがくだらない恋色のにわか雨である。
「全く酷い雨だぜ」
急に降ってきた強い雨に小さな小屋の軒下へと逃げ込む。
ザーザーという雨音と屋根を叩く音が耳に煩い。
私はまだ帽子を被っていたから良かったが真横に立つ香霖は髪までずぶ濡れになってしまって。
「全く、たまにはと魔理沙の言うことを聞いてみたけど……えらい目にあったな」
「なんだよ、私が悪いっていうのか!?」
悪いさ、と小さく呟いてため息を吐く。
なんだよ、客も来ないくせに店を開けないから誘ってやったのに。
まぁこんな天気予想してなかったけどさ。
「そもそも僕は雨が降ると言ったはずだけどね……」
「嘘付け。あの時は仕方ないとしか言ってなかったじゃないか」
「しかし酷い雨だ。にわか雨かもしれないが」
「何度も言うなよ。嫌になるだろ」
雨と共にどこまでもローテンションになっていく香霖。
まぁ外に出るのも嫌なんだからこんなのはまっぴらだろうけどさ。
少しはいい顔しろってんだ。
「こんな里の端じゃ人も来ないだろうからなぁ」
「いいだろ別に。どうせこの後帰るんだから」
小さな屋根の下には二人しかいない。
横幅も狭くて互いに肩をくっつけて。
屋根から落ちる水が怖くて壁に背をつけて私は少し目を上げる。
濡れた銀髪。青の着物が淡く染まって。
水滴がポタポタと落ちるたびに私の帽子に当たる。
それほど近く並んでいる。
そんなの慣れたことなのに。
少し呆けていたその時、目線を上げていたからか香霖の髪から垂れた水滴が私の顔に当たった。
「わひゃぁ!」
「ん?あぁごめんよ魔理沙」
思わず声を出した私に更に寄って、屈んで目線を近づけて。
ずぶ濡れの袖からどうやったのかあまり濡れていない布を出して私の顔を拭う。
そうすれば必然的に……濡れた顔が目の前に来るわけで。
見慣れたはずの顔になぜか急に驚いて。
ついつい目なんか閉じてしまって。
こそばゆい布と手の感触を感じながら、雨の音だけを聞いている。
「……これでよし。ん? どうしたんだい魔理沙」
「な、なんでもない」
よし、という言葉に目を開けて、満足そうな微笑みが前にあった。
濡れないように、なんて言い聞かせながら帽子を深く被り直す。
「そうかい。……さて、なら帰ろうか」
は?
そういうと香霖はよくわからない金属と透明の筒を取り出す。
それが傘だと気づくのに10秒、そして。
「さぁ、帰ろうか」
相合傘に気づくまで2秒。
なんでもないはずなのに、慣れたことなはずなのに。
急に心が小さく弾んで。
顔が少し赤くなる。
それを小さく隠しながら。私も傘に入り込む。
「なんだよ、最初からそれを試したかったんじゃないか」
「雨だとわかっていたんだ、傘を用意するのは当たり前さ」
「そんな透明な傘じゃ外から全部見えちゃうぜ?」
「それも機能性というやつさ、傘をしながら周囲が……」
不思議な素材の傘は二人で使うには少し小さく、私は香霖の横に引っ付いた。
いつもどおりに引っ付くように、濡れた袖に両手を絡ませ乙女チックに。
薀蓄を語ってるこいつは歩みが遅い、ゆっくりゆっくり歩いて帰れる。
ペラペラ語る濡れ顔を見上げるように目を合わせて。
今感じてる高揚を、少し染まった私の顔も、透明傘は隠さない。
まぁまぁ今くらいいいだろう。
私は恋色なんだから。
そんな解釈して2分。
雨すぐさま止んでしまった。
これがくだらない恋色のにわか雨である。
次の作品を楽しみにしてます
結構好きだけど、もう少しボリュームが欲しかった。
少女漫画っぽい魔理沙かわええ
何ともこの二人らしいと言いますか。