冥界に温かな日差しはない。
頭上に見える太陽は、黒ずみぼんやりと輪郭を崩している。幻想卿の中に在りながらも、この冥界は地上とは世界を違えている。
地底深くに位置する地獄が生者と死者の明確な境界線だ。裁きを受け、冥界に行く事を許された魂がこちらに送られてくる。地底から一転しての、大天空。
「遠くはるばる、ご苦労な事よね」
呆れたように、八雲紫は扇を揺らしながら笑った。
「ええ、本当に」
紫の言葉にそう返したのは、隣に座る西行寺幽々子だ。気怠げに着崩した着物と、頭上には冥界の官職に与えられる帽子を載せたその風貌。帽子が示すように冥界の管理者である幽々子は、紫の声を聞きながらのんびり微笑みながら湯飲みを傾けた。
「ねぇ幽々子。貴女、最近笑うようになったわね」
「そう?」
「ええ、ちょっと前まではもっとつっけんどんな性格してたわよ。こっちのこと無視するし、わざわざ私が引っ張らないとどこにも行こうとしないし。間違えて人間襲って、ようやく笑ったの、覚えてる?」
「いやねぇ、あれは紫が悪いのよ。急に後ろから驚かしてきて」
「あら、私のせい? 仕方ないじゃない、貴女ったら笑わないんだもの。妖忌だって、相当苦心していたわねぇ」
「んー、それは悪い事をしたかしら」
妖忌とはほんの少し前までここ白玉楼に剣術指南役として仕えていた従者だ。壮年でありながら、かつて剣術の腕に関しては右に出るもの無しとうたわれた剣豪。ただし、その名声もここ冥界に訪れる前までの話だ。戦う相手のいない、そして戦う必要ないこの白玉楼においては、幽々子にとってただの口うるさいじいさんでしかなかった。
「だって妖忌ったら、妖夢をいじめてばかりいたんですもの。本当、子供の扱い方がなっていなかったわ。剣の鍛錬だってもっと優しくしないと」
「厳しくするも可愛さゆえによ。あの子の事、任されたんだから、今度は貴女の番」
「妖夢をからかう事?」
「きっちり妖忌の剣に追いつかせる事。式と一緒よ。鍛えてあげなさい」
「紫は真面目ね。妖忌ったら、淑女たるもの、なんて言って食事制限をかけてくるのよ? そんな妖忌なんて、ただの頑固じじいで十分よ」
「貴女、それが本音かしら」
そうして、二人は笑いあった。
冥界の管理者が住まうとされる白玉楼。大きな日本家屋であるが、そこに住まうのはいまやたったの二人である。管理者である幽々子と、妖忌の孫娘である妖夢。
目の前にいる紫は、別の場所に住居を構えている。こちらに越して来てはどうかと誘ったこともあったが、紫もまた幻想卿全体の管理という大任を持っている。管理に適した場所があるのも、またここ白玉楼と同様だ。地上のマヨヒガと呼ばれる場所に、紫は居を構えている。
最近は式の八雲藍が思いのほかやってくれているようで、こちらに顔を出す日が多くなっているようだが。
「藍ったら、思った以上に飲み込みが早くてね。つい全部任せちゃうのよ」
使えるものは使う。なるほど、素晴らしい式だ。こちらはつい最近まで妖忌がやってくれていたが、もういない。後任の妖夢はまだまだその域に至っておらず。
このままでは、美味しいご飯を満足いくまで食べるまでどれほどの歳月を費やす事になるか。味だ、もっと味を高める必要がある。
「紫。今度ね、藍にうちの妖夢を鍛えてもらえないかしら」
「何を鍛えるの?」
「うふふ、ぜ・ん・ぶ」
使えるものは全力で使うのだ。
「懐かしいわね、その笑い方」
「そう?」
「ええ、昔の貴女は、よくそんな風に笑ったわ」
――昔の、貴女。
幽々子は、紫のその言葉を反駁する。
「そう」
幽々子は亡霊だ。生きた人間が一度死に絶え、そして無念を抱いていたゆえに彼岸へも行けずに彷徨った残念の成れの果て。とはいっても、幽々子自身に亡霊特有の害はないらしい。幽々子にまったく自覚はないが、紫が言うのならそうなのだろう。
亡霊だが足はある。紫から聞いた話によると 、身体も死ぬ直前のままらしい。食べる事も、寝ることも覚えている。詩も舞踊も覚えている辺り、習い事として培った技術もそのままのようだった。
だが、ただ一つ。失った。
ただ一つ失って、そしてなにもわからなくなった。
幽々子に、生前の記憶は無い。
「昔の私は」
そんな自分を滑稽ね、と幽々子は嗤った。
「そう、笑ったのね」
確かめる術などない、と。
日頃は閑静な白玉楼に甲高い音が一度二度と響く。
小気味よく連続した啄木鳥のような激しさもあれば、ひときわ高い鶴の一声といったものもある。
原因は、白玉楼の庭で繰り広げられていた。
「くっ……!」
「ほらほら、手元がふらついているわよ」
幽々子の握る真剣が幾筋もの剣線を描き引く。右に左に、ともすれば真正面からの点としても閃く。幽々子の剣は、明らかに素人のソレではない。
対するは、まだ年端もいかぬ幼い少女だ。短く切りそろえられた白髪を振り回し、己が手に握る剣で幽々子の剣に辛くも応じ続ける。必死だ。そもそも握る剣が少女の身体に合っていない。少女には似つかわしい長大な真剣を、少女としてあり得ない腕力を用いて振り抜く。種族としては半人半妖と類される少女の名は、魂魄妖夢といった。
そんな異様とさえいえる光景が、かれこれ半刻は続いている。
「まだ……まだっ!」
防戦一方だった妖夢の剣が、子細の間隙を縫い閃く。地を這うように半月を描く軌跡は、真下から幽々子の剣を打った。
「あら」
思わぬ力強さに言葉が漏れた。上へと弾かれた剣に身体が引かれ、重心がふらつく。その隙を突くように、妖夢が剣を引き直す。流れるように打突の構えに移行し、引き絞った切っ先を幽々子のがら空きとなった胴体に突き込む。
「いい一撃ね」
だが、幽々子の声が響いたと同時、
「な」
妖夢の剣は地を貫いていた。困惑は一瞬。原因があまりにも簡単過ぎた。
妖夢の剣は、その刃身に幽々子の一撃を受けていた。結果、胴体へと絞った狙いは斜め下方へ逸れて盛大に白玉楼の庭を貫いた。
何故、と思う。確実に重心は崩していた。あの状態から振り下ろすことは不可能ではないのか。だから、崩れ落ちながらも妖夢はその何故を問うた。
「手首のッ、返しだけで!?」
体勢を崩したままに、幽々子の剣はカチ上げられた状態から、天地を返して真下へと切っ先を変えていた。
「舞の応用、かしら?」
疑問系で言うな。
「ともかく終わりよー」
幽々子の間延びた声とともに、切っ先が妖夢の喉元を浅く貫く。
「――ッ」
痛みが走る。完全幽体の幽々子とは違い、半人半霊の妖夢には肉体がある。そして、半分が霊体とはいえ、妖夢の場合二つの境界はこの上なく明快だ。実体が刃を受ければ、当然傷付く。背後に控える半霊が威嚇するが、無意味だ。現実を見ろ。
「……まいりました、ゆゆこ様」
どこかまだ舌足らずな発音で、妖夢は己の敗北を告げた。
「ふ、ふふ、剣術指南役が教え子相手に負けるのってどうなのかしら?」
「そ、それはおじいさまが押しつけたからですっ。わたしなんて、まだまだ……」
「そーねー。妖忌が悪いわよねー」
「お、おじいさまを悪くいわないでください!」
「どっちならいいのかしらー」
幽々子は剣を下ろし、鞘へと納める。妖夢も地に突き刺さった剣を抜きとり、懐から取り出した懐紙で刀身を拭う。土くれが付いたままでは錆びてしまう。鍛錬用とはいえ、道具は大切にするに越したことはない。
「ありがとうございました、ゆゆこ様」
妖夢は幽々子に一礼する。まだまだ未熟なこの身なれど、祖父の妖忌から言いつけられた西行事寺家剣術指南役を全うするための鍛錬。一日一回は必ず行う他者との仕合いに、本来は使えるべき主の手を煩わせてしまっているのが現状だ。
唐突な妖忌の出家が大きいが、しかし変わらぬ現実に愚痴を言ったところで進歩などあるはずもない。試練。そう、試練の一つなのだ。妖夢は前向きにそう考えて日々の精進に励んでいる。
「本当、妖忌も無責任よねー」
「いえ、おじいさまのことです。きっと深いりゆうがあるにちがいありません」
「妖夢は真面目ねー」
「ゆゆこ様が楽天すぎるのです。もっとおじいさまをしんじましょう」
まだ幼い妖夢には、偉大な祖父は未だに偉大な祖父のままのようで。この頑なさは可愛くはあるのだが、ある意味頑固なところはそっくりそのまま育ってしまっているようだ。さっきみたいに小言ばかり言ってくる日も近いのではないか。
「それは困るわねー」
「なにがです?」
ポツリとこぼれた独り言に、妖夢が気づく。
ふっと、幽々子は妖夢の将来に思いを馳せる。ああ、なりそうねー、きっとそうなりそうねー。
「あなたのことよ。気にして」
「だからっ、なにがなんですかっ」
言ったところで、大して意味もあるまいに。徐々に頭角を現してきた妖忌譲りの頑固さに、幽々子は取り出した扇子を口元に添えて一考して、まあいいかと思考を丸投げた。
「百三十二、百三十三、百三十四……!」
幽々子は縁側にて、茶を啜る。向ける視線の先には、妖夢の姿がある。
「百四十五、百四十六……!」
素振りだ。妖夢が握っているのは、先ほどの鍛錬用の刀剣ではなく、さらに一回りは大きな代物。斬霊刀『桜観剣』。妖忌が出家する際に、剣術指南役の称号とともに妖夢へと送ったかつての愛刀のうち一振り。
楼観剣は、見た目に反して通常の刀剣よりも相当の重量を持つ。以前、幽々子が試しに持ってみたが、体感ではおおよそ三倍くらいだっただろうか。
使用されている玉鋼が通常の刀剣とはまるで別物らしい。が、いったい何を打って拵えた刀なのか、昔の記憶を持たない幽々子にはまったくわからない。何度か妖忌本人に尋ねたこともあったが、語ってくれることはなかった。
無造作につまんだ干菓子を口にくわえ、ただただ妖夢の剣を追う。
「百七十一、百七十二、百七十ッ、三……っ!?」
やはりだめだ、完全に剣の重さに負けている。ふらつきながら一振り一振りをかろうじて続ける妖夢の姿には、勇ましさのカケラもない。ただただ無様なだけだ。
幼い妖夢にはまだ楼観剣は巨大すぎるのだ。もっと身体に見合った刀を選ばなければ、上達はずっと遅れるだろう。だというのに、妖夢はその道を選ばない。
「おじいさまに追いつくためには、この剣でなければいけないのです」
根拠のカケラもない理由だ。頑ななまでの単なる根性論。素晴らしく無意味だ。おそらく一生かけてもこの少女は半人前に留まったままに違いない。合理であるからこそ御前足り得る一人として認められるというのに。
「なんでかしらねー」
ぽつりと零れた独り言は、妖夢には聞こえていない。
情熱、というのだったか。確か。いつだか紫と一緒に妖夢の鍛錬を眺めていて、紫は妖夢をそう評価していた。
自分にはないものだと、幽々子は思う。
記憶を失って、白玉楼の管理者としての役目が用意されていて、紫や妖忌といった知人の助力にあやかって。
トントン拍子の日々だったと思う。安定した緩やかな日々が訪れるのに、さほどの時間は必要なかった。
ただ、求められるままに己を構築してきた。
楽しいという感情は紫が教えてくれた。厳しさや煩わしさといった感情は妖忌が教えてくれた。
これらを思い出したと呼ぶには、少々抵抗がある。何故ならば、記憶を失う前の自分がそれらの感情を有していたのかがわからないゆえに。ただの操り人形だったかもしれない。日々を爛漫に過ごす少女だったのかもしれない。
だが知人達に、自分から聞き出すことはしなかった。彼女達が「昔の貴女」と呼んだ時にだけ、ああそうなのだな、と得心を繰り返してきた。
失った記憶に、未練は無い。真贋の確認をしようがない。自分自身のことなど、他人にわかるわけがないという諦観染みた結論だけが、気付いたときには自分の内に存在していた。一体何故そこに至ったのか。
それがかつての自分を構成していた一つだったのかもしれない。だが、それすらも記憶にない。
ただ、必要だったのだと思う。
自分が必要と思うままに感情の取捨選択をして、実践をして、そして溜め込んできた。溜め込んで、自分という空っぽだった器を満たしてきた。
それは、まるで他人事のように俯瞰しながらの作業で、
「百九十八、百九十九…………二百、っ……ぷはぁ!?」
そこに、妖夢が持つような情熱の感情は必要とされなかったというだけ。
――嗤うしかないではないか。こんな自分を。
自己というものがない。すべてを他者の感情で賄って、そして日々をさも自分自身が謳歌しているかのように振る舞う。とんだ道化だ。
笑って、哂って、嗤って。
亡霊なのに生きて、求められるままに生きて、虚ばかりの己を自覚しながら生きて。
「そうね」
それでも、
「生きてる」
確かに、満たされているのだ。
「……さて」
二百の素振りを終え、倒れ込んだ妖夢へと足を向ける。
足元から響く玉砂利の擦れ合う音が耳に心地いい。日差しは穏やかで、風も程よい。いい浮遊日和だと思う。こんないい日に自分の身体を痛めつけるばかりの妖夢は、損をして居る。勿体無い。もっと楽を傍受すればいいのに、と。
しばらくして、幽々子は妖夢の元へ辿り着く。
「はぁはぁ……あ、ゆゆこ様」
額に玉汗を浮かべながら、妖夢は笑顔をこちらに向けた。
「いかがでしたでしょうかっ」
如何も何も。
この上なく無様だったと答えれば、きっとこの笑顔は消えるのだろうなぁと幽々子は思う。
「うーん、そうね」
それも面白そうかもしれないと、一つ悪戯心が芽を出したが。
「はいっ!」
……まったく。調子が狂って、仕様がない。
まあそれも。うん、と。
得心をまた一つ。そうそう悪くはない、と。
その期待の眼差しを見て幽々子は、先ほどの自分の思考を反駁する。
そう、確かに自分には必要ない。きっとこれから先も、この感情を必要とする日はこないだろう。
何故と言われれば、答えは目の前にある。
「とりあえずお疲れ様、ね?」
せいぜい、この幼い半人前には頑張ってもらおうと思うのだ。
そんな妖夢とのやり取りを経て、さて、と幽々子は思い立った。
いつものように、紫が遊びに来た日だった。
ここ白玉楼に生きた物など存在しない。地上と冥界を繋ぐ境界には巨大な結界が敷かれている。生者と霊とを隔てる壁だ。地底の三途の川のように広大な空間を活用できるわけではないから、この一枚だけで強力この上ないシロモノ。おそらく紫が作ったものだろう。
境界を緩めることもできるというのだから、そんな器用な真似は地獄の閻魔には出来ない。あっちは冗談が無い。
だから、幽々子の言葉を遮る音などなかった。
「ねぇ、紫?」
「なに?」
深遠な意味などなく。ふと、思い立っただけだ。
感慨もなく。躊躇も無く。
「紫は、生前からの付き合いで私を訪ねてくれているのかしら」
唯の、事実確認。
いつもどおりの声音だった。思うところなど何も無いのだから当然。
「んー……なぜかしら」
「理由なんてないわよー」
特別な意味はない。きっと、目の前の紫もそれはわかるだろう。それぐらいの付き合いは、記憶を失った後からでも積み重ねてきたツモリだ。
「そうねぇ」
はたはた、はたはた、と。
紫の黙考を表すように、彼女の扇が揺れる。一秒、二秒と経ち、やがてぱたんと扇が閉じられた。幾ばくかの静寂。そして空気が震えた。
「ええ、そうよ」
紫が出した答えに、幽々子は「そう」と返した。
幽々子は安心した。元来は赤の他人に、親しげに接することなんてあり得ない。そのきっかけが生前の自分ということに、なんら不可解はない。合理的だ。例えソレが、現在の己と遙かな別離を果たしていても。
「ねぇ、紫」
「なに?」
だから、聞ける。
「今、楽しい?」
時々に、ふと思うのだ。
かつての自分を知る彼女が、今の自分をどのように思っているのかと。
楽しいの感情を教えてくれたのは紫だった。縁側でぼんやりと咲かぬ桜木を眺めてばかり日々の最中、自分の手を引いてくれたのは紫だった。何事も楽しまねば損と、なんでもないことのように語ってくれた。
そんな彼女が、生前の自分との違いに失望していないか、なんて。
「ええ」
庭先に向けていた視線が、紫へと向く。真っ直ぐな紫の視線に、幽々子の視線はぶつかって、
「楽しいわよ?」
そんな声を、聞いた。
何故、とは問わなかった。幽々子のイマが空っぽから始まり、虚で満たしてきた事実は変わらない。
「――ええ」
だからこそ、当然。
自分を満たしてきた言葉の数々は、紫たちがくれたものだ。
それ故の、確信。
溜め込んだ言葉が、他者の言葉だとしても、
「私も楽しいわ」
空っぽだった自分を満たすに足りた言葉が、間違いであるはずがない。
――うん。
得心を、またひとつ。
「ねぇ、紫。生前の私の話、してくれない?」
「何よ唐突ね。一体どんな心変わりかしら」
「いやねぇ、理由なんてあるわけないじゃない」
理由なら、ある。出来たばかりだが、確かに今の幽々子にはあった。
今後とも自分に落とし込まれてゆく言葉を、蓄積し続けようと思う。取捨選択を繰り返し、己に必要とされる全てを飲み込んで。
その全てが糧となり、理想を描き、欺瞞の材料となる。自由自在に己を作り上げる部品となる。
「ま、そのほうが貴女らしいわね」
「そうそう、それで良いのよ」
その自分らしさとやらを、どこまで再現できるかはわからない。だけど、形を成す器ならある。容量だって、十分すぎるほどにある。
誰かを語るという事は、そこに主観的な願望を願うことに他ならない。
紫が自分に何を求めていたのかを、幽々子は知りたくなった。
「ねぇ、紫」
自己を持たない、全てを他者から賄う歪な在り方だろうが、構うものか。間違いではない。それだけは確かだ。
他者の言葉を自己の言葉と完全に偽ることが出来た時、彼女らの求める『西行寺幽々子』は完成する。
そして、いつしかこの虚と願望と欺瞞で満ちた、この身体と魂と残念を、
「貴女の瞳に、私はどんな風に映っていたのかしら」
己の物と、胸を張るために。
頭上に見える太陽は、黒ずみぼんやりと輪郭を崩している。幻想卿の中に在りながらも、この冥界は地上とは世界を違えている。
地底深くに位置する地獄が生者と死者の明確な境界線だ。裁きを受け、冥界に行く事を許された魂がこちらに送られてくる。地底から一転しての、大天空。
「遠くはるばる、ご苦労な事よね」
呆れたように、八雲紫は扇を揺らしながら笑った。
「ええ、本当に」
紫の言葉にそう返したのは、隣に座る西行寺幽々子だ。気怠げに着崩した着物と、頭上には冥界の官職に与えられる帽子を載せたその風貌。帽子が示すように冥界の管理者である幽々子は、紫の声を聞きながらのんびり微笑みながら湯飲みを傾けた。
「ねぇ幽々子。貴女、最近笑うようになったわね」
「そう?」
「ええ、ちょっと前まではもっとつっけんどんな性格してたわよ。こっちのこと無視するし、わざわざ私が引っ張らないとどこにも行こうとしないし。間違えて人間襲って、ようやく笑ったの、覚えてる?」
「いやねぇ、あれは紫が悪いのよ。急に後ろから驚かしてきて」
「あら、私のせい? 仕方ないじゃない、貴女ったら笑わないんだもの。妖忌だって、相当苦心していたわねぇ」
「んー、それは悪い事をしたかしら」
妖忌とはほんの少し前までここ白玉楼に剣術指南役として仕えていた従者だ。壮年でありながら、かつて剣術の腕に関しては右に出るもの無しとうたわれた剣豪。ただし、その名声もここ冥界に訪れる前までの話だ。戦う相手のいない、そして戦う必要ないこの白玉楼においては、幽々子にとってただの口うるさいじいさんでしかなかった。
「だって妖忌ったら、妖夢をいじめてばかりいたんですもの。本当、子供の扱い方がなっていなかったわ。剣の鍛錬だってもっと優しくしないと」
「厳しくするも可愛さゆえによ。あの子の事、任されたんだから、今度は貴女の番」
「妖夢をからかう事?」
「きっちり妖忌の剣に追いつかせる事。式と一緒よ。鍛えてあげなさい」
「紫は真面目ね。妖忌ったら、淑女たるもの、なんて言って食事制限をかけてくるのよ? そんな妖忌なんて、ただの頑固じじいで十分よ」
「貴女、それが本音かしら」
そうして、二人は笑いあった。
冥界の管理者が住まうとされる白玉楼。大きな日本家屋であるが、そこに住まうのはいまやたったの二人である。管理者である幽々子と、妖忌の孫娘である妖夢。
目の前にいる紫は、別の場所に住居を構えている。こちらに越して来てはどうかと誘ったこともあったが、紫もまた幻想卿全体の管理という大任を持っている。管理に適した場所があるのも、またここ白玉楼と同様だ。地上のマヨヒガと呼ばれる場所に、紫は居を構えている。
最近は式の八雲藍が思いのほかやってくれているようで、こちらに顔を出す日が多くなっているようだが。
「藍ったら、思った以上に飲み込みが早くてね。つい全部任せちゃうのよ」
使えるものは使う。なるほど、素晴らしい式だ。こちらはつい最近まで妖忌がやってくれていたが、もういない。後任の妖夢はまだまだその域に至っておらず。
このままでは、美味しいご飯を満足いくまで食べるまでどれほどの歳月を費やす事になるか。味だ、もっと味を高める必要がある。
「紫。今度ね、藍にうちの妖夢を鍛えてもらえないかしら」
「何を鍛えるの?」
「うふふ、ぜ・ん・ぶ」
使えるものは全力で使うのだ。
「懐かしいわね、その笑い方」
「そう?」
「ええ、昔の貴女は、よくそんな風に笑ったわ」
――昔の、貴女。
幽々子は、紫のその言葉を反駁する。
「そう」
幽々子は亡霊だ。生きた人間が一度死に絶え、そして無念を抱いていたゆえに彼岸へも行けずに彷徨った残念の成れの果て。とはいっても、幽々子自身に亡霊特有の害はないらしい。幽々子にまったく自覚はないが、紫が言うのならそうなのだろう。
亡霊だが足はある。紫から聞いた話によると 、身体も死ぬ直前のままらしい。食べる事も、寝ることも覚えている。詩も舞踊も覚えている辺り、習い事として培った技術もそのままのようだった。
だが、ただ一つ。失った。
ただ一つ失って、そしてなにもわからなくなった。
幽々子に、生前の記憶は無い。
「昔の私は」
そんな自分を滑稽ね、と幽々子は嗤った。
「そう、笑ったのね」
確かめる術などない、と。
日頃は閑静な白玉楼に甲高い音が一度二度と響く。
小気味よく連続した啄木鳥のような激しさもあれば、ひときわ高い鶴の一声といったものもある。
原因は、白玉楼の庭で繰り広げられていた。
「くっ……!」
「ほらほら、手元がふらついているわよ」
幽々子の握る真剣が幾筋もの剣線を描き引く。右に左に、ともすれば真正面からの点としても閃く。幽々子の剣は、明らかに素人のソレではない。
対するは、まだ年端もいかぬ幼い少女だ。短く切りそろえられた白髪を振り回し、己が手に握る剣で幽々子の剣に辛くも応じ続ける。必死だ。そもそも握る剣が少女の身体に合っていない。少女には似つかわしい長大な真剣を、少女としてあり得ない腕力を用いて振り抜く。種族としては半人半妖と類される少女の名は、魂魄妖夢といった。
そんな異様とさえいえる光景が、かれこれ半刻は続いている。
「まだ……まだっ!」
防戦一方だった妖夢の剣が、子細の間隙を縫い閃く。地を這うように半月を描く軌跡は、真下から幽々子の剣を打った。
「あら」
思わぬ力強さに言葉が漏れた。上へと弾かれた剣に身体が引かれ、重心がふらつく。その隙を突くように、妖夢が剣を引き直す。流れるように打突の構えに移行し、引き絞った切っ先を幽々子のがら空きとなった胴体に突き込む。
「いい一撃ね」
だが、幽々子の声が響いたと同時、
「な」
妖夢の剣は地を貫いていた。困惑は一瞬。原因があまりにも簡単過ぎた。
妖夢の剣は、その刃身に幽々子の一撃を受けていた。結果、胴体へと絞った狙いは斜め下方へ逸れて盛大に白玉楼の庭を貫いた。
何故、と思う。確実に重心は崩していた。あの状態から振り下ろすことは不可能ではないのか。だから、崩れ落ちながらも妖夢はその何故を問うた。
「手首のッ、返しだけで!?」
体勢を崩したままに、幽々子の剣はカチ上げられた状態から、天地を返して真下へと切っ先を変えていた。
「舞の応用、かしら?」
疑問系で言うな。
「ともかく終わりよー」
幽々子の間延びた声とともに、切っ先が妖夢の喉元を浅く貫く。
「――ッ」
痛みが走る。完全幽体の幽々子とは違い、半人半霊の妖夢には肉体がある。そして、半分が霊体とはいえ、妖夢の場合二つの境界はこの上なく明快だ。実体が刃を受ければ、当然傷付く。背後に控える半霊が威嚇するが、無意味だ。現実を見ろ。
「……まいりました、ゆゆこ様」
どこかまだ舌足らずな発音で、妖夢は己の敗北を告げた。
「ふ、ふふ、剣術指南役が教え子相手に負けるのってどうなのかしら?」
「そ、それはおじいさまが押しつけたからですっ。わたしなんて、まだまだ……」
「そーねー。妖忌が悪いわよねー」
「お、おじいさまを悪くいわないでください!」
「どっちならいいのかしらー」
幽々子は剣を下ろし、鞘へと納める。妖夢も地に突き刺さった剣を抜きとり、懐から取り出した懐紙で刀身を拭う。土くれが付いたままでは錆びてしまう。鍛錬用とはいえ、道具は大切にするに越したことはない。
「ありがとうございました、ゆゆこ様」
妖夢は幽々子に一礼する。まだまだ未熟なこの身なれど、祖父の妖忌から言いつけられた西行事寺家剣術指南役を全うするための鍛錬。一日一回は必ず行う他者との仕合いに、本来は使えるべき主の手を煩わせてしまっているのが現状だ。
唐突な妖忌の出家が大きいが、しかし変わらぬ現実に愚痴を言ったところで進歩などあるはずもない。試練。そう、試練の一つなのだ。妖夢は前向きにそう考えて日々の精進に励んでいる。
「本当、妖忌も無責任よねー」
「いえ、おじいさまのことです。きっと深いりゆうがあるにちがいありません」
「妖夢は真面目ねー」
「ゆゆこ様が楽天すぎるのです。もっとおじいさまをしんじましょう」
まだ幼い妖夢には、偉大な祖父は未だに偉大な祖父のままのようで。この頑なさは可愛くはあるのだが、ある意味頑固なところはそっくりそのまま育ってしまっているようだ。さっきみたいに小言ばかり言ってくる日も近いのではないか。
「それは困るわねー」
「なにがです?」
ポツリとこぼれた独り言に、妖夢が気づく。
ふっと、幽々子は妖夢の将来に思いを馳せる。ああ、なりそうねー、きっとそうなりそうねー。
「あなたのことよ。気にして」
「だからっ、なにがなんですかっ」
言ったところで、大して意味もあるまいに。徐々に頭角を現してきた妖忌譲りの頑固さに、幽々子は取り出した扇子を口元に添えて一考して、まあいいかと思考を丸投げた。
「百三十二、百三十三、百三十四……!」
幽々子は縁側にて、茶を啜る。向ける視線の先には、妖夢の姿がある。
「百四十五、百四十六……!」
素振りだ。妖夢が握っているのは、先ほどの鍛錬用の刀剣ではなく、さらに一回りは大きな代物。斬霊刀『桜観剣』。妖忌が出家する際に、剣術指南役の称号とともに妖夢へと送ったかつての愛刀のうち一振り。
楼観剣は、見た目に反して通常の刀剣よりも相当の重量を持つ。以前、幽々子が試しに持ってみたが、体感ではおおよそ三倍くらいだっただろうか。
使用されている玉鋼が通常の刀剣とはまるで別物らしい。が、いったい何を打って拵えた刀なのか、昔の記憶を持たない幽々子にはまったくわからない。何度か妖忌本人に尋ねたこともあったが、語ってくれることはなかった。
無造作につまんだ干菓子を口にくわえ、ただただ妖夢の剣を追う。
「百七十一、百七十二、百七十ッ、三……っ!?」
やはりだめだ、完全に剣の重さに負けている。ふらつきながら一振り一振りをかろうじて続ける妖夢の姿には、勇ましさのカケラもない。ただただ無様なだけだ。
幼い妖夢にはまだ楼観剣は巨大すぎるのだ。もっと身体に見合った刀を選ばなければ、上達はずっと遅れるだろう。だというのに、妖夢はその道を選ばない。
「おじいさまに追いつくためには、この剣でなければいけないのです」
根拠のカケラもない理由だ。頑ななまでの単なる根性論。素晴らしく無意味だ。おそらく一生かけてもこの少女は半人前に留まったままに違いない。合理であるからこそ御前足り得る一人として認められるというのに。
「なんでかしらねー」
ぽつりと零れた独り言は、妖夢には聞こえていない。
情熱、というのだったか。確か。いつだか紫と一緒に妖夢の鍛錬を眺めていて、紫は妖夢をそう評価していた。
自分にはないものだと、幽々子は思う。
記憶を失って、白玉楼の管理者としての役目が用意されていて、紫や妖忌といった知人の助力にあやかって。
トントン拍子の日々だったと思う。安定した緩やかな日々が訪れるのに、さほどの時間は必要なかった。
ただ、求められるままに己を構築してきた。
楽しいという感情は紫が教えてくれた。厳しさや煩わしさといった感情は妖忌が教えてくれた。
これらを思い出したと呼ぶには、少々抵抗がある。何故ならば、記憶を失う前の自分がそれらの感情を有していたのかがわからないゆえに。ただの操り人形だったかもしれない。日々を爛漫に過ごす少女だったのかもしれない。
だが知人達に、自分から聞き出すことはしなかった。彼女達が「昔の貴女」と呼んだ時にだけ、ああそうなのだな、と得心を繰り返してきた。
失った記憶に、未練は無い。真贋の確認をしようがない。自分自身のことなど、他人にわかるわけがないという諦観染みた結論だけが、気付いたときには自分の内に存在していた。一体何故そこに至ったのか。
それがかつての自分を構成していた一つだったのかもしれない。だが、それすらも記憶にない。
ただ、必要だったのだと思う。
自分が必要と思うままに感情の取捨選択をして、実践をして、そして溜め込んできた。溜め込んで、自分という空っぽだった器を満たしてきた。
それは、まるで他人事のように俯瞰しながらの作業で、
「百九十八、百九十九…………二百、っ……ぷはぁ!?」
そこに、妖夢が持つような情熱の感情は必要とされなかったというだけ。
――嗤うしかないではないか。こんな自分を。
自己というものがない。すべてを他者の感情で賄って、そして日々をさも自分自身が謳歌しているかのように振る舞う。とんだ道化だ。
笑って、哂って、嗤って。
亡霊なのに生きて、求められるままに生きて、虚ばかりの己を自覚しながら生きて。
「そうね」
それでも、
「生きてる」
確かに、満たされているのだ。
「……さて」
二百の素振りを終え、倒れ込んだ妖夢へと足を向ける。
足元から響く玉砂利の擦れ合う音が耳に心地いい。日差しは穏やかで、風も程よい。いい浮遊日和だと思う。こんないい日に自分の身体を痛めつけるばかりの妖夢は、損をして居る。勿体無い。もっと楽を傍受すればいいのに、と。
しばらくして、幽々子は妖夢の元へ辿り着く。
「はぁはぁ……あ、ゆゆこ様」
額に玉汗を浮かべながら、妖夢は笑顔をこちらに向けた。
「いかがでしたでしょうかっ」
如何も何も。
この上なく無様だったと答えれば、きっとこの笑顔は消えるのだろうなぁと幽々子は思う。
「うーん、そうね」
それも面白そうかもしれないと、一つ悪戯心が芽を出したが。
「はいっ!」
……まったく。調子が狂って、仕様がない。
まあそれも。うん、と。
得心をまた一つ。そうそう悪くはない、と。
その期待の眼差しを見て幽々子は、先ほどの自分の思考を反駁する。
そう、確かに自分には必要ない。きっとこれから先も、この感情を必要とする日はこないだろう。
何故と言われれば、答えは目の前にある。
「とりあえずお疲れ様、ね?」
せいぜい、この幼い半人前には頑張ってもらおうと思うのだ。
そんな妖夢とのやり取りを経て、さて、と幽々子は思い立った。
いつものように、紫が遊びに来た日だった。
ここ白玉楼に生きた物など存在しない。地上と冥界を繋ぐ境界には巨大な結界が敷かれている。生者と霊とを隔てる壁だ。地底の三途の川のように広大な空間を活用できるわけではないから、この一枚だけで強力この上ないシロモノ。おそらく紫が作ったものだろう。
境界を緩めることもできるというのだから、そんな器用な真似は地獄の閻魔には出来ない。あっちは冗談が無い。
だから、幽々子の言葉を遮る音などなかった。
「ねぇ、紫?」
「なに?」
深遠な意味などなく。ふと、思い立っただけだ。
感慨もなく。躊躇も無く。
「紫は、生前からの付き合いで私を訪ねてくれているのかしら」
唯の、事実確認。
いつもどおりの声音だった。思うところなど何も無いのだから当然。
「んー……なぜかしら」
「理由なんてないわよー」
特別な意味はない。きっと、目の前の紫もそれはわかるだろう。それぐらいの付き合いは、記憶を失った後からでも積み重ねてきたツモリだ。
「そうねぇ」
はたはた、はたはた、と。
紫の黙考を表すように、彼女の扇が揺れる。一秒、二秒と経ち、やがてぱたんと扇が閉じられた。幾ばくかの静寂。そして空気が震えた。
「ええ、そうよ」
紫が出した答えに、幽々子は「そう」と返した。
幽々子は安心した。元来は赤の他人に、親しげに接することなんてあり得ない。そのきっかけが生前の自分ということに、なんら不可解はない。合理的だ。例えソレが、現在の己と遙かな別離を果たしていても。
「ねぇ、紫」
「なに?」
だから、聞ける。
「今、楽しい?」
時々に、ふと思うのだ。
かつての自分を知る彼女が、今の自分をどのように思っているのかと。
楽しいの感情を教えてくれたのは紫だった。縁側でぼんやりと咲かぬ桜木を眺めてばかり日々の最中、自分の手を引いてくれたのは紫だった。何事も楽しまねば損と、なんでもないことのように語ってくれた。
そんな彼女が、生前の自分との違いに失望していないか、なんて。
「ええ」
庭先に向けていた視線が、紫へと向く。真っ直ぐな紫の視線に、幽々子の視線はぶつかって、
「楽しいわよ?」
そんな声を、聞いた。
何故、とは問わなかった。幽々子のイマが空っぽから始まり、虚で満たしてきた事実は変わらない。
「――ええ」
だからこそ、当然。
自分を満たしてきた言葉の数々は、紫たちがくれたものだ。
それ故の、確信。
溜め込んだ言葉が、他者の言葉だとしても、
「私も楽しいわ」
空っぽだった自分を満たすに足りた言葉が、間違いであるはずがない。
――うん。
得心を、またひとつ。
「ねぇ、紫。生前の私の話、してくれない?」
「何よ唐突ね。一体どんな心変わりかしら」
「いやねぇ、理由なんてあるわけないじゃない」
理由なら、ある。出来たばかりだが、確かに今の幽々子にはあった。
今後とも自分に落とし込まれてゆく言葉を、蓄積し続けようと思う。取捨選択を繰り返し、己に必要とされる全てを飲み込んで。
その全てが糧となり、理想を描き、欺瞞の材料となる。自由自在に己を作り上げる部品となる。
「ま、そのほうが貴女らしいわね」
「そうそう、それで良いのよ」
その自分らしさとやらを、どこまで再現できるかはわからない。だけど、形を成す器ならある。容量だって、十分すぎるほどにある。
誰かを語るという事は、そこに主観的な願望を願うことに他ならない。
紫が自分に何を求めていたのかを、幽々子は知りたくなった。
「ねぇ、紫」
自己を持たない、全てを他者から賄う歪な在り方だろうが、構うものか。間違いではない。それだけは確かだ。
他者の言葉を自己の言葉と完全に偽ることが出来た時、彼女らの求める『西行寺幽々子』は完成する。
そして、いつしかこの虚と願望と欺瞞で満ちた、この身体と魂と残念を、
「貴女の瞳に、私はどんな風に映っていたのかしら」
己の物と、胸を張るために。
妖忌の忌が「己」になっている部分が多いです。特に序文の辺りが多くて目立っています。
東方が好きで書いているなら文章の誤字は多目に見ますが、キャラの名前は間違えるべきではないと思います。
否定的なコメントばかりですが、作品自体はとても良かったと思います。
とてもシリアスで可愛らしいゆゆさまでした。
幽々子は二度生まれた。
幽々子の置かれた現状と心情、変わるためのきっかけ、心情の変化、と極めてわかりやすく無駄なくそつなくできています。文章が上手で、あやかりたいものです。
癖がありますが、悪く無いと思います。