無意識パワーを使って無意識に博麗神社に行くと、博麗霊夢がいつもの脇のあいた脇巫女装束ではなく、もっと着飾った、金糸や紗のかざりがたくさんついた服を着ていて
「今日は特別な日だからおめかししてみたの。いつもとちがうから、恥ずかしいけれど、でもかわいいでしょう」
というようなことを霧雨魔理沙に言っている。(私はそれを見て、聞いている)
霧雨魔理沙は内心の動揺を隠しながら
「ああかわいいな。よく似あってるぜ」
というようなことを言う。そういう霧雨魔理沙にしても、いつもの白黒の魔女服とはちがった、レースをたくさんあしらった女性らしい服を着ている。フリルをたくさん使うのは魔理沙の流儀だけど、レースとなるとこれは魔理沙ではなくて、森に住んでいるもう一人の魔法使いのアリス・マーガトロイドの趣味なんだ、と私は知っている。二人の魔法使いは仲がいいから、魔理沙がアリスに頼んで衣装をこしらえてもらったのだ、と考えた。
アリスのやり方でつくられた服を着ていると、いつも活発なイメージの魔理沙が、まるで貴族の娘のように上品に見える。
魔理沙は霊夢をちらちらと見て、それでいつもよりもよくまばたきをする。霊夢のほうでもおんなじだ。だからこの二人は、見慣れない格好をしている親友を前にして、お互いにどぎまぎしているのだということがわかった。
第三の眼を閉じていても、それくらいのことはわかる。私は由緒正しいさとり妖怪で、能力に依らずとも、人の心を読む術に長けているのだ。
ふふふ。
無意識パワーを使って、話している二人の背後にまわり、魔理沙のとんがり帽子をもちあげて自分の帽子(丸い形で広いつばのついた、かわいい帽子だ)と交換してやった。無意識パワー使用中だから、魔理沙も霊夢も気づかない。
自分がどうしてそういうことをするのか、わからない。勝手に手が動いているように感じる。
同じ調子で、霊夢の髪の毛をまとめている真っ赤なリボンをしゅるりと解き、魔理沙の帽子にむすびつけて、かざりにしてやった。私はそれをかぶって、博麗神社を去る。
飛んだり歩いたり、地底にもぐったりして、地霊殿に着いた。大きな執務室の奥に大きな机がしつらえてあって、お姉ちゃんがそこで執務をしている。
無意識行動をしている間は、基本、誰も私に気づくことがないんだけど、例外的に、お姉ちゃんにだけはたまに見つかることがある。いつか、すっかり安心していたずらをしていたら、お姉ちゃんがとつぜん右手を振り上げ、それが奥義古明地チョップ!となって私の脳天に炸裂した。ほんとうに驚いた。
あとから聞くと、とくに気配を察知したとかではなくって、私の行動パターンを読み、だいたい今このあたりにいそうだな、というところでチョップをしたら偶然当たったんだとか。完全にまぐれだ、と思ってその後もいたずらを続けていたら、おんなじ理屈で五回に一回くらいは肉体的暴力(ブン殴られるとか蹴られるとか。しかも当てずっぽうにやるものなのでぜんぜん手かげんがない)を受けるはめになった。おっかない姉である。
それで今日はブン殴られるのが嫌だったので、無意識パワーを解除して、部屋の入り口からとことこ歩いて姉の近くまで行った。お姉ちゃんは万年筆でかりかり書いていた書類の記入の手をやすめて目を上げて
「あらこいしめずらしいわね。おやつの時間はまだよ」
と言う。おやつなんかじゃなくてさぁ、他になにか、妹を見て気づくことはないのぉ、と甘えたような、拗ねたような声で言ってやると、目を細めて怪訝な顔をして
「くさい……」
と言う。女の子に向かって何を言うのかと、さすがの私もむくれたが、考えてみれば地下や地上をうろつきまわって一週間ほどお風呂にはいっていなかった。そんなに汗はかかないたちだけど、着替えもしていないから、自分でかいでみてもたしかにくさい。
ごめんねぇ私くさい子だよぉ、お姉ちゃんは私といると不潔で体がかゆくなるよぉ、ごめんねぇ、と言って帽子を脱いで頭をかきながらお風呂に行こうとすると
「待ちなさい」
と呼び止められたのでドアに向かって歩いていたのをやめて振り返った。するとお姉ちゃんが椅子を立ってつかつか歩いて私に近寄ってきた。
お姉ちゃんが口を開く前に
「うん、一緒に入りましょう!」
「一緒に入り……」
「えっへっへ」
「(ちょっと顔を赤くして)先に言われちゃったわ。もう」
そういうような会話をして、姉妹で一緒にお風呂に入った。お姉ちゃんと一緒に入るのは久しぶりだった。お風呂の椅子に座って、体のどこもかしこも、肌のすみずみまで、つるつるになるまできれいに洗ってもらった。シャンプーとリンス、トリートメントもしてもらった。女の子なんだから、もっとちゃんとお手入れしなさいね、とお姉ちゃんは言う。交代して、私の方でも、お姉ちゃんの背中を流してあげて、髪の毛を洗ってあげた。お姉ちゃんの髪の毛は変わった桃色をしていて、とても目立つ。色はちがうけど髪質は私と同じで、とてもやわらかく、細くて、ふわふわしている。
じゅうぶん泡立てた頭の上からお湯を流してやる。お姉ちゃんの裸の背中の、無防備なうなじが見える。
どうして自分がそういうことをするのか、わからない。
私は手を伸ばして、お姉ちゃんの首を両手でぎゅっと絞めた。
「ぐえっ」
と声を上げてお姉ちゃんは苦しそうな顔になる。お姉ちゃんが苦しそうな顔をするのは嫌いだ。自分が苦しくなった気持ちになるからだ。でも、ほんとうには自分は(お姉ちゃんほどには)苦しくならないのだから、お姉ちゃんの苦しそうな顔を見ること自体は、実は私は好きなのかもしれない。
好きじゃなければ、無意識でも、こんなことはしないのだろう。
私はひどいやつだ。
ぱっと手をはなすと、お姉ちゃんはげほげほ咳き込んだ。涙目になって、うらめしそうな顔をしてこちらを見る。ごめん、ごめん、と私は謝った。だってお姉ちゃんが、すごく無防備なんだもん。
「あたりまえよ」
とお姉ちゃんは言って(どういう意味だろう)、呼吸を落ち着けてから湯船につかった。私もお湯にはいる。地霊殿のお風呂場はとても大きいから、私たち姉妹どころか、お燐とおくうの計四人で湯船にはいるのもぜんぜんよゆうだ(昔はよくそうした。今もときどきやる)。お湯の中でお姉ちゃんに擦り寄り、体をこすりつけ、ごめんねぇ、ついなのぉ、無意識なのぉ、悪気はないのぉ、と甘える。
お姉ちゃんは何も言わない。
じっと前を見て、黙ってお湯につかっている。頬を汗の玉がつたう。まるで私が隣にいることに、気づいてないみたいだ。
なんだか怖くなった。
お姉ちゃん、お姉ちゃん。
お姉ちゃん、お姉ちゃん。
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん。
目の前が真っ暗になる。
起きると、自分から離れたところに灯りが見えた。天井の灯りだ。しばらく状況がつかめなかった。視線を動かして、周りの様子を見ると、自分が姉の部屋の、照明の真下に寝かされていたんだ、というのがわかった。
体を起こすと頭痛がする。死ぬのだろうか。
「お姉ちゃ……」
と声に出してから気づく。お姉ちゃんは私のそばにいなかった。
かわりにお燐がいた。
「さとり様は地上に行きましたよ」
お燐の黒いドレスはたくさんのレースとリボンと、様々な模様が描かれたゴブラン織りの生地でできていて、主人の妹である私よりも立派な格好だ。そのお燐が私の寝かされている布団の横にちょこんと座り、上半身を起こした私と視線をあわせている。
自分のかっこうを確認すると、へんな柄の浴衣みたいなものを着せられていて、下着もつけずにそれ一枚だった。なんだか情けなくなった。
「勇儀さんとパルスィさんが、ラブホテルからパクってきたものをさとり様がもらって、最近ねまきにしてるんですよ」
「お姉ちゃんはどこ?」
「こいし様、具合大丈夫ですか? お風呂でのぼせて気を失っちゃうなんて、怖いですよ」
「お姉ちゃんに会いたいよぅ……」
私はとても、さみしくなってしまった。かっこ悪いな、と思いながら、お燐の前でめそめそ泣いてしまった。会いたいときに、お姉ちゃんがいないのは、とてもさみしいことだ。(お姉ちゃんのほうでも、さみしいんだろうか?)
さとり様は地上に行きましたよ、とお燐が教えてくれた。
「お姉ちゃんは地上なんか嫌いなのに、なんで」
「こいし様がちょっぱってきた、帽子とリボンを返しにいったんですよ。せっかくおめかししてたのがなくなっちゃって、巫女も白黒も、ずいぶん怒ってたみたいですよ」
「ああ。きれいにしてたね。なんで?」
「例大祭で東方の新作(体験版)が頒布されるので、そのプレスリリースだそうです。でも、こいし様。手を出したのが巫女と白黒で、よかったです。もしも、もしも今回、メイドに手を出していたら……絶対に、確実に、どうあっても血を見ていたでしょうから」
危ないところだった。でも、とても良いニュースだった。ちょう楽しみだ。よかった。
ただいまあ、と、玄関のほうから、おくうの声がした。
「ちょうど帰ってきましたね。ボディーガード役で、おくうも一緒に行ってたんです。じゃ、出迎えてきますね。
……ね。こいし様。泣かなくて大丈夫ですよ。さとり様、怒っていませんよ。ほんとです」
立ち上がって、お燐が部屋を出て行く。私はそれを見送ったあと、また布団に寝っ転がって、目を閉じた。
何も見えなくなった。お姉ちゃんなら、両目を閉じても、第三の目で何かを見ることができるだろう。でも、私はそれもずっと昔に閉じてしまった。まぶたの裏に灯りが映る。私は心のなかで、自分に向かってつぶやいた。
(もうすぐお姉ちゃんがこの部屋に入ってくる。そうなっても、私は目を閉じたままでいよう)
(お姉ちゃんだけではなくて、おくうと、お燐も、一緒になって入ってくる。私は目を閉じたまま、どこにお姉ちゃんがいるか、指でさし示そう。できるかどうか、わからないけど、やってみよう)
(お姉ちゃんは、私を見つけることができるんだから。私だって、そうすべきなのだ)
(目を閉じても光が当たっているのがわかる。暗いのか、明るいのかくらいはわかる。耳もふさごう。目を閉じて耳をふさいで、お姉ちゃんがどこだかわかったら、私は)
私はごくり、とつばを飲み込んだ。ドアが開いた気がした。
「今日は特別な日だからおめかししてみたの。いつもとちがうから、恥ずかしいけれど、でもかわいいでしょう」
というようなことを霧雨魔理沙に言っている。(私はそれを見て、聞いている)
霧雨魔理沙は内心の動揺を隠しながら
「ああかわいいな。よく似あってるぜ」
というようなことを言う。そういう霧雨魔理沙にしても、いつもの白黒の魔女服とはちがった、レースをたくさんあしらった女性らしい服を着ている。フリルをたくさん使うのは魔理沙の流儀だけど、レースとなるとこれは魔理沙ではなくて、森に住んでいるもう一人の魔法使いのアリス・マーガトロイドの趣味なんだ、と私は知っている。二人の魔法使いは仲がいいから、魔理沙がアリスに頼んで衣装をこしらえてもらったのだ、と考えた。
アリスのやり方でつくられた服を着ていると、いつも活発なイメージの魔理沙が、まるで貴族の娘のように上品に見える。
魔理沙は霊夢をちらちらと見て、それでいつもよりもよくまばたきをする。霊夢のほうでもおんなじだ。だからこの二人は、見慣れない格好をしている親友を前にして、お互いにどぎまぎしているのだということがわかった。
第三の眼を閉じていても、それくらいのことはわかる。私は由緒正しいさとり妖怪で、能力に依らずとも、人の心を読む術に長けているのだ。
ふふふ。
無意識パワーを使って、話している二人の背後にまわり、魔理沙のとんがり帽子をもちあげて自分の帽子(丸い形で広いつばのついた、かわいい帽子だ)と交換してやった。無意識パワー使用中だから、魔理沙も霊夢も気づかない。
自分がどうしてそういうことをするのか、わからない。勝手に手が動いているように感じる。
同じ調子で、霊夢の髪の毛をまとめている真っ赤なリボンをしゅるりと解き、魔理沙の帽子にむすびつけて、かざりにしてやった。私はそれをかぶって、博麗神社を去る。
飛んだり歩いたり、地底にもぐったりして、地霊殿に着いた。大きな執務室の奥に大きな机がしつらえてあって、お姉ちゃんがそこで執務をしている。
無意識行動をしている間は、基本、誰も私に気づくことがないんだけど、例外的に、お姉ちゃんにだけはたまに見つかることがある。いつか、すっかり安心していたずらをしていたら、お姉ちゃんがとつぜん右手を振り上げ、それが奥義古明地チョップ!となって私の脳天に炸裂した。ほんとうに驚いた。
あとから聞くと、とくに気配を察知したとかではなくって、私の行動パターンを読み、だいたい今このあたりにいそうだな、というところでチョップをしたら偶然当たったんだとか。完全にまぐれだ、と思ってその後もいたずらを続けていたら、おんなじ理屈で五回に一回くらいは肉体的暴力(ブン殴られるとか蹴られるとか。しかも当てずっぽうにやるものなのでぜんぜん手かげんがない)を受けるはめになった。おっかない姉である。
それで今日はブン殴られるのが嫌だったので、無意識パワーを解除して、部屋の入り口からとことこ歩いて姉の近くまで行った。お姉ちゃんは万年筆でかりかり書いていた書類の記入の手をやすめて目を上げて
「あらこいしめずらしいわね。おやつの時間はまだよ」
と言う。おやつなんかじゃなくてさぁ、他になにか、妹を見て気づくことはないのぉ、と甘えたような、拗ねたような声で言ってやると、目を細めて怪訝な顔をして
「くさい……」
と言う。女の子に向かって何を言うのかと、さすがの私もむくれたが、考えてみれば地下や地上をうろつきまわって一週間ほどお風呂にはいっていなかった。そんなに汗はかかないたちだけど、着替えもしていないから、自分でかいでみてもたしかにくさい。
ごめんねぇ私くさい子だよぉ、お姉ちゃんは私といると不潔で体がかゆくなるよぉ、ごめんねぇ、と言って帽子を脱いで頭をかきながらお風呂に行こうとすると
「待ちなさい」
と呼び止められたのでドアに向かって歩いていたのをやめて振り返った。するとお姉ちゃんが椅子を立ってつかつか歩いて私に近寄ってきた。
お姉ちゃんが口を開く前に
「うん、一緒に入りましょう!」
「一緒に入り……」
「えっへっへ」
「(ちょっと顔を赤くして)先に言われちゃったわ。もう」
そういうような会話をして、姉妹で一緒にお風呂に入った。お姉ちゃんと一緒に入るのは久しぶりだった。お風呂の椅子に座って、体のどこもかしこも、肌のすみずみまで、つるつるになるまできれいに洗ってもらった。シャンプーとリンス、トリートメントもしてもらった。女の子なんだから、もっとちゃんとお手入れしなさいね、とお姉ちゃんは言う。交代して、私の方でも、お姉ちゃんの背中を流してあげて、髪の毛を洗ってあげた。お姉ちゃんの髪の毛は変わった桃色をしていて、とても目立つ。色はちがうけど髪質は私と同じで、とてもやわらかく、細くて、ふわふわしている。
じゅうぶん泡立てた頭の上からお湯を流してやる。お姉ちゃんの裸の背中の、無防備なうなじが見える。
どうして自分がそういうことをするのか、わからない。
私は手を伸ばして、お姉ちゃんの首を両手でぎゅっと絞めた。
「ぐえっ」
と声を上げてお姉ちゃんは苦しそうな顔になる。お姉ちゃんが苦しそうな顔をするのは嫌いだ。自分が苦しくなった気持ちになるからだ。でも、ほんとうには自分は(お姉ちゃんほどには)苦しくならないのだから、お姉ちゃんの苦しそうな顔を見ること自体は、実は私は好きなのかもしれない。
好きじゃなければ、無意識でも、こんなことはしないのだろう。
私はひどいやつだ。
ぱっと手をはなすと、お姉ちゃんはげほげほ咳き込んだ。涙目になって、うらめしそうな顔をしてこちらを見る。ごめん、ごめん、と私は謝った。だってお姉ちゃんが、すごく無防備なんだもん。
「あたりまえよ」
とお姉ちゃんは言って(どういう意味だろう)、呼吸を落ち着けてから湯船につかった。私もお湯にはいる。地霊殿のお風呂場はとても大きいから、私たち姉妹どころか、お燐とおくうの計四人で湯船にはいるのもぜんぜんよゆうだ(昔はよくそうした。今もときどきやる)。お湯の中でお姉ちゃんに擦り寄り、体をこすりつけ、ごめんねぇ、ついなのぉ、無意識なのぉ、悪気はないのぉ、と甘える。
お姉ちゃんは何も言わない。
じっと前を見て、黙ってお湯につかっている。頬を汗の玉がつたう。まるで私が隣にいることに、気づいてないみたいだ。
なんだか怖くなった。
お姉ちゃん、お姉ちゃん。
お姉ちゃん、お姉ちゃん。
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん。
目の前が真っ暗になる。
起きると、自分から離れたところに灯りが見えた。天井の灯りだ。しばらく状況がつかめなかった。視線を動かして、周りの様子を見ると、自分が姉の部屋の、照明の真下に寝かされていたんだ、というのがわかった。
体を起こすと頭痛がする。死ぬのだろうか。
「お姉ちゃ……」
と声に出してから気づく。お姉ちゃんは私のそばにいなかった。
かわりにお燐がいた。
「さとり様は地上に行きましたよ」
お燐の黒いドレスはたくさんのレースとリボンと、様々な模様が描かれたゴブラン織りの生地でできていて、主人の妹である私よりも立派な格好だ。そのお燐が私の寝かされている布団の横にちょこんと座り、上半身を起こした私と視線をあわせている。
自分のかっこうを確認すると、へんな柄の浴衣みたいなものを着せられていて、下着もつけずにそれ一枚だった。なんだか情けなくなった。
「勇儀さんとパルスィさんが、ラブホテルからパクってきたものをさとり様がもらって、最近ねまきにしてるんですよ」
「お姉ちゃんはどこ?」
「こいし様、具合大丈夫ですか? お風呂でのぼせて気を失っちゃうなんて、怖いですよ」
「お姉ちゃんに会いたいよぅ……」
私はとても、さみしくなってしまった。かっこ悪いな、と思いながら、お燐の前でめそめそ泣いてしまった。会いたいときに、お姉ちゃんがいないのは、とてもさみしいことだ。(お姉ちゃんのほうでも、さみしいんだろうか?)
さとり様は地上に行きましたよ、とお燐が教えてくれた。
「お姉ちゃんは地上なんか嫌いなのに、なんで」
「こいし様がちょっぱってきた、帽子とリボンを返しにいったんですよ。せっかくおめかししてたのがなくなっちゃって、巫女も白黒も、ずいぶん怒ってたみたいですよ」
「ああ。きれいにしてたね。なんで?」
「例大祭で東方の新作(体験版)が頒布されるので、そのプレスリリースだそうです。でも、こいし様。手を出したのが巫女と白黒で、よかったです。もしも、もしも今回、メイドに手を出していたら……絶対に、確実に、どうあっても血を見ていたでしょうから」
危ないところだった。でも、とても良いニュースだった。ちょう楽しみだ。よかった。
ただいまあ、と、玄関のほうから、おくうの声がした。
「ちょうど帰ってきましたね。ボディーガード役で、おくうも一緒に行ってたんです。じゃ、出迎えてきますね。
……ね。こいし様。泣かなくて大丈夫ですよ。さとり様、怒っていませんよ。ほんとです」
立ち上がって、お燐が部屋を出て行く。私はそれを見送ったあと、また布団に寝っ転がって、目を閉じた。
何も見えなくなった。お姉ちゃんなら、両目を閉じても、第三の目で何かを見ることができるだろう。でも、私はそれもずっと昔に閉じてしまった。まぶたの裏に灯りが映る。私は心のなかで、自分に向かってつぶやいた。
(もうすぐお姉ちゃんがこの部屋に入ってくる。そうなっても、私は目を閉じたままでいよう)
(お姉ちゃんだけではなくて、おくうと、お燐も、一緒になって入ってくる。私は目を閉じたまま、どこにお姉ちゃんがいるか、指でさし示そう。できるかどうか、わからないけど、やってみよう)
(お姉ちゃんは、私を見つけることができるんだから。私だって、そうすべきなのだ)
(目を閉じても光が当たっているのがわかる。暗いのか、明るいのかくらいはわかる。耳もふさごう。目を閉じて耳をふさいで、お姉ちゃんがどこだかわかったら、私は)
私はごくり、とつばを飲み込んだ。ドアが開いた気がした。
どんな匂いなのかね
プレスリリース。アイドルは大変です。
なのでこの作品も読んでいて面白かったです。
こいし可愛い。
さすがに気持ち悪すぎたのでやめました
しかしラブホテルですかそうですか
普通なら水と油以上にうまく混ざらない組み合わせなのに、筆者さん独特の言い回しで良い感じに混然一体しているなぁと感じました。
気取らず読めます。そこがすごい。
さりげなく勇パルはなにをしているのか
うーん、正直に言います。すいません、分かりませんでした。
すみずみとつるつるに反応した私はだめでしょうか。だめですね