世界が滅びるまで、残り五十時間を切った。
手遅れである。
今や幻想郷の住民は混乱し、己の秘密をさらけ出して、スッキリする作業に突入している。未練を残さず成仏するためだ。
「あーっはっはっはっは。あひゃひゃひゃひゃ。実は私、去年までおねしょしてたぜぇ。男と付き合ったことないぜぇ。ワイルドだろぉ? 死ぬぜぇ、皆死んじまうぜぇ。あひゃひゃひゃ」
「なんて潔い暴露……分かった、私も言うわ。私、魔理沙が好き! 大好き! 時々ユニセフのふりをして貴方に貢いでたのは私よ! こっそり本棚の埃をはらってたのも私よ! あと、お漏らしする魔理沙が見たくて、去年まで差し入れに利尿剤入れてたわ! 愛してる!」
「おねしょはアリスのせいかよ! ……いや、もうどうでもいいんだ。私もお前のこと、嫌いじゃないぜ」
「私も告白するわ! 魔理沙を取られたくなくて、あんたに片思いしてる男見つけたら、片っ端からリンチして諦めさせてたの! ごめんなさい!」
「おい霊夢ぅ! ていうか私の恥ずかしい秘密は全部、知人が原因かよ!」
「僕も言おう! 一時期、魔理沙の父親と付き合っていた! 本当にすまない!」
「えっ? ……香霖? ……えっ?」
何故か魔理沙だけが致命的なダメージを受けているが、とにかくこんなやり取りが幻想郷中で行われていた。末期である。衰退論が捗っている。憂うしかない。
誰もが職務を放棄し、想い人に愛を告げ、憎いあいつに復讐を果たしていた。
世界が終わるのだから、当然の流れと言える。
神はこの幻想郷を見放したのだ。いや、正しくは、地球をと言うべきか。
――世界が滅びるまで、残り二日。
よく探してみると、まだこの星を見放していない神も、僅かながら残っていたようだ。
そう、守矢神社の愉快な面々。神奈子と諏訪子である。二柱は仲良し。
「なんで諏訪子の信者は男ばっかなんだろうねえぇー? 無意味にアニメ声で喋るせいかなー? 声帯売女、楽しいかいー?」
「なんか未来永劫万年ヴァージン女神が、ジェラシーに燃えて雑音吐いてるー。聞こえなーい。私の耳、男の人の台詞しか上手く聞き取れなーい」
「ぶっ殺すぞ経産婦!」
「やってみろや喪女神様!」
仲良しではあるのだが、ご覧の通り神奈子と諏訪子はモテ具合に差があり、それが原因で殴りあうのも珍しくない。
地球最後の日が近付いているというのに、今日もマイペースに喧嘩していた。
「そんなに男性信者欲しけりゃ、髪型変えればいいじゃない。その奇妙な外ハネが余計なんだよ神奈子は。おかげでオバサンっぽく見えてると思うね」
「おいおい、私がそれを試して無いとでも思ったか? 可愛く見せようとしてストレートパーマかけたら、永江衣玖と区別つかなくなるのよ?」
「あーうー」
言われてみれば、たまに気を使って神奈子の髪型をアレンジし、外ハネを抑えて描く絵師さんは確かにいる。しかしそれを行うと、衣玖さんに限りなく近い別人のお姉さんが、神奈子の衣装を着ている状態になってしまうのだ。ましてや服を引ん剥いたイラストだったりすると、本当に見分けがつかない。そしてほぼ裸の絵しか保存しない人間からすれば、これは切実な問題だ。凄く困る。助けて欲しい。衣玖さんは疲れたOL風、神奈子は主婦っぽい老けた印象を気にするオボコという、その雰囲気こそが差別点であり、ぜひ絵師の皆々様には頑張って頂きたいものである。
「私はこの国の絵描きを信じている。日進月歩の技術革新と、創作コミュニティの情報交換により、あらゆる表現上の困難を克服すると思うね」
「ロリな私からすると、条例や表現規制の方を克服して貰いたいところなんだけど」
「はっ。笑わせる。幼児体型は犯罪。犯罪はロリコン。これからはお姉さんキャラの時代なんだよ。今に諏訪子の絵を描くだけで逮捕されるようになるね。それは正しい世界さ」
ぎゃーぎゃーと大いに脱線して、論争する神奈子達。
それを隣で見守るは、緑の大人気巫女さん、東風谷早苗だ。とてつもなく不安げな顔をしている。
「あのぉー。もしかしたらひょっとしたら、幻想郷中が何故パニックなのか知らないから、のほほんとしているのではと思いましたけど。でも神様ですし、そんなことはないですよね?」
早苗はおそるおそる、といった様子で質問をした。
「知らん」
「なにそれ?」
早苗、絶句である。
「……わかりました。よく聞いてください」
諏訪子と神奈子は、真剣な眼差しで聞き入る。
「もうすぐ幻想郷が、いえ、地球が終わっちゃうんですよっ!」
早苗は目をバッテンにして、力いっぱい叫んだ。
「なんじゃそら。滅亡論かい? 毎年世界は滅びるって言われてる気がするわ」
「早苗は現人神の癖に信じてないのかな、神話を。そう、安全神話をね。日本は何があろうと大丈夫なんだよ。中国は攻めてこないし、貿易は黒字であり続けるし、原発は永遠に安全なのよ。ずっと平和なんだよ」
外世界の事情を2007年頃までしか知らない神奈子と諏訪子は、実に平和ボケしていた。
そんな神々に意識改革をさせるため、早苗は上空を指差す。
「あれ。あれです。その眼で見れば、考えも変わるでしょう」
「あれって――」
空を見上げれば、雲ひとつ無い快晴。そしてきらめく星。昼でも見えるとなると、金星だろうか? いや、それにしては大き過ぎる。
「なにあれ?」
「地球を、終わらせるものです」
――世界が滅びるまで、残り一日。
特に有効な対策も打てぬまま、日付が変わってしまった。
早苗は絶望し、すっかりしおらしくなっている。元気の無い早苗など、ただの胸が大きくて腋を露出しただけの若い娘だ。
「それはむっちゃ価値ある代物なのでは」
「誰と会話してんの?」
「ああ? 地の文先生とちょっとね……それより、私達でどうにか出来ないもんかねえ、あれ」
神奈子は昨日よりだいぶ大きくなった星を見ながら、言った。
「信じられないなー。あんなので世界、終わっちゃうわけ?」
「そりゃそうだ。月とほぼ同じ大きさらしいからね、あの隕石」
そんなものが落ちてくるというのだから、たまらない。
幻想郷は、宇宙の気まぐれによって塵芥になろうとしていた。
「NASAが何とかしてくれるっしょ、NASAが」
「人間の科学力でどうにかできる範疇を越えてるよ、あのサイズは」
「ふざけるな。たかが石ころ一つ、誰かに頼んで押し出して貰う」
威勢がいい割に他力本願な諏訪子である。
「ほらさ? 火力自慢な子が、幻想郷にはいっぱい居るじゃないの。そいつらが撃ち落としてくれるよきっと」
「それが、とっくにあらゆる攻撃を試したらしいよ。早苗に聞いた」
フランドールのきゅっとしてドカーンや、魔理沙のマスタースパークや、幽香の元祖マスタースパークや、魔理沙のファイナルスパークや、魔理沙のファイナルマスタースパークや、とにかく様々な手法で破壊を試みたそうだが、まるでビクともしなかったそうだ。
後半マスタースパーク系統の手段しか試せていないあたりに、皆のテンパり具合が反映されている。
「人も妖も、敵わぬというなら」
「神の出番、ね」
――世界が滅びるまで、残り十二時間。
「そもそも月と同程度の直径の天体が接近するとなるとその重力による影響が出始め、公転周期や自転なども乱れているだろうし、また月の軌道もそれに引き寄せられるためその動きで海面や気圧などにも変化が生じている筈で津波や異常気象が巻き起こり、SF考証的に詳しい人から突っ込まれると苦しいのでスルーして欲しい状況が色々と」
「長い。三フレーズにまとめて」
「巨大隕石 ぶっ壊せても 地球はめちゃくちゃ」
「アフターフォローも考えると、どっちみち地獄が待ってるってことね」
既に日が傾く早さや、動物の振る舞いはおかしくなり始めていた。空は皆既日食のような現象が起きている。無論、太陽を遮っているのは月でなく隕石だ。
「やりがいがあるねぇ。この仕事が済んだら、報酬に私の外ハネを残しつつ可愛く作画する妙案を、作ってもらいたいもんだ」
「……私、今だから言うけど、神奈子はその髪型が一番似合ってると思う。変に工夫とかしなくても、普通に描いて貰うだけで神奈子は綺麗だよ」
「は!? お前誰だ……?」
「だって、ひょっとしたら今日が地球最後の日になるかもしれないんだよ?」
喧嘩別れは、嫌だよ。と、諏訪子は赤く腫らした目で言った。
「……あー。その……私も自分が男だったら、諏訪子みたいな子を恋人にしたいなって思うし……諏訪子が異性に人気あるのも分かるんだ。うん」
諏訪子は、目だけでなく顔も真っ赤にして、俯いた。
「なんか辛気臭い。やめよ」
「だな」
私らは罵りあってる方が性に合う。無事生き延びて、明日もくだらない喧嘩しような、と二柱は約束した。
「どおりゃあああああああ!」
「ゆけ、巨大隕石! 忌まわしき記憶と共に!」
神の力を存分に振るい、神奈子と諏訪子は上空へ弾幕を打ち込む。
ぱららららら。天高く届いたかと思うと、それらは途中で勢いを失って、雨粒のように落ちていった。
「駄目だ、とても大気圏外になんて到達しないよ」
「じゃあ、まず大気圏外に出てから、迎撃するのはどうだろう。私がミジャグジ様で神奈子を宇宙まで放り投げるから、後は任せた」
「なるほどその手があったかー。ってアホか。途中で燃え尽きるわ。神様じゃあるまいし、そんな物理法則に反した真似できるか」
「あんた神じゃないっけ」
「そうだった……もうその方法しか無いのか……」
しかしいざ実行に移してみたら、神奈子の体は重すぎてとても大気圏離脱など不可能であった。
「大女乙。大女乙。大女乙。大女乙」
「仕方ないでしょっ! 初めから無理があったんだってば!」
――世界が滅びるまで、残り八時間。
いつしか守矢神社の周辺には観衆が集まり、神々の抵抗を見守っていた。
彼らは、自らが信仰する八坂の神ならば、何とかしてくれるのではと祈っている。
「死亡フラグが足りないんじゃないか」
「なにそれ」
「それっぽい台詞を吐くと、奇跡が起きたりするもんだろう大体」
「ごめんピンと来ない。ちょっとお手本お願い」
「私、この隕石を壊したら、故郷で花屋を開くんだ……」
「あーなるなる。おっけ。――ここは私に任せて! 神奈子達は下がるのよ!」
「生きて、諏訪子と一緒に、宴会するんだあああー!」
「か、神奈子に渡したいものがあるんだ……無事に隕石を壊せたら、言うね」
なんだかドキドキしてきた上に、無意味である。
「駄目だー。もー弾幕も出て来ないよー」
「オンバシラも弾切れっぽい……疲れた……」
二柱は疲弊し、背を丸めている。
限界は見えていた。
見るに耐えないといった様子で、早苗は声をかける。
「もう、やめにしませんか」
「は?」
「お二方は、十分に頑張ったと思います。誰も責めたりしませんから、せめて最期の時を、ゆっくりと過ごしましょうよ」
早苗は震えた声で提案した。
「そういう訳にはいかないんだよ。なんせ私ら、神だからね」
「そうそう。誰か祈る者が一人でもいる限り、応えなきゃならないのよ」
「人の手に余るものは、この身で引き受ける。そう約束して、お賽銭とお供えもの貰ってるんだ。こんな時こそ働いとかないと」
「大体ね、神様まで諦めたって知れ渡ったら、信者達は本当に絶望するでしょう。絶命するその瞬間まで、希望を持たせてこその神様よ」
「内心では怖くても震えてても」
「神は逃げれないの」
神奈子と諏訪子は、互いに目を合わせて言った。歌うように、声を合わせて言った。腐っても神である。その性根には、人知を越えた清らかなものが流れている。
「……分かりました」
「早苗?」
「この幻想郷では、諦めに囚われてはいけないのですね」
「それでこそ私の巫女だ!」
早苗は涙を拭い、神の戦線に混じる。
「来たれー! 奇跡ー!」
ぼん。早苗が叫ぶと、見当はずれな方向で爆発音が鳴り響き、米が降った。
「何やってんのさ?」
「あ、あれ……えっと、奇跡カモン!」
庭にある池の水が、モーゼの如く割れた。
「えらく、精度悪いな」
実は言うと、早苗自身も己の力をよく理解していないのである。奇跡、などという大雑把なカテゴリで、色々何でもできるが何が起こるかわからない。例えば幼少期に魔法少女ごっこをしていたら、ミラクルが起きて本当に変身してしまい、それ以来、体毛が緑から戻らない。パルプンテやゆびをふる系列の何かなのだ。
「っかしいな……とにかく隕石がどっか行くように、念じてるんですけど……」
えいっ、えい。早苗は何度もかけ声を上げ、上空に手をかざす。しかしその度に奇跡は暴発した。
「なんで……? 当たってくれないの……?」
泣きそうな顔で、手を振り上げる早苗。ばいんばいん。その度に胸が揺れて、痛むらしい。片手で固定しながら、弾幕など放っている。
「邪魔そうだねぇそれ。そんなもんぶら下げてるから、狙いが外れんじゃないのー?」
見かねた諏訪子は、心底うざったそうに早苗の胸を掴んだ。
「ひゅわっ!?」
ぐわん。一瞬だが、地上に迫る隕石の影が揺れた。
「……なんだ今の」
まさかと思いながらも、諏訪子はもう一度早苗の乳を揉む。
「ひゃうっ!?」
バキン。隕石は影の一部が欠けた。何割か吹っ飛んだらしい。
「……おっぱい触られると調子よくなるのか?」
他の部位を弄っても効果はあるのだろうかと、頬をつねってみたが、変化なし。
尻を撫でてみると、まあまあ効果あり。
耳の穴に指を突っ込んでみると、大いに効果あり。
「……まさかね」
すっかり弄ばれてしまった早苗は、肩で息をしていた。汗ジミが巫女服をところどころ透けさせている。
「いや、過去に事例もあるし……自分とこの巫女がそういう子だなんて信じたくないけど……」
顎に手を当てて、考え込む諏訪子。
私にも分かるよう説明してくれ、と神奈子は尋ねた。
「原始的なシャーマニズムでは、薬物や集団催眠の力を借りて、性的昂揚状態に陥ることで能力を発揮する巫女もいたというわ」
「んーとつまり?」
「いやらしい気分になると、能力が向上する巫女さんは本当にいたのよ。……いやマジで」
「つ、つまり早苗は」
早苗も、同じタイプの巫女。
衝撃の事実が判明した。なんてえっちな巫女さんなのだろう。これでは殆ど女子高生だ。巫女さんの風上にも置けぬ、女子高生の中の女子高生だ。
「だが、希望は見えた」
――世界が滅びるまで、残り三時間。
「言え、早苗! どこが一番気持ちいいんだ! 言えっ!」
神奈子は、鬼神の如き形相で早苗に迫る。
「無理です! こんな、人がいっぱい見てる前でそんなこと言えませんっ! 死んでしまいます! お、男の人も見てるんですよっ!?」
大丈夫だ早苗ちゃーん。俺らは今日見聞きしたこと、誰にも言わねぇだよ!
俺はホモだから全く気にしねぇぞ! 続けてくれ!
ぼ、ぼぼぼぼぼ僕はロリコンだから、諏訪子ちゃんにしか興味ないんだな。だから安心していいんだな。最初から早苗さんは視界に入ってないんだな。
などと、観客は声援を送る。
「ほら見ろ、ここにはナイスガイ(?)しかいない! 言え! とっととどこを攻められると弱いのか、白状しろ!
「はうぅ……」
観念したのだろう。
羞恥に歪んだ顔で、茹でダコのように紅潮しながら、早苗は告げる。
「……きです」
「何? 聞こえない」
「腋です! 私、昔から腋を触られると、おかしくなっちゃうんです!」
「腋ー? おいおい、それじゃあお前さん、常に最も敏感な部分を曝け出してることになるが、いいのかそれ」
「だ、だっていつも露出してたら、自分で触りやすいじゃないですか……えへへ……ごめんなさい……」
あまりのけしからなさ加減にライスシャワーである。
とんだ女子高生巫女もいたものだ。まったくもってJKである。
「分かった。そうと分かれば話は早い」
神奈子は目を瞑り、顎で諏訪子に指示を送る。何かを持ってこさせるようだ。
「一体何をするというのですか? どうして私は今、バンザイの姿勢で手首を柱に縛られてるんですか?」
早苗の至極全うな疑問を一切無視し、黙々と神奈子は作業をこなしている。
そして、諏訪子からとある最終手段を受け取った。
「ま、まさかそれで」
筆。
毛筆である。
「今から私と諏訪子で、これを用い、早苗の腋を――愛で尽くす」
「……や……ほんとに変になっちゃいます、私……」
「変になれ! でなきゃ奇跡は起きないんだよ!」
言うが否や、神奈子は早苗の腋に筆先を這わせた。
「はうっ!?」
ちょこちょこと、腋の下を往復する。毛穴一つ見当たらない白い皮膚は、汗腺で悦びを伝えた。流れ出る雫を吸い取った筆先は、細く、硬く、尖っていった。その鋭い感触が余計に快感を生み、早苗の声を上ずらせる。
「ひやっ!? ぁっ。ぁっ。あうっ」
ちろちろちろちろ。蛇の舌と見紛う動きで、神奈子の指先は走る。
早苗の背中は大きく反り返り、何度も肩が跳ねた。
――世界が滅びるまで、残り一時間。
休憩を挟むことなく、二柱は巫女の腋を開発し続けた。
早苗の体は徐々に開かれていった。熱く、開放的になっていった。全身にぐっしょりと汗をかき、髪は風呂上りのように湿っている。双眸からは滝のように雫が流れ落ち、だらしなく開いた口は銀の糸を垂らす。
だが、足りない。
それでも奇跡は起きない。
地上を灰燼と化さんと接近する巨影は、轟然と天を覆っている。
「頼むよ早苗! やってくれ、やってくれよ!」
「……あっ、……はっ、……ふあっ……」
「私は好きなんだよ! ここが好きなんだ! 幻想郷が好きなんだよ!」
「……んっ……なんか……くるぅー……昇ってくるぅ……」
「外じゃ誰も私なんて信じてくれなかったんだ! 皆私を忘れてたんだ! 神なんていらないって思われたんだ! でも幻想郷の連中は、こんな私を信仰してくれたんだよ! 私にはここしかないんだよ!」
神奈子の瞳は潤んでいる。
「助けたいんだ! 馬鹿馬鹿しいけど、いやらしいけど、怒る奴もいるかもしれないけど、それでもここをどうにかしたいんだ! それで救われる者がいるなら、やりたいんだ! 早苗! 頼むよ!」
「……ぞわぞわってしたのが、なんか……」
「飛べ、早苗! 飛ぶんだ! 飛べよおおおおおおおおおおお!」
神奈子と早苗は呼吸のリズムを合わせ、奇跡を迎え入れる準備に入る。
「ここから先は筆じゃ駄目ね。何かが足りない。そう、水分が足りない。どこかに筆よりも柔らかく、滑らかで湿ったものがあれば……」
そこまで言って、諏訪子は気付いたようだ。
「舌だ!」
ぺろぺろぺろぺろ。短くてちっちゃな舌で、諏訪子は腋を舐め上げる。
神奈子も負けじと、熱い吐息を吹きかけながら、早苗に吸い付いた。
「やれえええええええええ!」
「あううううううううーっ!」
と。
その時である。
隕石は、大きく揺らいだ。
揺らぎは徐々に大きくなり、やがては希望となる。
「隕石が……」
「遠ざかっていく……」
風は止み、波は鎮まる。
地軸は整えられ、自転周期はあるべき形へと回帰する。
「地球が、癒されていく……」
神奈子達は感じ取っていた。
地球が、息を吹き返すのを。全てが元に戻っていくのを。
「助かった」
「助かったんだ!」
――世界は救われた。一人の少女の、腋によって。
「早苗。よくやった。今こそお前は真の神だ。人の身でありながら、よくぞその域に達した」
「多分、ご先祖様が優秀なおかげだよ」
諏訪子は自分の手柄のように喜んでいる。
早苗に返事はないが――腋に浮かぶ雫が、キラキラと光って、一同を祝福しているかのようであった。
その瞬きがある限り、守矢神社もまた、燦然と輝き続けるのだろう。
腋は、世界を、救う。
未来は、明るい。
入れるの忘れた
パスも忘れた
無念である
た ま ら ん
しかし、おっぱいが……
おーまいがー……
ギリシャ神話の恋心と性愛を司る神エロースは軍神アレースと愛の女神アプロディーテーの子とされている
アプロディーテーは元来は、古代オリエントや小アジアの豊穣の植物神・植物を司る精霊・地母神であったと考えられる(Wikipedia情報)
……符合する点がいくつかあるな
早苗さんは愛(エロス)の女神という可能性が有るかもしれない
もうこの方向で突っ走っちゃってくださいw
このSSは本当に馬鹿だ! それ以上書くことは無い!