五月雨が続く季節の中、
一人の悩める少女が朝から河原に佇んでいた。
「つれないやつだな。」
誰が聞くわけでもなく、ぼそりと言い放つ少女。
その少女の手には竿があり、足元には水だけが張ってあるバケツがある。
「釣れないぜ…。」
竿を持つ手は相変わらずなんの手応えも感じなかった。
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
「だぁぁあ、やってられっか!まったく、慣れないことは気晴らしにやるもんじゃないな。」
竿をほっぽり出し、濡れた岩肌も気にせずに寝転がり、ただ、ただ、降り注ぐ雨雲を見つめた。
「泣きたいのはこっちだぜ…。」
まるで、今の心中に同情されているかの様な錯覚に陥っていた。
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
ザバッ!
ぺた
ぺた、ぺた
ぺた、ぺた、ぺた
感傷に浸っている少女のもとに近づく影が、少女の顔を覆うように差したところで、少女に声がかかる。
「おや、朝から誰かいると思ったら、魔理沙じゃないか。」
「あぁ、にとりか・・・・・、相変わらず河川から出て来るところは河童だな。」
魔理沙に話しかけた少女は、見た目は人間らしい風貌をしているが、種族は河童である。
「いや~それほどでもないよ~♪。それより、魔理沙こそこんな雨の中でなにやってるのさ。風邪でも引きたいのかい?ふふっ、相変わらず変わった人間だね~。」
「水も滴るいい女の子だろ?まぁ、こうした努力の賜物かな。」
と、湿度の高い季節だからか、上機嫌なにとりに対して、魔理沙は適当に返答する。
「確かに魔理沙はいい女の子だよ。いや、かっこいいと形容した方がしっくりとくるね~。」
ぺち、ぺちと魔理沙の頬を軽く叩き、顔の輪郭を確かめるように覗き込むにとり。
「なんだ?わたしに惚れちまったのか。悪いが今はそんな気分ではないんだな。」
鼻先まで近づいたにとりの顔を避けるように、魔理沙は背を向ける。
「ん~、でも今の魔理沙には惚れることはないな~♪。」
耳元でイタズラっぽく囁いたためであろうか、魔理沙の身体はビクッと動いた。
「ただ雨に打ちひしがれるなんて、らしくないし、そんな姿わたしは見たくないんだよね~♪。」
にとりの口から言われた言葉は、どんよりとした天気と、どこか合わない軽いものであった。
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
「言ってくれるぜ。」
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
しかし、そんな軽やかさが魔理沙にとっては心地良かった。まるで湿気た空気を吹き飛ばすような。
「ふっ、らしくない・・・・っか。確かに、ただつれるのを待つような柄じゃないな私は。捕まえたいなら、あいつの心を捕まえるのなら、自分から行くのが魔理沙ってもんだぜ。」
周りに聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、自分に言い聞かせるように、静かに言い放つ。
「んー?魔理沙ぁ何か言ったかい?。」
にとりが不思議そうに魔理沙の正面に立とうとした時、
「『ありがとな、にとり』って言ったんだよ!」
がばりと起き上がり、近づくにとりの顔に軽くキスをした。
「ひゅいッ!?ま、まりさ、い、いきなりなにするんだよ~!」
ドッボン!!!
不意打ちをくらい、テンパっているにとりを横目に、魔理沙は河川に飛び込んだ。
・・・ザー
・・・・ザーザー
ザバっ!
「ぷはっ、すーはー、すーはー、すーーっ。」
ザブンっ!
・・・・・ザーザーザー
息継ぎをするためか、数分ごとに河川から魔理沙の顔が現れる様は、にとりにとっては、モグラのようで可笑しかった。
「雨で普段より水かさが多いってのに・・・・、それにしてもあんなに一所懸命に潜って何をしたいんだー?」
ぺた、
ぺた、ぺた、
ぺた、ぺた、ぺた、
がしゃんっ!
「げげっ!?」
心配半分、興味半分で河川に近づいたにとりの足が、何かを引っ掛けてしまった。
「ん!?空のバケツに、釣竿・・・・・・!なるほど、魔理沙もやるね~♪」
にとりが魔理沙のとった行動の意味に気付いた時だった、
ザバッ!
「獲ったぜー!!!」
魔理沙は、ぷはっと河川から顔を出し、高らかに両手を突き出した。
「ヒゥーーイ!立派なヤマメじゃないか!」
魔理沙の手には収まりきれないほどのヤマメが、元気よく暴れていた。
「へっへっ、このぐらいの大きさは滅多にお目にかかるもんじゃないほどだろ?」
魔理沙は誇らしげに獲得したヤマメをにとりの元へ持って行き、
「ほいよっと。」
それをにとりへ放り渡した。
「んんっ!?せっかくの獲物を私にあげてもいいのかい?」
胸元で忙しなく跳ねるヤマメに悪戦苦闘しながら、にとりは解せない顔つきで魔理沙に聞いた。
「いいんだよっ!!いまの私にとって大事なことは、【何を獲得したか】じゃない。【自分から獲った】という結果なんだぜ!」
「そうかい、そうかい、そりゃ爽快~♪」
魔理沙のカッコよいセリフも上の空で聞くほど、目の前のヤマメが気に入った現金なにとりだった。
ぱんっ、ぱんっ、ぱふっ。
「よっと、」
それを尻目に、魔理沙はトレードマークの帽子に付いている水滴を払い被り、箒に跨った。
「おや、もう帰るのかい?せっかくだから、私の家で一緒に食べて行こうよー。朝からここに居たぐらいだしさ~♪」
テンションがあがっているにとりは、誰かと一緒に楽しみたい気持ちだった。
「悪いな、にとり。今のは練習だったんだ。これから本命を捕まえに行かなきゃならんのだからな。じゃーなー!」
びゅーーん!!!
そんなにとりを、曇りひとつない目で真っ直ぐに見つめ、別れの言葉を言った魔理沙は、雨の中を飛び立った。
「やっぱり何かに夢中な魔理沙はカッコいいな~♪あんな目で見つめられたら、誰だって惚れちゃうよ。」
魔理沙の真剣な態度に、思わずドキッとしたにとりは、そんな魔理沙を虜にするやつが羨ましく思った。
「捕まえたら、にとりのところへ真っ先に見せに行くからなーーー!待ってろよーーー。」
「おーぅ、楽しみに待ってるよ~~~!!」
途中、振り返って言った魔理沙に、手を振って応えたにとりは、果たしてどんな獲物を自分に見せてくれるのか、そしてその時にどんな言葉を魔理沙にかけようか、などと既に頭の中ではいろんな想像を膨らませながら待ち遠しい気持ちで帰って行った。
一人の悩める少女が朝から河原に佇んでいた。
「つれないやつだな。」
誰が聞くわけでもなく、ぼそりと言い放つ少女。
その少女の手には竿があり、足元には水だけが張ってあるバケツがある。
「釣れないぜ…。」
竿を持つ手は相変わらずなんの手応えも感じなかった。
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
「だぁぁあ、やってられっか!まったく、慣れないことは気晴らしにやるもんじゃないな。」
竿をほっぽり出し、濡れた岩肌も気にせずに寝転がり、ただ、ただ、降り注ぐ雨雲を見つめた。
「泣きたいのはこっちだぜ…。」
まるで、今の心中に同情されているかの様な錯覚に陥っていた。
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
ザバッ!
ぺた
ぺた、ぺた
ぺた、ぺた、ぺた
感傷に浸っている少女のもとに近づく影が、少女の顔を覆うように差したところで、少女に声がかかる。
「おや、朝から誰かいると思ったら、魔理沙じゃないか。」
「あぁ、にとりか・・・・・、相変わらず河川から出て来るところは河童だな。」
魔理沙に話しかけた少女は、見た目は人間らしい風貌をしているが、種族は河童である。
「いや~それほどでもないよ~♪。それより、魔理沙こそこんな雨の中でなにやってるのさ。風邪でも引きたいのかい?ふふっ、相変わらず変わった人間だね~。」
「水も滴るいい女の子だろ?まぁ、こうした努力の賜物かな。」
と、湿度の高い季節だからか、上機嫌なにとりに対して、魔理沙は適当に返答する。
「確かに魔理沙はいい女の子だよ。いや、かっこいいと形容した方がしっくりとくるね~。」
ぺち、ぺちと魔理沙の頬を軽く叩き、顔の輪郭を確かめるように覗き込むにとり。
「なんだ?わたしに惚れちまったのか。悪いが今はそんな気分ではないんだな。」
鼻先まで近づいたにとりの顔を避けるように、魔理沙は背を向ける。
「ん~、でも今の魔理沙には惚れることはないな~♪。」
耳元でイタズラっぽく囁いたためであろうか、魔理沙の身体はビクッと動いた。
「ただ雨に打ちひしがれるなんて、らしくないし、そんな姿わたしは見たくないんだよね~♪。」
にとりの口から言われた言葉は、どんよりとした天気と、どこか合わない軽いものであった。
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
「言ってくれるぜ。」
・・・ザー
・・・・ザーザー
・・・・・ザーザーザー
しかし、そんな軽やかさが魔理沙にとっては心地良かった。まるで湿気た空気を吹き飛ばすような。
「ふっ、らしくない・・・・っか。確かに、ただつれるのを待つような柄じゃないな私は。捕まえたいなら、あいつの心を捕まえるのなら、自分から行くのが魔理沙ってもんだぜ。」
周りに聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、自分に言い聞かせるように、静かに言い放つ。
「んー?魔理沙ぁ何か言ったかい?。」
にとりが不思議そうに魔理沙の正面に立とうとした時、
「『ありがとな、にとり』って言ったんだよ!」
がばりと起き上がり、近づくにとりの顔に軽くキスをした。
「ひゅいッ!?ま、まりさ、い、いきなりなにするんだよ~!」
ドッボン!!!
不意打ちをくらい、テンパっているにとりを横目に、魔理沙は河川に飛び込んだ。
・・・ザー
・・・・ザーザー
ザバっ!
「ぷはっ、すーはー、すーはー、すーーっ。」
ザブンっ!
・・・・・ザーザーザー
息継ぎをするためか、数分ごとに河川から魔理沙の顔が現れる様は、にとりにとっては、モグラのようで可笑しかった。
「雨で普段より水かさが多いってのに・・・・、それにしてもあんなに一所懸命に潜って何をしたいんだー?」
ぺた、
ぺた、ぺた、
ぺた、ぺた、ぺた、
がしゃんっ!
「げげっ!?」
心配半分、興味半分で河川に近づいたにとりの足が、何かを引っ掛けてしまった。
「ん!?空のバケツに、釣竿・・・・・・!なるほど、魔理沙もやるね~♪」
にとりが魔理沙のとった行動の意味に気付いた時だった、
ザバッ!
「獲ったぜー!!!」
魔理沙は、ぷはっと河川から顔を出し、高らかに両手を突き出した。
「ヒゥーーイ!立派なヤマメじゃないか!」
魔理沙の手には収まりきれないほどのヤマメが、元気よく暴れていた。
「へっへっ、このぐらいの大きさは滅多にお目にかかるもんじゃないほどだろ?」
魔理沙は誇らしげに獲得したヤマメをにとりの元へ持って行き、
「ほいよっと。」
それをにとりへ放り渡した。
「んんっ!?せっかくの獲物を私にあげてもいいのかい?」
胸元で忙しなく跳ねるヤマメに悪戦苦闘しながら、にとりは解せない顔つきで魔理沙に聞いた。
「いいんだよっ!!いまの私にとって大事なことは、【何を獲得したか】じゃない。【自分から獲った】という結果なんだぜ!」
「そうかい、そうかい、そりゃ爽快~♪」
魔理沙のカッコよいセリフも上の空で聞くほど、目の前のヤマメが気に入った現金なにとりだった。
ぱんっ、ぱんっ、ぱふっ。
「よっと、」
それを尻目に、魔理沙はトレードマークの帽子に付いている水滴を払い被り、箒に跨った。
「おや、もう帰るのかい?せっかくだから、私の家で一緒に食べて行こうよー。朝からここに居たぐらいだしさ~♪」
テンションがあがっているにとりは、誰かと一緒に楽しみたい気持ちだった。
「悪いな、にとり。今のは練習だったんだ。これから本命を捕まえに行かなきゃならんのだからな。じゃーなー!」
びゅーーん!!!
そんなにとりを、曇りひとつない目で真っ直ぐに見つめ、別れの言葉を言った魔理沙は、雨の中を飛び立った。
「やっぱり何かに夢中な魔理沙はカッコいいな~♪あんな目で見つめられたら、誰だって惚れちゃうよ。」
魔理沙の真剣な態度に、思わずドキッとしたにとりは、そんな魔理沙を虜にするやつが羨ましく思った。
「捕まえたら、にとりのところへ真っ先に見せに行くからなーーー!待ってろよーーー。」
「おーぅ、楽しみに待ってるよ~~~!!」
途中、振り返って言った魔理沙に、手を振って応えたにとりは、果たしてどんな獲物を自分に見せてくれるのか、そしてその時にどんな言葉を魔理沙にかけようか、などと既に頭の中ではいろんな想像を膨らませながら待ち遠しい気持ちで帰って行った。
これからも頑張って下さい。
お話自体はさっぱりした掌編という印象でした。
読み返すと、確かに「~ぜ」の多用で『語彙力のない稚拙な魔理沙』という感じでしたね・・・。
今後の参考とさせていただきます。批評してくださり、ありがとうございました。
絵本か小学生向け文庫のような作品でした。擬音を連発する書き方はk&k様の個性なのでしょうが、その文体は幼い子どもや動物やそれに相当する妖怪妖精が登場するときに最も映えると思います。次作も強く期待して待っております。