「虚心坦懐」という言葉がある。
心に蟠りを持たず、素直で平淡とした気持ちという意味である。
私の姉である、古明地さとりという人物はその言葉に大きく反していた。
彼女は、常に心に蟠りを持ち、偏屈で執拗とした性格の持ち主だ。
彼女はずっと部屋に引き籠っている。部屋から出る姿を見ることが出来るのは極稀の確率だ。
彼女の左胸部には「第三の目」がある。この目によって相手の心が読めるのだ。
その目が持つ能力によって、彼女の人生は残酷なモノに変化したのだった。
私は、その古明地さとりの妹である古明地こいし。
私は、第三の目を持っているがその目の能力を封印したのだ。
あの姉みたいに残酷な人生は味わいたくないから。
あの姉と同等の扱いをされたくないから。
代わりに、無意識を操ることが出来るようになったのだが、得など全く無い。
無意識など操って何になるのか。
誰にも気づかれず楽しくお散歩。そんなの誰が得すると感じるか。
これだと、あの姉と同等じゃないか。自分から嫌われ者になるようなものじゃないか。
だから、私は第三の目を閉じたのである。
私の理想の姿を目指して……。
私の理想は私の姉の理想でもある。
私は知っている。姉の素顔を。
妹だから私が生まれるまでの姉の姿は知らないが、私が生まれてからは姉の姿をずっと傍で見つめていた。
妹だから知っている。彼女の全てを。
姉の趣味を知っている。姉の趣味はペットを飼うことだ。
姉はペットたちを母親みたいに優しく時には厳しく育てていた。
今も尚、ペットを育てているらしい。
姉の感情を知っている。今は、感情の変化が乏しいが昔は一味違う。
姉は感情豊かな人だった。姉と喧嘩したこともあった。姉と共に笑い転げた事もあった。
でも今は、そんな姉の姿はもう居ない。いくら探しても見当たらない。
姉の笑顔を知っている。姉の笑顔は本当に明るかった。
姉の笑顔で私も笑顔になれた。まるで、向日葵の花の様に輝いていた。
でも今、向日葵の花は既に枯れてしまった。
どれだけ水を与えても、どれだけ肥料を与えても元の姉には戻らないのだろう。
彼女の心は、もう完全に朽ちている。今にも錆びて崩れてしまいそうだ。
そんな彼女の精神は、完全に壊されてしまった。
傷ついていく彼女の心や精神は、最早見ていられなかった。
あまりにも酷かったから。
壊されていく姉を私はもう見てられない。我慢の限界だ。
今にも叫び訴えたい気分で一杯だ。
姉を壊す奴らが許されない。姉が何をしたというのだ。
私の姉に罪はない。代わりに無意味な罰がある。
どうして?なんで?
そんな言葉しか出てこない。彼女の目からは涙の滴りが永久に落ちる。
もう感情を抑えられなくった姉。実に可哀想だ。
そう思うと、私はよくもらい泣きをする。
姉の気持ちが、姉の心が読めるから。
第三の目の能力があったからじゃない。
私は妹だから。彼女の妹だから。彼女と同じ家族だから。
私には分かる。彼女がどれだけ苦しめられているかが。
そう彼女はいつもこう訴えている。
ワタシヲドウシテミステルノ?ミンナワタシヲステナイデ……
しかし、彼女の訴えは誰にも届かない。
訴えても周りに誰もいない。いつも孤独だから。
訴えても誰も見向きもしない。存在自体が嫌だから、彼女自体が怖いから。
私が知っている姉はこんな壊れた姉じゃない。
早く元の姉に戻って欲しい。
漆黒の闇に包まれた姉をこの手で救いたい。
どうしてそうやって姉を貶すの?
どうしてそうやって姉を壊していくの?
私も訴える。全ては大切な大切な私の姉の為。
しかし、姉と同様。誰も見向きもしない。
既に、姉の印象は決まってしまっているからだ。
あんな奴……
どうしてそんな奴の為に……
近寄りたくない……
もう聞きたくない。
そんな姉の悪口や陰口全て。
でもめげずに私は訴える。この世界全てに。
勿論、私の姉もだ。
私の姉は、全く悪くない。
私の姉は、相手の心が読めるだけで、別に貴方たちに危害なんて与えない。
私の姉を壊さないで。
私の姉を苛めないで。
私の姉に嫌な思いさせないで。
私の姉を返して……。
ねぇ、返してよ。お願いだから……。
私のとってもとっても大好きな、大好きなお姉ちゃんを返してよ!
帰ってきてよ! お姉ちゃんったら!
日々私はこう訴えている。
私の本当の姉は「虚心坦懐」のような心を持っているのだから。
ねぇ、そうでしょ? お姉ちゃん。
-完-
心に蟠りを持たず、素直で平淡とした気持ちという意味である。
私の姉である、古明地さとりという人物はその言葉に大きく反していた。
彼女は、常に心に蟠りを持ち、偏屈で執拗とした性格の持ち主だ。
彼女はずっと部屋に引き籠っている。部屋から出る姿を見ることが出来るのは極稀の確率だ。
彼女の左胸部には「第三の目」がある。この目によって相手の心が読めるのだ。
その目が持つ能力によって、彼女の人生は残酷なモノに変化したのだった。
私は、その古明地さとりの妹である古明地こいし。
私は、第三の目を持っているがその目の能力を封印したのだ。
あの姉みたいに残酷な人生は味わいたくないから。
あの姉と同等の扱いをされたくないから。
代わりに、無意識を操ることが出来るようになったのだが、得など全く無い。
無意識など操って何になるのか。
誰にも気づかれず楽しくお散歩。そんなの誰が得すると感じるか。
これだと、あの姉と同等じゃないか。自分から嫌われ者になるようなものじゃないか。
だから、私は第三の目を閉じたのである。
私の理想の姿を目指して……。
私の理想は私の姉の理想でもある。
私は知っている。姉の素顔を。
妹だから私が生まれるまでの姉の姿は知らないが、私が生まれてからは姉の姿をずっと傍で見つめていた。
妹だから知っている。彼女の全てを。
姉の趣味を知っている。姉の趣味はペットを飼うことだ。
姉はペットたちを母親みたいに優しく時には厳しく育てていた。
今も尚、ペットを育てているらしい。
姉の感情を知っている。今は、感情の変化が乏しいが昔は一味違う。
姉は感情豊かな人だった。姉と喧嘩したこともあった。姉と共に笑い転げた事もあった。
でも今は、そんな姉の姿はもう居ない。いくら探しても見当たらない。
姉の笑顔を知っている。姉の笑顔は本当に明るかった。
姉の笑顔で私も笑顔になれた。まるで、向日葵の花の様に輝いていた。
でも今、向日葵の花は既に枯れてしまった。
どれだけ水を与えても、どれだけ肥料を与えても元の姉には戻らないのだろう。
彼女の心は、もう完全に朽ちている。今にも錆びて崩れてしまいそうだ。
そんな彼女の精神は、完全に壊されてしまった。
傷ついていく彼女の心や精神は、最早見ていられなかった。
あまりにも酷かったから。
壊されていく姉を私はもう見てられない。我慢の限界だ。
今にも叫び訴えたい気分で一杯だ。
姉を壊す奴らが許されない。姉が何をしたというのだ。
私の姉に罪はない。代わりに無意味な罰がある。
どうして?なんで?
そんな言葉しか出てこない。彼女の目からは涙の滴りが永久に落ちる。
もう感情を抑えられなくった姉。実に可哀想だ。
そう思うと、私はよくもらい泣きをする。
姉の気持ちが、姉の心が読めるから。
第三の目の能力があったからじゃない。
私は妹だから。彼女の妹だから。彼女と同じ家族だから。
私には分かる。彼女がどれだけ苦しめられているかが。
そう彼女はいつもこう訴えている。
ワタシヲドウシテミステルノ?ミンナワタシヲステナイデ……
しかし、彼女の訴えは誰にも届かない。
訴えても周りに誰もいない。いつも孤独だから。
訴えても誰も見向きもしない。存在自体が嫌だから、彼女自体が怖いから。
私が知っている姉はこんな壊れた姉じゃない。
早く元の姉に戻って欲しい。
漆黒の闇に包まれた姉をこの手で救いたい。
どうしてそうやって姉を貶すの?
どうしてそうやって姉を壊していくの?
私も訴える。全ては大切な大切な私の姉の為。
しかし、姉と同様。誰も見向きもしない。
既に、姉の印象は決まってしまっているからだ。
あんな奴……
どうしてそんな奴の為に……
近寄りたくない……
もう聞きたくない。
そんな姉の悪口や陰口全て。
でもめげずに私は訴える。この世界全てに。
勿論、私の姉もだ。
私の姉は、全く悪くない。
私の姉は、相手の心が読めるだけで、別に貴方たちに危害なんて与えない。
私の姉を壊さないで。
私の姉を苛めないで。
私の姉に嫌な思いさせないで。
私の姉を返して……。
ねぇ、返してよ。お願いだから……。
私のとってもとっても大好きな、大好きなお姉ちゃんを返してよ!
帰ってきてよ! お姉ちゃんったら!
日々私はこう訴えている。
私の本当の姉は「虚心坦懐」のような心を持っているのだから。
ねぇ、そうでしょ? お姉ちゃん。
-完-
それはともかく、表現上必要ない部分でも「彼女は彼女は彼女の彼女の」「私は私は私は私の」「あの姉あの姉あの姉あの姉」・・・「今回今回」とやたらに同じフレーズを連呼していて、そんなIOSYSみたいな文章が読みにくいという意味で気になりましたが、これはこいしの自閉感を出すための表現でしょうか?
この手の異常性は適切な作品群を読み漁って感覚的に理解しないと真似は難しいですよ
この後どう展開するのかが楽しみですね。