Coolier - 新生・東方創想話

食べたい背中

2013/04/15 01:50:46
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 ナズーリンって星の非常食なんじゃね?
 そんな根も葉もあってはいけない噂が立ち始めたのは、一体いつ頃からであったか。

「まあ。やっぱりナズーリンは、塩コショウがとっても似合いますね。次は煎りゴマかけてみましょうか」
「これ本当に、里で流行ってるファッションなんだろうね」

 ……根も葉もない噂だと信じたい。
 そう思うナズーリンだったが、ノリノリで調味料を振りかけてくるご主人に、疑念が止まってくれない。

「流行ってる流行ってる、超流行ってますよ。もう十代の女の子は皆して調味料浴びてるはぁ鼠食べたい。ナズーリンも年頃なんですから、そういうのに疎いと不味いですよ」
「なあ、猫科そのものなノイズが混じってなかったかい?」
「まさか。私は菜食主義者の中の菜食主義者。お肉なんて一切興味ありませんね。もう肉食べてる人は全員殺したいくらい聖職者です」
「殺したら聖職者じゃないだろう……」
「そ、それもそうですね。じゃあせめて、肩肉を食い千切ってこらしめるぐらいに留めます」
「絶対肉食だよね?」
「そんな事ない。全然無い。全く無い」

 怪しいというか、今すぐ全速力で逃げるべきというか。
 しかしこれでもそこそこ長い付き合いになる。それ故に生じた情が、絆が、ナズーリンに行動をためらわせるのだ。

「ネズミネズミネズミ~。ネズミーを食べーるとー。あたまあたまあたまー。あたまーがよくーなるー♪」
「おい今、情も絆も一切ない歌を口ずさまなかったか!?」
「どうしました? 口が悪いですよ?」

 なにかおかしなことでもありました? とひらがなのアイコンタクトを送ってくる星。その目には毛ほども邪心が無い。無いのだが、獲物を狙う際の、極端に集中して邪心を含むあらゆる雑念が吹き飛んだ肉食獣の目、に見えなくも無いから困る。

(こんな時、一輪が居ればなぁ)

 一輪はこの命蓮寺で数少ない突っ込み気質なのに、近頃は自室に篭って出てこない。
 おかげで天然達のワンサイドゲーム。「ひゃあごめんなさい、私ったらうっかりナズのロッドを失くしてしまいました」から始まる星の暴挙や、「あらあらうふふ。私ったら物忘れが激しくて。ナズの靴を失くしたようだわ」と微笑む聖とか、「うっかり服を失くしてしまったんだ、ごめんごめん。今日は裸でいてくれないかな、でいいんだっけ。……ねー。 ちゃんと台本通り読んだよー! 星ー! まんじゅう忘れないでねー!」と何処かへ叫ぶ村紗とか。
 
「いやこれは天然ではない。確信犯だ。確実に私を無防備にせんと包囲網作ってる」

 ナズーリンの背筋を冷たいものが伝う。
 食べられる……正しい意味で。
 
(よくない。非常によくない流れだ)

 どうやら聖と村紗はとっくに買収されているようだし、ぬえはニーソックスだし、私は鼠。自分でも何を言いたいのか、よく分からなくなってきたナズーリンだが、とにかく味方が一人でも欲しい。
 出来れば頼りになる奴。いざとなったら盾として使える奴。使ってももったいなくない奴。
 そう、一輪の力を借りるべきだろう。なんせ彼女はすごい人だ。尼さんなのに髪を長く伸ばし、ゆるふわカールをかけ、雲山おじさまとベタベタしている。世間はそれをキャバ嬢と呼ぶが、命蓮寺の中では「ちょっとヘンな尼さん」で通っている。
 いかに堕落した寺院かよく分かる。
 
「すまない午後から熱が出る予定なので、そろそろ下がらせてもらうよ」
「ナズ、仮病が下手すぎます」
「いいから離してくれ!」
「待ってください、まだ試したい調味料が」
「やめてくれと言ってるだろう!」
「……痛っ!」
「あ」
「……」
「わ、悪い」

 少し乱暴に手を払いのけてしまったようだ。

「君がいけないんだ。……今日のご主人はおかしいよ。嫌がる女の子に塩やコショウや胡麻をかけるような子では無かっただろう?」
「だって、それはナズーリンが」
「聞きたくないよ!」
「聞いて。これには訳が――、」
「聞きたくないと言っている! これ以上、君を幻滅したくない」
「――訳が、ある、の」

 星の声だけが、むなしく本堂に響いていた。





「ちょっといいかーい、入るよ」

 善は急げとばかりに、ナズーリンはさっそく渡り廊下を突っ走って、一輪の部屋へ進入宣言していた。
 が、返事は無い。
 かれこれ一週間ほどこの調子で自室に篭り、無反応を決め込んでいる一輪である。

(やっぱり、あれかなあ)

 一輪は基本的に強い人なのだけれど、時々フードを外して鏡を見ては「メルランと見分けがつかない。死のう」と塞ぎ込む悪癖がある。ここ数日の引きこもり状態も、それが原因の可能性が極めて高い。
 直ちに問題はないが、いずれ死ぬでしょうという感じだ。
 こうなった一輪を立ち直らせる方法は少し面倒で、まず誰かが部屋に押し入らなければならない。そして愚痴を聞かされたり、憂鬱なポエムを見せられたり、その感想を賞賛の言葉のみで伝えたり、まあ彼氏じみた行いをする必要がある。しかも中に入る女子は、一輪より若干容姿で劣る子でなければ、逆に機嫌を損ねる始末ときている。そのため聖は絶対に立ち入り禁止である。どこまで世俗の女臭いのだろう、この尼は。

「入っていい、かな? ていうか入ってるよー? いいね、もう入ったからね」
 
 またも返事は無い。
 おいおい、これは自前の欝ソングを作ってるパターンだぞ。参ったなあ、一輪の歌詞って「会いたくて」を多用するんだよなあ、と身構えつつもナズーリンは歩を進める。
 すると、そこには予想外の光景が広がっていた。

「明日に向かって、打つべし打つべし」

 シュッシュッ、っとシャドーボクシングに興じる一輪。天井の蛍光灯からぶら下がった紐に向かって、それはもう無我夢中であった。

「雲山と痴話喧嘩したので、効果的な暴行の方法でも学んでるのかい?」
「貴方、私をそういう目で見てたんだ」
「でも安心したよ。またくだらない失恋ソングなんかを作ってるのかとばかり思っていたから」
「恋愛ソングを馬鹿にするな!」
「ご、ごめん!?」
「恋愛は私にとって生きる糧よ……それを侮辱するものは、例え雲山であっても許さない……」
「そうか、私が悪かったよ。お詫びと言っちゃなんだが、ご主人を好きにしていい(僧侶やる気あるんだろうかコイツ)」

 できればその怖い表情か、尼のどちらかをやめて欲しいと思いながら、ナズーリンは床に散らばる本へと目を向けた。なんだかキ○ガイなタイトルが多かった。
 
『尼さんでもできるボクシング入門』
『チャクラムを使って今日から始める格闘術』
『雲山を使って今日から始める格闘術』

 よほど格闘ゲームで自機出演するのが嬉しいと見え、トレーニングに余念が無いらしかった。
 しかし、どうやってこう、ピンポイントな需要に応えた本を見つけたのか。

「なにこの本?」
「親切なウサギが売ってくれたわ。定価4500円のところを、特別尼さん割引で3980円だったの。お得ー」
「高っ。……内容の方は値段に見合うものなんだろうね」
「ええ。素晴らしいわ。毎日シャドーボクシングを繰り返し、あとはこのパワーストーンにお祈りするだけで、エル・カンターレ様のご加護が貰えてパンチ力が上がるらしくて」

 どうやら可哀想な詐欺に一杯食わされているようだ。

「で、このパワーストーンは一人の顧客が三人の知人に販売することで、無限に利益の輪が広がるそうよ。どう? 貴方も一つ、買ってみない? 今なら四万円のところを」
「ネズミがネズミ講にはまったら悪いジョークだろう……。それより、実は大事な話をしに来たんだ」
「大事な話? ああ、私がフードを脱いだ際のモーションで、ちらりと鎖骨が見えるようにドットを打ち込んでくれた黄昏の話をしたいの?」
「まるで違うが」
「じゃ、じゃあ、私の新しい衣装の刺繍がドット絵だとカタカナの『エロ』に見える件について!? あれはなー。あれはないなー! 話したくないなー! でもナズーリンは聞きたそうだよねー! 裏話した方がいいかなー!」

 どんだけ心綺楼の話がしたいんだ、この女。
 いつもならそのウザ可愛さに興奮するところだったが、今日はじゃれてやる余裕が残っていない。

「深刻な問題なんだ。大人しく聞いてくれないかな」
「ふむ? 確かによく見ると、大型肉食獣に食べられそうになった鼠のような顔をしているわね。何があったの? 元気が出るように心綺楼の話でもする?」
「実は、ご主人が私に塩コショウをかけて食べようとしている」
「頭大丈夫?」

 今の一輪にだけは言われたくなかった。

「悪い冗談ね。星がそんな酷いことする筈ないでしょ。そもそも動物の食べ方自体、忘れてるんじゃないのキャラ的に」
「君も結構ひどいな」
「だって星って限度なくドジっ子じゃない。時々フードを外して私服になった私と、メルランを見間違えるくらいドジなのよ。そしてその度に私が死にたくなるのよ」
「今まで君が落ち込んだのは全部ご主人が原因か! ……いや、そんなのはどうでもいいんだ。確かにご主人はドジだ、現役バリバリの人食い虎やってた時からね。ただそのドジの方向性が物騒で、お昼ご飯食べたのを忘れて、午後一時頃になるともう一回狩りをして獲物を仕留めてたんだ。だから動物を狩って食べるのだけは異様に上手い。上手いし、きちんと覚えてる筈だ」
「……よく野生動物やれてたわね」
「全くだ」

 食物連鎖の頂点がそんな萌えキャラでいいのか。生態系ピラミッド下位の鼠としては、納得がいかないナズーリンである。まあ、あれで知恵まであったら手がつけられないから、バランスが取れているのかもしれない。実際、それは恐ろしい想像だった。悪賢い人食い虎、寅丸星。「ほらほらナズーリン、言ってご覧なさい、どこを齧って欲しいの? あらぁ? いいのかなぁー。お返事くれないと、人質がどうなるのかなー?」そんなの、そんなの、

「しゅ、しゅごい。ごしゅじん、たまぁ……」
「急に息を荒げてどうしたの? 心綺楼で自機やりたいの?」
「おおっといかん。ちょっとばかり美しい妄想をしてしまってね」
「あー。自機昇格する妄想ね。あるある。私もついこの間まではよくしてたわ」
「なんの話をしてたんだっけ?」
「雲山に色目を使う村紗への制裁措置について、語っていた記憶が」
「そうそう、ご主人の件だったね」

 ナズーリンは、一輪の妄言を十割ほど無視して続ける。

「とにかく、切羽詰ってるんだ。力を借りたい。聖も、村紗も怖いんだ……まんじゅうに釣られて、ご主人の手駒になってる」
「やっぱり姐さんは裏があった死ねばいいんだ死ぬべきなんだ、私より胸があって腰が細くて男にちやほやされるような輩が善人な筈が無い、死ねばいいんだ」
「それじゃあ、手伝ってくれるかい?」
「そうね。私も一度、姐さんや村紗とは決着をつけるべきだと思ってたし。あいつら雲山と話す時だけ少し声が高くなるんだ死ねばいいのに死ねばいいのに」
「ありがとう。ところでキャラがもう、軌道修正不可能になってるけど大丈夫かい? 常識人キャラの原型が見当たらないが?」
「人はね……自機になって情報量が増えると、弄れる箇所が増えて自然とボケキャラになっていくのよ……」
 
 そういえば、清純派から絶対に許早苗に扱いがシフトした某現人神も、そういう道を辿ってたな……。
 遠いどこかへ思いをはせるナズーリンであった。





 一輪との作戦会議は長きに渡った。「まず星が何故あなたを食べようとしているのか、突き止める必要がある。そのためにはこのパワーストーンを購入して頂くのが一番」などと終始ふざけた事をぬかすため、無駄に突っ込みを入れて時間を浪費したのだ。しまいには両者ともに疲れ果て、「めんどいのでもう正面突破で行こう」という結論に至るしかなかった。特攻隊である。帰りの燃料は無いからヒッチハイクで戻ってこい、そんな指令を受けた気分だった。要するにナズーリンは半分諦めかけている。
 一輪は眠い。

「……何故だろうね。私は命を狙われているのに、今でもご主人を憎み切れないんだ」
「パワーストーン……ぶつぶつ……三人に売らないとノルマが達成できない……できないと、エル・カンターレ様のご利益も消えるってウサギさんが言ってた……早く売りさばかないと……ぶつぶつ……」
「何をぶつぶつ言ってるのか知らないが、本題に戻ってよろしいか」
「心綺楼?」
「どうして私は今でも、ご主人を憎めないのかな?」
「さあ? それって、貴方が一番知ってるんじゃないの。貴方にとって星ってどういう存在なのよ」
「君にとって雲山はどんな存在だい?」
「性の対象」
「……私はさ、てっきり君が『かけがえの無い存在よ』、と答えるのだとばかり思ってて……それに対して『私も同じだ』と返すつもりだったんだが……本当に予想未満のことしかしないな君は」

 決戦前にやる気とか気合とか、色々自損してしまった。保険も利かない、どうしとろと。

「私に言えることはこれだけよ。ナズーリンがこんなに落ち込んでるのだから、星も同じ気持ちな筈」
「そうかな?」
「そういうもんよ。今頃、星も仲直りしたくて塞ぎ込んでるんじゃない? きっと欝ポエムとか痛い失恋ソングとか書いてるわよ、きんもー」

 それは普段の一輪だ。

「で。来ちゃったわねぇ」
「来ちゃったな」

 二人は、星の部屋の前でピタリと足を止めた。

「よーし。皆殺しにするぞぉ」
「違う、ご主人と話し合うんだろう」
「そんな甘っちょろいやり方で、全人類雲山化計画を遂行できると思って!?」
「そんなことを考えていたのか!?」

 ひとまずパワーストーンを一つ購入して一輪を落ち着かせてから、部屋の中の様子を探ってみることにした。

「ご主人、私と喧嘩別れしてしょんぼりしてるかな、してるといいな」
「ん? このパワーストーン、よく見ると定価980円ってラベルが貼ってある。う、ウサギさんもしかして貴方は詐欺師!?」
「少し静かにしててくれないか」

 室内には数名ほどいるようだった。確認できる限りでは、村紗と白蓮と星の声が聞こえる。耳を澄ましてみると、会話が聞き取れなくも無い。

『そしてーかーがやーく寅丸星! ヘーイ!』
『あかん……負けたわ……完敗や……まさか星にこんな宴会芸があったとは……私の天下も終わりや……名前をもじった替え歌なんぞ思い浮かばん……下ネタしか思い浮かばん……』
『くやしいのう。くやしいのう。村紗ムラムラ(笑)下ネタ番長(笑)セーラータイタニック(笑)」

 稀に見る盛り上がり具合だった。
 出し惜しみ無く楽しそうだった。

「は、ははは。ははははははは。そうか。この程度か。ご主人にとって私は、この程度の存在だったんだ。はははははは」
「ナズーリン……」
「私はこの寺を出て行くよ」
「いけない、外は危ないわ! 法外な値段でインチキ商品を売りつけてくる、詐欺師のウサギなんかがいるのよ!? 引っかかったらどうするの!?」

 一輪じゃあるまいし、その点は問題ない。

「礼を言わなくてはね。君には世話になった。よく考えてみると君は微塵も役に立ってないけど、でも精神的な支えになっていたのは確かだったよ」
「……そんな最後の最後で告られても……嬉しくないよ! いなくなったら、もう会えなくなったら意味ないじゃない!」
「なんでも恋愛方面に解釈するのはやめような、今のは友情だからね」

 ナズーリンはそれ以上、何も語らなかった。
 
「待って。まだ、星の本心を聞いてないわ」
「本心? 本心だって? 君も見ただろう、ご主人は私がどうなろうと、村紗あたりと馬鹿騒ぎできればそれで構わないのさ」
「貴方と険悪になったから、逆に空騒ぎして虚勢を張っているのかもよ?」
「馬鹿馬鹿しい。希望的観測だ」
「あ、顔、笑ってる……その可能性に賭けるんだ……ちょろっ……こんなちょろい子初めて見た……」
「うるさいなーもう」

 ずんずんと部屋の中へ割り込んでいくナズーリン。一輪は「もういらね、騙された」と忌々しげにパワーストーンを放り投げてから、後を付いて行く。

「ご主人! さあ、話し合おうじゃないか!」
「な、ナズーリン!? それに一輪!? あ、あの、どうしよう! さっき命蓮寺に代々伝わる国宝級の壷が、謎の投石で粉砕しちゃったんです! はわわどうしようどうしよう私のせいだ、私がきちんと仕舞っておかなかったから……」
「そ、それは大変ね。きっと隕石じゃない?」
「定価980円と書かれた石がですか? 宇宙人さんの落し物なのかなあ……」

 全力でそわそわキョドる一輪をシカトしながら、星とナズーリンは向き合う。

「ご主人……」
「ナズ……」
「ご主人……」
「ナズ……」
「ご主人!」
「ナズ!」

 ばかっ、寂しかった! 溢れる涙を拭おうともせず、二人は固く抱き合った。

「ごめんなさい。ごめんなさい。全部、私がいけないんです。ナズーリンだって普通の女の子なのに、私、そんなことにも気付かないで、貴方なら何だって耐えてくれるって勝手に思い込んでた。貴方を傷つけてしまった」
「いいんだよ、もういいんだ。私だって君に調味料をかけられる度、憂さ晴らしに君の靴に毛虫を入れたり、君の下着を里の男達に『てゐちゃんの脱ぎたておぱんちゅ』と言って売りつけて、小遣いにしてたし、そしたら因幡てゐにブルセラ兎などと不名誉なあだ名がついて、すっかりグレてしまって尼を狙った悪質な詐欺を働くようになったし、それからあと、」
「幾らなんでも酷すぎないですか」

 ねぇ私が騙されたきっかけって元を辿ればナズーリンなの!? と一輪がわめきだしたが、聞く耳はもたなかった。

「……けど、ナズーリンにそんなことをさせちゃった、私がいけないんですよね」
「話してくれるかい? どうして私にあんなことをしたのか」
「うん……」

 ごめんね、と間を置いてから、星は語り始めた。

「私、修行、してたんです」
「修行? 心綺楼に出るためかい?」
「どうしてそんな発想に。ナズ、一体誰に毒されてるの」
「悪い、続けてくれ。今、大急ぎで一輪の発言を頭から消してるところだから」
「一輪のせいなんだ……えっとね、私、ほら。こう見えて、虎じゃない?」
「どの角度からどう見ても虎だが」
「虎って、肉食でしょ?」
「そうだが」

 もじもじと身をよじらせながら星は続ける。

「が、我慢できなくって。お肉。食べたい衝動」
「ほう」
「それで聖に相談したら、『たかが食欲一つ制御できないようでは、仏の道を極めんとするのは難しいでしょう。やっぱりナンバー2は村紗にしとけば良かったな。村紗かわいいな。一番だな。ちゅっちゅしたい』って言われちゃって」
「聖を今すぐ呼べ、殺してくる」
「駄目っ、もう思う存分叩いてきたから! だから、聖への復讐は私の中で解決してるの。……でも、後から聖の言うとおりだなって思うようになって」
「叩いたのか。いいのかそれは」
「でね、私……ナズーリンに、あえて美味しそうで無防備な格好させて、それでも食欲に打ち勝とう、っていう修行を始める事にしたの」
「そうだったのか……」
「ごめんなさい。一言、貴方に言えばよかった。でも、何年もこの寺で仏法を学んでるのに、今さら三大欲求が抑えきれなくて困ってるなんて、恥ずかしくって。言えなくて。……私、私なんか死んじゃえばいいんだ!」

 ぼろぼろと大粒の涙を流して崩れ落ちる星を、責める気にはなれなかった。というか責められたかった。

「ん。ご主人、立って」
「うっく。ひっく」
「一緒に、やろ。修行」
「えっく。……いい、の……?」
「ああ。私で良かったら、餌の役なんて何時でもこなしてみせるよ。ほら、頭から塩やコショウを被ればいいんだろう?」
「ナズ……」

 塩にまみれて見つめ合う両者に、もう互いを疑う気持ちなど気配だに感じなかった。

「いつか、乗り越えられるといいね。食欲」
「はい!」

 
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                ト ////||ゝ乂ト‐仆「//ソ
                  ヽ//|| /广77{ヘ.__У
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                    || { ∨/ヾ . ィ
                /lj_》1 厶=く/
                  }l_7// Ⅳ/{∧
                 イ///  Y///{
               厶ミi/   ヾ//∧
              ///イ     ` ̄               読了ありがとうございました。
                  ̄
ガオガイガー
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コメント



0.580簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
笑わせてもらいましたw
エル・カンターレ>いや実在の宗教出しちゃまずいよw
6.90名前が無い程度の能力削除
一言で感想を言うと「ひでえw」
何がとかじゃなくて全体的に

>まあ彼氏じみた行いをする必要がある。
あとはオラに任せてくれ
12.80名前が無い程度の能力削除
どんだけ心綺楼の話したいんだよ一輪はw
でも確かに心綺楼ドットが公表されてから妙に俗っぽい印象になった気がする……
13.90名前が無い程度の能力削除
>自機になって情報量が増えると、弄れる箇所が増えて自然とボケキャラになっていく
真理。
この作品でも一番出番が少ないムラサが一番マトモに見えますしね!
一輪さんが「調子」って書かれたダンボールの上に!……でも体験版の時期が一番華なのが一輪さん
18.80奇声を発する程度の能力削除
面白く笑わせて貰いました
19.603削除
よくがんばりました
22.100星ネズミ削除
>ぬえはニーソックス
意味ワカンネwwww