Coolier - 新生・東方創想話

アローヘッド紫!

2013/03/24 12:41:38
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 なんとなく熱っぽかったのでお医者さんに診て貰おうと思ったら、脳天に矢がブッ刺さりました。
 何を言っているのかよく分からない、という其処のアナタ。そういう時は分かったフリをしておきなさい。大抵はそれで何とかなるから。

「刺さった、というのは適切な表現ではないわね。刺されたと言った方がより正確で分かりやすいわ」
「刺した張本人が言っていい台詞ではないと思うのだけど」
「矢はまだまだ沢山あるけど……どうする?」
「どうするって何!? 誰も刺してくれなんて頼まないわよ!? っていうか、そもそも何で刺したの!?」
「スキマ妖怪は見敵必殺。それが私のマイジャスティス」

 ヒトを刺しておいてジャスティスを謳うか。流石は八意永琳、あらゆる意味で紙一重の女。
 そりゃ私にだって非はありますよ。いきなり眼の前の空間がパックリ割れて、超絶美少女が顔を覗かせたりしたら、誰だって驚くに決まっているもの。
 なのにコイツときたら、顔色ひとつ変えずに矢を取り出して、私のキュートなオツムをザクッ! とかやってくれちゃってさあ。

「どうしてそんなに手際がいいの? なんか待ち伏せされていたとしか思えないのだけど」
「いつアナタが現れても対処出来るよう、常に万全の態勢を整えているわ」
「それってつまり、どんな時でも私の事で頭が一杯ってこと? イヤン、なんだか照れちゃうワ」
「……ホントにこの子は、一体全体どういう教育を受けてきたのかしらねえ」

 私は教育を受けさせる側なのです、エッヘン。第二次月面戦争において、永琳に幻想郷のルールってやつを教えてあげたみたいにね。
 今思うと、我ながら相当な無茶をやらかしたものだ。月の賢者を相手に知恵比べを挑んで、しかも勝ってしまうなんて!
 おっと、楽しい思い出に浸るのはここまで。今は目の前の問題に対処しないと。差し当たって解決すべきは……。

「……矢、抜いてくれない?」
「どうして? 結構似合ってるわよ、それ」
「八雲紫改め矢雲紫って、そりゃ幾ら何でもあんまりでしょうに」
「そういえば昔、矢ガモ事件というのがあったらしいわね。多分アナタが生まれる前だと思うのだけど」
「生まれてました! ワタシ余裕で生まれてましたから!」

 ああ懐かしの九十年代。私も思わず見に行っちゃったりしたものよ。
 ジュリアナ東京とかもあの頃だったっけ? ワンレンとかボディコンとか、今の若い子たちには絶対通じないでしょうねえ。
 この辺りまではどうにかついて行けたけど、その少し後のパラパラなんかはもう駄目だったわ。身体がいう事を聞かなくて。
 ……まーた思い出に浸ってしまった。ひょっとしてコレ、走馬灯ってやつ? いやーん。

「あまり子ども扱いしないで欲しいわね。こう見えて幻想郷じゃあ最古参なのよ? さ・い・こ・さ・ん! この意味わかる?」
「サイコさん?」
「言うと思った! 絶対言うと思ったわ!」
「アナタの歴史なんて、私の歴史で割ればゼロよゼロ。もっと年長者を敬いなさいな」

 むう、なんか新鮮な気分だわ。いつもはその、あの、アレな扱いをされる事が多いのよね。
 ここはひとつ童心にかえって、年長者サンに思いっきり甘えてみちゃおうかしら。

「ねーえ、えーりん。ゆかりんあたまがズキズキするのぉ……」
「妖怪にも頚動脈はあるのよね……」
「待って! もうやらないからそのメス仕舞って!」

 この人、目がマジでしたわ。マジで何人、いや何十人と殺っちまってる凄みがありますわ。
 幻想郷の妖怪なんてのは、大抵が口だけ達者なネンネちゃんだったりするのだけど、永琳だけはガチですわ。
 こんなのを敵に回して、よく無事で居られるもんだわ私……あっ、もう矢を刺されてたっけ。

「矢を抜くのは構わないけど、熱いおツユがピュッピュッと出てきちゃうわよ?」
「血液とか脳漿とか? ヒトの頭を回鍋肉か何かと勘違いしてるんじゃないの!?」
「小籠包じゃなくて?」
「多分そうだと思う! 普通に間違えたわ!」

 小籠包と肉まんの違いが分からない。あと餃子と焼売の違いも。口に入ればみんな一緒でしょ? 違うか。
 また日帰りで中華でも食べに行こうかしら。軽く横浜あたりまで。流石に本場まで行く勇気は無い。言葉わかんないし。
 言語の境界を弄ればなんとかなるかな? でも上手くいくか自信が無いアルよ。ホラ、こんなふうになってしまうヨロシ。アイヤー!

「月の都が微妙に中華風なのはどうしてアルか?」
「唐突に何よ」
「天人が中国の故事を引用しまくってるのは何故アルか?」
「知らないわよそんな事。本人に聞きなさい」

 やだ。アイツ嫌いだもん。
 ついでに言うとコイツも嫌い。ソイツもドイツも全部きらーい。
 私は自分が大好きなのです。どやっ!

「……紫、アナタ熱でもあるんじゃないの?」
「熱……? そうよ! 熱があるからここに来たんじゃない! 誰かさんの所為ですっかり忘れていたわ!」
「矢が刺さったから来たんじゃないの?」
「因果関係メチャクチャよ!」
「まさに因果のファンタズマゴリア、とでも言っておこうかしら」

 何をカッコつけてるのか、この変人は。微妙に意味があってるのがムカつく……あってるわよね?
 うーん、まだ少し熱っぽい気がするわ。この矢を抜けば一気に熱が下がるかもね。色々と大事なものと引き換えに。

「どれどれ……」
「ひっ!? いきなり何よ!?」
「何って、熱を測ろうとしただけじゃないの」

 それはわかる。わかるのだけど……おデコをくっつけるのは流石にナシでしょ!
 オマエは私のお母さんか。子ども扱いここに極まれり。正直ちょっとドキドキしちゃった。どきどき。

「心なしか顔が赤らんでいるわ……やっぱり熱があるみたいね」
「いや、あのね? これは多分、その……」
「もう一回測ってみる?」
「え、遠慮しておきますわ」

 いけない、動悸が治まらない。こういう時はニトロを飲むといいって聞いた事がある。よく噛まないと爆発するみたいだけど。
 落ち着け私。ニトロもニトリも関係ない。とにかく今は動揺を悟られないようにしなければ。
 私は妖怪、驚かせる方。彼女は人間……側、驚かされる方。この構図を崩してしまったら、今までの苦労が水の泡だ。
 もう色々と手遅れな気がしないでもないのだけど。

「他の方法で測ってみる?」
「えーっと、それは体温計を使うって事でいいのよね? 口? 耳? それとも腋?」
「直腸という選択肢もアリね」
「それだけはどうか勘弁願えないだろうかッ!」

 何が恐ろしいって、直腸なる単語を真顔で口にできる彼女が恐ろしいわ。
 私が同意したらどうするつもりなんだ? 本当にヤるのか? 越えちゃいけない境界、考えろよ。
 絵面を想像して思わず赤面。だってゆかりん女の子ですもの。

「また少し熱が上がったんじゃない?」
「見てわかるなら、測る必要無いのではなくて?」
「私だって医者の端くれ。今のアナタが普通でない事くらい分かります。なんか頭に矢が刺さってるし……」
「コレ刺したのアンタ! アンタだから!」

 ヤダこの人、もしかして天然なのかしら?
 そうだとしたら、物忘れが酷いとかいうレベルの話では無い。
 場を和ませるための冗談だったと信じたい……いやいや、むしろその方がおっかないわ。
 ジョークにしてはブラックすぎる。ブラック通り越して最早ダークネスだ。

「矢の事は置いておくとして、解熱剤でも用意してあげましょうか?」
「なに勝手に置いてくれちゃってるのよ!? 優先順位のつけ方おかしいでしょ!」
「一度に複数の治療を行うなんて無理よ。現代医学にも限界というものがあるの」
「これがホントの限界医学……なーんちゃって☆」
「……………………」
「うん、分かってる。分かってるからそんな目で見ないで頂戴」

 違うんです。私はただ、ボケとツッコミの境界を弄ろうとしただけなんです。
 でも、駄目でした。彼女は乗ってくれませんでした。
 いっその事、ツッコミを一切放棄してしまうのはどうだろう? 少しは状況が良くなるやも。やもって変な響きね。

「解熱剤にも幾つか種類があるのだけど、私のオススメはやっぱり」

 ホラ来た。これはきっと前フリだ。
 おそらく彼女は坐薬を薦めて来るだろう。若しくはネギ。買い物籠に良く似合いそうな長ネギあたりか。
 意表を衝いてタマネギを薦めて来るやもしれない。またやもって使っちゃった。矢が刺さってる所為かしら?

「薬に頼る前に、なぜ熱が出たのかを突き止めるべきだと思うの」
「……ッ! ……ッッ……ッ! ッ……!」
「どうしたの紫? 顔が文字通り紫色に染まっている様だけど」

 耐えた、耐えたぞ! よくツッコミを我慢した私!
 前後の文が繋がらないでしょ! とか言いたかったけれど、ギリギリのところで耐え抜いてみせたわ!
 でも状況が良くなるどころか、最悪の事態に陥るところだったのでもうやめます。我慢は身体に良くないね。

「可哀相に……きっとストレスでおかしくなってしまったのね……」
「ここへ来てからの主なストレス発生源はアンタなんだけどね!」
「じゃあ、ここへ来る前は?」
「前? 前ってアナタ、それは……」

 なんだろう? 私的にはかなりストレスフリーな生活を送っていると思うのだけど。
 大抵の事はスキマを使えばなんとかなるし、身の回りの事だって全部藍がやってくれる。
 熱の原因がストレスにあるとは考え難い。じゃあ何らかの病気とか? いやいや、病に負ける八雲紫ではないのです。

「自分でも気が付かない内に、何らかの負荷がかかっている可能性があるわね。最近何か変わった事は?」
「頭に矢が刺さった事くらいかしら」
「紫、私は真面目に聞いてるの。幾ら相手がアナタとはいえ、頼られた以上は全力を尽くすつもりよ」

 それは頼もしい。頼もしいのだけど……正直言って胡散臭い。私が言うのもアレだけどね。
 まあ、とりあえずは彼女の問診を受けてみて、ついでに矢を抜いて貰うってのがベストかしら。
 幾ら彼女が突き抜けているとはいえ、流石に矢が刺さったままの患者を放置したりはしないだろう。保証は無いが。

「変わった事、と言われてもねえ……」
「式神に逃げられたとか?」
「そんな事ある訳ないでしょう。アナタのお弟子さんじゃあるまいし」
「じゃあ発想を逆転させて、式神を増やしたとか」
「うーん、身に覚えが無いわね……いや、待てよ」

 私ではなく、藍のやつが勝手に式神を増やしているとしたらどうだ?
 橙だけでは飽き足らず、余所に他のオンナをつくっているとしたら?

“ぐわっはっはっはっ! 今日からオマエ達は私の式神(カキタレ)となるのだぁ~!”
“キャアーッ!”“タスケテー!”“アーレー!”
“いいぞいいぞ~! 紫様がグースカ眠りこけている間に、私だけの理想郷を築き上げてやるのよ! オーッホッホッホッホッ……!”

「お の れ 八 雲 藍 !」
「どうして永琳がキレるのよ!? 今のは私の勝手な想像でしょうに!」
「私だってッ、私だってッ! キャワユイ動物たちでハーレムを築いてみたいのよォ~ッ!」
「兎なら幾らでも居るでしょ! それで我慢なさい!」
「紫……アナタ、兎耳を生やしてみる気はない?」
「アンタ馬鹿なんじゃないの!?」
「素質は有ると思うの。うん、私が保証するわ」

 保証も兎耳も要らんから、早いトコ矢を抜いて欲しいわ矢を。
 つうか、ハーレムとか久々に聞いたわ。欲望もレベル上げれば、ちょっとやそっとじゃ満たせなくなるものね。

「今わかったわ。紫、アナタは発情期なのよ。だからカラダが熱っぽくなっているの」
「アンタの隙間に手ェ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてあげましょうか?」
「あら、激しいのがお好きなのね。でも焦っちゃダメ。まずはキスから……」
「発情してるのはそっちでしょ! この万年欲求不満がっ!」

 万じゃ足りないか? 億いっとくか億。正直言ってついて行けません。
 だいたい発情期なんざある訳なかろうに。なぜならスキマ妖怪は私ひとりにしてワン&オンリーであり生殖不要。
 そう、頂点は常にひとつ。故に、Sで始まるアルファベット三文字のアレは必要なし!

「じゃあアナタ、SEXしないの?」
「そこは伏せなさいよ! ヒトがせっかく表現に気を使ったってのに、これじゃあ台無しだわ!」
「人前でパックリとスキマを開いちゃうようなハシタナイ子が、今更何を恥らう必要があるのかしらねえ」
「誤解を招く表現はやめなさい! じゃあアンタこれ見て興奮するっていうの!? ほーらスキマよ! スキマ! スキマ! スキマッ!」
「すきますきます……来ます? カミングカミングオ~マイガ~ッ! な感じ?」
「欧米か!」

 何でもかんでも下ネタに結びつけやがって。いっぺん医者にでも診て貰ったらどうだ……あっ、コイツが医者でした。
 何時になったらまともに診察して貰えるのだろう。それとも、矢を刺された時点で逃げた方が良かったのか?
 いやいや、ここで逃げたら女が廃る。伊達に妖怪の賢者を名乗っている訳ではないのだよ、私は!

「クスリ、よこせ。矢、抜け。そしたら、わたし、帰る。おーけー?」
「なぜ急にカタコトになるの?」
「はやく、はやくしろ。さもないと、怒るぞ。すごく、怒るぞ。こわいぞ。こわい」
「やだ、なにこの子……かわいい……」

 おかしくなったフリ作戦……失敗! 無い知恵絞って考えた結果がコレとはね。私もいよいよヤキが回ったという事か。
 そんな私に対し、慈愛に満ちた眼差しを向ける永琳。まるで聖母のようだ。つうか性母?

「……どうやら、すべてを話すべき時が来たようね」
「いや、話さなくていいんで矢を抜いてください」
「私はアナタの……」
「『母だったのだー!』とか言ったら殴るわよ。グーで」
「……父だったのだー!」
「オラァ紫キック!」
「ああッ!」

 スキマを上手いこと使って、彼女の向こう脛を盛大に蹴飛ばしてやりました。
 如何に不滅の蓬莱人といえども、痛いものは痛いに決まってる。ざまあカンカン屁のカッパ。

「や、やってくれたわね……! 今ので寿命が三年半ほど縮んでしまったわ……!」
「そんな事より、今の蹴りで足首を痛めてしまいましたわ。湿布か何かくださらない?」
「自分で蹴っといてその言い草は何よ!? 湿布なんて勿体無いわ! 唾でも塗っておきなさい唾でも!」
「ああそう。じゃあお願いしちゃおうかしら」

 今度は永琳の鼻先にスキマを開き、靴下を履いたままの右足を突き出してやる。
 彼女の端整な顔が、ほんの一瞬歪んだように見えた。なんていうか、こう……ゾクゾクしてきちゃうわね。

「さ、お舐め」
「ハァ!?」
「唾、塗ってくれるんでしょ? ホラ早く」
「わ、わかったわよ……」

 ……承っちゃうのかよ!? そこは烈火の如く怒るべきところでしょ! それでいいのか月の頭脳。
 流石にこのリアクションは想定外だったわ。せっかくイイ感じに立場を逆転できたと思ったのに。
 だが、いまさら後には退けない。私にだってプライドというものがある。永琳はいつの間にか捨て去ってしまったようだが。
 
「靴下、脱がすわね……」
「ええ……」

 ええ……って何だよ私。なに雰囲気に呑まれてるんだよ。ユカリしっかりしなさい。時代を感じろ。
 戸惑ってる間にも、私の飾り気の無い靴下は脱がされてしまう。ストッキングとか履いてたら、今頃ビリビリに破られていたかもね。
 で、永琳だよ。私の右足を両手で包むように持ち、上目遣いでこちらをじっと見つめていらっしゃる。何がはじまるんです?

「んっ……ちゅっ、ちゅばっ……んむ……」

 右足の親指から順に、一本ずつ丹念に舌でねぶり始める永琳。
 指と指の間も入念に。なにその無駄な拘りは。完璧主義者か何か?

「……って、指は関係ないでしょ指は!」 
「ジュル? ズビスペペジュルジュルリ。ペロペロ?」
「咥えたまま喋ろうとするのやめなさい! くすぐったくて仕方が無いわ!」
「ふう……色々と注文の多い子ね」

 どうして私がワガママを言ってるみたいになってるのよ。まあ、舐めろって言ったのは私なのだけど。
 しかしこの賢者、実にノリノリであった。しかも矢鱈と手馴れていたし。
 普段からこういう事をやっているとしか思えない。舐める相手は輝夜あたりかしら? 永遠亭マジ歪みねえな。

「ねえ、踝(クルブシ)舐めていい?」
「要求がマニアック過ぎる!」
「踵(カカト)が少々ザラついているわね。ちゃんとお手入れしなきゃ駄目よ?」
「余計なお世話だっつーの!」

 でも、何だか妙な気分になってきたわね。なにせ彼女ときたら、行為の最中ずっと私の眼を覗き込んで来るんですもの。
 最初の内は気持ち悪くて仕方が無かったけど、慣れてくる内に悪くない、いやむしろイイ! なんて思えてきてしまってね。
 このまま行くところまで行ってしまおうか……いや待て! 流石にそれはマズいでしょ!

「えっ、永琳? そろそろヤメにしない? もう足首の痛みも無くなったから……」
「まだアキレス腱を堪能していないのだけど?」
「いないのだけど? じゃなくて! そろそろお暇させていただきますわ。なんか熱も引いちゃったみたいだし! ホントよ?」
「フフフ……どうやら治療が上手くいったみたいね」

 一連のアレな行為が治療だったと? そんな訳あるか。
 足には沢山のツボがあって云々とでも言うつもりかしら。だいたい熱が出た原因だってハッキリしないままだし。

「まあ、単なる疲労でしょうね。美味しいもの食べてグッスリ眠れば治っちゃうわよ」
「さんざん引っ張った挙句の結論がそれなの!? 物凄く無駄な時間を過ごした気がする!」
「無駄を楽しむのが幻想郷の流儀でしょ? これはアナタ達が教えてくれた事よ」

 そうだっけ? そう言われるとそんな気がしてきたかも。
 そんな事よりお腹が空いたわね。中華が食べたいわ中華が。帰って藍にでも作らせようかしら。
 わたしゃ料理なんて出来ないもんでして、ええ。あ~お恥ずかしったらありゃしない。

「本当に帰っちゃうの?」
「なによ、意外そうな顔しちゃって。用が済んだら長居は無用、それが私のマイ・ポリシー」
「……そう。お大事にね」

 さらば永琳、また会う日まで。
 今度はスキマを使わずに、正面から堂々と尋ねる事にしよう。
 その方が彼女も驚くかもしれない。逆にね。





「藍、らーん? いま帰ったわよ~」

 帰ったと言ってもスキマを使えば一瞬なので、あまり外出したという自覚が無い。
 健康のためにも少しは歩くべきかしら? 妖怪は身体が資本だからね。嘘だけど。
 しかし藍のやつ、主を出迎えもせずに何してるのよ。面倒だけど、こちらから彼女の部屋に出向いてやるとしましょう。

「んっ……くう、あはっ……あっ……イイっ……!」

 襖の向こうから、藍の悩ましげなセクシーヴォイスが響いてくる。
 ホントに何してるのよ、あの駄狐は。なんか思春期の娘を持った母親の気分だわ。
 ここは最悪の事態を想定して、あくまでこっそりと中の様子を伺ってみましょう。

「イイ……すごくイイ……」

 部屋の中央に、アホ丸出しの表情で寝そべる藍が見える。とりあえず服は着ているみたいね。よかった。
 いや、よくねえな。主に足の辺りがよくない。なにやらモフモフした物体群が、彼女の足に群がっている。

「Oh……Yeah……イイぞお前たち、その調子だ……!」

 あれは……猫!? 猫に足を舐めさせているんだわ!
 見たところ猫は三匹。その中に橙の姿は無い。不幸中の幸いとでも言っておこうか。
 まさか本当にハーレムを築いていたとはね。許せる! いや許せん!
 
「エントリイイイイイイイイイイィッ!」
「はうあッ!? ゆっ、紫さま!?」

 至福の表情から急転直下、藍の顔色が見る見るうちに蒼ざめていく。
 猫たちも驚いて逃げ去ってしまった。これぞまさしくハーレムエンドね。ちょっと違う気もするけど。

「おっ、おかえりなさいませ紫様。随分とお早いお帰りで……」

 身なりを正し、両手を袖に突っ込んで、恭しく頭を下げてみせる藍。
 今更殊勝な態度をとったところで、何もかもが遅すぎるっつーの。

「お前マジで何してんの? 橙はこの事を知ってるの?」
「な、なにとぞ橙には内密に……!」
「うん、それ無理♪」
「そんなぁ……不幸だぁ……」

 何が不幸よ。さっきまで幸福の絶頂に居たクセに。
 しかしまあ、皆さん足舐めプレイがお好きなことで。 
 私も誰かの足でも舐めてみようかしら……誰がいいかな? 
 我こそは! と思う方は是非、幻想郷の八雲紫まで連絡を頂戴ね。

「そんな事より紫様。さっきから気になっていたのですが……」
「なによ、言い訳なら橙にしなさい」
「いえ、そうではなくて……」

 藍の視線が、心なしか私の顔よりもやや上に向いている気がする。
 ヒトと話すときは、相手の目を見て話しなさいって、何度も教えた筈なのだけど。


「頭に何か刺さってますよ」


 ……あっ。
 ところで、アローヘッドって何だ?
平安座
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コメント



0.640簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
アローヘッド。東京証券取引所自慢の高速株式取引システム。開発費120億円をかけるも依然ニューヨークやロンドンをはじめとする競争相手に取引速度で劣る。
2.40名前が無い程度の能力削除
ここ何作かは気もそぞろと云う印象を持ちました。圧迫感すら覚えます。
作者様の事情は解りかねますが踏ん張ってください。弾けれる様に生きてください。
(若しわたしの杞憂でしかないのなら其のときは笑ってやってください。そうであれば何よりです)
3.100ナイスガッツ削除
いつも通りで安定して笑えました。ただ味の助ネタが使われたのが悔しい…(作成中の文を手直ししつつ)

しかし足なめとは…よし!(いつくしむ目)
4.70名前が無い程度の能力削除
異相次元戦闘機R-9のことですか
5.40名前が無い程度の能力削除
作者さんの話は毎度小ネタが冴え渡っているけど、読み終わってみると「面白かった!」というときと、「うん・・・うん・・・あ、おわった」というときのどちらかであることが多いのですが、それは全体の話が成り立ってるかどうかによるものだとやっとわかりました。垂れ流しかそうでないかの違いという。
6.80名前が無い程度の能力削除
ギャグに勢いがあって面白かった
8.80名前が無い程度の能力削除
若干パワー不足かなあ と感じましたがそれでも充分面白かったです!
11.80奇声を発する程度の能力削除
勢いがあり面白かったです
13.50名前が無い程度の能力削除
ちょっと何を言ってるのかよくわからないですね
邪鬼王だけは笑えたんですけど
15.80名前が無い程度の能力削除
唐突な組み合わせな気がしたけど、そうでもなかった。押されるゆかりんも良い。
16.100名前が無い程度の能力削除
あんたはホントにもうどうしょうもねぇな!
19.90名前が無い程度の能力削除
アローヘッドって言うとモンスターファーム2にいた蟹?を思い出しますな。
21.40名前が無い程度の能力削除
小ネタが散りばめられていて漫才見てるような感覚でした。
いろいろと脳内再生されてしまう
23.80名前が無い程度の能力削除
いいぞ……冴えてきた…!
27.100名前が無い程度の能力削除
抜いた
31.100名前が無い程度の能力削除
やべえwwこの人の話おもしろすぎ
32.803削除
この幻想郷、ロクな奴が居ねぇ……!
34.50名前が無い程度の能力削除
のりのり