こんにちは! 私、マエリベリー=ハーン! 大学生よ!
見ての通り、外国人よ。
お父さんはカナダ人、お母さんはイタリア人。
だから私、カナリアなの。
なんて、どこかで聞いたジョークは、とりあえず置いておきましょう。
隣に居るのは、宇佐見蓮子ちゃん。
綺麗な子でしょう?
こんなに綺麗で素敵な人と、あなたも一緒に居たいと思う?
本当にそう思う?
だったらあなたにあげるわ。
え? だって……
「何を考え込んでいるんだ、メリー?」
「いいえ、何でもないのよ」
「そうか。 では引き続きカナブン採集を続けよう」
「だからぁ! 結界暴きでしょう!? カナブンなんか何に使うのよ!」
「話していなかったか? 自然本来の美しさを研究することで、私の美しさを磨く材料に……」
「そこで何でカナブンなのよ! 良いから早く行きましょうよ! もう!」
宇佐見蓮子ちゃんは、極度のナルシストなんです。
それも、常識が通用しないタイプの人間です。
どう? 欲しい?
今更いらないだなんて言わないわよね?
え? なんで私がこの人と一緒に居るのかって?
今となってはどうでもいい事よ……
「メリー! 何をしているんだ!? デカいのがそっちに行ったぞ!」
「え? ぶっ、びゃああああああああ!!!??」
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ
「うべべぅ」
「どうしたメリー! 早く捕まえないか!」
「顔にまとわり付くから捕まんないのよ! 蓮子が捕まえてよ!」
「いや……断る」
「なんでよ!?!!」
「くさそう」
「臭くないから!! 痛っ!」
「むぅ……カナブンはあまり美しくないな。 それっ」
ぎゅっ
「ちょっ!? 握り潰しちゃったよこの子……」
「可愛いメリーを困らせる悪い虫はこうしてやろう」
「さ、流石に可哀想じゃない?」
「む、そうか。 なら返そう」ポイ
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ
「ぎゃあああ!? 生きてた!?」
「握りこんでいただけだが?」
「この野郎もがっ」
「おや、食べちゃダメじゃないか」
「別に好きで食べおげげぇぇ」
「おお……それは流石に美しくないぞ」
「うぅ…………」
大学に入って、初めて会った人がこの蓮子だったがために、私はこんな目に遭っています。
誰か、助けてください。
いや、あるいは、このまま他人に関わらせること無く、私が手綱を握り、死ぬまで二人で居るべきか。
って、何でここまで思いつめなきゃいけないのかしら……
そうそう、昆虫採集の他にも、色々な事があるのよ。
例えば、二人で街を歩いている時は……
「メリー、この辺りには私に似合う洒落たカフェなど無いかな?」
「どんなカフェなのそれって」
「ん……そうだな……。 透き通る青空の色をしたコーヒーとか」
「あなたそれ飲みたいと思う?」
「飲みたいかどうかではなく、私が飲んで似合うかどうかが問題だ」
「ああ、そう……」
『ねぇねぇ君達、どっから来たの?』
「え?」
「ん?」
『何かお店探してなかった? 良いとこ教えてあげよっか? 遠くから来たの?』
「ああ、ちょっと洒落たカフェを……って、なんだメリー、引っ張るんじゃない」
(れ、蓮子、これナンパよナンパ……簡単に付いてっちゃダメよ)
(ん? 彼に付いていくのが不安なのか?)
(うん、こういう人は苦手で……)
(そうか。 では、同伴はお断りしよう)
『ねね、そこのお店良い所だからさ、一緒にどう?』
「良い店なのか?」
『そうそう、女子にはケーキが良いよぉ! マジでなめらかさがスムージィでパネェスゲェから』
「なるほど、参考にしよう。 だが、同伴は遠慮させてもらう」
『ん? どーはんって何?』
「一緒にお食事はしたくない、と言いたいんだよ」
『ちょいやいやいやいや、マジ奢っちゃるから!!』
「メリーは、私と二人で食事をしたいと言っている」
『うっは、自分らアレなん? レズなん? ブッハハハハ』
(メリー、れずって何だ?)
(それ聞くんかい!! また今度教えてあげるわよ!!)
「まあ、何か知らんがまた今度な。 私達は部活で忙しいんだ」
『え、何、部活? 何部?』
「うむ、暫定的な名前だが、『ビューティフル部』だ」
「!?」
『!?』
「先ほど、何処から来たのかと言う質問が有ったが、私は美の国からやって来たのだ。 そこでは美しさを磨く事が義務とされ……」
「もう、蓮子!! 行くわよ!!!」
「おぉお」
-純喫茶 地毛-
「何だメリー、そんなにこのカフェに行きたかったのか」
「あのね蓮子、私達の部活は秘封倶楽部!! ビューティフル部じゃない!!」
「なにそれ」
「いや……平たく言えば、怪しげな所に隠れる境界を暴く部活よ」
「なるほど、ではビューティフル部と兼部と言う事で」
「勝手にすれば良いけど、私は入部しないからね」
「しゅん」
「しゅんとするな!」
『ご注文お決まりでしょうか?』
「あ、えっと……コーヒーと、ケーキ下さい。 蓮子は?」
「ハンバーグ」
「美しさとかけ離れたもの来ちゃった!?!」
『パンにお挟みしましょうか?』
「何そのサービス!?」
「!!(キラキラ)」
「子供みたいに目が輝いてるわよ!?」
『ピクルスもお付けしますね、ふふっ』
「ここ何屋さんなの!?」
「しゅん」
「しゅんとしてる!!!」
『…………それではメニューお下げしますね』
「察してあげて!! この子ピクルス嫌いみたいだから!!!!」
「しゅん」
『お待たせしました』
「おー、とっても美味しそうなケーキね。 で……」
「…………(キラキラ)」
「ハンバーガー見て恍惚とする大学生ってどうなのよ」
「あむっ……」
「でも美味しそうね……わっ、肉汁が」
「…………」
ジュルジュルジュルジュルジュルルルルルルルルルルル
「やると思ったけど! やると思ったけどやめてよ!!」
「う・ん・ま・い・ぞー!」
「美しさはどこ行ったのよ」
「この程度で美しさが陰る事はないさ」
「都合良いのね……」
「うまい」
「でね、蓮子。 蓮子も、怪しい場所とかを探しておいて欲しいの」
「ふむ」
「見つけて下調べをしたら、二人でそこへ乗り込むのよ」
「了解した。 それで……」
「?」
「レズとは何だ?」
「んがっ、それ忘れてた……」
「何なのだ?」
「その……女の子同士の恋人って事よ」
「なるほど、全く的外れな事を言うものだ」
「そ、そうね」
「私に性別など意味をなさないのにな」
「は?」
「蓮子と言うのも女の名前だが、仮の名前だしな。 本当の名前は高貴すぎて美しくない者が聞いたら気が狂うと言われているため、あまり口にしないようにしているのだ」
「お会計お願いします」
普段からこんな調子なの。
もう死のうかしら。
じゃあ、死ぬ前に、私達二人が初めてまともに秘封倶楽部として活動した時の事を話すわ。
「蓮子、おかしいと思うの」
「何がだ」
「境界を見つけたって、普通のアパートじゃない」
「このアパートの一際怪しい一室に、境界を見つけたんだ」
「どうやって……」
「出て来るおっさんが物凄く怪しかったんだ」
「境界と全然関係ないじゃない」
「良いから入るぞ」
「ちょうう、入るの!? ビックリして変な声出たじゃない」
「大丈夫だ。 部屋の主は片付けて鍵も手に入れた」
「片付けんなよ!!」
「ああんもう、入っちゃった。 何かくさっ」
「この美しくないパソコンを見て欲しい」
「パソコン?」
「この美しくないフォルダが問題なのだ」
「これは……ほんにゃら新地に、ナンタラ新地、どーたら街って、全部風俗街の名前ね」
「どうだ、美しくないだろう」
「うん、ディレクトリの名前に2バイトの文字使うなんて美しくないわ」
「…………????」
「私が悪かったわよ……で、それの何が問題なの?」
「このフォルダの中身なのだが……」
「音声ファイル……名前は、女の人の名前とか……よく分からない数字かぁ」
「これを聞いてみてくれ」
「う、うん……」
ぷっ、ぷぅぅ~
「これ…………」
「屁だ」
「ちょっ……この無数にある音声ファイルって……」
「方々の花街を歩いて、金を積んで女に収録を依頼したのだろう」
「最悪な物を見たわ…………って言うか、これのどこが部活と関係あるのよ」
「うむ、この部屋の主だが、普段は某企業で真面目な敏腕営業マンとして働いているそうだ」
「ふむ」
「年齢的に考えても、決してこのような美しくないアパートに一人で暮らさずとも良いはずなのだが……」
「貯蓄も結婚もせず、この趣味のためだけにお金を遣いに遣ってるって訳ね」
「うむ。 真面目な彼が一体どのような境界を越える事でこの境地に至ったのか、今回はそれを暴こう」
「絶っっっっっっ対嫌」
「うん……私も最初は楽しそうだと思ったんだけど、この部屋に居るとだんだん具合悪くなってきた」
「帰るわよ!!!!」
「はぁ……」
「どうした、メリー」
「何かあんな物見たからテンション下がったわ……」
「じゃあ、ここで一つ駄洒落を言ってやろう」
「へぇ?」
「では……今日は良い天気だな」
「え、ええ」
「眩しい太陽を見ると……」
へっくしゅん
「ズズッ……くしゃみ蓮子」
「……………………」
「どうだ? 私は今腹筋が取れそうなくらい痙攣してるが」
「怖いわ!!! でも、蓮子もそんな冗談言うのね」
「君のためならな」
「うわっ、キザっぽい」
「そうだな」
「……………………」
(変な人…………)
「そう言えば、メリーはあまりアクセサリを付けないな」
「え? ええ、あんまり似合わないかなと思って……。 蓮子は金ピカとか銀ピカとか好きそうよね」
「いや、私はダイヤモンドの方が好きだ」
「あら、やっぱりより高級なのが好きなの?」
「いや、そういう訳では無いぞ。 人造ダイヤでも一向に構わない」
「え? そうなの? 意外ね」
「金や銀は天然の物しか存在しないだろう」
「ええ」
「かつて、多くの人々が金や銀の人工的な製法、錬金術に取り組んだが、その結果は承知の通り」
「そうね」
「ダイヤモンドは、炭素からできている。 真っ黒なアレだな」
「うん……」
「けして美しいとは言えない真っ黒な物質も、人の手を加えることで天然物と変わらない美しさとなる」
「…………」
「私は、本当の美しさも人の手で作る事ができると信じている」
「天然だからこそ美しい、人工の物はそれに劣る、などと言う事は決して無いと思う」
「元が真っ黒な塊だったとしても、だ」
「美しくなる権利は、生きとし生けるもの全てに平等に与えられる権利だ」
「だから、私はダイヤモンドを愛するのだよ」
「蓮子……」
(そこは一切ボケないんだ……)
まあ、そんな訳で……
もう少し、この子と一緒に居てみようかな、と思います。
また何か有ったら、お話しするわ。
では、さようなら。
見ての通り、外国人よ。
お父さんはカナダ人、お母さんはイタリア人。
だから私、カナリアなの。
なんて、どこかで聞いたジョークは、とりあえず置いておきましょう。
隣に居るのは、宇佐見蓮子ちゃん。
綺麗な子でしょう?
こんなに綺麗で素敵な人と、あなたも一緒に居たいと思う?
本当にそう思う?
だったらあなたにあげるわ。
え? だって……
「何を考え込んでいるんだ、メリー?」
「いいえ、何でもないのよ」
「そうか。 では引き続きカナブン採集を続けよう」
「だからぁ! 結界暴きでしょう!? カナブンなんか何に使うのよ!」
「話していなかったか? 自然本来の美しさを研究することで、私の美しさを磨く材料に……」
「そこで何でカナブンなのよ! 良いから早く行きましょうよ! もう!」
宇佐見蓮子ちゃんは、極度のナルシストなんです。
それも、常識が通用しないタイプの人間です。
どう? 欲しい?
今更いらないだなんて言わないわよね?
え? なんで私がこの人と一緒に居るのかって?
今となってはどうでもいい事よ……
「メリー! 何をしているんだ!? デカいのがそっちに行ったぞ!」
「え? ぶっ、びゃああああああああ!!!??」
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ
「うべべぅ」
「どうしたメリー! 早く捕まえないか!」
「顔にまとわり付くから捕まんないのよ! 蓮子が捕まえてよ!」
「いや……断る」
「なんでよ!?!!」
「くさそう」
「臭くないから!! 痛っ!」
「むぅ……カナブンはあまり美しくないな。 それっ」
ぎゅっ
「ちょっ!? 握り潰しちゃったよこの子……」
「可愛いメリーを困らせる悪い虫はこうしてやろう」
「さ、流石に可哀想じゃない?」
「む、そうか。 なら返そう」ポイ
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ
「ぎゃあああ!? 生きてた!?」
「握りこんでいただけだが?」
「この野郎もがっ」
「おや、食べちゃダメじゃないか」
「別に好きで食べおげげぇぇ」
「おお……それは流石に美しくないぞ」
「うぅ…………」
大学に入って、初めて会った人がこの蓮子だったがために、私はこんな目に遭っています。
誰か、助けてください。
いや、あるいは、このまま他人に関わらせること無く、私が手綱を握り、死ぬまで二人で居るべきか。
って、何でここまで思いつめなきゃいけないのかしら……
そうそう、昆虫採集の他にも、色々な事があるのよ。
例えば、二人で街を歩いている時は……
「メリー、この辺りには私に似合う洒落たカフェなど無いかな?」
「どんなカフェなのそれって」
「ん……そうだな……。 透き通る青空の色をしたコーヒーとか」
「あなたそれ飲みたいと思う?」
「飲みたいかどうかではなく、私が飲んで似合うかどうかが問題だ」
「ああ、そう……」
『ねぇねぇ君達、どっから来たの?』
「え?」
「ん?」
『何かお店探してなかった? 良いとこ教えてあげよっか? 遠くから来たの?』
「ああ、ちょっと洒落たカフェを……って、なんだメリー、引っ張るんじゃない」
(れ、蓮子、これナンパよナンパ……簡単に付いてっちゃダメよ)
(ん? 彼に付いていくのが不安なのか?)
(うん、こういう人は苦手で……)
(そうか。 では、同伴はお断りしよう)
『ねね、そこのお店良い所だからさ、一緒にどう?』
「良い店なのか?」
『そうそう、女子にはケーキが良いよぉ! マジでなめらかさがスムージィでパネェスゲェから』
「なるほど、参考にしよう。 だが、同伴は遠慮させてもらう」
『ん? どーはんって何?』
「一緒にお食事はしたくない、と言いたいんだよ」
『ちょいやいやいやいや、マジ奢っちゃるから!!』
「メリーは、私と二人で食事をしたいと言っている」
『うっは、自分らアレなん? レズなん? ブッハハハハ』
(メリー、れずって何だ?)
(それ聞くんかい!! また今度教えてあげるわよ!!)
「まあ、何か知らんがまた今度な。 私達は部活で忙しいんだ」
『え、何、部活? 何部?』
「うむ、暫定的な名前だが、『ビューティフル部』だ」
「!?」
『!?』
「先ほど、何処から来たのかと言う質問が有ったが、私は美の国からやって来たのだ。 そこでは美しさを磨く事が義務とされ……」
「もう、蓮子!! 行くわよ!!!」
「おぉお」
-純喫茶 地毛-
「何だメリー、そんなにこのカフェに行きたかったのか」
「あのね蓮子、私達の部活は秘封倶楽部!! ビューティフル部じゃない!!」
「なにそれ」
「いや……平たく言えば、怪しげな所に隠れる境界を暴く部活よ」
「なるほど、ではビューティフル部と兼部と言う事で」
「勝手にすれば良いけど、私は入部しないからね」
「しゅん」
「しゅんとするな!」
『ご注文お決まりでしょうか?』
「あ、えっと……コーヒーと、ケーキ下さい。 蓮子は?」
「ハンバーグ」
「美しさとかけ離れたもの来ちゃった!?!」
『パンにお挟みしましょうか?』
「何そのサービス!?」
「!!(キラキラ)」
「子供みたいに目が輝いてるわよ!?」
『ピクルスもお付けしますね、ふふっ』
「ここ何屋さんなの!?」
「しゅん」
「しゅんとしてる!!!」
『…………それではメニューお下げしますね』
「察してあげて!! この子ピクルス嫌いみたいだから!!!!」
「しゅん」
『お待たせしました』
「おー、とっても美味しそうなケーキね。 で……」
「…………(キラキラ)」
「ハンバーガー見て恍惚とする大学生ってどうなのよ」
「あむっ……」
「でも美味しそうね……わっ、肉汁が」
「…………」
ジュルジュルジュルジュルジュルルルルルルルルルルル
「やると思ったけど! やると思ったけどやめてよ!!」
「う・ん・ま・い・ぞー!」
「美しさはどこ行ったのよ」
「この程度で美しさが陰る事はないさ」
「都合良いのね……」
「うまい」
「でね、蓮子。 蓮子も、怪しい場所とかを探しておいて欲しいの」
「ふむ」
「見つけて下調べをしたら、二人でそこへ乗り込むのよ」
「了解した。 それで……」
「?」
「レズとは何だ?」
「んがっ、それ忘れてた……」
「何なのだ?」
「その……女の子同士の恋人って事よ」
「なるほど、全く的外れな事を言うものだ」
「そ、そうね」
「私に性別など意味をなさないのにな」
「は?」
「蓮子と言うのも女の名前だが、仮の名前だしな。 本当の名前は高貴すぎて美しくない者が聞いたら気が狂うと言われているため、あまり口にしないようにしているのだ」
「お会計お願いします」
普段からこんな調子なの。
もう死のうかしら。
じゃあ、死ぬ前に、私達二人が初めてまともに秘封倶楽部として活動した時の事を話すわ。
「蓮子、おかしいと思うの」
「何がだ」
「境界を見つけたって、普通のアパートじゃない」
「このアパートの一際怪しい一室に、境界を見つけたんだ」
「どうやって……」
「出て来るおっさんが物凄く怪しかったんだ」
「境界と全然関係ないじゃない」
「良いから入るぞ」
「ちょうう、入るの!? ビックリして変な声出たじゃない」
「大丈夫だ。 部屋の主は片付けて鍵も手に入れた」
「片付けんなよ!!」
「ああんもう、入っちゃった。 何かくさっ」
「この美しくないパソコンを見て欲しい」
「パソコン?」
「この美しくないフォルダが問題なのだ」
「これは……ほんにゃら新地に、ナンタラ新地、どーたら街って、全部風俗街の名前ね」
「どうだ、美しくないだろう」
「うん、ディレクトリの名前に2バイトの文字使うなんて美しくないわ」
「…………????」
「私が悪かったわよ……で、それの何が問題なの?」
「このフォルダの中身なのだが……」
「音声ファイル……名前は、女の人の名前とか……よく分からない数字かぁ」
「これを聞いてみてくれ」
「う、うん……」
ぷっ、ぷぅぅ~
「これ…………」
「屁だ」
「ちょっ……この無数にある音声ファイルって……」
「方々の花街を歩いて、金を積んで女に収録を依頼したのだろう」
「最悪な物を見たわ…………って言うか、これのどこが部活と関係あるのよ」
「うむ、この部屋の主だが、普段は某企業で真面目な敏腕営業マンとして働いているそうだ」
「ふむ」
「年齢的に考えても、決してこのような美しくないアパートに一人で暮らさずとも良いはずなのだが……」
「貯蓄も結婚もせず、この趣味のためだけにお金を遣いに遣ってるって訳ね」
「うむ。 真面目な彼が一体どのような境界を越える事でこの境地に至ったのか、今回はそれを暴こう」
「絶っっっっっっ対嫌」
「うん……私も最初は楽しそうだと思ったんだけど、この部屋に居るとだんだん具合悪くなってきた」
「帰るわよ!!!!」
「はぁ……」
「どうした、メリー」
「何かあんな物見たからテンション下がったわ……」
「じゃあ、ここで一つ駄洒落を言ってやろう」
「へぇ?」
「では……今日は良い天気だな」
「え、ええ」
「眩しい太陽を見ると……」
へっくしゅん
「ズズッ……くしゃみ蓮子」
「……………………」
「どうだ? 私は今腹筋が取れそうなくらい痙攣してるが」
「怖いわ!!! でも、蓮子もそんな冗談言うのね」
「君のためならな」
「うわっ、キザっぽい」
「そうだな」
「……………………」
(変な人…………)
「そう言えば、メリーはあまりアクセサリを付けないな」
「え? ええ、あんまり似合わないかなと思って……。 蓮子は金ピカとか銀ピカとか好きそうよね」
「いや、私はダイヤモンドの方が好きだ」
「あら、やっぱりより高級なのが好きなの?」
「いや、そういう訳では無いぞ。 人造ダイヤでも一向に構わない」
「え? そうなの? 意外ね」
「金や銀は天然の物しか存在しないだろう」
「ええ」
「かつて、多くの人々が金や銀の人工的な製法、錬金術に取り組んだが、その結果は承知の通り」
「そうね」
「ダイヤモンドは、炭素からできている。 真っ黒なアレだな」
「うん……」
「けして美しいとは言えない真っ黒な物質も、人の手を加えることで天然物と変わらない美しさとなる」
「…………」
「私は、本当の美しさも人の手で作る事ができると信じている」
「天然だからこそ美しい、人工の物はそれに劣る、などと言う事は決して無いと思う」
「元が真っ黒な塊だったとしても、だ」
「美しくなる権利は、生きとし生けるもの全てに平等に与えられる権利だ」
「だから、私はダイヤモンドを愛するのだよ」
「蓮子……」
(そこは一切ボケないんだ……)
まあ、そんな訳で……
もう少し、この子と一緒に居てみようかな、と思います。
また何か有ったら、お話しするわ。
では、さようなら。
10点確定かと思っていたが、それなりに面白かったので30点くらいは仕方ないか
作者のssを見てきたが、ネタが洗練されてきた感じがする。
初めて見たよ
この作品が正当に(不当に?)評価されることを切に望む