Coolier - 新生・東方創想話

誉めると誉められないの境”目”

2013/03/03 15:35:32
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 大学を出てから私はあまりにも普通の大人になってしまった。
 隣に蓮子がいないと私は我に返ったように不思議にも、未知にも、疑問にもぶつかるようなことが無くなった。
 決められた道筋があって、そういうものを否定しても良かったけど居心地ってやつ? そういう何となくという感覚だけど確実に左右している期待みたいなものがあって、その条件を満たしてみると賞賛とか誉められたりして認められてるなぁ、とか自分がここにいていいんだ! っていう自信になったりしてそういうものから外れるのが勿体なくなってしまう。でもそういうのばっかり私は選んできて、さて責任ある大人とかになってみるとそういう塩梅の条件がなかなかに表れなくなる。もしくはハードルが高すぎて失敗して逆に「なんでこんなのもできないの? 君って使えないね」とか自分を否定される言葉を浴びせられる。私って奴は、もっとすごかったり良い人だったりするんじゃなかったの? 大人になって私には分からないものが出来た。それが他人だった。他人が望むことをしてみると誉められたりするけど、他人が望まないことをすると貶したりしてくる。私は他人の意見で私が出来ていると思っていたし、社会って言うのは他人の評価で初めて確立される地位なんだと思っていた。
 でも違うんだね。
 私は憎んだ。他人を。今まで良いように扱って、要求に応えられなくなったらポイだ。私は便利に使われてただけなんだ。道筋をしっかり守ってれば良い人間で、道筋を守らない人間はバカで愚かで糞なんじゃなかったの? でも糞なハードルが高くなるばかりで、やっと守れたとしてもどんどんおざなりな誉め方になる。私の周りってそんな人間ばっかりだったということい気づいた。全部お為ごかし。
 そんな私でも結婚して、子供を生んだ。夫とはうまくいっていない。夫は時々他人と同じ行動をとる。私を誉めて、私をうまく使おうとする。便利に使って自分が楽をしようとする。私はすぐに気づいて文句を言う。「そんなつもりじゃなかった。でもお前にとってもいいことなんだよ」「それやっとかんとお前の為にならんぞ!」そんなこと言って人を物みたいに使おうとするから反論すると、いつも「わかった。ならいい」とかいって夫は自分でやってくれる。それが普通なんじゃないの? 私はそれが本当に正しい物事だと知った。物心のつき始めた子供にはそれを教えた。人の言うことはちゃんと聞いて、正しいか正しくないかは自分で考えなさいって。正しくないと思った物に従う必要はないし、たとえ居心地が良くって従っていたくなっても後悔することになるから、拒否しなさい。そう、教えた。夫は何も口を挟まなかったし、間違っていなかったはずだ。
 子供が反抗期になって、私の言うことを聞かなくなった辺りから私の後悔は始まった。何を言っても言うことを聞いてくれなくなった。天の邪鬼のように反対のことしかしない。迷惑なことばかり、後始末をするこちらの身を全く考えない奔放なことばかり。私は夫に愚痴を吐く毎日。夫は久しぶりに真面目な顔して私に聞いてきた。「良かったじゃないか。お前の言うとおり、お前の言うことが正しくないと思ってそうしているんだ」馬鹿にして。私が間違ってたって言うの? なら止めれば良かったじゃない。止めなかったってことはあなたも賛成するってことでしょ。なんで止めなかったのよ。(言いたくない)。あなたが止めれば、子供が言うことを聞いて私の言うことを良く聞く良い子になったかもしれないじゃない。(言いたくないの)。
「なんでそんなのもできないの? あなたって使えないわ」
 口にした瞬間、それは紛れもない本音であってしまって、でもだからこそ口に出して肯定したくなかった言葉が激情に任せて出てしまった。私は以前、憎んでいた他人と似たような感情でもって夫を否定したのだ。明確に、勝手に定めたハードルをくぐらなかったという理由でもって。夫は口数が少なく、意見も強く言わない人だった。でも傷付いた顔をした。それでも何も言わなかった。私は咎めてくれないことに、苛立ちを覚えた。私は私を叱って欲しいのだ。今すぐに。でも叱ってくれない。それが夫の優しさだということに気づきつつも自分の感情を抑えられずに罵倒を続けてしまう。私は私を責めれないのだ。今までのことを後悔することが出来ないから。間違っているって思って壊れたくないから。プライド、という言葉が脳裏をよぎった。つまらない、本当につまらない自尊心を傷つけたくないために私は夫という他人を罵倒するのだ。
 夫は最後に悪かった、とだけ言って仕事に出かけた。急に決まった出張だった。私は今まで愚痴のはけ口となっていた夫を失って、言葉の矛先が自分に向いた。子供にも向いた。子供は馬鹿を見るような目つきで私を見た。反抗的な目つきだった。気に入らない目つきをやめなさい、というと今度は見下げた目線をくれた。苛立ちは募るばかりだった。私はどうしたいんだろう。私はどうすればいいんだろう。誰か教えて欲しい。なんでこうなったのか。どうしてこう上手くいかないのか。私が悪いんだろうか? 私は初めて他人の評価を欲しがった。今は、使える使えないという肯定否定どっちでもいいから意見が欲しかった。私はどう見えているんだろうか。どう思われているんだろうか。建前ばかりの世間話。傷つけないようにするばかりの煮え切らないお茶話。本音で話して欲しかった。でも否定はやっぱり怖いから、私はかみつくんだと思う。なんでそんなこというの? 言い方ってものがあるでしょう、って。でも私は本当はうれしいのかもしれない。意見に飢えている。評価に空腹なんだ。子供の頃にはいっぱいあったはずの、私を表現してくれる言葉の数々は私が年をとるごとに消えていった。
 

 私はふいに、気づいた。それは夢で見た。それは私をあまりにも見ている目だった。
 私を見ている目は、どこからともなく私の頭の中に言葉を残していった。実に馬鹿ね、って。でも幸せじゃない? って。幸せじゃないわ。不幸よ、と返した。すると目は、あなたは他人を評価できる年になったけど、それが嬉しいんじゃないの? 私を馬鹿にしくさった他人を馬鹿にできるって本当は喜んでるじゃない。あなたはだから馬鹿を馬鹿にする馬鹿でしかないんだよ。言ってる意味がわからないわ、というと馬鹿にする気ね? 目はせせら笑う。分かってるじゃない。分かってるのに言っちゃうのがあなたなのよ。あなたは子供のときの他人を気にする癖が抜けずに大人になったのよ。
 そうやって最後に目は一番しっくりする言葉を残して私は目が覚めた。少しだけ、考えた。そうほんの少し。
 そうして私は洗面台の鏡の前に立ってみた。
「実に馬鹿ね」
 そっくりな目つきだった。なるほど。私を見ている必要があるのは私ってことか。
 私は私が一番未知で、不思議で、疑問なのだ。蓮子と久し振りに連絡を取ろうと思った。今何時にいるだろうか?
自分を見ている目はたくさんあるけれど、どの目にも映り良くできる人間は少ない
もしくは、その目の意図を疑えない人は目に従うことしかできない

メリーは自分で思っている以上に自分を持っていないという考察
河岬弦一朗
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コメント



0.140簡易評価
1.10名前が無い程度の能力削除
秘封倶楽部は現代を舞台にオリジナルを書きたい創作者の為にあるのではない
創想話は東方のSSを書きたい人の宿る場所
そろそろ
二次創作の意味を真剣に考え直す時期よ!
3.20名前が無い程度の能力削除
よかったよ。後書き三行だけね。
4.10名前が無い程度の能力削除
カティ・サークの続き書いてくださいよオウ早くしろよ
…マジレスするとただ気持ちの悪い主婦の独白をさせただけのこの作品(もはや東方要素が人名しかねえよ!)より、あの書きかけの処女作の方がまだはるかに小説として面白かった
他の人も言ってるけど、貴方の今回の考察は最後3行だけで綺麗に纏まるほど酷薄なものです
5.10名前が無い程度の能力削除
立派なのは口先だけ、自分が何を言ってるのか理解していない。
11.無評価名前が無い程度の能力削除
たまにこーゆー人が東方界隈に流れてくるけど不思議よな。どういう人でどんな精神状態でどういった経緯で流れてくるんだろうか。なにを求めてっていうか好き好んでこんな美少女同人弾幕ゲーの二次創作をしにきたのか皆目見当が付かない。
小説家崩れなのか志望なのか趣味なのか知らないけど、これだけの筆力を持って何故東方に興味を持ったのだろう。単純に人口が多かったから?
なんにせよ、孤独をこじらせたが故の歪んだ自己顕示欲みたいな感じはしますが、どうであれ読者と健全なコミュニケーションを図ろうとするような作品を創ることは多分ないのでしょう。多分。


12.20名前が無い程度の能力削除
勿体ない。
これを絡めた大きな話にしてほしかった。
長編の序程度までしか展開できてない。
悲劇にもなりきれてないし、幸せな結末への展望も見当たらない。
ほんと勿体ない。
13.40名前が無い程度の能力削除
うーんと。
この作品はあまり評価できないけど、今後に期待が持てる作品だと思います。
以下、気になったところ。

こういう文章の書き方って、うまく書くと読みやすいんだけど、下手に書くと意味が読み取れなくて冗長に感じちゃうんだよね。
この文章、ちょっと意味が取りにくいところがあったかな。

あと、これ、東方でやる意味あったのかなって思う。東方の世界観では全くないし、作中のメリーと、自分のイメージするメリーが重なってる部分もなかった。
これは主観的な問題だから、作者にとってのメリーはこうだ!って言われると否定もできないんだけどね。

ストーリー面でいうと、このメリーって共感できないキャラで、読んでてイラっと来た。
主体性の欠片もないくせに、自分が気に入らないことがあると、子供や夫に当たり散らして、それを反省もしない。
ある程度、共感できるキャラクターじゃないと、実際問題、読んでもらえないと思うよ?
例えば、主体性がないキャラでも、そこから変わっていこうとしているんなら、応援したいって気持ちになる=共感できるキャラになるし、そういう技をみせてほしいな。

あと、この物語に進展があんまりないよね。短編だとしても、もう少し、変化が欲しい。
もっというと、メリーの精神的な変化が欲しい。このメリー、徹頭徹尾、わがままな子供のまんまで終わっているんだもの。

まとめると、推敲、東方の世界観やキャラクターを使う、共感できるキャラ立てをするの三点を気をつければ、もっといい作品がかけると思う。
期待してます。頑張って。
15.503削除
この後の展開で事態が好変するとはとても思えない……
あとこれ東方である意味が殆ど無いよう感じました。