―――「メリー、あなたは魔法という物を信じるかしら。」
私の相方、大学内での期待の変人、二人ぼっちの倶楽部のバディ、”宇佐見蓮子”はいきなりそう切り出した。
仕方が無いので私も続く。どうせ他に話題は無いのだ。闖入者に耳を傾けよう。
「それは定義にもよると思うけれど、『科学で不可能な事』を成し遂げるのは魔法の領域だと思うわ。」
「いえいえそれが。これが魔法も科学で語れるのよ。」
「へえ。科学で語ると言う事は何かしらの根拠が有るのよね?」
分かっている。そもそもその片鱗に私はおろか彼女も触れている。
「そんな目で睨まないでよ。多世界解釈は知ってるわよね。」
「もはや常識になりつつあるじゃない。『ここであっても何かが違う世界』の話でしょ。」
「厳密には違うのだけれども別に構わないか…。正確には『手を出し合う決定論』なのだけれど、ここでは割愛するわ。」
「あと、人間原理と電子の性質も。」
「ええ。『確認するまでは蚊帳の外』、『確認されるまでは匣の中』の事よね。」
「それなら大丈夫ね。それでは始めましょうか。」
そうして彼女は一言区切る。ここからが本番なのだろう。
「物理界と精神界、似たようなものだと思わないかしら。」
「急すぎて全く何のことだか。」
「ちゃんとフラグは立てたわよ?」
「私と貴女ではイデアが違うようね。」
「何よ。分かってるじゃない。」
口角を少し持ち上げる。
「『目的の為に行動し、過程を引きずり出す』。科学の基本よね。」
「それを言うなら『実験を繰り返し、結論を削り出す』、じゃないの?」
「いやいや、『どうなるかを調べるのが目的で、その為の手段が実験』でしょう?」
「『そうして悉く切り捨てて、たった一つの冴えた答え』を探すのね。」
まるでメビウスの輪みたいな会話。お互いに分かってやっている分性質が悪い。
「ここで一度話を戻すわ。『魔法とは何か』。科学が補集合だとすれば、魔法とは?」
「簡単じゃない。偏執的な否定が科学なら、魔法は致命的な肯定よ。」
「正解。なら、『結論が有り、過程は不明でも同じ行動を取ると同じ結果になる』のは何かしら。」
「そんなものは実験…いや、結論有りきで過程不明なら魔法と言えなくもない。」
「正解よメリー。最後の質問よ。『科学と幻想の決定的な違い』とは?」
「簡単じゃない。『結果の順序』が違う。科学は否定を積み重ねて結果を得るが、魔法は結果の為に否定を重ねる…。」
目を伏せて考える。
そう、ここが全てをひっくり返す境界。
「つまり貴女が言いたいのは、観測者次第で魔法も科学も立場が入れ替わると。そういう事かしら?」
「大正解♪」
「所で気付いているかしら?」
細工は流々。
「何が?」
無邪気な笑顔に他意を覚えて。
「私、貴女の事を一度も”蓮子”だなんて呼んでないのよ?」
そうして相手の笑顔が凍りつく。私の仮面も凍らせる。
「どうもご高説有難うございました。と、言う訳で私の大切な大切なパートナー、返してもらえないかしら?」
「嫌だと言ったら?」
「あら良かった。私も試してみたい事が有ったのよ。」
そうして特上の笑顔を浮かべる。勿論目だけは笑わずに。
「この世界が私の見ている夢だとして、どうして思い通りにならないことがあるのかしら?」
斬り捨てるなら一太刀で。苦しませるのは趣味じゃない。
「まあ思いつきなのよ。いつも”私を見ている側”から”私”を見てみたらどうなるかって。」
「それで人のパートナーを?非道い人。」
「それは赦してくださいな。貴女にも有るでしょう?出来心という物が。」
「全く。コレで話が面白くなければ笑い話にする所ですわ。」
「まあまあお嬢さんこの辺りで。せめて自分の幕は、自らの手で。」
「と、言う夢を見たのよ。」
「夢オチ…ここまで引っ張っておいて夢オチ…」
「蓮子が悪いんでしょう?昨日一日寝倒しておいて。」
「それは悪かったです。どうぞこのティラミスを。」
ははーと頭を下げケーキを寄越す蓮子。
夢と現の境界は、まだ。
私の相方、大学内での期待の変人、二人ぼっちの倶楽部のバディ、”宇佐見蓮子”はいきなりそう切り出した。
仕方が無いので私も続く。どうせ他に話題は無いのだ。闖入者に耳を傾けよう。
「それは定義にもよると思うけれど、『科学で不可能な事』を成し遂げるのは魔法の領域だと思うわ。」
「いえいえそれが。これが魔法も科学で語れるのよ。」
「へえ。科学で語ると言う事は何かしらの根拠が有るのよね?」
分かっている。そもそもその片鱗に私はおろか彼女も触れている。
「そんな目で睨まないでよ。多世界解釈は知ってるわよね。」
「もはや常識になりつつあるじゃない。『ここであっても何かが違う世界』の話でしょ。」
「厳密には違うのだけれども別に構わないか…。正確には『手を出し合う決定論』なのだけれど、ここでは割愛するわ。」
「あと、人間原理と電子の性質も。」
「ええ。『確認するまでは蚊帳の外』、『確認されるまでは匣の中』の事よね。」
「それなら大丈夫ね。それでは始めましょうか。」
そうして彼女は一言区切る。ここからが本番なのだろう。
「物理界と精神界、似たようなものだと思わないかしら。」
「急すぎて全く何のことだか。」
「ちゃんとフラグは立てたわよ?」
「私と貴女ではイデアが違うようね。」
「何よ。分かってるじゃない。」
口角を少し持ち上げる。
「『目的の為に行動し、過程を引きずり出す』。科学の基本よね。」
「それを言うなら『実験を繰り返し、結論を削り出す』、じゃないの?」
「いやいや、『どうなるかを調べるのが目的で、その為の手段が実験』でしょう?」
「『そうして悉く切り捨てて、たった一つの冴えた答え』を探すのね。」
まるでメビウスの輪みたいな会話。お互いに分かってやっている分性質が悪い。
「ここで一度話を戻すわ。『魔法とは何か』。科学が補集合だとすれば、魔法とは?」
「簡単じゃない。偏執的な否定が科学なら、魔法は致命的な肯定よ。」
「正解。なら、『結論が有り、過程は不明でも同じ行動を取ると同じ結果になる』のは何かしら。」
「そんなものは実験…いや、結論有りきで過程不明なら魔法と言えなくもない。」
「正解よメリー。最後の質問よ。『科学と幻想の決定的な違い』とは?」
「簡単じゃない。『結果の順序』が違う。科学は否定を積み重ねて結果を得るが、魔法は結果の為に否定を重ねる…。」
目を伏せて考える。
そう、ここが全てをひっくり返す境界。
「つまり貴女が言いたいのは、観測者次第で魔法も科学も立場が入れ替わると。そういう事かしら?」
「大正解♪」
「所で気付いているかしら?」
細工は流々。
「何が?」
無邪気な笑顔に他意を覚えて。
「私、貴女の事を一度も”蓮子”だなんて呼んでないのよ?」
そうして相手の笑顔が凍りつく。私の仮面も凍らせる。
「どうもご高説有難うございました。と、言う訳で私の大切な大切なパートナー、返してもらえないかしら?」
「嫌だと言ったら?」
「あら良かった。私も試してみたい事が有ったのよ。」
そうして特上の笑顔を浮かべる。勿論目だけは笑わずに。
「この世界が私の見ている夢だとして、どうして思い通りにならないことがあるのかしら?」
斬り捨てるなら一太刀で。苦しませるのは趣味じゃない。
「まあ思いつきなのよ。いつも”私を見ている側”から”私”を見てみたらどうなるかって。」
「それで人のパートナーを?非道い人。」
「それは赦してくださいな。貴女にも有るでしょう?出来心という物が。」
「全く。コレで話が面白くなければ笑い話にする所ですわ。」
「まあまあお嬢さんこの辺りで。せめて自分の幕は、自らの手で。」
「と、言う夢を見たのよ。」
「夢オチ…ここまで引っ張っておいて夢オチ…」
「蓮子が悪いんでしょう?昨日一日寝倒しておいて。」
「それは悪かったです。どうぞこのティラミスを。」
ははーと頭を下げケーキを寄越す蓮子。
夢と現の境界は、まだ。
キャラクターが暴走したというより、作者さんが無理をした結果内容が暴走したんじゃないかなぁと……。
地の文の削りすぎでどっちが何を言ってるのかわからないのと、二人の会話の内容自体が首を傾げるものがチラホラありました。
後者は純粋に私の頭が悪いだけかも知れませんが、作者さんが意図した形式の会話の応酬は、馬鹿でも理解出来るけど馬鹿じゃ言えない言葉の応酬でなきゃ完成しないタイプだと思います。
でも、ふざけて知性をぶつけ合う会話はバシッと決まればカッコいいですよね。内容も掘り下げてくれたらもっと良いのに残念だなぁと思いました。読んでて、私は魔法と科学は互いの絶対的なロジックを否定した手段で、同様の結果が出てしまう関係だと思いました。
天体操作して永劫回帰したり時を止めたり、死者の軍勢を使うとか
なのなのいったりカバラだったり。または俺唯一絶対とかができるのが魔法という印象がありますね~更新お疲れ様です
でもね、やっぱり二人は繋がってるんだなーと思えました。
最後のノリがほんと好き。メリーがティラミス好きだったらなお良し。
なんだが学術的なことばがいっぱいで頭がぐるぐる。