「私、お嬢様が嫌いです」
咲夜はたまに突拍子の無いことを言い出す時がある。今だって全然そんな話はしていないのに、私が嫌いだとのたまいだした。
嫌い、というのは言葉通りの意味なのだろうか? とりあえず聞いてみないことには始まらないな。
「どうしたのよ、急に」
「今まで好きだ好きだとアプローチしすぎていたので、ラブ度の触れ幅を調整しようかと」
「なんだ、ラブ度って。全然わからないんだけど」
いや、本当に全然わからない。疑問を解かすための質問で余計に混乱する羽目になるとは思わなかった。
「わからなくても構いません、お嬢様の事が嫌いなので」
「……めんどくさい遊びを考えたわね」
こういう時は彼女なりに遊んでくれているのだと考えることにしている。そうでもないと咲夜がただの電波になってしまうからだ。彼女もそう思われるのは不本意だろうし、私だってお付きの従者が電波娘だなんて思いたくない。
それにしても、私の事が嫌いごっこか。この遊びには何か意味があるんだろうか。 もしかして、このまえ咲夜の分だったはずのプリンを勝手に食べたのがばれた? それの報復か? ……とりあえず関係ない話は置いておこう。自分からボロを出す必要もない。
そして、少し気になった事がある。嫌われてる状態で物を頼むとどうなるのだろう?
「まあいいわ、紅茶を持ってきてちょうだい」
早速、拒否しにくいぐらいのちょっとした用事を言付けてみる事にした。さあどう出る?
「しょうがないですね、わかりました」
「そこは言うこと聞くのね」
疑問に思ったことが馬鹿らしくなるぐらい、えらくあっさり引き受けてくれたものだ。
嫌いっていったいなんなのだろう。私が思っている以上に深いものなのかも知れないな。そんな事を考えるより先に、さっきまで横にいたはずの咲夜が勢いよく扉を開けて部屋に入ってきた。今度は満開の笑顔だ。
「お嬢様あああ、持ってきましたあああ!」
さっきまでのツンツンした咲夜はどこにいってしまったのやら。今日の咲夜は忙しいな。
「今度はなによ……」
「嫌いに触れ幅がよりすぎたので、それの調整です!」
「たったあれだけでそんなによっちゃったの?」
特に酷いことをされたという印象はなかったのだが。
「私のお嬢様への嫌いアプローチはほんの少しで効果抜群なんですよ」
「そう、大変なのね」
適当な相槌以外話すことが出来ない。たまに放たれる咲夜の勢いには私ですら圧倒されてしまう、なんともまあ末恐ろしいやつだ。
「あと、あんまり強く抱きつくのはやめてくれる? 紅茶が飲みにくいじゃない」
飲みにくいと言うより、ちょっと痛いんだけど。紅茶をかけてやろうかと思ったが、私の飲みかけを
注いでやってもご褒美にしかならないだろう。やめとくか。
「そうですね、少し触れ幅が片寄りました」
そう言うと、再びツンとした顔に戻った。さすがにそろそろめんどくさいな……
「ちょっと、いつまでこんな……」
めんどくさいことを、と続けるつもりだった。でも、実際に喋れたのはそこまでで、後の言葉は飲み込まざるをえなかった。
「これ……は」
カップが小気味良く割れる音が部屋に響く。体の全部が、言うことを聞かない。
早まる鼓動に、回らなくなっていく頭。認識出来るのは咲夜の声だけになってしまった。
「お嬢様が苦手な福寿草をいっぱい入れたんです、前よりもっともっとたくさん。でもやりすぎちゃいましたね、また好き好きアプローチが必要そうです。それも、死にそうになるぐらい飛びっきりな……あはははは、今夜は寝かしませんよ?」
やっぱり、私が思っている以上に深いものだったらしい。
咲夜はたまに突拍子の無いことを言い出す時がある。今だって全然そんな話はしていないのに、私が嫌いだとのたまいだした。
嫌い、というのは言葉通りの意味なのだろうか? とりあえず聞いてみないことには始まらないな。
「どうしたのよ、急に」
「今まで好きだ好きだとアプローチしすぎていたので、ラブ度の触れ幅を調整しようかと」
「なんだ、ラブ度って。全然わからないんだけど」
いや、本当に全然わからない。疑問を解かすための質問で余計に混乱する羽目になるとは思わなかった。
「わからなくても構いません、お嬢様の事が嫌いなので」
「……めんどくさい遊びを考えたわね」
こういう時は彼女なりに遊んでくれているのだと考えることにしている。そうでもないと咲夜がただの電波になってしまうからだ。彼女もそう思われるのは不本意だろうし、私だってお付きの従者が電波娘だなんて思いたくない。
それにしても、私の事が嫌いごっこか。この遊びには何か意味があるんだろうか。 もしかして、このまえ咲夜の分だったはずのプリンを勝手に食べたのがばれた? それの報復か? ……とりあえず関係ない話は置いておこう。自分からボロを出す必要もない。
そして、少し気になった事がある。嫌われてる状態で物を頼むとどうなるのだろう?
「まあいいわ、紅茶を持ってきてちょうだい」
早速、拒否しにくいぐらいのちょっとした用事を言付けてみる事にした。さあどう出る?
「しょうがないですね、わかりました」
「そこは言うこと聞くのね」
疑問に思ったことが馬鹿らしくなるぐらい、えらくあっさり引き受けてくれたものだ。
嫌いっていったいなんなのだろう。私が思っている以上に深いものなのかも知れないな。そんな事を考えるより先に、さっきまで横にいたはずの咲夜が勢いよく扉を開けて部屋に入ってきた。今度は満開の笑顔だ。
「お嬢様あああ、持ってきましたあああ!」
さっきまでのツンツンした咲夜はどこにいってしまったのやら。今日の咲夜は忙しいな。
「今度はなによ……」
「嫌いに触れ幅がよりすぎたので、それの調整です!」
「たったあれだけでそんなによっちゃったの?」
特に酷いことをされたという印象はなかったのだが。
「私のお嬢様への嫌いアプローチはほんの少しで効果抜群なんですよ」
「そう、大変なのね」
適当な相槌以外話すことが出来ない。たまに放たれる咲夜の勢いには私ですら圧倒されてしまう、なんともまあ末恐ろしいやつだ。
「あと、あんまり強く抱きつくのはやめてくれる? 紅茶が飲みにくいじゃない」
飲みにくいと言うより、ちょっと痛いんだけど。紅茶をかけてやろうかと思ったが、私の飲みかけを
注いでやってもご褒美にしかならないだろう。やめとくか。
「そうですね、少し触れ幅が片寄りました」
そう言うと、再びツンとした顔に戻った。さすがにそろそろめんどくさいな……
「ちょっと、いつまでこんな……」
めんどくさいことを、と続けるつもりだった。でも、実際に喋れたのはそこまでで、後の言葉は飲み込まざるをえなかった。
「これ……は」
カップが小気味良く割れる音が部屋に響く。体の全部が、言うことを聞かない。
早まる鼓動に、回らなくなっていく頭。認識出来るのは咲夜の声だけになってしまった。
「お嬢様が苦手な福寿草をいっぱい入れたんです、前よりもっともっとたくさん。でもやりすぎちゃいましたね、また好き好きアプローチが必要そうです。それも、死にそうになるぐらい飛びっきりな……あはははは、今夜は寝かしませんよ?」
やっぱり、私が思っている以上に深いものだったらしい。
と思っていたら黒い方向に……。
咲夜さん、程々に……。
関係ないけど、題名で死にネタと思って泣く準備に入った私は
既に焼却処分した。
参りました。
オチに関して、好きモードの咲夜でも嫌いモードの咲夜でもなんとななく意味が通る。
これは紅魔館らしい、ほどほどのブラックを含有した不定形短編ですなぁ。
この急さ加減がなかなかに良かったです。