強力強大な能力ほどその対価というものは大きく・・・・・・・・・
ところが意外にもマジックアイテムというものはその法則を無視しているものが
多く・・・・・・・・・
日用品や普段から手元にあるようなものの形にすると大変便利であって・・・・・・。
魔「ふーん…」
森の森の奥深く。
霧雨魔理沙宅。
『マジックアイテムのあるべき姿』と書かれた本には所狭しと
字が陳列している。
今日も元気に本をめくる姿が一人。
魔「元気にめくってどうすんだよ」
ほっとけ。
さて、一度集中しはじめると止まらない彼女ではあるが、
魔「ふむふむ・・・・・・ということは」
そこから他のことを考えてしまうとばっさりととぎれてしまうものだった。
魔「普通はそういうもんだと思うけどな」
普通なのかどうかがわからない魔法使いが言っても説得力は皆無で・・・・・・。
いや、この幻想郷に説得力がある人なんぞいたか?
魔「とりあえず誰かに聞いてみるか」
かくして魔理沙は相棒の箒にまたがり、どこへと向かうのであった。
まぁ、どこへっつってもこういうときは二箇所ぐらいしかないのはお約束。
で、もって博麗神社。
五分五分の確立で選ばれたのはこっちだった。
霊「ほんとはた迷惑な話よね」
仕事が境内の掃除とお茶を飲むことである巫女はどちらも
ほったらかして縁台でだらけていた。だって夏よ?
お茶いれるのもめんどくさー。
霊「でも喉は渇くのよねぇ」
魔「へーい、霊夢~」
すたっと参上する白黒・・・いや黒白?
魔「Yeah、元気か?」
霊「何人よ、あなた」
間髪入れないつっこみだった。
霊「ちょうどいいわ、茶いれてきて」
魔「自分で動けよ・・・」
霊「私、冬に強くて夏に弱いのよ」
魔「半年前は逆のこと言ってたぞ」
ちっ・・・。
霊「ま、いいわ。いれてきたげる」
魔「お、わりぃな」
ずーりずーりずーり。
魔「いや・・・せめて立てよ」
霊「はいはい・・・」
『はい』は一回!
と言おうかと思ったが、
魔「あつー・・・・・・」
ダレた。
霊「まりさー?」
魔「んー?」
霊「熱いお茶とぬるめのお茶とどっちがいい?」
魔「それは喧嘩売ってるのか?」
「「ははははは」」
魔「・・・・・・あぢー・・・・・・・・・」
霊「ほら、これでも飲んで元気出しなさい」
魔「ん、さんきゅ」
どっしりした湯呑み。
湯呑み。
湯気・・・・・・?
魔「ハーッハハ!!霊夢、これは何の冗談・・・」
霊「ぷはー。やっぱ夏は冷えた麦茶よねぇ」
~~~少女等弾幕中~~~
みーんみーんみーん
じーわじーわ
霊「・・・・・・まりさー?」
魔「・・・なんだ・・・?」
霊「私、このまま天国いけそう・・・」
魔「お前は絶対地獄行きだよ・・・」
霊「・・・失礼ね」
その前に冥界にいくんじゃないかとは思わなかった。
奴のところにいくのは勘弁。
幽「べくしょーい」
妖「(品のないくしゃみ・・・)」
幽「妖夢ー、おやつまだー?」
妖「はい、ただいまー」
妖夢の腹が黒い話はまた別の話。
居間に真っ白に燃え尽きた二人。
もうすぐ夕方になるというのに太陽はまださんさんと照っていて・・・。
魔「せめてそういうマジックアイテムでも・・・ん?」
霊「なに?」
魔「その手があったか!!」
ごそごそと懐から取り出したるは
八卦炉。
魔「いやー、すっかり忘れてたぜー」
ぐっと魔理沙の魔力が注がれ・・・
そよそよ~。
魔「涼しい~」
霊「え?何それ!ずるい!!」
万能マジックアイテムの使い方その一、『ミニ冷房』
霊「ちょっと貸して~」
魔「あっ、こら!」
そよそよそよ~。
霊「生き返るー・・・」
魔「かーえーせー」
霊「嫌よ~」
魔「私のだぞー!!」
霊「へっへー」
見苦しかった。
まぁ、一部の人からは微笑ましいと言えるが、
魔「いい加減に・・・しろっ」
霊「きゃ!」
がたっ
ポロッ・・・
魔「あ」
がしゃん。
魔「あーーー!!!」
霊「・・・・・・てへ」
魔「てへ、じゃねぇぇぇぇぇぇ」
外見上はなんら問題なさそうだが内部に問題あり。
おかげで八角形の物体はうんともすんともずんとも言わなくなってしまった。
霊「うん、すん」
魔「お前がいうなぁぁぁぁ!!」
霊「な、なによ。緋々なんとかってやつで強化されたんじゃなかったの!?」
魔「見た目以上にデリケートにできてるんだよぉ・・・・・・」
ぐすっ。
霊「ちょ、ちょっと。泣くこと無いじゃない」
魔「ぅ・・・ぅぅ・・・・・・」
霊「(本気・・・で泣いてるのかしら)」
帽子に顔を埋めて肩を震わせている。
魔「これが・・・ないと・・・私・・・帰れないのに・・・・・・」
霊「えーと・・・魔理沙?」
魔「歩いて帰れってのか?」
魔理沙の耳が赤く染まっていくのが分かる。
霊「わ、私が悪かったから、今日は泊まってっていいからっ」
あたふたと巫女は泣く魔理沙をなだめる。
霊「そ、そうだ。今日はうちでご飯食べていいから。ねっ」
魔「ほんとか?」
霊「は?」
肩がふるふると
かたかたと
がたがたと―――――
魔「あははははは!!この魔理沙、しかと今の言葉耳にしましたぞ!?」
霊「・・・・・・」
魔「いやー、悪いね~。しかしこれが無くてはいろいろ出来ないのも事実」
霊「・・・・・・・・・」
魔「ってなわけで今日はお世話になりま・・・」
霊「弾幕りましょうか♪」
魔「はい?」
霊「前々から封印しなきゃって思ってたの。ちょうどいいわ」
魔「ま、待った!!八卦炉無しじゃ無理・・・」
霊「あっはははははははは!!」
~~~~~~~少女逃亡中~~~~~~~
霊「逃げられた・・・」
結局封印しそこねた巫女、帰宅。
魔「おかえりー」
逃げたと見せかけて縁の下。
霊「・・・・・・・・・巫女やめたいよぅ・・・ぐすっ」
魔「お?お?私と同じ手か??そんなものに引っかかる魔理沙様じゃ・・・」
霊「わぁぁあぁぁぁん!!」
大音量。
魔「ちょっ・・・れ、霊夢。声が大きすぎ・・・」
霊「魔理沙が夕飯作ってくれるんなら泣きやんであげる・・・」
魔「・・・・・・・・・」
時が・・・止まった。
魔「じゃ、そろそろ行くわ」
霊「びぇぇええぇぇぇぇ!!」
魔「わかったよ!!作ればいいだんだろ!!」
霊「わぁい♪」
オウム返し。
魔「先だししたら負けか・・・」
霊「おいしいものがいいなっ」
魔「はいはい」
エプロンに着替え、台所に向かう魔理沙。
魔「ん?」
ふと気づいたことに冷蔵庫の駆動音が無い。
魔「れいむー?冷蔵庫ついてないぞー??」
霊「うんー、壊れちゃってー。霖之助さんに注文してあるからー」
明日にでも取りに行くという。
魔「ふーん」
ならついでに八卦炉も直してもらおうかな。
さて、肝心の中身には何が残っているやら。
ぱかっ
魔「・・・・・・」
何も無いぜ、よねすけさーん?
魔「何をつくれと・・・」
仕方ないので調味料だけでも出して
おや、ひんやり。
電源はついてないにも関わらず冷気はあった。
今朝にでも壊れて残った冷気か???
魔「下には何があるかな・・・と」
がらっ
チ「っ!!―――お願い!!助けて魔理―――――――――」
ぱたん
後ろに霊夢が立っている。
隣から霊夢の手が手が手が―――
霊「そうそう、ここは・・・・・・開けちゃだめ」
魔「あ、ああ」
振り向けよと青信号。
振り向くなと赤信号。
霊「ところで魔理沙・・・・・・何か――――見た?」
どくん
魔「いや・・・・・・どこかの氷精が――――――」
霊「魔理沙」
どくん
霊「何か――――見た?」
魔「いえ何も」
霊「ならよかった♪」
壊れてしばらく開けてなくてとても見れる状態じゃないのよ。
そういって霊夢の声と手をもった『何か』は居間へと戻った。
私も戻る。調理へ。
~~~~~少女平和祈祷中~~~~~
霊「結局素麺なわけね」
魔「それしかなかったんだから当たり前だろ」
たらいに素麺と氷水をいっしょに入れてきた。
誰の氷かなんて考えたくもない。
霊「ところで魔理沙、何で今日来たの?」
魔「あ?確か・・・・・・」
ぽくぽくぽくちーん
魔「忘れた」
霊「ま、いいわ」
ちゅるちゅるちゅる。
霊「やっぱ夏はこれよね」
魔「さっきも似たようなの聞いたなその台詞」
こうして夏の陽は閉じていく。
魔理沙はやっぱり神社に泊まることになった。
だがここでいっておこう。
香霖堂の主、霖之助の眼鏡を取ったら・・・・・・という理由で
魔理沙は来たことを。
そして「だったら直接いって確かめればいいじゃない」と
巫女の鋭いつっこみがあったことを。
まぁでもそんなダイレクトに行ったら
魔「つまらんだろ?」
霊「それもそうね」
すっかりと夏の夜の熱は逃げていたわけで
幻想郷の夜が始まっているなか
彼女達の一日は落ちた。
(誰か・・・・・・助けて・・・・・・)
どこからともなく聞こえた声に魔理沙がうなされたとかいないとか。
おしまい
巫女の生活内容に吃驚(冷蔵庫空っぽですか?どうやって生きてますか?)
そして、自分の使った手で切り返され泣き落とされる黒白に同情
とりあえず、(一名除き)平和そうで何よりです