注
・珍しく見た目は霊×魔理になりそうな予感ですが、見かけだけです。話の本質的にも見かけだけです。
・結構使いまわされてるネタかもしれません。
・タイトルは、幻想郷の少女達はみんな一人称が私だな~、ということから思いついただけです。
・霊×魔理分が不足している方にこそ読んで欲しいと思います。ただし補充されるかは保障できません。っていうか補充されません。
・相変わらずキャラが壊れています。
その日、魔理沙はいつも通り博麗神社目指して駆けていた。
「飛ばすぜ飛ばすぜ!もっっっっっっっっと速くぅ!!」
ぐんぐん速度を上げていく。
魔理沙は風を切り裂くほどのスピードで空を駆け抜ける。景色など視界に入らない。空を飛ぶ鳥もあっという間に抜き去って行く。
このスピード感が魔理沙は何より好きだった。たとえ誰にやめろと言われてもやめることは出来ないだろう。
――故に、止めろと言われても止まれない。車は急に止まれない。魔理沙も急に止まれない。
「いっ!?」
「えっ?」
気が付かなかった。いつのまにか目前に紅白の巫女が目前に浮かんでいたことに。
油断していた。いつもならこの時間は縁側で茶を啜っているはずなのだから。
――ガッツーーン!!――
鈍い音が響いた。これが『カポーン』だったならそれはそれで問題だが。
咄嗟に急ブレーキをかけた魔理沙だったが、勢いあまって頭から霊夢と正面衝突してしまったのだ。音の大きさから、こぶの一つは覚悟しなければならないだろう。
「――っ!!」
「いっ……たいわね!!ちゃんと前方確認……くら……い……」
ぶつかった箇所を擦りながら、魔理沙に悪態を吐く。
だが、その悪態は言い終えることなく空に消えた。
霊夢は呆然と魔理沙を見ていた。魔理沙はまだ頭を抑えてうずくまっている……が、しかし、そのうずくまっているものを魔理沙と言って良いのだろうか。
「っ痛……悪い霊夢、まさかお前がいるなん……は?」
漸く頭を上げた魔理沙も、霊夢を見て硬直する。
「あー……その、お前は誰だ?若しくは、私は誰だ?」
「私は霊夢。そして、あなたも霊夢……なんだけど……」
「私は魔理沙だぜ……しかしこれは……」
「……厄介なことになったわね」
会話だけ聞けば、何もおかしなところはない。だがしかし、そこには決定的な矛盾があった。
「変な気分だな、自分の口から自分じゃない人間の言葉を聞く、なんてのは」
「そうね、しかもそれが魔理沙だなんて」
そう、魔理沙は霊夢の体に。霊夢は魔理沙の体に。それぞれ入れ替わってしまったのだ。
【わたしんち the movie ~博麗七不思議~】
ズズッ
「で、これからどうするの?」
ゴキュ
「どうもこうも……とりあえずまたぶつかってみるか?」
プハー
「痛いのは嫌よ」
博麗神社の縁側で、霊夢と魔理沙は茶を啜っていた。
このような事態でも、いたってマイペースだ。
「じゃあどうするんだよ」
茶を置いて霊夢に向き直る魔理沙。
「ひとまず様子を見ましょう。一晩経てば治ってるかもしれないし」
「……それは無理だと思うけど……」
「いいじゃない、魔理沙の体って面白そうだし」
「……オイ、何か妙な事考えてないだろうな?」
「モチロンヨ、マリサノカラダデアンナコトヤコンナコトヤアマツサエソンナコトシチャオウナンテ……そんなことするわけないじゃない。魔理沙は私が信用できないの?」
霊夢がにこやかに笑う。魔理沙なら決してしないであろう、邪気を隠した笑い方だ。
「怪しすぎるぜ……」
沈黙……霊夢をジト目で睨む魔理沙を横目に、霊夢は自分(魔理沙の体)の胸を触る。
「魔理沙って胸が無……」
「殴るぞ。っていうか泣くぞ」
――結局、明日知識人を片っ端からあたってみる事にして、その日は博麗神社に泊まることになった。
「魔理沙~、お風呂沸いたわよ」
「んー、悪いな」
魔理沙は風呂に入るため、脱衣所に向かう。
「……」
「……」
脱衣所に向かう魔理沙の後を、霊夢がついて来ていた。
「なぁ」
「ん?」
「なんでついて来るんだ?」
振り向き、言う。
「お風呂に入るために決まっているじゃない」
邪気を隠した笑顔。つまり、何かたくらんでいる顔。
「そうか、本当は一番風呂に浸かるのが私のポリシーなんだが、ここは特別に霊夢に譲ってやるぜ」
魔理沙はポリシーを捨てた。捨てなきゃ不味い。本能がそう告げていた。
「まぁまぁ遠慮しないで」
「引っ張るなーー、っつかお前入るんだろ?なんで私を脱衣所に……」
「はーい、脱ぎ脱ぎしましょうねー」
「何脱がしてる!?!」
霊夢はスルスルと魔理沙の服を脱がしていく
「そのセリフだと私と魔理沙が体だけの関係みたいに聞こえるわね……。魔理沙は心も体も私のものよ!」
襲い掛かってくる霊夢。
「待て霊夢!冷静になれ!自分だぞ!自分!!っていうか私の心も体も私のもんだ!!」
必死に説得を試みる魔理沙。というか、いつから自分の体はこれほど怪力を出せるようになったのだろうか。……博麗七不思議の一つに違いない。
「結局わたしと魔理沙だから関係ないわ!」
「大有りだーー!!」
ガラガラ!!
突然脱衣所の戸が開く。
「助けに来たわ!魔理沙!家に居ないからもしやと思ってきてみれば案の定……今日こそ覚悟しなさい霊夢!!」
魔理沙にはアリスが輝いて見えた。
霊夢にはアリスがとてもうざったく感じられた。しかし、その時霊夢の頭の上に豆電球が点灯した。(古典的)
「アリス、何をしてるんだ?」
「何って……魔理沙を助けに来たんじゃない」
「フフッ、みてわからないか?アリス。私は霊夢を愛しているんだ。お前なんかお呼びじゃないぜ」
状況からみれば、押し倒しているのは、魔理沙(の姿をした霊夢)。押し倒されているのは霊夢(の姿をした魔理沙)だ。
霊夢は魔理沙の姿をしている事をいい事に、アリスにあることないこと吹き込むことにした。
「ガーン」
声にだして落胆するアリス。
こころなしか白い。
「ま、待て待てアリス!私だ!私が魔理沙だ!」
「燃え尽きちまったぜ……真っ白にな……」
魔理沙が慌ててアリスに弁明しようとするが、既に廃人と化したアリスにその声は届かなかった。
「さぁ邪魔者は消えたわ。こんどこそ魔理沙!夢の国へ!」
「も~やだ!お家に帰る~!!」
「痛っ!」
針を射出。ターゲットの額に命中。
怯んだ隙に逃げる!飛ぶ!駆ける!
「うわ~ん!!」
泣きながら逃げる魔理沙を見上げて一言。
「泣いて逃げる魔理沙可愛い魔理沙ハァハァ……」
転がっていたアリスを蹴り飛ばして魔理沙を追いかける。なんとなく箒に乗って。
「待ってよ魔理沙~」
「ついてくるなーー!!」
(霊夢ビジョン)
「私を捕まえてごらんなさい霊夢(はぁと」
……
「ええ私捕まえるわ魔理沙!!二人のスウィートラブのために!!」
「捕まったら終わり!?」
そして二人の(魔理沙にとっては命がけの)鬼ごっこは夜明けまで続いた。
「し……しつこいぜ」
「魔理沙ったら照れ屋さんなんだからもう」
「いい加減にしろーーー!!」
いや、夜が明けても続いていた。
どうにか霊夢を振り切り、ホッと一息つく。気が付けば見知らぬ山の中にまで入ってきていた。
「まいったぜ……。夜通し飛び回ってたからもうクタクタだ……」
太陽はもう随分と高くまで登り、煌々と輝きを放っていた。
「どこか、休むところ……あー……そこの洞穴でいいや、もう」
手ごろな洞穴を見つけ、中に入ってみる。どうやら生物が根城にしている様子はなさそうだ。
「……お休みなさい」
誰に言うでもなく、そのまま目を閉じる。霊夢の言う夢の世界ではなく。本当の意味での夢の世界へと旅立つ。
そこは博麗神社だった。
夢の中でもやっぱり魔理沙は霊夢の姿をしていて、なのに指を動かすことも出来なかった。
「魔理沙……」
声が出た。しかしそれは魔理沙のものではない。
どうも霊夢の意識に入り込んでいるらしい。妙な夢もあるものだ。
「魔理沙、こないかな……」
夢の中の霊夢は魔理沙を待っているようだった。
ずっと。日が暮れても霊夢は待っていた。
魔理沙に、霊夢の意識が伝わってくる。
(魔理沙……今何してるんだろう?今日はこないのかしら。それとも私が嫌いになった……とか)
(うっ!?)
胸が痛んだ。それは霊夢の不安。不安に飲み込まれそうになる。苦しい。
魔理沙がこない。たったそれだけのことのはずなのに。
だが霊夢は表情を崩すことなく魔理沙を待ち続ける。
そこで、夢から目覚めた。
(……まいったぜ……まったく、一日いかなかったくらいで……そんなに不安に思うなよ)
魔理沙は、今は自分の姿をしている少女を思い、ため息を吐く。
「私が、お前のことを嫌いになるわけが無いだろうが!」
洞穴に魔理沙の怒鳴り声が反響する。
「もっと私を信用しろよ……あの馬鹿……」
そのころの霊夢。
「まりさったら、今日は積極的なのね~(はぁと」
寝ていた。夢の内容はわからないが、その顔はとても幸せそうだった。
「とにかく霊夢を一発殴ってから、パチェあたりに解決策を聞きに言ってみるか」
魔理沙は洞穴を後にして飛ぶ。
箒を使わずに空を飛ぶ。普段とはまた違う疾走感。
「これはこれでいいんだが……やっぱり私には箒が似合うぜ」
そう呟き、博麗神社目指して駆ける。前方には注意しながら。この上また誰かと入れ替わりでもしたら、本当に目も当てられない。
――しかし、そういった状況でこそ、運命の神様は悪戯をするのだ。
魔理沙は無事に博麗神社にたどり着いた。だが、博麗神社は無事ではなかった。
「これは酷いな……」
形も残らないほどに破壊された『神社だったもの』を見つめて、魔理沙は呟いた。
と、瓦礫が動いた。
「霊夢!?無事か!?」
慌てて駆け寄り、瓦礫をどける。
そこから出てきたのはアリスだった。
「魔理沙~、帰ってきてくれたのね~」
「アリス!?」
(昨夜からずっといたのか?)
「アリス?そうよあの馬鹿どこに隠れた!?」
「……あー?」
「聞いてよ魔理沙-、アリスったらいきなり立ち直って『魔理沙を殺して私も死ぬー』なんて言っていきなり弾幕ってきたのよ?おかげで神社も壊れちゃったし、私の心にも大きな傷が……さぁ魔理沙の腕の中で私を慰めて(はぁと」
言って、魔理沙に飛びつくアリス。
「……もしやと思うが……お前、霊夢か?」
「何を言ってるのよ?魔理沙の姿をしていても私が霊夢であることに変わらないわ。そして私の愛も……さぁ魔理沙、私を」
「ちょっと待て!」
飛びついてくるアリス……いや、霊夢をぶん殴って静止させる。
「とりあえっず一発殴ったぜ……」
「……愛が痛いわ」
「まぁ、色々言いたいことはあるが、とりあえずよーく自分を見てみろ」
「自分って……だから、魔理沙……」
ちょうど昨日と同じように停止する霊夢。
「ええええええええ!?」
「……厄介ごとが複雑になってきたぜ……」
同じように瓦礫に埋もれていたアリスを引っ張りだして、事の次第を説明する。
「やっぱり。おかしいとおもったのよ、魔理沙が霊夢を押し倒すなんて」
「いいから私の胸から手を離せ!」
アリスの手が魔理沙の体の胸を擦っていて。思考回路はアリスも霊夢と同じだった。
「そうよ、魔理沙の胸を揉んでいいのは私だけよ!」
「……下のほうはどうなって……」
「オイ!!」
「そうよ、魔理沙のピーをピーしていいのは私だ……」
「お前もう黙ってろ!」
キレた。
「つまり、気付いたら、入れ替わっていた……と?」
「そうね」
「神社が崩壊して押しつぶされている間に」
冷静になって、状況を確認する。
昨日のように正面衝突したわけではないらしい。
「ってーと、昨日のも単純にぶつかった衝撃で入れ替わったんじゃないのかもしれないな」
「でも、それじゃあ何が原因なのかしら?」
考え込む魔理沙と霊夢。
「博麗七不思議よ……」
「あ?」
「え?」
不意に、アリスが呟く。
「博麗七不思議に違いないわ!」
「「何ソレ?」」
霊夢と魔理沙は声をそろえて聞いてくる。
「知らないの?ほら、この本に載ってる」
アリスは懐から(○次元ポケットのごとく)分厚い本を取り出す。
「……博麗の怪談?」
「……初耳なんだけど……」
「私が書いたんだもの」
首をかしげる二人に、胸をはって答えるアリス。
「「オイ!」」
「一度ならず二度までも私の魔理沙と声をハモらせやがって!」
「いいから、そのお前が書いた博麗の怪談とやらがどうしたって?」
「いやね、この間暇だったから博麗神社の倉に忍び込んで何かレアモノでもないかと探してたのよ。そしたら博麗神社伝記とかいう書物があるじゃない、そこに面白いことが一杯書かれてたから思わず書き写しちゃった」
テヘッ
舌をだして笑う。
霊夢も笑う。
魔理沙も笑っとくことにした。
「人の倉荒らしといてテヘはないんじゃない?アリス」
まだ霊夢は笑ったままだ。
「まぁまぁ、ちゃんと返したし」
「……それはいいわ。でも、最近、倉に保管してた魔理沙コレクション、略してマリコレがごっそりなくなってたのはあなたの仕業だったのね」
笑顔が崩れる。霊夢もアリスも。
「お、おお、落ち着いて霊夢」
その時霊夢がどんな顔をしていたのか、それは霊夢の正面にいたアリスにしかわからない。ただ、そのときのアリスの表情はこの世の終わりを見たかのようだったと、後に魔理沙は語る。
「じゃあ、あなたのマリコレ、私に全部よこしなさい」
「それは嫌」
キッパリ断るアリス。その勇気は称賛に値する。
自分の命よりマリコレをとる。それでこそ、真の蒐集家だ!
かつて博麗神社だった場所に、悲鳴が響いた。
「どうでもいいが七不思議はなんなんだ……」
魔理沙は博麗神社がさらに影も形もなくなるところを遠くで眺めながら、一人、呟いた。
・珍しく見た目は霊×魔理になりそうな予感ですが、見かけだけです。話の本質的にも見かけだけです。
・結構使いまわされてるネタかもしれません。
・タイトルは、幻想郷の少女達はみんな一人称が私だな~、ということから思いついただけです。
・霊×魔理分が不足している方にこそ読んで欲しいと思います。ただし補充されるかは保障できません。っていうか補充されません。
・相変わらずキャラが壊れています。
その日、魔理沙はいつも通り博麗神社目指して駆けていた。
「飛ばすぜ飛ばすぜ!もっっっっっっっっと速くぅ!!」
ぐんぐん速度を上げていく。
魔理沙は風を切り裂くほどのスピードで空を駆け抜ける。景色など視界に入らない。空を飛ぶ鳥もあっという間に抜き去って行く。
このスピード感が魔理沙は何より好きだった。たとえ誰にやめろと言われてもやめることは出来ないだろう。
――故に、止めろと言われても止まれない。車は急に止まれない。魔理沙も急に止まれない。
「いっ!?」
「えっ?」
気が付かなかった。いつのまにか目前に紅白の巫女が目前に浮かんでいたことに。
油断していた。いつもならこの時間は縁側で茶を啜っているはずなのだから。
――ガッツーーン!!――
鈍い音が響いた。これが『カポーン』だったならそれはそれで問題だが。
咄嗟に急ブレーキをかけた魔理沙だったが、勢いあまって頭から霊夢と正面衝突してしまったのだ。音の大きさから、こぶの一つは覚悟しなければならないだろう。
「――っ!!」
「いっ……たいわね!!ちゃんと前方確認……くら……い……」
ぶつかった箇所を擦りながら、魔理沙に悪態を吐く。
だが、その悪態は言い終えることなく空に消えた。
霊夢は呆然と魔理沙を見ていた。魔理沙はまだ頭を抑えてうずくまっている……が、しかし、そのうずくまっているものを魔理沙と言って良いのだろうか。
「っ痛……悪い霊夢、まさかお前がいるなん……は?」
漸く頭を上げた魔理沙も、霊夢を見て硬直する。
「あー……その、お前は誰だ?若しくは、私は誰だ?」
「私は霊夢。そして、あなたも霊夢……なんだけど……」
「私は魔理沙だぜ……しかしこれは……」
「……厄介なことになったわね」
会話だけ聞けば、何もおかしなところはない。だがしかし、そこには決定的な矛盾があった。
「変な気分だな、自分の口から自分じゃない人間の言葉を聞く、なんてのは」
「そうね、しかもそれが魔理沙だなんて」
そう、魔理沙は霊夢の体に。霊夢は魔理沙の体に。それぞれ入れ替わってしまったのだ。
【わたしんち the movie ~博麗七不思議~】
ズズッ
「で、これからどうするの?」
ゴキュ
「どうもこうも……とりあえずまたぶつかってみるか?」
プハー
「痛いのは嫌よ」
博麗神社の縁側で、霊夢と魔理沙は茶を啜っていた。
このような事態でも、いたってマイペースだ。
「じゃあどうするんだよ」
茶を置いて霊夢に向き直る魔理沙。
「ひとまず様子を見ましょう。一晩経てば治ってるかもしれないし」
「……それは無理だと思うけど……」
「いいじゃない、魔理沙の体って面白そうだし」
「……オイ、何か妙な事考えてないだろうな?」
「モチロンヨ、マリサノカラダデアンナコトヤコンナコトヤアマツサエソンナコトシチャオウナンテ……そんなことするわけないじゃない。魔理沙は私が信用できないの?」
霊夢がにこやかに笑う。魔理沙なら決してしないであろう、邪気を隠した笑い方だ。
「怪しすぎるぜ……」
沈黙……霊夢をジト目で睨む魔理沙を横目に、霊夢は自分(魔理沙の体)の胸を触る。
「魔理沙って胸が無……」
「殴るぞ。っていうか泣くぞ」
――結局、明日知識人を片っ端からあたってみる事にして、その日は博麗神社に泊まることになった。
「魔理沙~、お風呂沸いたわよ」
「んー、悪いな」
魔理沙は風呂に入るため、脱衣所に向かう。
「……」
「……」
脱衣所に向かう魔理沙の後を、霊夢がついて来ていた。
「なぁ」
「ん?」
「なんでついて来るんだ?」
振り向き、言う。
「お風呂に入るために決まっているじゃない」
邪気を隠した笑顔。つまり、何かたくらんでいる顔。
「そうか、本当は一番風呂に浸かるのが私のポリシーなんだが、ここは特別に霊夢に譲ってやるぜ」
魔理沙はポリシーを捨てた。捨てなきゃ不味い。本能がそう告げていた。
「まぁまぁ遠慮しないで」
「引っ張るなーー、っつかお前入るんだろ?なんで私を脱衣所に……」
「はーい、脱ぎ脱ぎしましょうねー」
「何脱がしてる!?!」
霊夢はスルスルと魔理沙の服を脱がしていく
「そのセリフだと私と魔理沙が体だけの関係みたいに聞こえるわね……。魔理沙は心も体も私のものよ!」
襲い掛かってくる霊夢。
「待て霊夢!冷静になれ!自分だぞ!自分!!っていうか私の心も体も私のもんだ!!」
必死に説得を試みる魔理沙。というか、いつから自分の体はこれほど怪力を出せるようになったのだろうか。……博麗七不思議の一つに違いない。
「結局わたしと魔理沙だから関係ないわ!」
「大有りだーー!!」
ガラガラ!!
突然脱衣所の戸が開く。
「助けに来たわ!魔理沙!家に居ないからもしやと思ってきてみれば案の定……今日こそ覚悟しなさい霊夢!!」
魔理沙にはアリスが輝いて見えた。
霊夢にはアリスがとてもうざったく感じられた。しかし、その時霊夢の頭の上に豆電球が点灯した。(古典的)
「アリス、何をしてるんだ?」
「何って……魔理沙を助けに来たんじゃない」
「フフッ、みてわからないか?アリス。私は霊夢を愛しているんだ。お前なんかお呼びじゃないぜ」
状況からみれば、押し倒しているのは、魔理沙(の姿をした霊夢)。押し倒されているのは霊夢(の姿をした魔理沙)だ。
霊夢は魔理沙の姿をしている事をいい事に、アリスにあることないこと吹き込むことにした。
「ガーン」
声にだして落胆するアリス。
こころなしか白い。
「ま、待て待てアリス!私だ!私が魔理沙だ!」
「燃え尽きちまったぜ……真っ白にな……」
魔理沙が慌ててアリスに弁明しようとするが、既に廃人と化したアリスにその声は届かなかった。
「さぁ邪魔者は消えたわ。こんどこそ魔理沙!夢の国へ!」
「も~やだ!お家に帰る~!!」
「痛っ!」
針を射出。ターゲットの額に命中。
怯んだ隙に逃げる!飛ぶ!駆ける!
「うわ~ん!!」
泣きながら逃げる魔理沙を見上げて一言。
「泣いて逃げる魔理沙可愛い魔理沙ハァハァ……」
転がっていたアリスを蹴り飛ばして魔理沙を追いかける。なんとなく箒に乗って。
「待ってよ魔理沙~」
「ついてくるなーー!!」
(霊夢ビジョン)
「私を捕まえてごらんなさい霊夢(はぁと」
……
「ええ私捕まえるわ魔理沙!!二人のスウィートラブのために!!」
「捕まったら終わり!?」
そして二人の(魔理沙にとっては命がけの)鬼ごっこは夜明けまで続いた。
「し……しつこいぜ」
「魔理沙ったら照れ屋さんなんだからもう」
「いい加減にしろーーー!!」
いや、夜が明けても続いていた。
どうにか霊夢を振り切り、ホッと一息つく。気が付けば見知らぬ山の中にまで入ってきていた。
「まいったぜ……。夜通し飛び回ってたからもうクタクタだ……」
太陽はもう随分と高くまで登り、煌々と輝きを放っていた。
「どこか、休むところ……あー……そこの洞穴でいいや、もう」
手ごろな洞穴を見つけ、中に入ってみる。どうやら生物が根城にしている様子はなさそうだ。
「……お休みなさい」
誰に言うでもなく、そのまま目を閉じる。霊夢の言う夢の世界ではなく。本当の意味での夢の世界へと旅立つ。
そこは博麗神社だった。
夢の中でもやっぱり魔理沙は霊夢の姿をしていて、なのに指を動かすことも出来なかった。
「魔理沙……」
声が出た。しかしそれは魔理沙のものではない。
どうも霊夢の意識に入り込んでいるらしい。妙な夢もあるものだ。
「魔理沙、こないかな……」
夢の中の霊夢は魔理沙を待っているようだった。
ずっと。日が暮れても霊夢は待っていた。
魔理沙に、霊夢の意識が伝わってくる。
(魔理沙……今何してるんだろう?今日はこないのかしら。それとも私が嫌いになった……とか)
(うっ!?)
胸が痛んだ。それは霊夢の不安。不安に飲み込まれそうになる。苦しい。
魔理沙がこない。たったそれだけのことのはずなのに。
だが霊夢は表情を崩すことなく魔理沙を待ち続ける。
そこで、夢から目覚めた。
(……まいったぜ……まったく、一日いかなかったくらいで……そんなに不安に思うなよ)
魔理沙は、今は自分の姿をしている少女を思い、ため息を吐く。
「私が、お前のことを嫌いになるわけが無いだろうが!」
洞穴に魔理沙の怒鳴り声が反響する。
「もっと私を信用しろよ……あの馬鹿……」
そのころの霊夢。
「まりさったら、今日は積極的なのね~(はぁと」
寝ていた。夢の内容はわからないが、その顔はとても幸せそうだった。
「とにかく霊夢を一発殴ってから、パチェあたりに解決策を聞きに言ってみるか」
魔理沙は洞穴を後にして飛ぶ。
箒を使わずに空を飛ぶ。普段とはまた違う疾走感。
「これはこれでいいんだが……やっぱり私には箒が似合うぜ」
そう呟き、博麗神社目指して駆ける。前方には注意しながら。この上また誰かと入れ替わりでもしたら、本当に目も当てられない。
――しかし、そういった状況でこそ、運命の神様は悪戯をするのだ。
魔理沙は無事に博麗神社にたどり着いた。だが、博麗神社は無事ではなかった。
「これは酷いな……」
形も残らないほどに破壊された『神社だったもの』を見つめて、魔理沙は呟いた。
と、瓦礫が動いた。
「霊夢!?無事か!?」
慌てて駆け寄り、瓦礫をどける。
そこから出てきたのはアリスだった。
「魔理沙~、帰ってきてくれたのね~」
「アリス!?」
(昨夜からずっといたのか?)
「アリス?そうよあの馬鹿どこに隠れた!?」
「……あー?」
「聞いてよ魔理沙-、アリスったらいきなり立ち直って『魔理沙を殺して私も死ぬー』なんて言っていきなり弾幕ってきたのよ?おかげで神社も壊れちゃったし、私の心にも大きな傷が……さぁ魔理沙の腕の中で私を慰めて(はぁと」
言って、魔理沙に飛びつくアリス。
「……もしやと思うが……お前、霊夢か?」
「何を言ってるのよ?魔理沙の姿をしていても私が霊夢であることに変わらないわ。そして私の愛も……さぁ魔理沙、私を」
「ちょっと待て!」
飛びついてくるアリス……いや、霊夢をぶん殴って静止させる。
「とりあえっず一発殴ったぜ……」
「……愛が痛いわ」
「まぁ、色々言いたいことはあるが、とりあえずよーく自分を見てみろ」
「自分って……だから、魔理沙……」
ちょうど昨日と同じように停止する霊夢。
「ええええええええ!?」
「……厄介ごとが複雑になってきたぜ……」
同じように瓦礫に埋もれていたアリスを引っ張りだして、事の次第を説明する。
「やっぱり。おかしいとおもったのよ、魔理沙が霊夢を押し倒すなんて」
「いいから私の胸から手を離せ!」
アリスの手が魔理沙の体の胸を擦っていて。思考回路はアリスも霊夢と同じだった。
「そうよ、魔理沙の胸を揉んでいいのは私だけよ!」
「……下のほうはどうなって……」
「オイ!!」
「そうよ、魔理沙のピーをピーしていいのは私だ……」
「お前もう黙ってろ!」
キレた。
「つまり、気付いたら、入れ替わっていた……と?」
「そうね」
「神社が崩壊して押しつぶされている間に」
冷静になって、状況を確認する。
昨日のように正面衝突したわけではないらしい。
「ってーと、昨日のも単純にぶつかった衝撃で入れ替わったんじゃないのかもしれないな」
「でも、それじゃあ何が原因なのかしら?」
考え込む魔理沙と霊夢。
「博麗七不思議よ……」
「あ?」
「え?」
不意に、アリスが呟く。
「博麗七不思議に違いないわ!」
「「何ソレ?」」
霊夢と魔理沙は声をそろえて聞いてくる。
「知らないの?ほら、この本に載ってる」
アリスは懐から(○次元ポケットのごとく)分厚い本を取り出す。
「……博麗の怪談?」
「……初耳なんだけど……」
「私が書いたんだもの」
首をかしげる二人に、胸をはって答えるアリス。
「「オイ!」」
「一度ならず二度までも私の魔理沙と声をハモらせやがって!」
「いいから、そのお前が書いた博麗の怪談とやらがどうしたって?」
「いやね、この間暇だったから博麗神社の倉に忍び込んで何かレアモノでもないかと探してたのよ。そしたら博麗神社伝記とかいう書物があるじゃない、そこに面白いことが一杯書かれてたから思わず書き写しちゃった」
テヘッ
舌をだして笑う。
霊夢も笑う。
魔理沙も笑っとくことにした。
「人の倉荒らしといてテヘはないんじゃない?アリス」
まだ霊夢は笑ったままだ。
「まぁまぁ、ちゃんと返したし」
「……それはいいわ。でも、最近、倉に保管してた魔理沙コレクション、略してマリコレがごっそりなくなってたのはあなたの仕業だったのね」
笑顔が崩れる。霊夢もアリスも。
「お、おお、落ち着いて霊夢」
その時霊夢がどんな顔をしていたのか、それは霊夢の正面にいたアリスにしかわからない。ただ、そのときのアリスの表情はこの世の終わりを見たかのようだったと、後に魔理沙は語る。
「じゃあ、あなたのマリコレ、私に全部よこしなさい」
「それは嫌」
キッパリ断るアリス。その勇気は称賛に値する。
自分の命よりマリコレをとる。それでこそ、真の蒐集家だ!
かつて博麗神社だった場所に、悲鳴が響いた。
「どうでもいいが七不思議はなんなんだ……」
魔理沙は博麗神社がさらに影も形もなくなるところを遠くで眺めながら、一人、呟いた。
巫女の心は恋という名のダークサイドに間違いなく染まってますな
そしてふと思い出す古人の言葉「事態は際限なく悪化していく」
元に戻るまでにもう3騒動ぐらいありそうな予感が頭をよぎりました
果たして「無事に」(←ここ大事)元通りになれるか否かが気になります
七不思議他に何を書いたか気になりますね。
笑顔周りを凍らせる程だったんでしょうね。。(苦笑
元に戻れるか不安ですねぇ。(神社も壊れたままだし。
次も頑張ってください♪
シゲル様>関係ないです(笑 自分のかっこでも躊躇しません(笑
次も頑張ります……と思ったんですが、書きかけのものがたまってきたので(思いついたものを中途半端に書き留めたもの)そちらをさきにアップしたいと思います(汗
> 魔理沙はポリシーを捨てた。捨てなきゃ不味い。本能がそう告げていた。
いや、魔理沙の体で風呂に入るのを放ったらかしとく方が危ないと思う