※森近霖之助、最大のピンチの続きです。オリ&ロリ&下ネタです。ご注意ください。
幻想郷の人里から離れた魔法の森、その森のすぐ近くに僕の店「香霖堂」はある。
僕の名は森近霖之助。古道具屋「香霖堂」の店主をしている。
店主と言っても店員は僕だけ…だったのだがひょんなことから香織という店員が加わった。
彼女は俗に言う幼女だ。
ぐへへ。
毎晩毎晩ひぃひぃ言わせて楽しんでるぜぇ!
さーて、今夜はどんなアレを試そうかなぁ。48手のうち38までは習得済みだからな。
イロイロと試さねば。
「で、今晩は香霖堂にあるアレなオモチャで…と」
「ん?何を書いているんだい。…ってそれは僕の日記じゃないか!」
何ってナニー。とか言っている、脳みそピンク幼女を無視して僕は日記帳を奪還した。
「こ、これは!!」
そこには、幼女の不思議ワールドが展開されている。
思わず『体は幼女、頭脳は大人。ただしエチィ方面専門、みたいな!』と叫びたくなる衝動を押さえ込む。
「いいかい香織、他人の物を勝手に使うのはいけないよ」
僕は諭す。今日一日で父親になった気分だ。しかし最近の子供は皆こうなのだろうか?少なくとも魔理沙は違ったが…。
「むぅ~、店長のいけず~」
「その言葉の使用方法も間違ってるよ」
「店長のバカ!もう知らない!」
香織が怒ってしまった。ぷりぷりしている。やばい、かわいい。
「香織お風呂入る!」
香織が風呂に入ってしまったので僕は店を閉めることにした。
入り口の掃除を終え、店に入る。
「あ、お兄ちゃんお先」
…幻覚だろうか、半裸の幼女が見える。
「疲れてるのかな、今日はイロイロあったし」
しかしいくら目を擦っても幻覚が見える。
その、あの、極端に起伏に乏しいというか、凹凸が無いというか、あぁもう素晴らしいなぁ、はっはっはー。
!!。まて、それ以上認識するな!僕が僕で無くなる!あの恐ろしい幻葬がやって来てしまう!
思考をするな!思考を止めろ!思考をカットしろ!カットカットカットカットカットカットカットォ!
僕は考えることをやめた。見ても何も思わなくなった。
あぶない、セーフだったな。
「ああ、じゃあ僕が残り湯を頂こう」
僕は風呂に入る。…水風呂に、『漢』を静めるために。
日が暮れる。幻想郷の夕日はとても朱い。
赤フ…、唐突にそんな言葉が浮かんだが、記憶の海から追放する。
アブナイアブナイ。
そういえば、魔理沙が今日の日暮れに迎えを寄越すといっていたな…。誰だろう。
「てーんちょう。これでいいんですかー?」
香織が出てくる。香織には浴衣という外の服を着させてみた。
地の白に金魚と朝顔が良く合っている。サイズも完璧だ。少し大きめ、それがジャスティス。
僕の能力によると、『夏のふだん着』だそうだ。
もちろん僕も浴衣を着ている。履物は不便だが駒下駄という物でないといけないらしい。
知りたくないだろうが僕の浴衣は藍染めに笹の葉である。僕はこういう地味な色が好きなのだ。
僕に派手な色は似合わない。しかし香織には明るい色が良く似合う。きっと魂がそういう色をしてるんだろう。
霊夢の魂は紅白だろうな。ひょっとして太極図かもしれない。
魔理沙は黒白…かな?清濁共に併せ持ち、それなのに何処までも澄み渡る。それが魔理沙の強さだろう。
咲夜は銀だな。紅に多少染まっているけど。
紫は濁った紫だ(キッパリ)。
「店長?どうしました?」
ふと、香織が僕の顔をのぞく。
「ああ、いけない、ちょっと考え事をしていたんだ。うん、よく似合うね。
それともう店は閉めたから普段の言葉使いでいいよ」
「うん!丁寧にしゃべるって少し疲れるね」
小さい子にとっては世界の全てが気さくな友なんだろう。だから無邪気に話し掛けているのだと思う。
子どもは凄いな、大人にはできない事が、当たり前にできる。
大人には見えないものが、当たり前に見える。
「ところでお兄ちゃん。さっき何を考えてたの?」
「ん?魂の色についてだよ。みんなの魂の色はなにかなぁって。
そうだ、香織。僕の魂はどんな色をしてると思う?」
「なぁーんだ。そんな事か。決まってるよ、店長の魂の色は」
「色は?」
まさか、ピンクというんじゃないだろうな。
「くすんだ灰色だよ。少しかび臭い、ね」
僕の魂はかび臭いらしい。
悲しくてちょっと涙が出てきた。
魔理沙が寄越した迎えとは魂魄妖夢だった。
何故か妖夢は僕の直径3メートル以内に入ってこなかった。しかも僕の顔を直視しない。
異様に視線を感じるので妖夢に顔を向けるのだが、その時に妖夢は既にあさっての方を向いている。
…恥ずかしがっているのかな。ふっふっふ、怖がることは無いよ子猫ちゃん。
そう思うと彼女の半霊がビクッと振るえ、辺りをきょろきょろ見回している。
…異様に怖がっている。
ハッ!そうか!おのれ魔理沙めぇ!言い触らしおったな!後でたっぷりとお仕置きをしてやるぅ!
半霊は相変わらずびくびく震えている。妖夢はやたらと緊張。香織は無邪気。
そして僕は妖しい笑みを浮かべながら低く笑っている。変な空気が形成されてしまった。
はたから見ればかなり妖しい光景だ。僕も普段どうりに、と思うのだがどうも気分が昂ぶってしょうがない。
宴会なんて久しぶりだからかな。この浴衣の効果もあるかもしれない。
この浴衣という物を着ると『たまやー』と言いたくなるらしい。
何のことだかさっぱりだが。
そんなこんなで博麗神社に着いた。既に宴会は始まっているらしい。
知らない子もちらほらといるが、まあ全員魔理沙と霊夢の友達だろう。
…食物を見るような視線を感じるのはきっと気のせいだろう。
ちなみに僕を食べても美味しくない。それだけは保証できる。
「霖之助さん、こっちこっち」
幻想郷で2番目にトラブル好きな人間、博麗霊夢が僕を呼ぶ。ちなみに一番目はやっぱり魔理沙だ。
「ああ、霊夢か。助かった、何処へ行けば良いのか解らなくてね」
「霖之助さん?なれなれしい、お兄ちゃんは私の物よ」
どうやら僕は物扱いされているらしい。泣きそうだ。
僕は香織を皆に紹介した。
「ふーん、その子が…。まあ、害は無さそうね」
と言う巫女がいれば、
「これからはペド之助と呼ぼうか」
と言う失礼千万な魔法使いもいるし、
「ねぇねぇ、あれ何?おもちゃ?」
と言う危ない妹もいる。
さらに「そーなのかー」「冷凍して遊ぼう」「新薬の実験体に」「メイド」「ねこみみ」などと不穏な言葉が聞こえてくる。
極めつけは、
「ねぇねぇよーむぅ。子どもってアミノ酸が豊富で鶏肉みたいな味がするらしいわよ」
という御言葉だった。
世界が凍りつく。
誰もが言葉を失い、夜雀が恐怖のあまり失神しても、西行寺幽々子はのほほんとしていた。
…さすが確信系天然少女、恐ろしい。
「ま、まあ、その、あれだ。みんないつもどうり勝手に楽しもうぜ」
魔理沙が無理矢理取り繕う。さすが僕の最大最強のライヴァル。この短時間で立ち直ったか。
魔理沙の言葉を転機に各々好き勝手に集まりだした。
自然と僕は霊夢と一緒になる。霊夢はこういう時いつも一人だ。
それでいて誰からも見える位置にいるし、また全体の中心はいつも霊夢だ。
僕の立ち位置も大体そんなものだから、結果一緒になりやすい。
「魔理沙は?」
霊夢は黙って指差した。
「いいか、フラン。弾幕はパワーだ。取り敢えず画面いっぱいの太さを持つレーザー撃っときゃ勝てる」
「うん!わかった魔理沙!
…でもどうやってそんな太くするの?」
「太さが足りなければ振り回せばいい。こんな具合になっ!
薙ぎ払え!マスタースパーク!」
魔理沙が魔砲をぶっ放し、更にそれを振り回している。危険極まりないどころか神社の周りは既に焦土と化している。
「魔理沙すっごーい!じゃあ私も、レーヴァテイン!」
焦土と化した大地が紅く染まる。そのあまりの熱量に大地は溶け出しているようだ。
神社の周りはこの世の地獄である。生き物の気配がまるでしない。
そう思っていると、「妹紅が蒸発した~、無かったことに~」
と聞こえてくる。どうやら幻想郷の平和はこうして守られているらしい。
「…はむ、あむ、んぐっ。ああっ、こぼれちゃう」
香織が何か食べている。
見れば赤黒い肉の棒に赤と黄色のソースがかかった物だった。
確か外の世界ではフランクフルトとかいったな。
香織はソレを口いっぱいに頬張りながら、時折落ちそうになるソースをその短い舌でチロチロ舐めている。
相当やばい光景だ。良い子のお兄さんが見たら発狂してしまうだろう。
しかし僕は違う。しばらくすると、
「もう、棒が長くて食べられないわ」
と言って香織は、刺さっていた棒を抜いて、肉棒を手に取り頬張り始めたではないか!
ドクン、ドクン、ドクン。
これはまずい!かなりの破壊力だ!
ぼ、僕が消えてしまう…。助けてくれ。
「あ~はっはっはっは!僕が食べちゃうぞ、子猫ちゃん!」
その時、幻想郷に乙女の天敵、『漢』が降臨した。
「据え膳食わぬは漢の恥!」
漢が香織に襲いかかった時、素早く反応した者が一人。
「血迷ったの!?霖之助さん!」
見事カウンター夢想封印。おでこに札を貼り付けたまま漢は華麗に吹っ飛んでいく。
「まずいぜ、香霖の中の『漢』が目覚めちまったか。父様の封印が解けたようだな」
「『漢』?封印?ちょっと魔理沙、何よそれ」
「おお、霊夢。あいつは以前私の実家で修行していたんだが、
その時あいつの中にあるものに気付いた父様がそれを封印したらしいんだ」
「へぇ、元に戻す方法は?」
「ある、香霖を気絶させるんだ。だが、ああなった奴は強いぞ。
霊夢、お前は咲夜とパチェと一緒に結界を張ってくれ。奴をここに閉じ込めるんだ」
「解ったわ」
「かなり暴れることになるからな、よろしく頼むぜ。
…じゃあ、行こうか、フラン」
「うんっ!」
「ふっふっふ、この僕を倒したいのならロリキャラを脱却してからくるんだね」
倒れているレミリアの髪を梳きながら、漢が言った。
「あ、お姉さまになんてことするの!このっ、レーヴァテイン!」
漢の毒牙がレミリアに襲いかかる、その瞬間、紅い光が漢を薙ぎ払う。
「おっと、女の子がそんな物振り回すんじゃないよ」
漢は手にした剣でいとも容易く光を切り裂いてしまった。
「私のレーヴァテインが!?」
「安心しろ、フラン。レミリアは無事だぞ」
しかしあのレミリアがいとも容易く負けるとは、想像以上の強さだな。
私とフランのコンビでも勝てるかどうか…。
いや、勝てるかどうかではない、勝つんだ!
その辺の雑魚妖怪はあてにならんし、永遠亭の者達は姫の「ネトゲーやりたい」の一言で帰ってしまった。
白玉楼の二人は酒をしこたま飲んで寝ている。
…私達二人でやるしかない。
「落ち着け、フラン。奴は強敵だ二人で戦うぞ。
私に考えがあるんだ、時間を稼いでくれ」
「わかったよ、魔理沙」
「よーし、良い子だ。いくぜ、ミルキーウェイ!」
魔理沙の周りから色とりどりの星型弾が発生、漢を取り囲むように展開する。
「はーはっはっは、こんなそよ風で僕をどうしようってんだい?魔理沙ぁ」
漢は迫りくる星の海を優雅に妖しく泳ぎきる。
「次はどうする、…ん?」
魔理沙の姿が何処にも見当たらない。いるのはフランドールだけである。
「おやおや、逃げたのかい、失望したよ魔理沙。さて、そこのお嬢さん、魔理沙は逃げたけど君はどうするんだい?」
フランドールは始めて恐怖という感情に襲われてた。しかし健気にも気丈に振舞う。
「魔理沙は逃げてなんか無いよ!絶ーっ対お前なんかやっつけに来てくれるんだから!」
「ふん、じゃあそれまでお兄さんと遊ぼうか。
何して遊ぶ?」
「弾幕ごっこ!」
そして、最強の妹と、最恐の漢の戦いが始まった
戦いは一方的であった。
『漢』として覚醒した霖之助は吸血鬼を凌ぐほどの身体能力を有しているらしい。
レミリアを一瞬で倒し、フランドールを子ども扱いしている。この漢の身体能力は一体どれほどなのか?
「こ、このっ!ちょこまかと!」
フランドールがいくら弾を張っても、漢は優雅に避けていく。
「はっはっは、ぬるいなぁ」
「ええい、フォーオブアカインド&スターボウブレイク!!」
四人に分身したフランドールが、それぞれスペルを唱える。
しかし漢は不敵な笑みを止めない。
「おーっと、これはなかなか。僕もこの草薙を使う必要がありそうだ。
ゆけ、怪符『森羅万象』」
漢の持つ剣から紫炎が発生し、七色の弾幕を飲み込んでいく。
そのため、常に動き回っていた漢の足が止まる。
「今よ!魔理沙!」
「なにぃ?!しまっ、ぐはぁ!」
フランドールが合図を送ると、超高空からマスタースパークが降ってきて、漢を直撃する。
そう、魔理沙は逃げていたわけではなく、上空で一発を狙っていたのだ。
「こ、この程度で僕を倒せると思ったら大間違いだよ、魔理沙ぁ」
信じられないことに、漢はマスタースパークの直撃を受けてもまだ立っていた。
「香霖!決着をつけるぞぉ!」
大気圏から魔理沙が物凄いスピードで落下してくる。
「魔ぁ理ぃ沙ぁぁ!」
マスタースパークを凌いだ漢が立ち向かう。
「くらえ!魔砲『ファイナルスパーク』!!」
「終わりだ!始符『天地開闢』!!」
両者のぶつかり合いはまるで核爆発のよう。あまりのエネルギーに離れた大地にまでクレーターができる。
「まだまだだね、魔理沙!その魔砲は僕の作ったミニ八卦炉を使っている!
この森近霖之助、己が作った道具にやられる阿呆ではない!!」
漢が押し始める。
「く、フラーン!今だぁ!」
フランドールはこのときのために温存していた全魔力を注ぎ込む。
「はあぁぁぁ!星砕『スーパーノヴァ』!!」
「な、なんだとぉ?!ぐわぁぁ!!」
超巨大な紅球を練り上げ、下からそれをぶつける。
「やったか!」
誰もが終わったと確信した、しかし!
「ふ、ふふ、ふふふふふふふふ。まぁだまだぁ!この剣は、世界を変えるほどの力を持つ!まだこんなものではなぁい!
僕の全力を、込めてぇ!」
漢の持っている剣から禍々しいほどに神々しい魔力が溢れてくる。
「なんて魔力だ。この力、本当に世界をどうにかできちまうぞ!」
「いくぞ!!無極『空を舞う不思議な漢』!!!」
漢の体と剣から三柱の産霊に匹敵するほどの膨大な魔力が放出される。
「ち、フラン!もうちょっと踏ん張れ!私が何とかする!」
「うん!信じてるよ、魔理沙!」
もう魔力は空っぽに近い、さらに夜明けも近い。そんな状態で更に限界を超えて魔力を搾り出す。
そんなフランドールに呼応するがごとく魔理沙も魔力を練っていく。
「両手で行くぜ、ダブルファイナルマスタースパーク!!」
前代未聞の魔砲が放たれる。
しかしそれでやっと拮抗するだけ。いずれは体力差から敗北する。
そこで魔理沙はいちかばちかの賭けに出た。
「(失敗したら、世界は終わる。しかしやらければ確実に世界が終わる)…やるしかない!!
これが最後だ!もってくれよ、私の体、私の魂!!」
限界を超えて魔力を練る。既に酷使しすぎた体が蓄えられる魔力に悲鳴をあげる。
「うおぉぉおおぉお!!ブレイジング・ドラゴン・メテオ!!!」
魔力を纏った超高度からの高速体当たり。魔理沙らしい、純粋な真っ直ぐ。
「そんな馬鹿な!魔砲の中を通って来ただと?!」
「香霖!これが私、霧雨魔理沙の生き方だ!!」
「うをぉぉぉ!まさか、この霖之助が、この霖之助がぁぁぁぁ!!」
白く輝く光が、世界を染めた。
「…終わった、の?」
廃墟と化した神社に霊夢がぽつんと立っていた。
「お兄ちゃん!もうやめて!立たないで!」
驚くべき事に霖之助はまだ立とうとしている。近くに倒れている魔理沙とフランは完全に気絶しているようだ。
「お兄ちゃん?…そんな」
もう霖之助に意識は無い。けれどもその剣とオーラが霖之助を無理矢理立たせようとしていた。
「…どうするの?あなた」
霊夢が尋ねる。
「…私の力を使うわ。それしか方法は無い」
「やっぱり。あなた、妖怪ね」
香織は否定も肯定もしない。
「私のこの『誰かを幸せにする程度の能力』で、お兄ちゃんは幸せに暮らしていける」
「でもあなたは実態を保てなくなるのね」
「それでいいの、お兄ちゃんが狂ってしまうのなんて、私見たくない」
「そう。良い妹ね」
「お兄ちゃんには、家に帰ったと伝えて」
「わかったわ」
「まあ、どうせ私は家に憑くものだから、どうせ香霖堂にいるのだけどね」
「そう、じゃあさよなら。また香霖堂で」
「ええ、さようなら。また何時か会いましょう」
香織の輪郭がぼやけ、やがて完全に消えた。
辺りの損壊はすっかり元に戻り、気絶していた者も気がついた。怪我も治っている。
幸せのお裾分けだろう。
「まったく。ナガテなんて、外にもこの幻想郷にも、もう居ないと思ったのに。
人間もまだまだ捨てたもんじゃないわね」
幻想郷で、周りに迷惑を掛けまくった、小さな恋が静かに終わりを告げた。
幻想郷の人里から離れた魔法の森、その森のすぐ近くに僕の店「香霖堂」はある。
僕の名は森近霖之助。古道具屋「香霖堂」の店主をしている。
店主と言っても店員は僕だけ…だったのだがひょんなことから香織という店員が加わった。
彼女は俗に言う幼女だ。
ぐへへ。
毎晩毎晩ひぃひぃ言わせて楽しんでるぜぇ!
さーて、今夜はどんなアレを試そうかなぁ。48手のうち38までは習得済みだからな。
イロイロと試さねば。
「で、今晩は香霖堂にあるアレなオモチャで…と」
「ん?何を書いているんだい。…ってそれは僕の日記じゃないか!」
何ってナニー。とか言っている、脳みそピンク幼女を無視して僕は日記帳を奪還した。
「こ、これは!!」
そこには、幼女の不思議ワールドが展開されている。
思わず『体は幼女、頭脳は大人。ただしエチィ方面専門、みたいな!』と叫びたくなる衝動を押さえ込む。
「いいかい香織、他人の物を勝手に使うのはいけないよ」
僕は諭す。今日一日で父親になった気分だ。しかし最近の子供は皆こうなのだろうか?少なくとも魔理沙は違ったが…。
「むぅ~、店長のいけず~」
「その言葉の使用方法も間違ってるよ」
「店長のバカ!もう知らない!」
香織が怒ってしまった。ぷりぷりしている。やばい、かわいい。
「香織お風呂入る!」
香織が風呂に入ってしまったので僕は店を閉めることにした。
入り口の掃除を終え、店に入る。
「あ、お兄ちゃんお先」
…幻覚だろうか、半裸の幼女が見える。
「疲れてるのかな、今日はイロイロあったし」
しかしいくら目を擦っても幻覚が見える。
その、あの、極端に起伏に乏しいというか、凹凸が無いというか、あぁもう素晴らしいなぁ、はっはっはー。
!!。まて、それ以上認識するな!僕が僕で無くなる!あの恐ろしい幻葬がやって来てしまう!
思考をするな!思考を止めろ!思考をカットしろ!カットカットカットカットカットカットカットォ!
僕は考えることをやめた。見ても何も思わなくなった。
あぶない、セーフだったな。
「ああ、じゃあ僕が残り湯を頂こう」
僕は風呂に入る。…水風呂に、『漢』を静めるために。
日が暮れる。幻想郷の夕日はとても朱い。
赤フ…、唐突にそんな言葉が浮かんだが、記憶の海から追放する。
アブナイアブナイ。
そういえば、魔理沙が今日の日暮れに迎えを寄越すといっていたな…。誰だろう。
「てーんちょう。これでいいんですかー?」
香織が出てくる。香織には浴衣という外の服を着させてみた。
地の白に金魚と朝顔が良く合っている。サイズも完璧だ。少し大きめ、それがジャスティス。
僕の能力によると、『夏のふだん着』だそうだ。
もちろん僕も浴衣を着ている。履物は不便だが駒下駄という物でないといけないらしい。
知りたくないだろうが僕の浴衣は藍染めに笹の葉である。僕はこういう地味な色が好きなのだ。
僕に派手な色は似合わない。しかし香織には明るい色が良く似合う。きっと魂がそういう色をしてるんだろう。
霊夢の魂は紅白だろうな。ひょっとして太極図かもしれない。
魔理沙は黒白…かな?清濁共に併せ持ち、それなのに何処までも澄み渡る。それが魔理沙の強さだろう。
咲夜は銀だな。紅に多少染まっているけど。
紫は濁った紫だ(キッパリ)。
「店長?どうしました?」
ふと、香織が僕の顔をのぞく。
「ああ、いけない、ちょっと考え事をしていたんだ。うん、よく似合うね。
それともう店は閉めたから普段の言葉使いでいいよ」
「うん!丁寧にしゃべるって少し疲れるね」
小さい子にとっては世界の全てが気さくな友なんだろう。だから無邪気に話し掛けているのだと思う。
子どもは凄いな、大人にはできない事が、当たり前にできる。
大人には見えないものが、当たり前に見える。
「ところでお兄ちゃん。さっき何を考えてたの?」
「ん?魂の色についてだよ。みんなの魂の色はなにかなぁって。
そうだ、香織。僕の魂はどんな色をしてると思う?」
「なぁーんだ。そんな事か。決まってるよ、店長の魂の色は」
「色は?」
まさか、ピンクというんじゃないだろうな。
「くすんだ灰色だよ。少しかび臭い、ね」
僕の魂はかび臭いらしい。
悲しくてちょっと涙が出てきた。
魔理沙が寄越した迎えとは魂魄妖夢だった。
何故か妖夢は僕の直径3メートル以内に入ってこなかった。しかも僕の顔を直視しない。
異様に視線を感じるので妖夢に顔を向けるのだが、その時に妖夢は既にあさっての方を向いている。
…恥ずかしがっているのかな。ふっふっふ、怖がることは無いよ子猫ちゃん。
そう思うと彼女の半霊がビクッと振るえ、辺りをきょろきょろ見回している。
…異様に怖がっている。
ハッ!そうか!おのれ魔理沙めぇ!言い触らしおったな!後でたっぷりとお仕置きをしてやるぅ!
半霊は相変わらずびくびく震えている。妖夢はやたらと緊張。香織は無邪気。
そして僕は妖しい笑みを浮かべながら低く笑っている。変な空気が形成されてしまった。
はたから見ればかなり妖しい光景だ。僕も普段どうりに、と思うのだがどうも気分が昂ぶってしょうがない。
宴会なんて久しぶりだからかな。この浴衣の効果もあるかもしれない。
この浴衣という物を着ると『たまやー』と言いたくなるらしい。
何のことだかさっぱりだが。
そんなこんなで博麗神社に着いた。既に宴会は始まっているらしい。
知らない子もちらほらといるが、まあ全員魔理沙と霊夢の友達だろう。
…食物を見るような視線を感じるのはきっと気のせいだろう。
ちなみに僕を食べても美味しくない。それだけは保証できる。
「霖之助さん、こっちこっち」
幻想郷で2番目にトラブル好きな人間、博麗霊夢が僕を呼ぶ。ちなみに一番目はやっぱり魔理沙だ。
「ああ、霊夢か。助かった、何処へ行けば良いのか解らなくてね」
「霖之助さん?なれなれしい、お兄ちゃんは私の物よ」
どうやら僕は物扱いされているらしい。泣きそうだ。
僕は香織を皆に紹介した。
「ふーん、その子が…。まあ、害は無さそうね」
と言う巫女がいれば、
「これからはペド之助と呼ぼうか」
と言う失礼千万な魔法使いもいるし、
「ねぇねぇ、あれ何?おもちゃ?」
と言う危ない妹もいる。
さらに「そーなのかー」「冷凍して遊ぼう」「新薬の実験体に」「メイド」「ねこみみ」などと不穏な言葉が聞こえてくる。
極めつけは、
「ねぇねぇよーむぅ。子どもってアミノ酸が豊富で鶏肉みたいな味がするらしいわよ」
という御言葉だった。
世界が凍りつく。
誰もが言葉を失い、夜雀が恐怖のあまり失神しても、西行寺幽々子はのほほんとしていた。
…さすが確信系天然少女、恐ろしい。
「ま、まあ、その、あれだ。みんないつもどうり勝手に楽しもうぜ」
魔理沙が無理矢理取り繕う。さすが僕の最大最強のライヴァル。この短時間で立ち直ったか。
魔理沙の言葉を転機に各々好き勝手に集まりだした。
自然と僕は霊夢と一緒になる。霊夢はこういう時いつも一人だ。
それでいて誰からも見える位置にいるし、また全体の中心はいつも霊夢だ。
僕の立ち位置も大体そんなものだから、結果一緒になりやすい。
「魔理沙は?」
霊夢は黙って指差した。
「いいか、フラン。弾幕はパワーだ。取り敢えず画面いっぱいの太さを持つレーザー撃っときゃ勝てる」
「うん!わかった魔理沙!
…でもどうやってそんな太くするの?」
「太さが足りなければ振り回せばいい。こんな具合になっ!
薙ぎ払え!マスタースパーク!」
魔理沙が魔砲をぶっ放し、更にそれを振り回している。危険極まりないどころか神社の周りは既に焦土と化している。
「魔理沙すっごーい!じゃあ私も、レーヴァテイン!」
焦土と化した大地が紅く染まる。そのあまりの熱量に大地は溶け出しているようだ。
神社の周りはこの世の地獄である。生き物の気配がまるでしない。
そう思っていると、「妹紅が蒸発した~、無かったことに~」
と聞こえてくる。どうやら幻想郷の平和はこうして守られているらしい。
「…はむ、あむ、んぐっ。ああっ、こぼれちゃう」
香織が何か食べている。
見れば赤黒い肉の棒に赤と黄色のソースがかかった物だった。
確か外の世界ではフランクフルトとかいったな。
香織はソレを口いっぱいに頬張りながら、時折落ちそうになるソースをその短い舌でチロチロ舐めている。
相当やばい光景だ。良い子のお兄さんが見たら発狂してしまうだろう。
しかし僕は違う。しばらくすると、
「もう、棒が長くて食べられないわ」
と言って香織は、刺さっていた棒を抜いて、肉棒を手に取り頬張り始めたではないか!
ドクン、ドクン、ドクン。
これはまずい!かなりの破壊力だ!
ぼ、僕が消えてしまう…。助けてくれ。
「あ~はっはっはっは!僕が食べちゃうぞ、子猫ちゃん!」
その時、幻想郷に乙女の天敵、『漢』が降臨した。
「据え膳食わぬは漢の恥!」
漢が香織に襲いかかった時、素早く反応した者が一人。
「血迷ったの!?霖之助さん!」
見事カウンター夢想封印。おでこに札を貼り付けたまま漢は華麗に吹っ飛んでいく。
「まずいぜ、香霖の中の『漢』が目覚めちまったか。父様の封印が解けたようだな」
「『漢』?封印?ちょっと魔理沙、何よそれ」
「おお、霊夢。あいつは以前私の実家で修行していたんだが、
その時あいつの中にあるものに気付いた父様がそれを封印したらしいんだ」
「へぇ、元に戻す方法は?」
「ある、香霖を気絶させるんだ。だが、ああなった奴は強いぞ。
霊夢、お前は咲夜とパチェと一緒に結界を張ってくれ。奴をここに閉じ込めるんだ」
「解ったわ」
「かなり暴れることになるからな、よろしく頼むぜ。
…じゃあ、行こうか、フラン」
「うんっ!」
「ふっふっふ、この僕を倒したいのならロリキャラを脱却してからくるんだね」
倒れているレミリアの髪を梳きながら、漢が言った。
「あ、お姉さまになんてことするの!このっ、レーヴァテイン!」
漢の毒牙がレミリアに襲いかかる、その瞬間、紅い光が漢を薙ぎ払う。
「おっと、女の子がそんな物振り回すんじゃないよ」
漢は手にした剣でいとも容易く光を切り裂いてしまった。
「私のレーヴァテインが!?」
「安心しろ、フラン。レミリアは無事だぞ」
しかしあのレミリアがいとも容易く負けるとは、想像以上の強さだな。
私とフランのコンビでも勝てるかどうか…。
いや、勝てるかどうかではない、勝つんだ!
その辺の雑魚妖怪はあてにならんし、永遠亭の者達は姫の「ネトゲーやりたい」の一言で帰ってしまった。
白玉楼の二人は酒をしこたま飲んで寝ている。
…私達二人でやるしかない。
「落ち着け、フラン。奴は強敵だ二人で戦うぞ。
私に考えがあるんだ、時間を稼いでくれ」
「わかったよ、魔理沙」
「よーし、良い子だ。いくぜ、ミルキーウェイ!」
魔理沙の周りから色とりどりの星型弾が発生、漢を取り囲むように展開する。
「はーはっはっは、こんなそよ風で僕をどうしようってんだい?魔理沙ぁ」
漢は迫りくる星の海を優雅に妖しく泳ぎきる。
「次はどうする、…ん?」
魔理沙の姿が何処にも見当たらない。いるのはフランドールだけである。
「おやおや、逃げたのかい、失望したよ魔理沙。さて、そこのお嬢さん、魔理沙は逃げたけど君はどうするんだい?」
フランドールは始めて恐怖という感情に襲われてた。しかし健気にも気丈に振舞う。
「魔理沙は逃げてなんか無いよ!絶ーっ対お前なんかやっつけに来てくれるんだから!」
「ふん、じゃあそれまでお兄さんと遊ぼうか。
何して遊ぶ?」
「弾幕ごっこ!」
そして、最強の妹と、最恐の漢の戦いが始まった
戦いは一方的であった。
『漢』として覚醒した霖之助は吸血鬼を凌ぐほどの身体能力を有しているらしい。
レミリアを一瞬で倒し、フランドールを子ども扱いしている。この漢の身体能力は一体どれほどなのか?
「こ、このっ!ちょこまかと!」
フランドールがいくら弾を張っても、漢は優雅に避けていく。
「はっはっは、ぬるいなぁ」
「ええい、フォーオブアカインド&スターボウブレイク!!」
四人に分身したフランドールが、それぞれスペルを唱える。
しかし漢は不敵な笑みを止めない。
「おーっと、これはなかなか。僕もこの草薙を使う必要がありそうだ。
ゆけ、怪符『森羅万象』」
漢の持つ剣から紫炎が発生し、七色の弾幕を飲み込んでいく。
そのため、常に動き回っていた漢の足が止まる。
「今よ!魔理沙!」
「なにぃ?!しまっ、ぐはぁ!」
フランドールが合図を送ると、超高空からマスタースパークが降ってきて、漢を直撃する。
そう、魔理沙は逃げていたわけではなく、上空で一発を狙っていたのだ。
「こ、この程度で僕を倒せると思ったら大間違いだよ、魔理沙ぁ」
信じられないことに、漢はマスタースパークの直撃を受けてもまだ立っていた。
「香霖!決着をつけるぞぉ!」
大気圏から魔理沙が物凄いスピードで落下してくる。
「魔ぁ理ぃ沙ぁぁ!」
マスタースパークを凌いだ漢が立ち向かう。
「くらえ!魔砲『ファイナルスパーク』!!」
「終わりだ!始符『天地開闢』!!」
両者のぶつかり合いはまるで核爆発のよう。あまりのエネルギーに離れた大地にまでクレーターができる。
「まだまだだね、魔理沙!その魔砲は僕の作ったミニ八卦炉を使っている!
この森近霖之助、己が作った道具にやられる阿呆ではない!!」
漢が押し始める。
「く、フラーン!今だぁ!」
フランドールはこのときのために温存していた全魔力を注ぎ込む。
「はあぁぁぁ!星砕『スーパーノヴァ』!!」
「な、なんだとぉ?!ぐわぁぁ!!」
超巨大な紅球を練り上げ、下からそれをぶつける。
「やったか!」
誰もが終わったと確信した、しかし!
「ふ、ふふ、ふふふふふふふふ。まぁだまだぁ!この剣は、世界を変えるほどの力を持つ!まだこんなものではなぁい!
僕の全力を、込めてぇ!」
漢の持っている剣から禍々しいほどに神々しい魔力が溢れてくる。
「なんて魔力だ。この力、本当に世界をどうにかできちまうぞ!」
「いくぞ!!無極『空を舞う不思議な漢』!!!」
漢の体と剣から三柱の産霊に匹敵するほどの膨大な魔力が放出される。
「ち、フラン!もうちょっと踏ん張れ!私が何とかする!」
「うん!信じてるよ、魔理沙!」
もう魔力は空っぽに近い、さらに夜明けも近い。そんな状態で更に限界を超えて魔力を搾り出す。
そんなフランドールに呼応するがごとく魔理沙も魔力を練っていく。
「両手で行くぜ、ダブルファイナルマスタースパーク!!」
前代未聞の魔砲が放たれる。
しかしそれでやっと拮抗するだけ。いずれは体力差から敗北する。
そこで魔理沙はいちかばちかの賭けに出た。
「(失敗したら、世界は終わる。しかしやらければ確実に世界が終わる)…やるしかない!!
これが最後だ!もってくれよ、私の体、私の魂!!」
限界を超えて魔力を練る。既に酷使しすぎた体が蓄えられる魔力に悲鳴をあげる。
「うおぉぉおおぉお!!ブレイジング・ドラゴン・メテオ!!!」
魔力を纏った超高度からの高速体当たり。魔理沙らしい、純粋な真っ直ぐ。
「そんな馬鹿な!魔砲の中を通って来ただと?!」
「香霖!これが私、霧雨魔理沙の生き方だ!!」
「うをぉぉぉ!まさか、この霖之助が、この霖之助がぁぁぁぁ!!」
白く輝く光が、世界を染めた。
「…終わった、の?」
廃墟と化した神社に霊夢がぽつんと立っていた。
「お兄ちゃん!もうやめて!立たないで!」
驚くべき事に霖之助はまだ立とうとしている。近くに倒れている魔理沙とフランは完全に気絶しているようだ。
「お兄ちゃん?…そんな」
もう霖之助に意識は無い。けれどもその剣とオーラが霖之助を無理矢理立たせようとしていた。
「…どうするの?あなた」
霊夢が尋ねる。
「…私の力を使うわ。それしか方法は無い」
「やっぱり。あなた、妖怪ね」
香織は否定も肯定もしない。
「私のこの『誰かを幸せにする程度の能力』で、お兄ちゃんは幸せに暮らしていける」
「でもあなたは実態を保てなくなるのね」
「それでいいの、お兄ちゃんが狂ってしまうのなんて、私見たくない」
「そう。良い妹ね」
「お兄ちゃんには、家に帰ったと伝えて」
「わかったわ」
「まあ、どうせ私は家に憑くものだから、どうせ香霖堂にいるのだけどね」
「そう、じゃあさよなら。また香霖堂で」
「ええ、さようなら。また何時か会いましょう」
香織の輪郭がぼやけ、やがて完全に消えた。
辺りの損壊はすっかり元に戻り、気絶していた者も気がついた。怪我も治っている。
幸せのお裾分けだろう。
「まったく。ナガテなんて、外にもこの幻想郷にも、もう居ないと思ったのに。
人間もまだまだ捨てたもんじゃないわね」
幻想郷で、周りに迷惑を掛けまくった、小さな恋が静かに終わりを告げた。
・・・私の勘違いかもしれませんが、反撃不能な上空から真下に撃つマスタースパークを、星符「ドラゴンメテオ」・・・と言うのではなかろうか。
いや、公式設定がないからなんとも言えんのですがね。
解説できたらお願いします