Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙のお泊り Ver 博麗神社 第一話

2005/08/05 12:10:30
最終更新
サイズ
12.94KB
ページ数
1
閲覧数
1161
評価数
0/19
POINT
920
Rate
9.45
 その日、霧雨魔理沙は朝から上機嫌だった。
 空は雲ひとつない快晴。これから決行に移そうとしている作戦の成功を暗示しているかのようだった。
 (待ってろ霊夢……)

 

   【魔理沙のお泊り Ver 博麗神社 第一話】



「どうにか霊夢をギャフンと言わせてみたいもんだぜ」
 日頃から霊夢に手玉に取られている魔理沙は、どうにか霊夢に一泡吹かせたいと考えていた。しかし、そうそう簡単にいい案が浮かぶはずもない。
 別段何を考えるわけでもなく、積み重なった本の山に目をやる。と、一冊、目を惹かれてヴワル魔法図書館から持ち出してきた本があったことを思い出す。
「あぁ、そういや昨日パチェから盗って来た本の中に、『正しい従者の躾け方』ってのがあったな」
 従者……執事……メイド?メイド霊夢……
 
  ~~~~~~~~~~~~
「魔理沙様、お食事のご用意が整いました」
 食卓の上に並ぶ豪勢な料理の山。
「魔理沙様、お部屋のお掃除が終わりました」
 完璧に整理された魔理沙の部屋。……想像に難しかったが。
「魔理沙様、お背中を御流ししましょう」
 魔理沙の裸体に目を背けながらも背中を洗う霊夢。
  ~~~~~~~~~~~~

 (ちょっと……いいかも)
 妄想の中の霊夢は丸で天使のようだった。
「え~……何々?」

 『正しい従者の躾け方』
 1、まず従者にしたい人間を捕えます。
「……」
 2、嫌がるあの子に首輪をつけます。
「……」
 3、完全で瀟洒な従者になるまで調教を続けます。
「……」
 4、従者にれみりゃさま症候群が出るようになったらもうこちらのものです、思う存分に従者との素敵な時間を愉しんでください。

 ペシ

 床に叩き付けた。

「誰だこんなもの書いたやつ……は……」
 ……見なかったことにした。

「でもまぁ一応検討してみるか」
 『正しい従者の躾け方』を拾い上げる。
 脳内のメイド霊夢はやはり簡単に消え去る代物ではなかったようだ。
 1、(捕える……無理だろ、無理無理)
 2、(そんなものもっていったら自ら被爆しに行くようなもんだぜ)
 3、(そうだな……更正させてやりたいと思うが……無理なものは無理だ)
 4、(……まずれみりゃさま症候群ってなんだよ)

「……意味のない時間を過ごしちまったぜ……ん?」
 『正しい従者の躾け方』には、その後延々と従者との有意義ライフの過ごし方が書いてあったが、魔理沙は最後のページだけ妙に使い込まれた跡があることに気付いた。 
 誰が何の目的のためにこのページを使い込んでいたのかは不明だ……誰かといっても本の持ち主以外にはありえないが。つまり……。
 魔理沙はそこで考えるのをやめた。
 
 どうしても無理な貴方に朗報。
 5、クスリを使う。効果は一日だが、その間のことは深層心理に刻まれるので、効果が切れたときにはすでに瀟洒な従者は貴方のもの。記憶も残らないので失敗しても安心!
 材料:レミリア・スカーレットの血液。十六夜咲夜の血液。西行寺幽々子の食べかけの煎餅。魂魄妖夢の半身の一部。

 (……結局これか)
 ……やるけど。
 (そういえば前にパチェんとこ言ってから一日ほど記憶がなくなったことが……いや、考えるのはよそう)
 


「……できたぜ」
 三日三晩寝ずの調合の末、ついに魔理沙はクスリを完成させた。中々材料を集めるのに苦労したが。
 レミリアの血液などよく気付かれずに採取できたものだ、推測だが、恐らく夜までは起きないように何かクスリでも使われているのではないだろうか。身近に変態がいる辛さをよく知っていた魔理沙は、人知れず涙した。
 咲夜の血液に関しては、レミリアの寝室に血液を採取しに行った際、偶然布団の中に潜りこんでいた従者の鼻から簡単に採取出来た。そこで何が行われていたのかは見なかったことにした。そうでもしないと不憫でならなかった。
 幽々子に至っては一度は死を覚悟した。あの大食らい、そもそも煎餅など一口でぺロリなのだ。やっと食べかけの煎餅というものが出来るまでに、いったい何枚の煎餅が胃袋に消えたのだろうか、本当に口と胃袋がつながっているのかも怪しいところだ。魔理沙はきっとそこは小宇宙なのだろう、と推測した。しかしそれからが問題だった。この機を逃したら次はないかもしれないと、魔理沙は煎餅目指して駆けた。そして見事煎餅をゲットした……のだが、何故か体が前に進まない。それもそのはず。幽々子が服の襟を掴んでいたのだ。グイと引き寄せられる。襟を掴まれていたので、必然的に首が絞まる。そのときの幽々子の目を魔理沙は忘れない。忘れることが出来ない。饅頭百個でどうにか一命を取り留めた。自分の命の安さを知った瞬間だった。
 妖夢の半身の一部……一番の難題かと思ったが、素直に頼み込んでみたら、髪の毛を一本くれた。あぁ、そっちも半身なんだと、魔理沙は無理やり霊部分をちぎらなくてよかったなぁと思った。その時半霊が身震いした気がした。

 何はともあれ、後はこれを霊夢に飲ませるだけ……ではない。

 このクスリ、強力な催眠効果があるのだが、効果の発動にはキーワードが必要なのだ。

『○○(対象者の名前)愛してる』

 ……
「い・え・る・かーーー!!」
 魔理沙の絶叫が響いた。



「どうしたの魔理沙!!」
 魔理沙の絶叫を聞きつけて、アリスが扉をぶち破って侵入してきた。
「うわ!お前何処から!?(そしてなんて格好してんだよ!)」
「細かいことは気にしない」

 アリス邸と魔理沙邸を繋ぐ直線の地下には、アリスが秘密裏に開発を進めてきたアリマリストリートが建設されていた。出口は温泉の真下。特殊な魔法をはって、こちらからのみ温泉を下から直視出来るようになっている。堂々としたベストなプレイスからの目の保養。別名覗きともいう。
 出入りする時も、マジックゲートを使い、アリスだけが通過できるようになっていた。温泉なので服を脱がなければならないのが難点だ。というか、これはつまり今現在アリスは素っ裸だということなのだが。
 内部には所々に魔理沙グッズを販売している人形達もいる。魔理沙が風呂に入っている間に、同じ模様のパンツとすり替えたりして手に入れた、『使用済み商品』には国家予算単位の金が動くと、人形達の間ではもっぱらの評判だ。……結局はアリスの金なので一切意味はないが、変態には変態の美学というものがあるのだろう。ちなみにアリマリストリートが建設されて以来、アリスはほぼ毎日と言っていいほど魔理沙邸の下で生活していた。そんなわけで、魔理沙が先程風呂からあがった直後、アリスも入浴していたのだ。魔理沙の残り香が消えないうちに。

「それで一体何があったの?い。言っとくけど心配してるわけじゃないわよ、変な声だしてる魔理沙を笑いに来てやったんだからね」
 素直になれない乙女心……。本来ならいじらしいとでも表現するところなのだろうが、如何せん素っ裸だ。
「服を着ろーーーー!!」
「え……?」
 沈黙するアリス。今まで気付いていなかったようだ。愛する人のためになりふり構わず駆けつける。愛の力って偉大……。その愛が一方通行で間違った方向に進んでいるのは置いておくとして。

「きゃーーーー!!」
 再び絶叫が響いた。

 バチーン

 何かをはたきつけたような音も聞こえた。そう、ちょうど掌でほっぺたをはたきつけたような音が……。



「……ごめんなさい」
 赤く腫れた頬を擦りながら睨みつける魔理沙に、アリスは謝罪の言葉をかけていた。
 服は魔理沙から借りていた。ちょっと興奮した。
「ったく、本気でやりやがって……ん?」
「?」
 (待てよ、これは使えるかもしれない)
「もういいぜアリス、許してやる」
「本当!?」
「あぁ、ただし条件がある」
 (あのクスリの効果を試すチャンスだぜ)
 先程のクスリを少しだけコップに注ぐ。
「ちょっとこれを飲んでみてくれないか?」
 だがしかし、それはあの材料から造られたものである。見かけからしてとても口に入れたくなるようなものではない。
「……」
 (やっぱ無理か?)
 魔理沙は本当に飲むと期待はしていなかったが、愛の力はやはり偉大だった。
「それを飲めばいいのね?」
 魔理沙に嫌われたくない一心で、アリスはコップを手に取る。
 漢だぜアリス。女だけど、あんた心は漢だよ。
 魔理沙が固唾をのんで見守る中、アリスはコップを斜めに傾け、一気に口内に流し込む!
 ……
「○×△□!?!?」 
 よほど酷い味だったのだろう、声にならない悲鳴をあげて某エクソシスト映画に出てきそうな動きでそこら中を駆け巡る。
「シャギャーーーーーーー!!!!!」
 最後に一声鳴いて、バタっと倒れた。
 おとなしくなったことを確認して、物陰に隠れていた魔理沙が駆け寄る。
「おい、大丈夫か?」
 その声に反応してうっすらと目をあけるアリス。
 (さて、効果はあるのか?)
「ぁ……あり……ア、アリス、あ、あい……あい……愛して……る」
 顔から火が出るほど恥ずかしかったが、魔理沙は言った。
 一瞬アリスの目がカっと見開いたように見えたが、すぐに閉じた。
 愛の力はクスリの力の前に屈服してしまったのだ。
 ここで愛の力が勝ったらそりゃもうどえらい状態になっていただろう……魔理沙が。ある意味アリスも。
 しかし咲夜の色欲やら幽々子の食欲やらが相手ではいくらアリスでも勝つことは出来なかった。一瞬だけでも反応したのが信じられないくらいだ。

 ビクン!

 体が大きく痙攣する。

 ビクビクビク

 その様子があまりに不気味だったため、魔理沙はまた物陰に隠れる。……可愛そうなアリス。

 やがて、痙攣がおさまる。
「アリス?」
 駆け寄る魔理沙。
 アリスは先程と同じようにうっすらと目を開けて
「魔理沙……様……」
 と答えた。
 (いよっしゃーーー!成功!!)
 心の中でガッツポーズをとる。しかし、ここで問題。
 (……で、こいつをどうしたらいいんだ?)
「魔理沙様、何なりとお申し付けください」
「あ、あぁ……」
 いつもは顔を付き合わせる度に喧嘩ばかりしていたアリスが、今はこんなにしおらしくなって、自分のために尽くしてくれるという。
 なんだか新鮮だった。
 (せっかくだからこき使ってやるか)
「アリス、肩揉んでくれ」
「はい……」
 わきわき
 怪しい手つきながらも肩を揉むアリス。何かと闘っているようにも思える。
「あぁ、そこそこ」
 わきわき
 (こいつもこう素直なら可愛いもんなんだがな)
 自然に頬が緩む。
「もっと下のほうも頼むぜ」
 わきわき……わき?
「もっと……下?」
 突然アリスの手が止まる。
「どうした?」
「いえ……下ですね」
 そのときアリスは闘っていたものに押し倒されていた。愛の力がちょっと表にでてきていた。

 ツル……ぺた

「今なんか失礼な音しなかったか?……で?」
「……(悦)」
「…………で?」
「……(悦)」
「なんでお前は私の胸を幸せそうに……んっ」
 もみ
 アリスの手が魔理沙の胸を揉む。本気で掴まないと揉めなかったが。それが逆にアリスを刺激した。
「こら、やめ……」
 もみもみ
「いい加減……にっ……」
 もみもみもみ
「しないと……やっ……あ……」
 もみもみもみもみ……つるん
「あ」
「う……しめた!」
 アリスの手が胸から離れた(滑った)瞬間、アリスと距離をあける。
「何故逃げるのですか?」
「はぁ……はぁ……何故はこっちのセリフだぜ、私は肩を揉めと言ったんだ」
「下と仰ったので……あ、もっと下の方でしたか、それならそうと仰ってくだされば……」
「肩だっつってんだろ!!」
 近くにあった本を投げる。
 パシ
 いとも簡単にそれをはじき落とすアリス。
「なっ!?」
 手当たり次第投げる魔理沙。
 片っ端からはじき落とすアリス。

「……ゼェ……ゼェ」
「……」
 (何でこいつ平然としてるんだよ)
 魔理沙が物を持ち上げ、投げるのに対し、アリスは勢いを殺す為に必要最小限の力を投げてきた物に加えてやればいい。疲労度に差が出るのは当たり前だった。
「もういい……帰れ」
「しかし」
「いいから!」
「はい……」
 基本的には主人の命令に絶対忠実な瀟洒な従者である。
 しぶしぶといった表情ではあったが、帰り支度を始めた。

 するする

 アリスはまたも素っ裸になってとことこ歩き出した。
「うぉい!!」
「何か?あ、やはり一緒に寝てほしいのですね?それならそうと……」
「ちがう!!そうじゃなくて、なんで服脱いでんだよ!」
「?帰れと仰ったのは魔理沙様です、それともやはり添い寝……」
「それはもういいから!!なんで帰るのに服脱いでるんだって聞いてるんだよ!」
 アリスは首をかしげた。頭の上に?が浮かんでいる。
 (え……何?マジなのか?……変態?露出狂?)
「だって帰る為には温泉を通らなければなりませんし……」
「……は?」
 とことこと歩き出すアリス。
「待っ……」
 慌てて魔理沙も後を追う。



「何を始めようってんだ?」
「……」
 無言で温泉に入っていくアリス。夜の闇と月の光に照らされて、アリスの白い肌が映える。
 ゴクッ
 思わず息を呑む魔理沙。
 (本当……おとなしくしてりゃ可愛いんだけどな)

 ――フッ――

 温泉の真ん中で、唐突にアリスの姿が消えた。いや、沈んだのだ。
「アリス!?」
 温泉の底に吸い込まれるように、アリスは消えていく。
 そこで魔理沙は初めて気付いた。
「これは……」
 次元の歪みを人為的に創りだす、超高等空間干渉魔法。アリスの創りだしたマジックゲートは温泉の真下にある地下空間を結んでいる。温泉とアリマリストリートの間にあるはずの空間を省略し、且つ、そこに空間があるという概念を失わせることなく、温泉の底を透過することが出来る。つまりはベストプレイス覗きの為。
 直接魔力を使うわけではなく、アリスの魔力に反応して空間転移するので、生じる魔力の波紋も小さい。それ故、こうしてアリスがそれを使うのをその目で見るまで、魔理沙はゲートに気付くことが出来なかった。
 これほどの術式が形を成すまでには、綿密な分析を繰り返し、完全な魔法式を組み立てなければならない。能力が存在と定義である紫のような妖怪ならともかく。普通の魔法使いが一人で構築するにはいささか高度すぎる。だが、アリスはやってのけた。愛の力はやはり偉大だ。
 しかし魔理沙は悲しかった。
 自分も魔法使いのはしくれだ。アリスがどれほど苦労してこの術式を完成させたかは想像に難くない。
 しかし……だ。
 それが自分の家……しかも風呂の底と繋がっていることがわかってしまった今、いかに偉大な魔法だろうと、そのままにしておくわけにはいかない。プライバシーなどあってないようなものだ。
「さよなら、アリス」
 その言葉はアリスの常軌をいっした努力によって創られた術式に対するものではない。
 何故なら、アリスが転移したのはあくまでも今魔理沙が立っている浴場の地下なのだ。
「……マスタースパーク」
 


 その後、アリスの姿を見た者は誰もいなかったとか、数日後地面から頭だけ生えて魔理沙、魔理沙言っている所を発見されたとかなんとか。

「アリス……いいやつ……とはいえないが、いろんな意味で私は決してお前を忘れはしないぜ」
 夜に一つ星が流れる。亡き友の別れを象徴するかのように、流れ落ちて消えていく。
「……また温泉脈召喚しなきゃだぜ」
 魔理沙は見るも無残な姿になってしまった浴場をみてため息をついた。

「とは言え、そう簡単に出来るもんじゃないしなあ、しばらく霊夢んとこに泊めてもらうか」
 (そしてあのクスリを……フフフ)
 今日は色々あったが、総じて有意義な一日だった。
 クスリの効果と味のほどを確認できただけでも十分といえるだろう。
 (そう、問題はそこなんだよなぁ、どうにか工夫して飲ませないと)
 魔理沙の逆襲は、今まさに始まったばかりなのだ。
お泊マリシリーズ第一弾!博麗神社といいつつ一回も博麗神社が出てきません。
まぁ起承転結の起ってことで。……承転結があるかわかりませんが(笑
造語を出してみたり、魔理沙×アリスと見せかけてやっぱりアリス×魔理沙だったり。
題名に偽りあり……カナ?でもここで区切ったほうがよさそうだったので(汗
とりあえず一言、愛があれば何でも出来るー。1・2・3・アリマリー!!(何
今回おとなしめに書いたつもりなんですが(霊夢がいないから?)どうでしょうか?
leon
http://e-will.hp.infoseek.co.jp/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.920簡易評価
0. コメントなし