◆
『霊夢・・・』
『アリス・・・』
穏やかな風が吹く草原の丘の頂上で見つめ合う二人。
もはや二人を妨げる物など何も有りはしなかった。
『私達、遂に結ばれるのね・・・』
『うん。本当に永かったわ・・・』
そして二人は体を寄せ合う。
『アリス、ちょっと目瞑ってて・・・』
『うん・・・』
ああ、これはアレだ。遂に誓いのキスをするんだ───
ああ霊夢。愛しい霊夢。私の霊夢・・・。
『・・・・・・』
アリスは目を閉じてその時を待つ。
霊夢は躊躇しているのだろうか? 中々近づいてくる気配が無い。
『・・・霊夢、来て』
もう待ちきれないアリスは霊夢を急かせる。
そして───
『じゃあ遠慮なくいただくぜアリスっ!!』
『はっ?』
何処かで聞いたような声。こんな男口調で下劣な話し方をする女は唯一人!!
『邪魔すんじゃねええええええええええ!!!』
◆
「ぇぇぇぇぇぇええええ・・・え?」
・・・気付くと其処には見慣れた天井があった。
横では上海人形が何事かという様な表情で此方を見ている。
「くっ・・・くっくっ・・・くははははははははは!!」
アリスは壊れた。もはや限界だった。
というのも最近見る夢といえば霊夢の夢ばかり。そして最後に邪魔してくるのは決まって魔理沙。
・・・これを拷問と言わずして何というか。
「くくく、そうよ。あのゴキブリ魔法使いを亡き者にすれば良いんだわ」
「シャ・・・シャンハーイ」
上海人形は主の変貌ぶりに怯えていた。此処に居続ければ命が危ない───と思ったのだろう。
「上海人形、留守番は任せたわ。私はこれから修羅に参るから」
ざわっ・・・と辺りの空気が凍りつく。
上海は「敬礼」のポーズを取るとそそくさと家事を再開した。
「くっくく・・・見ていなさい魔理沙。貴方に霊夢は渡さない・・・!」
アリスは五寸釘で藁人形を打ちつけながら不敵に笑った。もはや美しかった彼女の面影は無い。
◇
「ぐっ・・・」
「どうしたの魔理沙?」
「いや、今何か胸に突き刺さったような感覚が・・・」
博麗霊夢と霧雨魔理沙は何時ものように博麗神社の縁側でお茶を啜っていた。
もはや日常的過ぎて書くのも面倒。
「はぁー、何か面白いこと無いかなぁ」
魔理沙は天を仰いだ。
「平和が一番よ」
「でも刺激が無い生活はつまらないぜ。何つうかこういう日常にスリルを与えてくれるようなイベントが欲しいぜ」
───魔理沙の願いは通じた。正にその時遥か彼方から地獄の使者が訪れようとしていたのだ。
「じゃあ私がプレゼントしてあげるわ!」
『ドッガアアアアアアン』
突如天から彗星の如く大量の人形が降り注いできた。
良く見るとその一つ一つに「魔理沙」と書かれた札が貼られており、その上から五寸釘が刺されている。
霊夢は取り乱しているが魔理沙は割と冷静だ。
「な、な、何事!?」
「何だかんだと聞かれたら・・・」
「答えてあげるが世の情け、だろ?」
「そこのゴキブリ魔法使い! 私の台詞を取るんじゃねえええ!」
決め台詞を奪われた青い衣服に実を纏った金髪の少女は、ロ○ット団も真っ青な突込みを繰り出す。
現れたのは七色の魔法使いならぬ地獄の魔法使い、アリス・マーガトロイドである。
「やれやれどうしたんだアリス。今日は何時に無く荒れてるが」
「ふ、あんたの顔を見てたら余計に腹が立ってきただけよ」
「・・・あのー」
霊夢はまったく状況が掴めず、二人に向かって汗を垂らしながら手を広げている。
「ああ霊夢。私のことを待っていてくれたのね」
「はい?」
「・・・そこまでだぜアリス。遂にそこまで色ボケが進んだか」
「安心しなさい魔理沙。今日は霊夢に用事がある訳じゃないの」
「ほう」
「用事があるのは・・・貴方よ魔理沙!!」
アリスは声高らかに叫んだかと思うと、魔理沙に人形を投げつけた。
「ふんっ!」
しかし魔理沙も負けじと星屑を生成して人形を相殺する。
「今日という今日は許せないわ。私と霊夢の仲を裂こうとするゴキブリ魔法使いの霧雨魔理沙」
「少し落ち着け色ボケ魔法使いのアリス・マーガトロイド」
『バチバチバチッ!』
二人の間に激しい火花が散る。
すっかり霊夢は蚊帳の外である。
「・・・どうでもいいけど弾幕ごっこは神社の中でやらないでくれる? まとめて夢想封印するわよ」
「うんわかったわ」
霊夢に対してはとびっきりの笑顔と声で応答するアリス。
一方魔理沙は頭を抱えて溜息をついている。
「・・・なあ霊夢。今すぐコイツを有無を言わさず魔砲で跡形も無く吹き飛ばしたいんだが」
「却下。やるなら別の場所でどうぞ」
ずずーっと霊夢は茶を啜る。
「やれやれわかったぜ。別の場所で相手になってやるぜアリス」
「ふっ、もはや貴方の勝利は兆分の一も無くなったわ」
◇
『ひゅううううっ・・・・』
靡く風と木々のざわめき。
そして二人の間で飛び交う火花。
それを観戦する紅白の巫女・・・。
お膳立ては整った。
「さあ魔理沙、私に生きてる実感を頂戴!」
「そーかい」
魔理沙はすかさず懐から札を取り出して叫んだ。
『マスタースパーク!』
魔理沙の手から放たれた魔砲はアリスの体を全て飲み込んだ。
もはや跡形も無いはずだ。
「・・・呆気ないぜ」
「それはどうかしら?」
「!?」
煙の中から現れたアリスは全くの無傷だった。傷どころか衣服に埃すら付いていない。
「そ、そんな馬鹿な!?」
「ふっ、今悟ったわ。これが・・・愛の力だと!」
「あ、愛・・・?」
「そう、愛こそ今の私の力の源。この愛の力に比べれば貴方の力などっ・・・!」
アリスは魔理沙を見下すような目で睨んだ。
「くっ・・・ならコイツを食らわせてやるぜ!」
「無駄よ」
「問答無用!『ファイナルマスタースパーク!』」
魔理沙は自身最強のスペルカードを炸裂させた。
『ズガガガガーーーーーン!!』
そして先ほどの数倍の規模はあろう魔砲は、辺りの木々も巻き込みアリスにフルヒットした。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・流石にこれなら・・・・・・」
「哀れね」
「・・・!?」
しかしこの必殺の魔砲も今のアリスには全く通用しなかった。
もはや今のアリスにはあらゆる真理が通用しない・・・・・・様に見えた。
「さあ魔理沙観念しなさい。近所同士のよしみで最後は楽にしてあげるわ」
「ぐっ・・・そう簡単に事が進むと思ったら大間違いだぜ」
すると魔理沙は何やら霊夢に耳打ちを始めた。
霊夢は段々顔を顰めていく。そして最後には怒り出した。
「最後のお別れかしら? 早いところ済ませてね」
「・・・・・・」
しばらくして魔理沙は再びアリスと対峙した。
霊夢はやれやれといった表情で頭を抱えている。
「じゃあ最後に一言だけ霊夢から私に対してお別れの言葉があるそうだ」
「へぇ・・・聞いてあげようじゃないの」
そして霊夢が立ち上がり、半泣きの声で魔理沙にこう叫んだ。
『ぐすっ、魔理沙逝かないで・・・私の魔理沙逝かないで! 私はアリスなんていう変態は大嫌いなの・・・』
そのとき間違いなく時間は止まった。咲夜の力にあらず。
「・・・は? は? 何言ってる・・・ははは、変態? 私が変態? 私の魔理沙? あ、あはははは・・・」
『魔理沙お願い・・・。貴方が死ぬなら私も死ぬわ。だから最後に私を抱いて・・・』
「あ、あ、あぎゃあああああああああああああああっ!!!!」
「今だっ!『ブレイジングスター!!』」
・・・魔理沙の必殺の一閃が決まる。
「・・・やな感じーーーーーーー!!!」
そしてアリスは遥か彼方へ吹っ飛ばされた。
「・・・ふう、やっと静かになったぜ」
「ああもう嫌。何で私がこんな事しなきゃいけないの」
「いやいやお陰で助かったぜ。演技も中々だったし」
「・・・報酬は高くつくわよ」
「わかってる。今度持って来るぜ」
この臭い演技を演じてもらう代償として、魔理沙は香霖堂で仕入れた特級茶葉を差し出すと霊夢に持ちかけたのだ。
・・・勝手に持ち出した強奪品なのだが。
「いやぁ、でも霊夢があそこまで私の事を想ってくれてるなんて思わなかったぜ」
「ちょ・・・あれは演技よ!」
「恥ずかしがる必要ないぜ。正直、あの時少し感じちまったぜ・・・」
「・・・夢想封印されたい?」
「冗談だって」
あっはっはと笑う魔理沙。そしてむすっと頬を膨らませる霊夢。
これが彼女二人の「日常」である。
◇
「ああああああああーーーーーーーーーっ!!!!」
一方アリスは頭に特大のたんこぶを作ったまま、自宅のベッド泣き崩れていた。
「シャンハーイ・・・」
上海人形は何とか主の元気を取り戻そうと四苦八苦しているのが哀れである。
「そんな・・・うぐっ、えぐっ・・・霊夢が、霊夢が魔理沙のこと好きだったなんて・・・」
アリスは霊夢の形をした「霊夢ちゃん抱き枕」を抱きしめながら泣き叫ぶ。
傍から見れば唯の変態である。
「うう、もう私生きていけない・・・」
アリスは持っていたハンカチをビリビリに破いて空に舞わせた。ああ、恋せよ乙女。
「・・・死のう」
アリスは棚に置いてあった見るからに怪しい薬品を取り出し、栓を開けて口に含もうとする。
「シャ、シャンハイ! シャンハーイ!!」
上海人形は早まる主を止めようとぴょんぴょん飛び跳ねながら彼女の足に飛び付く。
・・・その瞬間アリスの手が止まった。
「・・・シャンハイ?」
「・・・でも一人で死ぬのは癪だわ。誰か道連れが必要ね」
凄まじく自己中心的な考えである。他人のことなどお構いなし。
「シャ・・・シャン・・・ハイ・・・・・・・」
幾ら主人想いの上海人形でも流石にこんな死に方は御免である。
上海人形はアリスの足から飛び退き、椅子の陰へと隠れてしまった。
「・・・そうだわ! これよこれ! 何で気付かなかったのかしら?」
アリスは突然元気を取り戻したかと思うと再び外へと飛び出した。
「ふっふ、霊夢はさっき「死んでもいい」って言ってたわ。だったら私と一緒に心中してもらいましょう♪」
「シャ、シャンハイ!?」
「じゃ、今までありがとね上海人形。残された人生は貴方の自由よ」
アリスはそう言い残して家を飛び出して行った。
「シャ、シャンハ~~~~イ!!」
───道連れ候補にも選ばれなかった上海人形は哀れであった。
◇
そしてその日の夕暮れ時
博麗神社に特大の人形型彗星が落ちた。
その日以降博麗神社から人気が無くなったと言う。
その後白玉楼にて彼女たちそっくりな人物を見たという噂がある。
何でも以前にも増して白玉楼が騒がしくなったとか───
おしまい
『霊夢・・・』
『アリス・・・』
穏やかな風が吹く草原の丘の頂上で見つめ合う二人。
もはや二人を妨げる物など何も有りはしなかった。
『私達、遂に結ばれるのね・・・』
『うん。本当に永かったわ・・・』
そして二人は体を寄せ合う。
『アリス、ちょっと目瞑ってて・・・』
『うん・・・』
ああ、これはアレだ。遂に誓いのキスをするんだ───
ああ霊夢。愛しい霊夢。私の霊夢・・・。
『・・・・・・』
アリスは目を閉じてその時を待つ。
霊夢は躊躇しているのだろうか? 中々近づいてくる気配が無い。
『・・・霊夢、来て』
もう待ちきれないアリスは霊夢を急かせる。
そして───
『じゃあ遠慮なくいただくぜアリスっ!!』
『はっ?』
何処かで聞いたような声。こんな男口調で下劣な話し方をする女は唯一人!!
『邪魔すんじゃねええええええええええ!!!』
◆
「ぇぇぇぇぇぇええええ・・・え?」
・・・気付くと其処には見慣れた天井があった。
横では上海人形が何事かという様な表情で此方を見ている。
「くっ・・・くっくっ・・・くははははははははは!!」
アリスは壊れた。もはや限界だった。
というのも最近見る夢といえば霊夢の夢ばかり。そして最後に邪魔してくるのは決まって魔理沙。
・・・これを拷問と言わずして何というか。
「くくく、そうよ。あのゴキブリ魔法使いを亡き者にすれば良いんだわ」
「シャ・・・シャンハーイ」
上海人形は主の変貌ぶりに怯えていた。此処に居続ければ命が危ない───と思ったのだろう。
「上海人形、留守番は任せたわ。私はこれから修羅に参るから」
ざわっ・・・と辺りの空気が凍りつく。
上海は「敬礼」のポーズを取るとそそくさと家事を再開した。
「くっくく・・・見ていなさい魔理沙。貴方に霊夢は渡さない・・・!」
アリスは五寸釘で藁人形を打ちつけながら不敵に笑った。もはや美しかった彼女の面影は無い。
◇
「ぐっ・・・」
「どうしたの魔理沙?」
「いや、今何か胸に突き刺さったような感覚が・・・」
博麗霊夢と霧雨魔理沙は何時ものように博麗神社の縁側でお茶を啜っていた。
もはや日常的過ぎて書くのも面倒。
「はぁー、何か面白いこと無いかなぁ」
魔理沙は天を仰いだ。
「平和が一番よ」
「でも刺激が無い生活はつまらないぜ。何つうかこういう日常にスリルを与えてくれるようなイベントが欲しいぜ」
───魔理沙の願いは通じた。正にその時遥か彼方から地獄の使者が訪れようとしていたのだ。
「じゃあ私がプレゼントしてあげるわ!」
『ドッガアアアアアアン』
突如天から彗星の如く大量の人形が降り注いできた。
良く見るとその一つ一つに「魔理沙」と書かれた札が貼られており、その上から五寸釘が刺されている。
霊夢は取り乱しているが魔理沙は割と冷静だ。
「な、な、何事!?」
「何だかんだと聞かれたら・・・」
「答えてあげるが世の情け、だろ?」
「そこのゴキブリ魔法使い! 私の台詞を取るんじゃねえええ!」
決め台詞を奪われた青い衣服に実を纏った金髪の少女は、ロ○ット団も真っ青な突込みを繰り出す。
現れたのは七色の魔法使いならぬ地獄の魔法使い、アリス・マーガトロイドである。
「やれやれどうしたんだアリス。今日は何時に無く荒れてるが」
「ふ、あんたの顔を見てたら余計に腹が立ってきただけよ」
「・・・あのー」
霊夢はまったく状況が掴めず、二人に向かって汗を垂らしながら手を広げている。
「ああ霊夢。私のことを待っていてくれたのね」
「はい?」
「・・・そこまでだぜアリス。遂にそこまで色ボケが進んだか」
「安心しなさい魔理沙。今日は霊夢に用事がある訳じゃないの」
「ほう」
「用事があるのは・・・貴方よ魔理沙!!」
アリスは声高らかに叫んだかと思うと、魔理沙に人形を投げつけた。
「ふんっ!」
しかし魔理沙も負けじと星屑を生成して人形を相殺する。
「今日という今日は許せないわ。私と霊夢の仲を裂こうとするゴキブリ魔法使いの霧雨魔理沙」
「少し落ち着け色ボケ魔法使いのアリス・マーガトロイド」
『バチバチバチッ!』
二人の間に激しい火花が散る。
すっかり霊夢は蚊帳の外である。
「・・・どうでもいいけど弾幕ごっこは神社の中でやらないでくれる? まとめて夢想封印するわよ」
「うんわかったわ」
霊夢に対してはとびっきりの笑顔と声で応答するアリス。
一方魔理沙は頭を抱えて溜息をついている。
「・・・なあ霊夢。今すぐコイツを有無を言わさず魔砲で跡形も無く吹き飛ばしたいんだが」
「却下。やるなら別の場所でどうぞ」
ずずーっと霊夢は茶を啜る。
「やれやれわかったぜ。別の場所で相手になってやるぜアリス」
「ふっ、もはや貴方の勝利は兆分の一も無くなったわ」
◇
『ひゅううううっ・・・・』
靡く風と木々のざわめき。
そして二人の間で飛び交う火花。
それを観戦する紅白の巫女・・・。
お膳立ては整った。
「さあ魔理沙、私に生きてる実感を頂戴!」
「そーかい」
魔理沙はすかさず懐から札を取り出して叫んだ。
『マスタースパーク!』
魔理沙の手から放たれた魔砲はアリスの体を全て飲み込んだ。
もはや跡形も無いはずだ。
「・・・呆気ないぜ」
「それはどうかしら?」
「!?」
煙の中から現れたアリスは全くの無傷だった。傷どころか衣服に埃すら付いていない。
「そ、そんな馬鹿な!?」
「ふっ、今悟ったわ。これが・・・愛の力だと!」
「あ、愛・・・?」
「そう、愛こそ今の私の力の源。この愛の力に比べれば貴方の力などっ・・・!」
アリスは魔理沙を見下すような目で睨んだ。
「くっ・・・ならコイツを食らわせてやるぜ!」
「無駄よ」
「問答無用!『ファイナルマスタースパーク!』」
魔理沙は自身最強のスペルカードを炸裂させた。
『ズガガガガーーーーーン!!』
そして先ほどの数倍の規模はあろう魔砲は、辺りの木々も巻き込みアリスにフルヒットした。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・流石にこれなら・・・・・・」
「哀れね」
「・・・!?」
しかしこの必殺の魔砲も今のアリスには全く通用しなかった。
もはや今のアリスにはあらゆる真理が通用しない・・・・・・様に見えた。
「さあ魔理沙観念しなさい。近所同士のよしみで最後は楽にしてあげるわ」
「ぐっ・・・そう簡単に事が進むと思ったら大間違いだぜ」
すると魔理沙は何やら霊夢に耳打ちを始めた。
霊夢は段々顔を顰めていく。そして最後には怒り出した。
「最後のお別れかしら? 早いところ済ませてね」
「・・・・・・」
しばらくして魔理沙は再びアリスと対峙した。
霊夢はやれやれといった表情で頭を抱えている。
「じゃあ最後に一言だけ霊夢から私に対してお別れの言葉があるそうだ」
「へぇ・・・聞いてあげようじゃないの」
そして霊夢が立ち上がり、半泣きの声で魔理沙にこう叫んだ。
『ぐすっ、魔理沙逝かないで・・・私の魔理沙逝かないで! 私はアリスなんていう変態は大嫌いなの・・・』
そのとき間違いなく時間は止まった。咲夜の力にあらず。
「・・・は? は? 何言ってる・・・ははは、変態? 私が変態? 私の魔理沙? あ、あはははは・・・」
『魔理沙お願い・・・。貴方が死ぬなら私も死ぬわ。だから最後に私を抱いて・・・』
「あ、あ、あぎゃあああああああああああああああっ!!!!」
「今だっ!『ブレイジングスター!!』」
・・・魔理沙の必殺の一閃が決まる。
「・・・やな感じーーーーーーー!!!」
そしてアリスは遥か彼方へ吹っ飛ばされた。
「・・・ふう、やっと静かになったぜ」
「ああもう嫌。何で私がこんな事しなきゃいけないの」
「いやいやお陰で助かったぜ。演技も中々だったし」
「・・・報酬は高くつくわよ」
「わかってる。今度持って来るぜ」
この臭い演技を演じてもらう代償として、魔理沙は香霖堂で仕入れた特級茶葉を差し出すと霊夢に持ちかけたのだ。
・・・勝手に持ち出した強奪品なのだが。
「いやぁ、でも霊夢があそこまで私の事を想ってくれてるなんて思わなかったぜ」
「ちょ・・・あれは演技よ!」
「恥ずかしがる必要ないぜ。正直、あの時少し感じちまったぜ・・・」
「・・・夢想封印されたい?」
「冗談だって」
あっはっはと笑う魔理沙。そしてむすっと頬を膨らませる霊夢。
これが彼女二人の「日常」である。
◇
「ああああああああーーーーーーーーーっ!!!!」
一方アリスは頭に特大のたんこぶを作ったまま、自宅のベッド泣き崩れていた。
「シャンハーイ・・・」
上海人形は何とか主の元気を取り戻そうと四苦八苦しているのが哀れである。
「そんな・・・うぐっ、えぐっ・・・霊夢が、霊夢が魔理沙のこと好きだったなんて・・・」
アリスは霊夢の形をした「霊夢ちゃん抱き枕」を抱きしめながら泣き叫ぶ。
傍から見れば唯の変態である。
「うう、もう私生きていけない・・・」
アリスは持っていたハンカチをビリビリに破いて空に舞わせた。ああ、恋せよ乙女。
「・・・死のう」
アリスは棚に置いてあった見るからに怪しい薬品を取り出し、栓を開けて口に含もうとする。
「シャ、シャンハイ! シャンハーイ!!」
上海人形は早まる主を止めようとぴょんぴょん飛び跳ねながら彼女の足に飛び付く。
・・・その瞬間アリスの手が止まった。
「・・・シャンハイ?」
「・・・でも一人で死ぬのは癪だわ。誰か道連れが必要ね」
凄まじく自己中心的な考えである。他人のことなどお構いなし。
「シャ・・・シャン・・・ハイ・・・・・・・」
幾ら主人想いの上海人形でも流石にこんな死に方は御免である。
上海人形はアリスの足から飛び退き、椅子の陰へと隠れてしまった。
「・・・そうだわ! これよこれ! 何で気付かなかったのかしら?」
アリスは突然元気を取り戻したかと思うと再び外へと飛び出した。
「ふっふ、霊夢はさっき「死んでもいい」って言ってたわ。だったら私と一緒に心中してもらいましょう♪」
「シャ、シャンハイ!?」
「じゃ、今までありがとね上海人形。残された人生は貴方の自由よ」
アリスはそう言い残して家を飛び出して行った。
「シャ、シャンハ~~~~イ!!」
───道連れ候補にも選ばれなかった上海人形は哀れであった。
◇
そしてその日の夕暮れ時
博麗神社に特大の人形型彗星が落ちた。
その日以降博麗神社から人気が無くなったと言う。
その後白玉楼にて彼女たちそっくりな人物を見たという噂がある。
何でも以前にも増して白玉楼が騒がしくなったとか───
おしまい
というか、地の文が短すぎるのと、読み手は『…』を読み飛ばしてしまう事を念頭に置くと良いかと。
こういうのは日を置いてからもう一度読み見直すと作品の粗が見つかるかと思われますよー。
グレイ・フォックス噴いたwwww
アリスを暴走させて、上海を可愛くさせた感じですね。
アリスがマスター及びファイナルスパーク防いだのが、
ハイメガキャノンを妙なオーラで防いだキュベレイとダブって仕方ないです。
でもこんな臭い演技を演じてほしいなんて頼まれたら
霊夢だって怒るよそりゃ(笑)