博麗霊夢は馬鹿ではない。
こう言うと周りに馬鹿だと思われているように聞こえるかもしれないが、特にそう思われているわけではない。
実際、馬鹿ではないことが証明された。
何故なら
霊夢は
風邪をひいたからだ。
【霊夢の風邪奮闘記】
霊夢は風邪をひいて寝込んでいた。
「うう、風邪をひくなんて……今日は、魔理沙が来たら速攻で逃げる隙も与えずひん剥いてやろうと思ってたのに」
そのころ、魔理沙は何も知らずに博麗神社に向かって飛んでいた。
今日霊夢が運よく風邪をひいていなければ、パクリと食われていたであろう。
「到着だぜ。霊夢ー、茶でも出してくれー」
着くやいなや茶を催促する魔理沙。しかし霊夢は姿を見せない。
「霊夢ー。煎餅も忘れずになー」
返事はない。
「何だあいつ、まだ寝てるのか?」
寝ていることは間違っていなかったが、霊夢には魔理沙の声が聞こえていた。
いつもならとりあえず箒を強奪してちょいと(××目的に)使用するところだが、あえて動かなかった。
(ココは完璧に病人を装って魔理沙に看病してもらうのが吉ね、魔理沙がこの部屋に入ってきてからが勝負!!)
案の定魔理沙の足音が近づいてくる。
「霊夢ー、入るぜー」
魔理沙が寝室の襖を開ける。
「れ、霊夢!?」
そこには顔を紅潮させて、苦しそうに呼吸する霊夢の姿があった。
「おい、どうした、大丈夫か!?」
「あ……魔理沙……?魔理沙なのね?よかった……死ぬ前に貴女にあえて……」
「おい!しっかりしろ!死ぬなんて言うな!お前がいなくなったら私は――」
「愛してるって……言ってくれる?」
「ああ、愛してる。愛してるぜ、霊夢!だから死なないでくれ!」
(まずい、ちょっと大げさにやりすぎたわ……)
霊夢の顔が赤いのは魔理沙を料理する妄想をしているため。呼吸が荒いのは興奮しているためだった。
魔理沙の瞳に涙が溜まっている。ちょっと罪悪感……
(泣いてる魔理沙……ラヴ)
……なんてものがあるはずがない。
(それはしっかりと網膜に焼き付けたから良しとして、このままじゃ風邪の看病どころじゃなくて、今生の別れモードに突入してしまうわ)
「魔理沙……」
「何だ、霊夢。私に出来ることなら何でもしてやる!!」
その言葉を受けて、霊夢の目がカッと見開く。
「言ったわね……」
「……ふぇ?」
魔理沙は、そのとき初めて気が付いた。
博麗霊夢はどんなときでも欲に餓えた猛獣だと。
「言ったわね?なんでもシてくれるって……」
「いや、その、なんだ。それは言葉のあやと言うかなんと言うか……」
霊夢は布団からガバッと飛び起きる。布団がふっとんだとはこのことだ。
あんたほんとに病人なのか?と言いたくなるほど元気だった。
(予想とは大分違う展開だけど、棚牡丹ラッキーね♪)
逃げようともがく魔理沙の足を掴んで引き寄せる。
いつもは強気な魔理沙の怯えた目。震える身体。
理性が飛んだ。
「んっ」
唇を奪う。
口付けをしたまま抱きしめる。
初めは抵抗していた魔理沙だったが、徐々におとなしくなっていく。
「霊夢ぅ……」
魔理沙の瞳に先程とは違う種の水分が溜まっていた。
頬に赤味がさす。
(かわいいかわいいかわいいわ魔理沙ーーー!!)
霊夢は禁断状態に陥る一歩手前までキテいた。
そして……
「ばたんきゅー」
倒れた。
「霊夢!?」
自分を呼ぶ魔理沙の声が遠ざかっていく。ブツン――と、意識が落ちた。
興奮していてわからなかったが、霊夢の風邪はかなり悪化していた。
「……?」
目を覚ました時には、もう夕暮れ時だった。
額に冷たいものがのっている。
それは冷やしたタオルだった。おそらく魔理沙が看病してくれていたのだろう。
(ガッデム!魔理沙に甘える機会を逃すとは!!いや、今からでも十分堪能して……)
「う……」
興奮したらクラクラした。
「あ……気がついたか?」
魔理沙が氷の入ったバケツをもって入ってきた。
指先が赤い。ずっと看病していてくれたのだろうか。
「ねえ、魔理沙……」
「ん?」
タオルを取り替える魔理沙の手に触れる。冷たい。きっと何回も何回もこまめにタオルを取り替えてくれていたのだろう。
自分は魔理沙を騙したのに、それでも魔理沙は傍にいてくれた。
「ごめんなさい……」
「……」
「ごめんなさい。私、本当はただの風邪だったのに……魔理沙を騙して……」
「馬鹿」
「……え?」
「悪いと思ったら早く治せよ、霊夢がそんなんじゃ私も調子がでないからな。それと、あんまり無茶するなよ?」
「……うん」
馬鹿でもいいと思った。愛する人が傍にいてくれるのなら。
魔理沙は優しい。それに、誰より自分を大切に思ってくれている。多分、霊夢自身よりも。
(そんな貴女だから……、私は貴女の隣にいたい、一緒に生きて行きたい)
この日、霊夢は少しだけ反省した。
傍に寄りたい。寄り添っていたい。
でも、自分だけが寄って行ってもダメなんだ。
強引に押しては、魔理沙が倒れてしまうから。
魔理沙が自分に身体を預けてくれなければ、バランスがとれない。一緒に歩けない。
無理に急かさなくても、魔理沙は信頼してくれているのだから、一緒に歩み寄っていこう。きっと肩を並べて歩ける日はそんなに遠くない。
何故なら――
博麗霊夢は霧雨魔理沙を愛していて、霧雨魔理沙は博麗霊夢を愛しているのだから。
(でも押し倒すのはオーケーよね?)
結局あまり変わってなかった。
その後、霊夢はこれでもか、と魔理沙に甘えていた。
「あ、あーん」
「あーん」
夕食は魔理沙がお粥を作ってくれたが、カップルといえばこれ『はい、あーん』を実践させていたり。
「も、もういいんじゃないか?」
「もっと隅々までお願いね」
風呂には入らない方がいいと言うので、魔理沙に体を拭いてもらったり。(でなければ水風呂に入るとダダをこねた)
「腕が痺れるぜ……」
「もっと近くにきて~(はぁと」
一つの布団で腕枕をしてもらったり、と。やりたい放題だった。
(でも、しょうがないじゃない。魔理沙は奥手だから、このぐらいしないと自分から近づいてきてくれないんだもの)
隣で眠る魔理沙を軽く睨む。
規則正しい呼吸音が聞こえる。
(……まぁ、いいか、急かさないって決めたばかりだし)
-お休み、魔理沙-
そして、愛の誓いの口付けを。
こう言うと周りに馬鹿だと思われているように聞こえるかもしれないが、特にそう思われているわけではない。
実際、馬鹿ではないことが証明された。
何故なら
霊夢は
風邪をひいたからだ。
【霊夢の風邪奮闘記】
霊夢は風邪をひいて寝込んでいた。
「うう、風邪をひくなんて……今日は、魔理沙が来たら速攻で逃げる隙も与えずひん剥いてやろうと思ってたのに」
そのころ、魔理沙は何も知らずに博麗神社に向かって飛んでいた。
今日霊夢が運よく風邪をひいていなければ、パクリと食われていたであろう。
「到着だぜ。霊夢ー、茶でも出してくれー」
着くやいなや茶を催促する魔理沙。しかし霊夢は姿を見せない。
「霊夢ー。煎餅も忘れずになー」
返事はない。
「何だあいつ、まだ寝てるのか?」
寝ていることは間違っていなかったが、霊夢には魔理沙の声が聞こえていた。
いつもならとりあえず箒を強奪してちょいと(××目的に)使用するところだが、あえて動かなかった。
(ココは完璧に病人を装って魔理沙に看病してもらうのが吉ね、魔理沙がこの部屋に入ってきてからが勝負!!)
案の定魔理沙の足音が近づいてくる。
「霊夢ー、入るぜー」
魔理沙が寝室の襖を開ける。
「れ、霊夢!?」
そこには顔を紅潮させて、苦しそうに呼吸する霊夢の姿があった。
「おい、どうした、大丈夫か!?」
「あ……魔理沙……?魔理沙なのね?よかった……死ぬ前に貴女にあえて……」
「おい!しっかりしろ!死ぬなんて言うな!お前がいなくなったら私は――」
「愛してるって……言ってくれる?」
「ああ、愛してる。愛してるぜ、霊夢!だから死なないでくれ!」
(まずい、ちょっと大げさにやりすぎたわ……)
霊夢の顔が赤いのは魔理沙を料理する妄想をしているため。呼吸が荒いのは興奮しているためだった。
魔理沙の瞳に涙が溜まっている。ちょっと罪悪感……
(泣いてる魔理沙……ラヴ)
……なんてものがあるはずがない。
(それはしっかりと網膜に焼き付けたから良しとして、このままじゃ風邪の看病どころじゃなくて、今生の別れモードに突入してしまうわ)
「魔理沙……」
「何だ、霊夢。私に出来ることなら何でもしてやる!!」
その言葉を受けて、霊夢の目がカッと見開く。
「言ったわね……」
「……ふぇ?」
魔理沙は、そのとき初めて気が付いた。
博麗霊夢はどんなときでも欲に餓えた猛獣だと。
「言ったわね?なんでもシてくれるって……」
「いや、その、なんだ。それは言葉のあやと言うかなんと言うか……」
霊夢は布団からガバッと飛び起きる。布団がふっとんだとはこのことだ。
あんたほんとに病人なのか?と言いたくなるほど元気だった。
(予想とは大分違う展開だけど、棚牡丹ラッキーね♪)
逃げようともがく魔理沙の足を掴んで引き寄せる。
いつもは強気な魔理沙の怯えた目。震える身体。
理性が飛んだ。
「んっ」
唇を奪う。
口付けをしたまま抱きしめる。
初めは抵抗していた魔理沙だったが、徐々におとなしくなっていく。
「霊夢ぅ……」
魔理沙の瞳に先程とは違う種の水分が溜まっていた。
頬に赤味がさす。
(かわいいかわいいかわいいわ魔理沙ーーー!!)
霊夢は禁断状態に陥る一歩手前までキテいた。
そして……
「ばたんきゅー」
倒れた。
「霊夢!?」
自分を呼ぶ魔理沙の声が遠ざかっていく。ブツン――と、意識が落ちた。
興奮していてわからなかったが、霊夢の風邪はかなり悪化していた。
「……?」
目を覚ました時には、もう夕暮れ時だった。
額に冷たいものがのっている。
それは冷やしたタオルだった。おそらく魔理沙が看病してくれていたのだろう。
(ガッデム!魔理沙に甘える機会を逃すとは!!いや、今からでも十分堪能して……)
「う……」
興奮したらクラクラした。
「あ……気がついたか?」
魔理沙が氷の入ったバケツをもって入ってきた。
指先が赤い。ずっと看病していてくれたのだろうか。
「ねえ、魔理沙……」
「ん?」
タオルを取り替える魔理沙の手に触れる。冷たい。きっと何回も何回もこまめにタオルを取り替えてくれていたのだろう。
自分は魔理沙を騙したのに、それでも魔理沙は傍にいてくれた。
「ごめんなさい……」
「……」
「ごめんなさい。私、本当はただの風邪だったのに……魔理沙を騙して……」
「馬鹿」
「……え?」
「悪いと思ったら早く治せよ、霊夢がそんなんじゃ私も調子がでないからな。それと、あんまり無茶するなよ?」
「……うん」
馬鹿でもいいと思った。愛する人が傍にいてくれるのなら。
魔理沙は優しい。それに、誰より自分を大切に思ってくれている。多分、霊夢自身よりも。
(そんな貴女だから……、私は貴女の隣にいたい、一緒に生きて行きたい)
この日、霊夢は少しだけ反省した。
傍に寄りたい。寄り添っていたい。
でも、自分だけが寄って行ってもダメなんだ。
強引に押しては、魔理沙が倒れてしまうから。
魔理沙が自分に身体を預けてくれなければ、バランスがとれない。一緒に歩けない。
無理に急かさなくても、魔理沙は信頼してくれているのだから、一緒に歩み寄っていこう。きっと肩を並べて歩ける日はそんなに遠くない。
何故なら――
博麗霊夢は霧雨魔理沙を愛していて、霧雨魔理沙は博麗霊夢を愛しているのだから。
(でも押し倒すのはオーケーよね?)
結局あまり変わってなかった。
その後、霊夢はこれでもか、と魔理沙に甘えていた。
「あ、あーん」
「あーん」
夕食は魔理沙がお粥を作ってくれたが、カップルといえばこれ『はい、あーん』を実践させていたり。
「も、もういいんじゃないか?」
「もっと隅々までお願いね」
風呂には入らない方がいいと言うので、魔理沙に体を拭いてもらったり。(でなければ水風呂に入るとダダをこねた)
「腕が痺れるぜ……」
「もっと近くにきて~(はぁと」
一つの布団で腕枕をしてもらったり、と。やりたい放題だった。
(でも、しょうがないじゃない。魔理沙は奥手だから、このぐらいしないと自分から近づいてきてくれないんだもの)
隣で眠る魔理沙を軽く睨む。
規則正しい呼吸音が聞こえる。
(……まぁ、いいか、急かさないって決めたばかりだし)
-お休み、魔理沙-
そして、愛の誓いの口付けを。
楽しませていただきました♪
魂が白黒重力に惹かれまくってますね。
二作目だけにサブタイトルに「恋人たち」と付けてみたい気分です(笑)
名前を騙る程度の能力様>白黒重力♪霊夢は魔理沙にべったりです(笑