一週間前。霊夢と共に訪問。私だけ迎撃を受ける。
五日前。単身にて訪問。迎撃を受ける。
三日前。単身にて訪問。迎撃なく中に入る。
本日。霊夢と共に訪問。迎撃なく中に入る。
「とまあ、何だか迎撃体制にむらがあるみたいなんだが」
指を立て、魔理沙が言う。
紅魔館でのお茶会。本日は紅茶ではなくハーブティーだった。
応接間。中の影は五つ。すなわち霊夢、魔理沙、レミリア、パチュリー、そして咲夜……ではなく小悪魔。執事よろしくパチュリーの脇に控えている。
咲夜は買い出しに出ているらしい。お茶を煎れたのも小悪魔だった。
「ふぅん……」
パチュリーが本から視線を離し、何かを思い出すかのように虚空を見る。
「……まあ、妥当ね」
そうとだけ言って、再び彼女は本に視線を戻した。
「どういうことだ?」
何の説明にもなっていない。魔理沙が首をひねる。
「貴女が何をしに来たのか、胸に手を当てて考えてみなさい」
ぼそりと言う。
魔理沙は律儀に胸に手を当て思い返してみた。
一週間前。本を狩りに……もとい借りにきた。
五日前。やっぱり本を借りにきた。
三日前。戯れに本を返しにきた。
今日。お茶を飲みにきた。
「……つまりなんだ? わたしが本を借りに来ると、あいつは迎撃に出るのか?」
「私は一度だって本を貸した事なんてないけれどね」
一応念を押しておく。つまりそれが、美鈴が迎撃に出る理由なのだが。
「随分気を使ってるのね、彼女」
感心したような、呆れたような口調で霊夢が言う。
「千客万来は、喜ばしい限りだわ」
ふ、とレミリアは微笑み答えた。
「美鈴が就いて以来、侵入者がないことが家の自慢よ」
「わたしらはどうなんだよ」
レミリアの言葉に、魔理沙が返す。
彼女が言っているのは、いつぞやの霧の件でのことだろう。
「私が侵入者というのは、敵のことよ」
そう言って、彼女はカップを傾けた。
要領を得ないレミリアの言葉に、魔理沙は首をひねる。
「はぁん」
対して霊夢は、納得いったように頷いた。
「霊夢?」
「つまり私たちは客になると判断したのね、彼女は?」
「そういうこと。そもそも美鈴が本気で撃退する気なら、弾幕ごっこなんかで挑まないわ」
つまり、美鈴の弾幕は篩なのである。いくら彼女がそう判断しようとも、これで墜ちるようではレミリアも遊べないだろうという。以下、パチュリーや咲夜との対戦は、通過儀礼のようなものだった。
今現在の魔理沙への対応は、パチュリーは本を持っていかれるのを快くは思っていないが、訪問してくること自体は憎からず思っているので、弾幕で落とせればよし、落とせなくてもそれでよし、という判断から来ていた。
「彼女、敵には容赦しないものね……」
何か思うところがあるのか、パチュリーが本から視線を外して遠くを見る。
「何の話だ?」
「美鈴、元はといえばレミィを退治しにきたのよ」
「へぇ。それで返り討ちにしてここで働かせてるわけ?」
霊夢のその一言で。なぜか部屋の中に、気まずい空気が流れた。
「…………?」
魔理沙がきょときょとと、不自然に黙り込んだ二人に目をやる。
互いに横目でコンタクトを取っていた。
余計なこと言わないでよ、パチェ。ごめん、レミィ。
「……おーい?」
珍しく遠慮がちな魔理沙の呼びかけに、二人ははっと我に返った。
こほんと、実にわざとらしくレミリアが咳払いをする。
「……まあ、あれを勝ちというのは、憚れるわね」
これも十分に余計な一言だった。
「つまりなんだ? あいつは……」
がちゃん。
魔理沙の台詞は、中途で奇妙な音に遮られた。それに霊夢の軽い悲鳴が続く。
霊夢のティーカップの取っ手がとれ、カップがテーブルに落ちた音だった。幸い中身はもうなかったようだが。小悪魔がそれを回収し、代わりのカップを置く。
小悪魔が定位置に戻る。それに合わせて、なぜかほっとしたように息をつく一同。
「……何の話をしていたんだったかしら」
気を取り直すように、パチュリーが呟いた。
脇に控えた小悪魔を見やる。彼女は恭しく頭を垂れ、
「魔理沙様の生理が先月から来ていないという話にございます」
普段散々煮え湯を飲まされている彼女への報復。これを咎めるのは狭量というものだろう。真顔でいうあたり、実に小悪魔小悪魔している。
「あらまあ、婚前交渉?」
「ついに身を固めるのね、例の店主と」
「うおおおおぃ!」
パチュリーとレミリアのいやな連携に、魔理沙が思わず突っ込んだ。
「婚前交渉って今時……いやそうじゃなくて変な勘違いをするな?! 私と香霖は」
「そういうことならパチェ、今までの本は諦めなさいな。おめでたいことだもの」
「おめでたでもあるわね。そうね魔理沙、持っていった本はあげるわ。香典代わりに」
「聞けよ人の話を! ていうか結婚祝いが何で香典だ?!」
「いやねぇ、結婚は人生の墓場よ?」
「そして、夜は墓場で運動会」
「「ぽ」」
「ぬがああああああああ!」
この二人が揃って頬を赤らめる様など、ある意味悪夢だ。
「……仲いいわね、あんた達」
180度転換した話題に我関せずと茶を啜っていた霊夢が、異様なまでに息のあった掛け合いあを見せる彼女らを見、思わずといった感じに呟く。
二人はきょとんと顔を見合わせ、
「まあねぇ」
「つきあい長いものね」
しみじみと頷く。
「……そういや、お前らの馴れ初めってどんなだったんだ?」
落ち着きを取り戻した魔理沙が、着席しつつ訊く。
どういう巡り合わせがあったのかは気になるところだ。活動時間は双方違うし、どちらも基本的にインドア派。まあ、最近になってレミリアはちょくちょく外出するようにもなったようだが。
霊夢も少し興味が出てきたらしい。茶を啜りつつ、こくんと小首を傾げる。
「……そうね」
口を開いたのはパチュリーだ。懐かしそうに目を閉じ語りだす……
「マッチ、マッチはいかがですか~」
寒風吹きすさぶ雪の町中を、少女の細い声が響く。
篭いっぱいのマッチを抱えた彼女の髪は紫。
パチュリー・ノーレッジ、十三歳。
ある冬の日のことだった。
「ちょっと待てい!」
魔理沙が叫ぶ。
「何よ」
話の腰を折られたパチュリーが、不機嫌そうに目を細めた。
「いや、なんつーか突っ込みどころが満載なんだが……」
しばしあー、うー、と虚空を見上げて唸り、
「……そもそもパチュリーがそんな仕事をするということ自体が納得いかない」
今の彼女と比較するだにあまりにも地味だ。
……いや、本当のところを言うなら、パチュリーが働いているということそのものが幻想に思える。
「失礼ね」
魔理沙の異議に、パチュリーは眉をひそめた。
「私だってちゃんと紅魔館に貢献しているのよ。まさか単なる穀潰しの居候だと思っているんじゃないでしょうね?」
半眼で睨み付ける。
「すまん、ぶっちゃけそう思ってた」
「…………」
頭を掻く。
「ちなみに何を?」
霊夢の問いかけに、
「そうね、例えば侵入者の撃退とか」
「あれは単に、書斎で騒いでたのを見咎めただけのような気がするんだけど」
顔をそらす。
「あとはそうね、妹様が暴れたときに雨を降らしたりとか」
「あー、それは確かに」
「それになにより、紅魔館の財政が破綻しないのは私の術のおかげといっても過言ではないわ」
「へぇ?」
魔理沙が興味深げに声をあげる。そして霊夢はがっつくように身を乗り出した。
「ちなみにどんな術なんだ?」
「これよ」
言ってパチュリーは懐から何かを取り出した。
金粉にまみれた小さな人形。服や羽の形から、レミリアを模したものだとかろうじで解った。
「富ませたい対象を象った人形を作って、中にその髪の毛を入れる。そして呪を紡ぎつつ金粉を振りかける。するとその対象は繁栄するという術よ」
「そんなお手軽な……!」
「もちろん副作用もあるわ」
目をキラキラと輝かせた霊夢に、釘を刺すように言う。
「目立つようになるのよ。良きにつけ悪きにつけ。誘蛾灯みたいに人妖を惹きつけるわ」
みるみると消沈していく。
そうでなくとも、得体の知れない連中が必要以上に集結する博霊神社。これ以上目を引くようになったら、目どころか色々当てられなくなること、想像に難くない。
「ちなみにどういう過程で金銭が入ってくるかというと、襲来した人妖を墜とす。するとなぜか天からお金が落ちてくる、というサイクルによるわ……そうだ、魔理沙を撃墜したらどれくらい儲かるかしらね?」
「ちょっとぶん殴ってみようかしら」
「さあパチュリー! 話っ! 話の続きを! 茶々入れて済みませんでした! パチュリーとレミリアの邂逅編を!」
怪しくこちらを流し見たレミリアの視線から逃れるように、魔理沙はぶんぶんと首を振るってパチュリーにバトンを渡した。
さて、なにゆえに彼女が寒風吹きすさぶ町中でマッチを売っているのかというと訳がある。
魔女は、満十三歳で独り立ちしなければならないのだ。そういうしきたりなのである。パチュリーもその例外ではない。
マッチの方にも訳がある。
パチュリー・ノーレッジは七曜極めし世紀の魔女としてその名を知らしめており、その名の影に埋もれがちであるが、賢者の石に到達した稀代の錬金術師でもあるのだ。
魔法をばんばか撃ったところで懐は暖まらないし、腹もふくれない。スケールが途端に小さくなるが、生活の糧としての側面も、錬金術にはあった。
といっても、錬金術というのはそれほど生半可なものではない。世間様では等価交換だなんだと騒がれているが、そんなに単純なものでもないのだ。
確かに等価交換は等価交換なのだが、それは錬金術的観点からの等価交換なのである。
例えば、金1グラム精製するのに、銀100トンが必要になるのだ。
錬金術的価値観からすればこれは等価交換なのだが、経済的に見れば赤字もいいところである。まあそんなだから、一般的な錬金術師はパトロンを求めるのだが。
しかしその逆も無論ある。錬金術的には等価で、金銭的に見れば収支合うこともあるのだ。
当時のパチュリーの場合、それがマッチだったということである。何しろ木の枝一本を錬金術的過程にかけると、それがマッチになるのだから、原価はあってないようなものだ。売れれば丸儲けである。
問題があるとすれば。
売れない。
この一点に尽きた。
というのも、この町の住人、誰でも着火の魔法ぐらいは使えるのである。そんな魔法使いの町だった。どんな物好きだって、マッチなんぞ買おうはずもない。
ちなみにパチュリーがその事に気付いたのは、家を出てから五日目のことだった。
結局今日も、一箱たりとも売れなかった。
とぼとぼとした足取りで、パチュリーは裏路地に入る。適当な場所で、圧縮魔法を解除して簡易家屋を組み立てる。ぶっちゃけダンボールの家なのだが。紙は温かい。
といっても冬まっただ中である。さすがにこれだけでは心許ない。ゆえに火が必要になるのだが……
ここ五日ほど、水しか口にしていない。水オンリーでも一ヶ月はいけるわ、というあらゆる意味で素敵な巫女の発言は、瀟洒に黙殺する。
今まで売り物には手を着けず、自力で火をおこしていたのだがさすがに限界だった。空きっ腹を抱えマッチを擦り、暖をとろうとする。
小気味いい音と共に、マッチの先に火が灯り……
パチュリーは目を疑った。とうとう幻覚を見るようになってしまったのだろうか。
火の中に、景色が映っていた。
それも、贅を尽くしたご馳走の山がテーブルの上に置かれているという、当てつけがましい光景だ。
香りさえ漂ってきそうな目の前の光景に、食い入るように視線を釘付ける。
ふわふわと手を伸ばし……そして火は消えた。それと共に、パチュリーも正気に返る。
何だったのだろう。マッチを擦っただけだったのだが。決して魔法を使ったわけでもない。というか、こんな無意味な魔法は使わない。
ということは、これはマッチの効果なのだろうか。
あり得る話である。何しろ普通の手段ではなく、錬金術の産物なのだ。幻覚が見えてもおかしくはない。
しかし、あの腹の立つ映像は何だったのか。そうでなくともお腹が空いているというのに、余計減ってきた。
ここである推測が成り立つ。
本人の願望が結像するのではないだろうか?
なかなか合理的な推論である気がする。ならば試してみればよい。パチュリーは再びマッチを手に取り、火をつけた。両親を、思い描く。
炎の先の映像。
一組の男女が、ワイングラスを手に語らい合っている。いやにきざったらしい雰囲気だ。君の瞳に乾杯、とか素で言ってそうな状況。
よく見れば、奥にテーブルが映っている。
先ほどのご馳走テーブルだった。
路上生活する自分。
百万ドルの夜景だかを見ているような両親。
いやんなるほど腹が立ってきた。マッチを握り潰す。
この時の怨嗟が後にセントエルモピラーになるのだが、それは別の話である。どこがセントだ、というパクリ魔砲使いの指摘は華麗にスルーだ。
いろんな意味でやる気がなくなってきた。しかしまあ、このマッチの効果が判明したことは僥倖だ。これで明日から食いつなげるだろう。
それよりも、今日生き延びることを考えよう。何しろ焚き火が起こっていない。
拾い集めた枯れ木に、マッチで火をつける。特になにも考えなかった。
となると、これは自分の深層意識の望んだものなのだろうか。
焚き火に映ったのは、大量の本だった。
先ほどとは別の意味で、目を疑った。
何しろ本の量が半端ではないのだ。
彼女の実家も魔女の家系だけあって蔵書の数はかなりのものだが、それもこの目の前の図書館と比べれば、あばら屋も同然だった。
「うわあ……」
思わずため息をつく。
おそらく一生かかっても読み切れないであろう本の山。
読みたい読みたい、読み尽くしたい。
「……ん?」
指をくわえて見つめていた彼女が、声をあげる。
目の前の幻像。背表紙すらも読みとれるようなはっきりとしたものなのだが。
「魔法理論体系1」の隣に、「本当は実に恐ろしい童話原典」が置かれている。
「魔王と狩人」の隣に、「鈍器砲手」が置かれている。
「エメラルド板」の隣に「美味しいパスタの作り方」が置かれている。
要するに、並び方が滅茶苦茶だった。無秩序混沌にも程があるというくらいに、出鱈目だった。
「なによこれは」
憤慨したように、パチュリーは唸った。
こんな本の配列の仕方では、宝の持ち腐れだ、本に対する冒涜もいいところだ。責任者出てこい。
「ああもう、私がその場にいたら得体の知れない生き物を十二、三体召喚して、瞬く間に整頓するのに……」
悔しそうに爪を噛みつつ彼女が呟いた、その途端。
焚き火の中から、手が伸びてきた。正確に言うなら、焚き火の映した幻像の中から。
唐突な出来事に、抗う暇もない。
パチュリーは炎の中に、引きずり込まれていった。
レミリア・スカーレットは困っていた。本を棚に納めつつ、ため息をつく。
そう、図書館の整理をしているのだ、彼女が。
紅魔館の主たるレミリアが、なぜにこんな事をしているのかというと、彼女以上のインテリジェンスを持ち合わせたメイドが存在しないためである。
種類も様々な本を系統立てて整理するには、相応の知識が必要になるのだ。
しかしそのレミリアにしても、全ての内容を理解、把握できるわけでもなかった。
かといって放置しておけば、弾幕やら何やらをまき散らす怪本に変貌するものもあるのだ。捨て置けない。
正直なところ、手詰まりだった。
知識人でもいれば。
ここのところ毎日思っていたことが、再び脳裏をよぎった矢先である。
視界の隅に炎が灯った。
また本が意志を持ったか、と視線をやる。
目に映ったのは奇妙な光景だった。
炎の中に、まだ幼いともいえる少女の姿があるではないか。
あまつさえ、こんな声すら聞こえてくる。
『ああもう、私がその場にいたら得体の知れない生き物を十二、三体召喚して、瞬く間に整頓するのに……』
レミリアの頬が、にやりと歪む。
これぞ神の思し召し。
吸血鬼が神とか言うなと紅白は言うが、そもそも神が奉ってあるのかも怪しい神社の巫女に言われたくもない。
とにもかくにも千載一遇の大チャンスである。彼女は炎の中の少女に手を伸ばした。
こちら側に引っ張り込んだ。それはいい。
しかし、それを為した当の本人は困惑していた。
自分と人間の肉体の強度が違うのは知っていた。
しかし……たかだか1メートルの高みから落下したくらいで血を吐き白目を剥き、心臓が止まり息まで詰まるほどに脆弱だとは思ってもみなかった。そんなんはこいつだけだ、という白黒はとてもうるさい。
非常に不味い。
例えば吸血行為の末の殺害であるならば矜持ももつが、手伝いに招いて殺しちゃいましたとあっては無惨なまでに恥さらしだ。
何とか事態を打開しようと、乏しい救命知識を絞り出す。
とりあえずあれね、心臓マッサージね!
思い立ったが吉日。そもそも日数またげるほどに猶予もないが。
ともかくレミリアは心臓マッサージを開始した。何を勘違いしたのか倒れた少女に馬乗りになり、そしてその胸に手を置く。
華奢な外見とは裏腹に、それの存在主張は著しかった。一瞬殺意が沸く。それの赴くままに、レミリアは少女の胸を鷲掴んだ。
ああ、これすらも天の采配なのだろうか?
レミリアが激情のままに少女の胸を揉みしだいた、その刹那。
「う……」
少女の意識が戻った。
うっすらと開かれる瞼。
ぶつかり合う視線。
状況認識が出来ているのかいないのか。
なぜか少女の頬が赤く染まる。つられてレミリアも赤くなる。
責任……取って下さいね?
ごめんなさい女の子への責任が取れるほどの度量はありません。ここの本を永久貸与するのでそれで許して下さい。
yeah!
そんなわけでパチュリーはヴワル大図書館の主になりました。
ちなみに本は、彼女の召喚した無数の使い魔達が整理しました。
中でも赤と青の羽の、名も無き本読み妖怪がハッスルしたおかげで、たったの半日で整理は終わりました。その本読み妖怪は報酬として数冊の本を貰い、喜び勇んで帰っていきました。きっと幸せな妖生を謳歌していることでしょう。
「まあこういう訳よ」
「「嘘吐け」」
パチュリーの締めに、魔理沙どころか霊夢までそう突っ込んだ。
「な、何よ、何を根拠にそんな……」
明らかにたじろいだ様子で、彼女が言う。
「お前そんなに胸ないだろ」
「し、失礼ね、私は着やせするのよ」
「あと、yeahとか言わないだろ、絶対」
「……あのころ私は若かったのよ」
「レミリアが責任とるだの何だの、そんな殊勝な事言うわけないわよね」
「酷いわ霊夢。私、貴女にだったら……!」
「はいはいありがと」
「……まあともあれ」
こほん、と咳払いをして、レミリアが意味ありげにパチュリーを見る。
「だめよパチェ。作り話するにしても、もっと現実味をもたせなくっちゃ」
「……なら、レミィが話しなさいよ」
唇を尖らせて、パチュリーが言った。
レミリアは、自信たっぷりに頷く。
「そうね。なら、こういうのはどうかしら……」
「……なら、とか言ってる時点で嘘でしょうが」
ぼそり、と霊夢が突っ込む。沈黙するレミリア。
「要するに、教える気がないのね」
やれやれと首を振る。
「まあ、言葉にすると壊れちまう思いもあるしな」
どこか達観したように言う魔理沙に、即座に突っ込みが入った。
「あら、深いわね」
「貴女の今の心境?」
「だっ……! だから私と香霖はそういうんじゃなくって……!」
「誰も一言も名前は出してないんだけど」
「はいはい暑い暑い」
「だからお前ら人の話を」
「小悪魔ー、おかわりー」
「はーい」
「聞けー!」
話の流れは魔理沙に行き着き。
結局。
レミリアとパチュリーの出会いが語られることはなかった。
まさか知識と日陰の少女と永遠に紅い幼き月のファーストコンタクトが、あるキャラクターオンリーイベント即売会の売り手と買い手としてだったなどとは、口が裂けても言えるはずがなかった。
後にその歴史を紐解いて笑い転げる半獣を、「殺しちゃいますよ?」と言いながら追いかけ回す知識人が夏の夜中を彩ったというが、色々封鎖されているので詳細は不明である。
・・そして慧音、歴史というのは常に強者の視点で語られる物・・・暴いてはいけない真実ってのもあるのさ・・
まあパチュの胸のあたりで違和感覚えましたがー(ぉ
あと魔理沙はさっさと霖之助と入籍しちまえw
真面目な理由を隠して面白おかしく説明しているのかと思いきや、実際の理由の方がぶっ飛んでたとは。
事実は小説より奇なり、なんですかねえ。
後、こーりんの事をからかわれる魔理沙可愛いよ!!と言うのは俺の中でめでたく公式として認定されました。
ツッコミどころ満載、と言うかツッコミどころじゃないのはどこですか。
そんなことはどうでもよくて、嘘っぽい嘘は本気にしてしまうものだなぁと思いました。
いろいろと摩訶不思議世界。
そしてオンリーイベントで邂逅した二人。
売り手と買い手という違いはあれど、嗜好はとても近いということなんですね。
…まさか今でも活動しt(スカーレットデビル
マジで腹居痛えっす。
まさか、まさかウィッチ・クエストなのかぁぁ!?
ていうか、即売会とかって幻想郷にもあるのん? それとも外にいた時に出会ったのか? 確かに夏コミあたりに妖怪の10匹や20匹くらい紛れ込んでても、誰も気にしない気もするけど。ある意味魔界だし、あそこも。
あと、香霖と魔理沙いいですね。実にいい。幼馴染的反応が実に素敵です。
そう言えばパチェとの出会いについてはあまり見ないな、と思ったり。
……嘘ばっかでしたが。面白かったッス。
あれ。もしかして、ハッスルした名も無き本読み妖怪って……
ああ、哀れ。(合掌)