Coolier - 新生・東方創想話

紅白と黒白と紫の夏

2005/07/28 06:38:12
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※少しキャラがらしくない箇所があったりしますのでご注意下さい。




魔理沙「なあ・・・霊夢」
霊夢「何?」
魔理沙「暑い」
霊夢「私に言わないで」
魔理沙「じゃあ、誰に言えばいいんだ?」
霊夢「壁にでも向かって言ってなさいよ」

季節は夏真っ盛り。
ここは博麗神社。居間で向かい合いながら暑さにだれる少女が二人・・・

魔理沙「おい、暑いぜ」
魔理沙「何でこんなに暑いんだ?夏だからっていうには調子にのりすぎだぜ?」
魔理沙「暑くて倒れそうだぜ・・・」
霊夢の言うとおりに魔理沙は壁に向かって愚痴を言い始めた。
当たり前のように壁は返事をしない。
霊夢「・・・・・」
そんな魔理沙を無視して一人冷たい麦茶を飲む霊夢。
外を見ると憎いくらいに太陽の光が境内を輝かせている。
魔理沙「あ~・・・暑くて仕方が無いぜ・・・」
魔理沙は床に突っ伏しながら言う。
霊夢「・・・夏だから仕方が無いでしょ」
すまし顔で言い放つ霊夢。
魔理沙「我慢できないぜ」
突っ伏したまま上目遣いで霊夢を見る魔理沙。
そんな魔理沙に霊夢は溜息をつく。
霊夢「今は真っ昼間だから。夕方にでもなれば少しはマシになるわよ」
魔理沙「それまでこの暑さをどう乗り切ればいいんだ・・・」
霊夢「・・・ほら、麦茶あげるから」
魔理沙「もう腹いっぱい飲んだ」
霊夢「じゃあ団扇」
魔理沙「自分で扇ぐの面倒くさいぜ」
霊夢「じゃあ、井戸に行って冷たい水でも浴びてきなさいよ」
魔理沙「この暑さで動く気になれねぇ」

ぶちぃ

その瞬間、霊夢の中の何かが切れた。

バン!とちゃぶ台をひっくり返しながら立ち上がる霊夢。
あまりに突然の事だったので魔理沙はちゃぶ台と共に吹き飛ぶ。
霊夢「じゃあ、あんたはどうしたいのよ!?どうして欲しいのよ!?暑いのは私も一緒よ!
   自分で扇ぐのが面倒くさい!?あんたはどこぞの吸血お嬢様か!?
   暑さで動く気にならない!?じゃあ、何であんたはここにきたのよ!?
   そんなに暑いの嫌なら体温無くす!?冥界の住人にでもなる!?
   あっちは涼しいかもよ!?手伝うわよ!?」
鬼神降臨。この暑さで苛立っていたのは魔理沙だけではなかった。
はぁはぁと荒い息をはきながら魔理沙を睨みつける霊夢。
魔理沙「・・・ま、まあ落ち着け。その・・・なんだ、私が悪かったから・・・」
部屋の隅でひっくり返ったちゃぶ台の影から顔を出し、苦笑いする魔理沙。
霊夢「・・・・・」
落ち着いた霊夢だが、魔理沙を睨み続ける。
魔理沙「ハハハ・・・」
頭を掻きながら苦笑いの魔理沙。
霊夢「・・・まったく」
と、座布団に座る霊夢。
魔理沙はホッとしてちゃぶ台を元に戻す。


魔理沙「しかし・・・暑いだけじゃないんだ」
霊夢「他に何かあるの?」
魔理沙「暇なんだ・・・」
そう暇なのである。何かをしていればこの暑さも少しは気にせずにいられるのだが、
今は何もすることがないのである。何もしないから余計に暑さが気になるのである。
霊夢「じゃあ、境内の掃除する権利を与えるわ」
魔理沙「何が悲しくてこのくそ暑い中掃除しようと思うんだ?」
霊夢「思わないわね」
魔理沙「だろ?だから暑い暑い言いたくなってくるんだぜ」
霊夢「私に言われても仕方ないでしょ。壁にでも言ってなさい」
魔理沙「ああ、そうするぜ」
再び壁に向き直る魔理沙。
それを見て霊夢はまた溜息をつく。
霊夢「(子供じゃないんだから・・・)」
といっても見た目は子供であるが。


ちょこんと正座して壁を見つめる魔理沙。
その姿は可愛らしいといったら可愛らしい。
魔理沙「壁さんよ、暑いぜ」
魔理沙「壁さんよ、この暑さをどうにかしてくれ」
魔理沙「壁さんよ、せめて暇を無くす何かをくれ」
霊夢「(何かって何よ・・・)」
魔理沙「壁さんよ、何か言ってくれ」
?「暇なら夏らしいことでもしましょ」
霊夢&魔理沙「!?」
壁が喋った。
思わず魔理沙は後退する。
と、次の瞬間に魔理沙と壁の間に空間の裂け目が現れる。
?「呼ばれて飛び出てぇ」
その裂け目から派手なゴスロリ衣装を着た女性、八雲紫が現れる。


紫「こんにちは。ご機嫌いかが?」
微笑んで呆気にとられる二人を見つめる紫。
魔理沙「この暑さで私の御機嫌は右斜め65度だぜ」
霊夢「誰もあんたを呼んだ覚えはないんだけど・・・?」
紫「暇なら夏らしいことでもしましょ」
霊夢「人の話を聞かないわね・・・」
笑顔で無視する紫に霊夢は溜息。
魔理沙「夏らしいことってなんだ?」
三者立ったまま話を続ける。
紫「夏といえばいろいろあるじゃない」
魔理沙「例えば?」
紫「虫取り、魚釣り・・・」
霊夢「虫取りって私達は何歳よ・・・」
魔理沙「魚釣りっても釣竿が無いぜ」
紫「お祭りに海・・・」
魔理沙「お祭りって、里の祭りはまだだろ?」
霊夢「うん」
紫「地蔵盆に宴会」
魔理沙「地蔵盆って何だ?」
霊夢「宴会は毎週のようにやっているじゃない・・・」
紫「と、まだまだいろいろあるわ」
魔理沙「今言った中で出来そうなのは・・・海?」
霊夢「でも今からじゃ遅くなるわよ」
紫「私の隙間で行けばすぐよ」
霊夢「あ、そっか」
魔理沙「しかし、水着が無いぜ?」
あ、と気付く霊夢と魔理沙。
紫「海は泳ぐだけじゃないわ。行くわよ」
手に持つ傘で隙間を開き、そこに霊夢と魔理沙を放り投げる。
霊夢「ちょ、ちょっと!」
魔理沙「ま、待て!」
あ~~~~~~・・・と隙間に消える二人に続いて紫も隙間に入る。
誰もいなくなった居間には蝉の鳴き声だけが響いていた。











ペっと隙間から放り出される三人。
着地に失敗した霊夢と魔理沙は砂浜に顔を突っ込んでいた。
トっと砂浜に降り立った紫は周囲を見渡し、「綺麗ね」とその青い海を見て微笑んだ。
魔理沙「ペッペッ!砂が口に入ったぜ・・・」
舌を出して目を瞑りながら砂を吐き出す。
霊夢「もう!髪に砂がついたわ・・・」
手で髪をわしゃわしゃと掻いて、砂を落とす。
紫「ふふふ、ほら、御覧なさいな」
紫に促され、海を見渡す二人。
魔理沙「・・・久しぶりだぜ、海を見るのは」
霊夢「ええ、綺麗ね・・・」
久しぶりに見る海に自然と笑みがこぼれる。
自分達のいる白い砂浜。
そこから5,6歩先には青の世界。
上を見上げればポツポツと白い雲が浮かぶ青い空。
目を正面に向ければそこは果ての無いような青の海。
風が心地よく、髪を撫でていく。
聞こえるのは波の音。
どこか懐かしい感じもする。
そんな場所に3人の少女は立っていた。





霊夢「目を凝らしても先が見えないね」
霊夢が遠くを見るように前屈みになって呟く。
魔理沙「ああ、やっぱり海って大きいな~」
微笑みながら霊夢の呟きに答える。
クスクスと後ろから聞こえる。
振り返ると紫が日傘を差しながら扇子で口元を隠し、笑っていた。
霊夢「何が可笑しいのよ?」
紫「クスクス、貴方達、靴濡れてるわよ?」
魔理沙「え・・・」
視線を足元に落とすと打ち寄せる波が霊夢と魔理沙の足を濡らしていた。
魔理沙「げ・・・気付かなかったぜ」
霊夢「あぁ~・・・びしょびしょ・・・」
紫「二人とも、ぼ~っとしながら波が近付くの気付かないんだもの。可笑しかったわ♪」
苦笑いしながら霊夢と魔理沙は濡れた靴を脱ぐ。
脱いだ靴は波の届かぬ辺りに置いておく。
魔理沙「これなら大丈夫だな」
霊夢「何だろう・・・こうやって水に入るのって久しぶりな気がする・・・」
霊夢は打ち寄せる波の上を素足で歩く。
魔理沙「何だ?霊夢って不潔だな」
霊夢「何で?」
魔理沙「水に入るのが久しぶりってことはお風呂もだろ?」
霊夢「それは別よ!!」
紫「まったく・・・何処に言っても貴方達は相変わらずね~」
いつのまにか紫も靴を脱いで、波に足を濡らしている。
服は濡れないように手でつかみ、少し上げている。
霊夢「珍しいわね?あんたがそんなことするなんて」
紫「貴方達がとても楽しそうにはしゃぐからね。つられて、よ」
そういって微笑む。
それにつられて、二人も微笑む。
魔理沙「しかし、何だな」
霊夢「うん?」
魔理沙「そのスカートに隠れる足は太めと噂されたりしてたが、意外と細くて綺麗だぜ」
笑いながら言う魔理沙。
紫「意外と・・・ですって?」
バッシャ~~~ン!!!
そう言うと紫は魔理沙を海に押し倒した。
魔理沙「うわ!な、何するんだよ!」
全身ずぶ濡れの魔理沙と紫。
紫「失礼なことを言うからよ~」
霊夢「あんたたちねぇ・・・」
やれやれといった表情で溜息をつく霊夢。
魔理沙「くそ!こうなりゃヤケだ!」
と言って、海に倒れたまま霊夢の足を引っ張り、ひっくり返す。
霊夢「きゃあ!?」
バッシャ~~ン!!
豪快に海に沈む霊夢。
紫「これでみんな同じね」
クスクスと紫は笑う。
魔理沙「ハハハ!」
大声で笑う魔理沙。
体制を立て直した霊夢が立ち上がる。
霊夢「あんたたち・・・覚悟しなさいよ!」







青い海にとても楽しそうな笑い声が聞こえる。
少女達は笑い合いながら水をかけあっている。







夏の太陽が、
打ち寄せる波が、
心地よい潮風が、
どこまでも続く青い海が、
彼女達をそっと優しく包んでいた。















気付くと太陽は海に沈もうとしていた。
三人はそのどこか切ない雰囲気を見せる夕日を見つめながら砂浜に腰を下ろし、微笑んでいた。
ちなみに服はもう乾いている。
霊夢「はぁ・・・久々に水遊びをした気がするわ」
魔理沙「そうだな。童心に帰ったような気がするぜ」
紫「ふふ、見たまんま子供でしょう」
魔理沙「おいおい、言ってくれるな・・・」
霊夢「そんなこと言いながら紫も楽しんでたくせに」
魔理沙「だな。一番よく笑ってたのは間違いなくあんただぜ」
紫「そうね、楽しかったわ。こんなのは本当に久しぶり・・・」
紫が夕日を見つめる。
そのオレンジの光を浴びた紫の横顔は同姓の霊夢、魔理沙から見ても綺麗だと思えた。
霊夢「紫」
紫「うん?」
呼ばれて霊夢に顔を向ける。
霊夢と魔理沙は笑顔で
霊夢「また来ましょうね」
魔理沙「また来ようぜ」
その二人の言葉に紫は微笑んで
紫「そうね。また来年来ましょう」














・・・後日・・・
紫「海に行ってながら『これ』をするのを忘れてたわ」
霊夢「何?」
紫が床にどさっと置いた袋の中から出てきたのは・・・
魔理沙「スイカ・・・」
紫「そうスイカ割りよ」
微笑んで言う紫。
霊夢「うん?袋の奥にまだ・・・」
出てきたのは・・・
魔理沙「萃香・・・」
そこにはグッタリとしながらも涙目で助けを請う萃香がいた。
手足は縛られ、口には御札が張ってある。
紫「そう・・・萃香割りよ・・・」
お久しぶりです。ポン酢です。
この作品を読んでいただけて光栄です。
ありがとうございます^^
毎日暑いですねぇ・・・溶けそうな程暑いです・・・。
この話、「海にいる紫様」を想像したところから始まりました。
少し紫様がらしくないかもしれませんが・・・。
最後のオチで紫様の禍々しさというか悪戯っぽさを表したつもり・・・。
自分、焼けやすい体質なのであまり海は行きたくないのですが
海が大好きなのです(何だそりゃ)
この夏の間に妖々夢の藍様を倒し、紫様に会いたい。
そして近々、海を見に行きたいと思っているポン酢でした。


誤字脱字には気をつけたつもりですが、あればご指摘いただけるとありがたいです(汗)
ポン酢
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コメント



0.1910簡易評価
5.60てーる削除
萃香割り・・・いつかきっと誰かがやってくれると信じてましたd(-- GJ
11.60なぬし削除
パチェが出てくると思ってたのは俺だけじゃないはずだ。
18.60沙門削除
 漫才見てるみたいで楽しかったです。昨日は台風の後で日干し状態だったから尚更。ご馳走様でした。
20.50K-999削除
おーい紫さーん? 萃香割とは誰もが思いつきながらも形にしなかったことを・・・!
>グッタリとしながらも涙目
 多分、萌へ(死。
29.70SETH削除
とにかく割ってみよう 多分・・・増える
54.80ミスターX削除
>5.
>20.
>29.
叩いたら分裂するところまで続けてほしかった