沈んだ船があって、沈まない船がある。そう言うワケじゃなくて、船はみんな全部全くもって沈む。私は沈みかけた船を必死に漕いで海原を滑っている。浸水。壊れかけているのだ。風に学ばなかった帆はところどころ破れ裂け、下からは次から次へと水が染みいってくる。そのうち私の船は計算を間違えて海と直角にこぎ始めようとするんじゃないかと思う。それを見て他人はどう思うだろう。きっとバカにするだろうな。でもいいんだ。
今私の前を走っている船がある。横に併走する船がある。少し後ろを走っている船がある。ぶつかりそうなときもあるし、離れてそのまま見えなくなる船もある。どうなるのかは知らないし、分からない。見えない物を人間はこれ、と定めることはできない。
沈みゆく船を見かけた。私はどう声をかけようか迷って迷いながら漕いでいたから引きずられそうにまた、壊れた部分が増えていく。もうボロボロだ。帆が海に濡れて、船の縁が海の面にくっついて連れられていった。私は何も聞かなかったし、何も聞こえなかった。彼の船は、自分の後始末分だけ残していった。他の船に分け与えるような財産や意志やそういった遺産は何も無かった。きっとサルベージャーにも見向きもされないぐらい、静かな海のそこで横たえていることだろう。
私は羨ましいと思った。それは強欲だとも思った。だって自分独りになって生きて自分独りの為に生きていた。でも私にとってはそれは寂しいことだった。むず痒い寂しさは後で膿む。それと戦うことを私は本当に恐れていて、だから適当な近くの船と接触して話したり物を交換してみたり、志とかを聞いてみたりしている。恐れることが本当にそうなってしまったとき、私は彼の船のような態度が取れるだろうか。今の私はまだ、悲痛な叫びを聞かせたがるだろう。誰かに手をさしのべて欲しいと思っている気がする。
軋んだ木と木。塗膜が剥がれむき出しになった部分から腐る。でも他人も似たようなものだ。みんな腐りつつ船を走らせるのだ。私だけそれを無い物として扱うことはない。みんなそうだから、そういうものだと諦めるわけでもない。帆が凪いでいる風に揺れない間は動けないかと言えば、それは普通ならその通りだ。その間に私は次はどの方角に向かおうかを考えるのだ。
水面に直角に進んでみるのは、ひとまず止めにしてみるか
今私の前を走っている船がある。横に併走する船がある。少し後ろを走っている船がある。ぶつかりそうなときもあるし、離れてそのまま見えなくなる船もある。どうなるのかは知らないし、分からない。見えない物を人間はこれ、と定めることはできない。
沈みゆく船を見かけた。私はどう声をかけようか迷って迷いながら漕いでいたから引きずられそうにまた、壊れた部分が増えていく。もうボロボロだ。帆が海に濡れて、船の縁が海の面にくっついて連れられていった。私は何も聞かなかったし、何も聞こえなかった。彼の船は、自分の後始末分だけ残していった。他の船に分け与えるような財産や意志やそういった遺産は何も無かった。きっとサルベージャーにも見向きもされないぐらい、静かな海のそこで横たえていることだろう。
私は羨ましいと思った。それは強欲だとも思った。だって自分独りになって生きて自分独りの為に生きていた。でも私にとってはそれは寂しいことだった。むず痒い寂しさは後で膿む。それと戦うことを私は本当に恐れていて、だから適当な近くの船と接触して話したり物を交換してみたり、志とかを聞いてみたりしている。恐れることが本当にそうなってしまったとき、私は彼の船のような態度が取れるだろうか。今の私はまだ、悲痛な叫びを聞かせたがるだろう。誰かに手をさしのべて欲しいと思っている気がする。
軋んだ木と木。塗膜が剥がれむき出しになった部分から腐る。でも他人も似たようなものだ。みんな腐りつつ船を走らせるのだ。私だけそれを無い物として扱うことはない。みんなそうだから、そういうものだと諦めるわけでもない。帆が凪いでいる風に揺れない間は動けないかと言えば、それは普通ならその通りだ。その間に私は次はどの方角に向かおうかを考えるのだ。
水面に直角に進んでみるのは、ひとまず止めにしてみるか
ただ、書きたい一つの材料を、不格好に見えないように綺麗にしてそのまま出した印象。調理と盛り付けの過程が丸々飛ばされていて、非常に残念です。
短いですが中々に深いテーマを扱っていたと思います。