「はい、あーんしてお姉ちゃん」
「あーん」
こいしが摘んでいる豆をさとりが食べる。さとりはその際に指先も咥えたのだが、なんでそんなに艶めかしい食べ方をしているのだろうか。
「……なにやってるんですかお二人とも」
「うわぁ、すごい数……」
部屋に入ったお燐とお空が見たのは大量の豆。袋詰めのやつもある。
「なにって、今日は節分よお燐」
「方角は南々東。それー、鬼はそとー!」
南々東は恵方巻だ。とりあえず南々東にばらまかれる豆は無視した。
あらかた豆を投げたこいしはさとりに豆をねだり、姉妹であーんを再開する。
「って、それですよそれ! あーんは節分と関係ないでしょう!?」
仲睦まじい以上の何かがそこにはあった。おそらく愛だ。
「え?」
「どうしたのお燐?」
対する姉妹は揃って首を傾げる。
自分が間違ってるのかこれは。
お燐が自身を疑い出すと、そこに救いを差し延べたのはお空だった。
「ほら、あれじゃない? 年の数だけ豆を食べるやつ。二人で食べさせあってるんだよ」
「あたいは豆を食べさせあう節分を始めて見たよ」
「大正解よ、お空。こいしとイチャイチャしながら食べられるの。いいでしょう」
何故かドヤ顔のさとり。その顔はこいしのあーん攻撃で幸せそうに崩れる。
そしてさとりはわざと見せつけるようにこいしの指ごと咥えた。
お姉ちゃんくすぐったいよ~、とこいしの方もラブラブモード。
「よ、よかったですねさとり様もこいし様も……」
「いいなー、私もお燐のお豆食べたいなぁ」
「その言い方やめて!」
知らない故の破壊力。お燐はかなりドキッとさせられた。
決めた、後でお空の部屋に行こう。
心を読んだのか、さとりの咎めるような鋭い視線がお燐を貫いた。
「にゃうっ! すみませんでしたぁ!」
「お燐、どしたの?」
「お、お空は真っ白のままでいいってことさ」
「へぇ……?」
「わかってないところが余計にかわいいなあもぉ!」
「うにゅ~!?」
「ところで……」
つい抑え切れずにお空を撫でていたお燐がさとりたちの方を向く。お燐が見たのは大量の豆だ。
「さとり様、いくつですか?」
「女性に年齢を聞くとはなんと失礼な」
「すいません……。ですがこの豆の量を見ればそう言いたくなります」
実際、姉妹二人はずっと豆を食べさせあっている。いつまでイチャイチャと豆を食べるのだろうか。
「あたいたち妖怪ですから、三桁は食べなきゃいけませんよ」
お燐もお空も立派な妖怪だ。もちろんさとりやこいしも人間とは比べられないくらいの年齢である。
「そうねぇ、こいしは514粒かしら」
「じゃあお姉ちゃんはさとりだから…………310粒かな。りは仕方ないね」
『そうねぇ』とか『じゃあ』とか『仕方ない』ってなんなんだ一体。年齢がフレキシブルだ。
「そうね、そうしましょう」
「お姉ちゃんのほうが200歳も年下だね」
「じゃあこいしがお姉ちゃんよ」
「おぉ、さとりよ!」
「こいしお姉ちゃん!」
そして姉妹は二人だけの世界に旅立った。
「あー……ダメだなこれは」
「煎っただけの豆なのに甘いねお燐」
ラブラブな空気に耐えられず、お燐たちは豆の袋をいくらか掴んで部屋を出た。
あの姉妹は翌朝まで放っておくのが一番だろう。
「とりあえずお空、一緒に食べないかい?」
「うーん……それをおつまみにしてお酒飲もうよ」
「そうだね、そうしようか」
節分はもういいや、と二人の意見が一致した。
「あの二人も仲良しね」
さとりはお燐とお空の姿を見つめる。
あの繋がれた手はいかにも幸せそうだ。
「負けられないね」
「ええ、こいしお姉ちゃん」
さりげないさとりの言葉をどこかむず痒く感じてしまうこいしは顔を赤くした。
自分は妹であるほうが落ち着く。
「や、やっぱりそれなんか恥ずかしいからやめない?」
「今から310粒の豆を口移しで食べさせてくれたらね」
「う……お姉ちゃんいじわるだぁ」
「『さとり』でしょう、お姉ちゃん」
「うぅぅ…………」
涙目になったこいしは今になって理解した。
本当の鬼はここにいたのか、と。
「あーん」
こいしが摘んでいる豆をさとりが食べる。さとりはその際に指先も咥えたのだが、なんでそんなに艶めかしい食べ方をしているのだろうか。
「……なにやってるんですかお二人とも」
「うわぁ、すごい数……」
部屋に入ったお燐とお空が見たのは大量の豆。袋詰めのやつもある。
「なにって、今日は節分よお燐」
「方角は南々東。それー、鬼はそとー!」
南々東は恵方巻だ。とりあえず南々東にばらまかれる豆は無視した。
あらかた豆を投げたこいしはさとりに豆をねだり、姉妹であーんを再開する。
「って、それですよそれ! あーんは節分と関係ないでしょう!?」
仲睦まじい以上の何かがそこにはあった。おそらく愛だ。
「え?」
「どうしたのお燐?」
対する姉妹は揃って首を傾げる。
自分が間違ってるのかこれは。
お燐が自身を疑い出すと、そこに救いを差し延べたのはお空だった。
「ほら、あれじゃない? 年の数だけ豆を食べるやつ。二人で食べさせあってるんだよ」
「あたいは豆を食べさせあう節分を始めて見たよ」
「大正解よ、お空。こいしとイチャイチャしながら食べられるの。いいでしょう」
何故かドヤ顔のさとり。その顔はこいしのあーん攻撃で幸せそうに崩れる。
そしてさとりはわざと見せつけるようにこいしの指ごと咥えた。
お姉ちゃんくすぐったいよ~、とこいしの方もラブラブモード。
「よ、よかったですねさとり様もこいし様も……」
「いいなー、私もお燐のお豆食べたいなぁ」
「その言い方やめて!」
知らない故の破壊力。お燐はかなりドキッとさせられた。
決めた、後でお空の部屋に行こう。
心を読んだのか、さとりの咎めるような鋭い視線がお燐を貫いた。
「にゃうっ! すみませんでしたぁ!」
「お燐、どしたの?」
「お、お空は真っ白のままでいいってことさ」
「へぇ……?」
「わかってないところが余計にかわいいなあもぉ!」
「うにゅ~!?」
「ところで……」
つい抑え切れずにお空を撫でていたお燐がさとりたちの方を向く。お燐が見たのは大量の豆だ。
「さとり様、いくつですか?」
「女性に年齢を聞くとはなんと失礼な」
「すいません……。ですがこの豆の量を見ればそう言いたくなります」
実際、姉妹二人はずっと豆を食べさせあっている。いつまでイチャイチャと豆を食べるのだろうか。
「あたいたち妖怪ですから、三桁は食べなきゃいけませんよ」
お燐もお空も立派な妖怪だ。もちろんさとりやこいしも人間とは比べられないくらいの年齢である。
「そうねぇ、こいしは514粒かしら」
「じゃあお姉ちゃんはさとりだから…………310粒かな。りは仕方ないね」
『そうねぇ』とか『じゃあ』とか『仕方ない』ってなんなんだ一体。年齢がフレキシブルだ。
「そうね、そうしましょう」
「お姉ちゃんのほうが200歳も年下だね」
「じゃあこいしがお姉ちゃんよ」
「おぉ、さとりよ!」
「こいしお姉ちゃん!」
そして姉妹は二人だけの世界に旅立った。
「あー……ダメだなこれは」
「煎っただけの豆なのに甘いねお燐」
ラブラブな空気に耐えられず、お燐たちは豆の袋をいくらか掴んで部屋を出た。
あの姉妹は翌朝まで放っておくのが一番だろう。
「とりあえずお空、一緒に食べないかい?」
「うーん……それをおつまみにしてお酒飲もうよ」
「そうだね、そうしようか」
節分はもういいや、と二人の意見が一致した。
「あの二人も仲良しね」
さとりはお燐とお空の姿を見つめる。
あの繋がれた手はいかにも幸せそうだ。
「負けられないね」
「ええ、こいしお姉ちゃん」
さりげないさとりの言葉をどこかむず痒く感じてしまうこいしは顔を赤くした。
自分は妹であるほうが落ち着く。
「や、やっぱりそれなんか恥ずかしいからやめない?」
「今から310粒の豆を口移しで食べさせてくれたらね」
「う……お姉ちゃんいじわるだぁ」
「『さとり』でしょう、お姉ちゃん」
「うぅぅ…………」
涙目になったこいしは今になって理解した。
本当の鬼はここにいたのか、と。
こいさとよりもさとこいが好きです
ただそれだけなんですが、それが良かったです。