「なんまいだーなんまいだー」
お姉ちゃんの部屋のドアを開けたら、怪しい儀式の真っ最中でした。
「アーメンそうめん!」
謎の呪文を唱え続けるお姉ちゃん。
お姉ちゃんの目の前で、ちょっと困った様子で正座しているお燐。
お燐の後ろで光っているお空。
私の理解を超える事態だ。
お夕飯ができたから、お姉ちゃんを呼びに来たのだが、これは一体どうしたらいいのだろうか?
「お、お姉ちゃん……?」
関わりたくないのだが、放っておくとご飯が冷めてしまう。
見なかったことにしたい気持ちを必死に抑え、どうにか声をかける。
「うえるかむ・とぅ・さとりー教団!!」
なんか歓迎された!? でもさとりー教団って何!?
こういう意味不明なお姉ちゃんを見ると、第三の目を開いてどんな阿呆なこと考えてるのか知りたくなる。
でも開いたらお姉ちゃんの計略に引っかかったことになる気がする。それじゃあお姉ちゃんに負けた気がするので、意地でも開かないでいる。
「これは、統一さとり教会におけるトップ・シークレットの儀式! 知られたからには生かして返さん!」
「いや、さっきウエルカムとか言ってたじゃん! あとなんか宗教名変わってるし……」
「いけ!! 燐!! 侵入者を捕まえるのよ!!」
「え!? あたいですか!?」
「何か問題あるかしら?」
「いや、さっきあたいが御本尊とか言ってたじゃないですか…… 御本尊ってラスボスですよね? 最初に戦っていいんですか?」
「あ、そうか、だめですね。でも後光役のお空を外すわけにも行かないし……」
どうやらお姉ちゃん教は、お燐が御本尊役で、お空は後光役らしい。何だよ後光役って…… ランプとか適当な光源使えばいいじゃない。
と言うかお空には八咫烏様が入ってるんだし、そっちを御本尊にすればいいのに。なんでお燐が御本尊役なんだろう。
そもそも下っ端は居ないのだろうか。お燐がいつも仲良くしてるゾンビフェアリーたちとか使っちゃダメなのだろうか。
ツッコミどころしか思い浮かばない。この短時間に幾つものボケをこなすお姉ちゃんはもう漫才でもやってればいいのではなかろうか。
「普通こういう時って下っ端の信者みたいなのをけしかけるものじゃないの?」
「さとり真理教は、信者などという脆弱な存在は必要としない、新感覚の宗教なのです! 幻想郷は常識にとらわれてはいけないのですね!」
「いや、信者要らないって、それってすでに宗教といえないじゃない」
「わたしは、この子たちがいれば十分だってことですよ」
信者の居ない宗教に意味はあるのだろうか。
そんな疑問が浮かぶ私を無視して、お燐とお空を抱き寄せるお姉ちゃん。
「さとりさまぁ」
「うにゅぅ」
抱きしめられた二人は満足気だ。
家族の絆を確かめ合うシーンとして、ここだけ切り取れば感動的なシーンにも見えなくはない。しかしその前にやっていたあやしい儀式やなんやらで全て台無しだ。
「というかなんでいきなり新興宗教なんか始めたの?」
「最近地上では宗教が流行ってるみたいじゃないですか。この流れに私達も立ち遅れてはいけないと思いまして。空だけじゃなくて、燐も神様の力を手に入れられたら楽しいと思ったので、ひとまず神降ろしの儀式をしています」
例えあれが神降ろしの儀式だったとしても、あんな奇怪な儀式で降りてくる神様なんてきっととんでもでもないやつじゃなかろうか。
「別に地上の人たちと張り合わなくたっていいんじゃないかなぁ。と言うか神降ろしってあんな奇妙奇天烈な儀式じゃないと思うよ」「でも宗教やってないと座談会呼んでくれないみたいですし……」
「座談会?」
座談会ねぇ。体を動かすのは嫌いだが頭を働かすのは好きなお姉ちゃんだ。そう言う知的なイベントは好みかもしれない。
だが、口より先に手ならぬ弾幕が飛び出るのが幻想郷の住民達である。座談会みたいな大人しいイベントなどやるのだろうか?
座談会(ただしくスペルカードで語る)とか座談会(という名の宴会)とか後ろにいろいろ付きそうな気がするんだけど。
「座談会なんてイベント、何処から知ったの?」
「この本に書いてありました」
取り出したのは一冊の真新しい本。
求問口授?
お燐が、地底の妖怪についても書かれているからということで、地上からわざわざ買ってきたものだ。
どうせ地上の人間が書いたもの、酷いことがかかれてるに違いないと思い、ろくに読まなかったんだけど……
「この本、最近知られるようになった人妖達の座談会をまとめたものなのですが、わたしは呼ばれませんでした……」
しょんぼりするお姉ちゃん。
なになに? 参加者は山の神様と、白蓮さんと、最近復活した聖人か…… あとは司会のシーフさんと記録係で著者の阿求という人だね。
確かに新勢力を対象にしているというなら、私達も当てはまるだろし、その代表者というなら地霊殿の主であるお姉ちゃんが適任だろう。まさか勇儀さんが呼ばれたのかと思ったけど、そういうわけでもないようだ。
「きっと私が呼ばれなかったのは宗教と関係無かったからに違いないのです!!」
「そうだそうだ!」
「もうねこまんま食べて寝たい……」
そういえばみんなの項目とか確認してないんだよね。ちょっと見てみよう。
まずはお姉ちゃんのから……
「なので私も考えました! 今こそ新興宗教を立ち上げるべきだと!」
「うにゅっ!」
「もう晩御飯食べにいきましょうよぉ」
お姉ちゃんの肖像画はこれかな……? うわっ、これはちょっと美化しすぎじゃない!?
ジト目とか服装とか、全体的に特徴は捉えている。けど寝癖跳ねてないし、服がよれてたりしていないから、残念さがにじみ出ていなくお姉ちゃんに見えない! 胸だって実物はこんな大きくないし。いくらか積んだのだろうか?
「宗教と言えばまずは御本尊です! 空にヤタガラス様が宿っていますしそれを信仰するのも考えたのですが……」
「フュージョンしましょ?」
「うにゃあ……お腹空いた」
お燐は巻末の新聞記事の切り抜きにも載ってるね。去年の誕生日にお姉ちゃんがあげたお洒落な服まで着込んで、随分可愛く写っている。地上にも馴染んでいるようで何よりだ。
「どうせなので自分で神降ろしをして、燐に宿らせて見ようと思い立ったのです! 見なさい! 古明地さとりの生き様を!」
「ふあ?」
ヤバい。読むのに熱中してて、お姉ちゃんの話聞いて無かった! つまりお燐に神様を降ろすってことでファイナルアンサー?
「エロイムエッサイムエロイムエッサイム」
「ゆっでたまご~ ゆっでたまご~」
状況についていけない私には目もくれず、お姉ちゃんがお空と二人で謎の呪文を唱えながらお燐の周りを回りはじめた。あまりの残念さと不気味さに見てて泣きたくなってくる。
中心にいるお燐は、お腹が空いたのか元気なくしょんぼりしている。早くやめさせたほうがよさそうだ。
「ねえ、いい加減ご飯食べにいこうよ。冷めちゃうよ?」
「今よ! 空! 燐にパワーを!!」
「う~にゅ~!!」
私の止める声も聞かずに儀式を続ける二人。
二人がお燐に向けて手をかざす。手のひらから白いモヤモヤした謎パワーが発生し、お燐に伝わって行く。
なんだあれ、意味がわからん。
「もっと! もっとです!」
「フルパワー!」
カッ!!!
そろそろ実力行使で儀式止めるべきかと悩んでいた所、急に部屋中が光に包まれる。
え? なに? 成功したの? あれで成功するもんなの!? 邪神とか来てないよね!?
「ふっふっふ! これが私の実力です!」
響き渡るお姉ちゃんの声。うわぁ、うざい。
少し経つと、光も徐々に収まってきた。そして漂いはじめる焼き芋の香り。
焼き芋? 何でこんな匂いが?
「ちわ~ 豊穣神の秋穣子です~ 信仰がもらえると聞いて来ました~」
かなりノリが軽い豊穣神が来た!
この芋の匂いは神様の匂いなのだろうか。随分美味しそうだ。
「芋ぉ!!」
「ちょ、きゃああ!?」
空腹が限界に達したのかお燐が神様に襲いかかった!!
確かにこのお芋の匂い、すごく美味しそうだよね。
「そこだやれ~」
「神を屈服させるのです!」
「ペロペロ…… 甘い……」
「ちょ、そこはだめぇ!」
神様を押し倒して馬乗りになり、なめ回すお燐。止めるどころか後押しするお空とお姉ちゃん。カオスだ……
ぐ~
お腹の虫が鳴く。
もういいや、これは放置してお夕飯食べよう。
「ペロペロ…… チューチュー」
「そこを吸っちゃらめぇ!!」
嬌声響くお姉ちゃんの部屋から出て、私はそっとドアを閉めるのであった。
---
今日のカレーはチキンカレーだった。やっぱりカレーはチキンだよね。
前に、取材に来た天狗さんたちにも振舞おうとした事があるのだが、「鶏肉なんて、なんという鬼畜な!」とわけのわからないことを叫んで帰って行ってしまった。地上ではチキンカレーは一般的ではないようだ。
「おねえちゃーん、はいるよー」
あまりにお腹が空いたのであの混沌とした状況を放置してしまったが、お腹がいっぱいになったらお姉ちゃんが悪さしてないか心配になってきた。
ドアを開けてお姉ちゃんの部屋に入る。
ガチャッ
「穣子様穣子様、どうか私にもご神徳を!」
そこで待ち受けていたのは土下座するお姉ちゃん。
「そうは言われても困るんだけど……」
お姉ちゃんの目の前には困り顔の豊穣の神様。
隣には、困り顔で佇むお燐とお空。
一体何が起きているんだ……
「ねえお燐? お姉ちゃんは何をしてるの?」
ひとまずお燐に、話を聞いてみる。
「どうやらこれが原因のようです」
自身の胸を指すお燐。
お燐の胸を見る。豊満なおっぱいが目に飛び込んでくる。あれ? お燐のおっぱいが大きくなってる?
しなやかでスレンダーな体つきが自慢のお燐、おっぱいは大きくなかったはずだった。
しかし今のお燐の胸は、かなり大きい。巨乳を超えた爆乳である。
前の体つきもスタイルが良いといえるものであったけど、このはちきれんばかりの胸の大きさは凄まじく扇情的だ。
「どうしたの? これ」
「にゃあ!?」
お燐の胸をグニグニと揉んでみる。むっちりした肉の質感、詰め物などではないようである。
「こいし様のエッチ!」
「いきなり胸が大きくなってるから詰め物かと思ったんだけど…… 違うみたいだね。どうしたの、それ?」
「そこにいらっしゃる穣子様の神徳のようです。あたいを依代として降臨したから、影響を受けてるみたいで」
「えっ? 穣子さんって農業の神じゃないの?」
豊穣と胸が大きくなるのって関係ないと思うんだけど…… むしろ胸が大きいと、農作業に邪魔な気がする。
まさか穣子さん、農業じゃなくて、子作りの意味で豊穣の神様ってことはないよね?
うちのペット達は、お燐やお空が最年長とした若い子ばかりだから、子供を生んだ経験のある子は居ない。でも子作りの神様なんてこられたら、青春時代真っ盛りの若いペット達だ、どんどん出産していきかねない。
お燐は猫だから、一度に4つ子とか5つ子とか産みそうだ。お空だって、カラスは7つ子を産むっていう話もあるし、すごい勢いでペットの人数が増えたら食費が大変だ。
教育もしっかり受けさせたいんだけど、どうしよう。お姉ちゃん任せだと知識が偏りそうだし、地上の寺子屋か、白蓮さんのところにお世話になるべきかなぁ。謝礼がかかるけど背に腹は代えられない。
お金がかかるから子作りしちゃダメなんて狭量なこと言いたくないし…… でも私とお姉ちゃんのお小遣い削るだけじゃ足りないだろうなぁ。どうやりくりしよう。
「農業の神様らしいですよ? 量より質な方で、あまり収穫量を増加させるのは得意じゃない、と仰っていました」
「でも農業と胸って関係ないよね?」
「神様も客商売なので、豊穣をアピールできる体つきが必要なんだそうです。貧相だと信用してもらえないらしいので。」
私の心配は杞憂であったようだ。よかったよかった。
でも体型でアピールかぁ。穣子さんを見る。
たわわに実ったおっぱいに、むっちりしたおしり。すごく…… 豊かです。
確かに貧相な体つきより、こういった体つきのほうが豊穣の神様っぽい気がする。
「穣子様の影響を受けて、いろいろ大きくなったあたいを見たさとり様は、自分の体も豊かにしてもらおうと、ああやってお願いしてるんです」
「穣子様様!! どうか私にも御慈悲をぉぉ!!」
「いや、だからそういうことはできないんだよ」
お姉ちゃんの必死過ぎるお願いに穣子さんは困り顔だ。
確かにお姉ちゃん色々貧相だしなぁ。私もぺったんこだから、ボン・キュッ・ボンの体型に憧れるのは理解できる。
お燐を見る。むっちむちの女性らしい体型になっている。お空を見る。出るところは出てしまるところはしまった素晴らしい体型だ。
対して自分の体に目を落とす。ストーンとした残念な体型だ。
……ヤバイ、私も土下座してお願いしたくなってきた。
「お願いしたら私もボインボインにしてもらえるかなぁ」
「穣子様は植物を対象とした神様だから、そういうのはできないみたいですね。あたいのこれは、依代としての副作用みたいで、任意にできるものではないみたいですね」
「あ、そうなんだ。残念。でもそれじゃあお姉ちゃんのあの必死のお願いは意味が無いんじゃ……」
「ですね。穣子様は何度もそう仰っているのですが、さとり様は聞く耳を持たないみたいです」
どんだけ必死なんだお姉ちゃん……
お姉ちゃん命のペット達すらドン引きしてる。ただでさえ不足しているカリスマがひどいことになっているのは明らかだ。
もうやめて! お姉ちゃんのカリスマはとっくに0よ!
「大体わかったよ。お姉ちゃんはこっちで止めるから、ふたりともお夕飯食べてきなよ。今日はチキンカレーだよ。」
「わーい、チキンだー」
「カレーだカレーだ!」
「穣子さんも一緒にどうですか? カレーなんていう庶民的な食べ物で申し訳ないですが」
「え? 私もいただいて大丈夫なの?」
「量ならペット達が大量に食べても余るぐらい作ってありますし、大丈夫ですよ」
「じゃあいただこうかしら、カレー好きなのよね」
「お燐、お空。ご案内して」
「「はーい」」
「みのりこさまぁ!!」
「お姉ちゃんは私とお話しようねー」
ペット達と仲良く出て行く穣子さん。
それに追いすがろうとするお姉ちゃんの首根っこをひっ捕まえる。
「こいし! 放してください!」
「お・ね・え・ちゃん?」
「はいっ!?」
「正座」
「で、でも……」
睨みつけながら指さすと、ビクビクしながら正座するお姉ちゃん。
やだなぁ、怖い顔してないよ? ラブリープリティなこいしちゃんは常に笑顔だからね。目が笑ってないかもしれないけど。
「さて、お姉ちゃん? 私の言いたいことわかるかな?」
「だっておっぱいの大きさは非常に大事なんですよ!」
「だってもなにもないの! もうちょっと主としての自覚を考えないと」
「そういうこいしだってもっと妹としての……」
「私のことはいいの!もっと威厳を考えなさい!!」
「誰も気にしない威厳なんて意味ないわ!! そんなことよりこいしのほうが大事よ!!」
「そんなことないよ!!」
「ぎゃーぎゃー!」
「……」
「…」
--
紆余曲折あったけど、あたいは新しく神様の力を手に入れたようだ。
豊穣の神様の力だから、お空のように戦闘向けの、劇的な力ではない。しかし体の調子がいいし、多少はパワーアップしたような気がする。
胸やおしりが膨らんで、ちょっと動きにくくなったけど、女の子らしくなったということで我慢しておこう。
「ねえ、さとりさん達、あのまま放っておいていいの? 怒鳴り声とか聞こえてたけど」
食堂まで行く途中、心配そうに聞いてくる穣子様。初対面に近いのに随分親身に考えてくれる。
前あった山の上の神様は随分上から目線だから、神様なんてみんなお高くとまっていて、下々の者のことなんてなんとも思っていないのかと思っていたんだけど、穣子様を見る限り神様によるようだ。
あたいは堅苦しいの苦手だし、こういう話しやすい神様のほうがいいと思う。
「夫婦喧嘩は犬も食わぬ、だよ!」
お空がドヤ顔でのたまう。
そういう的はずれなこと良く言うから周りから馬鹿にされるんだけどなぁ。まあ、それがお空の親しみやすい良い所でもあるから黙っている。
「夫婦じゃないけどね。いつもの姉妹のじゃれあいだから、放っておくのが一番かと」
「いつもどおりなの? まあ私もよくお姉ちゃんと喧嘩するし、姉妹なんてそんなもんなのかな」
「お姉さん居るんですか?」
「ええ、紅葉を司る神様してるわ」
紅葉かぁ。地上に出るようになって初めて見たが、あの山の植物の色が変わるのはかなり綺麗だった。
「凄そうな神様ですね。あんな綺麗な紅葉を司るなんて」
「大したことないわよ。私たちは八百万の神々の中でも下っ端だからね。そこにいる八咫ちゃんと比べたら月とスッポンよ」
お空の方を指す穣子様。頬を染めるお空。なぜ照れた。
「最近八咫烏が何処かに遊びに出てから、一向に帰ってこないって噂、聞いてたけど…… こんなトコロに居たのねー。美人の女の子に宿っちゃって、随分楽しそうじゃない。エロ鴉が」
『やあみのりん、お久しぶり。最初は神奈子さんに頼まれただけだったし、いやいや来たんだけどさ。宿主は可愛いし、弾幕ごっこってやつで力も結構振るえるし、案外楽しくて。今の平和な世の中じゃ、僕みたいな戦争向きの神様なんてお仕事ないからね。どうせ戻っても暇なんだよ。神社でボーッとしてるだけならしばらくこっちでご厄介になろうかと』
うお! お空の胸の辺りから男の人の声が! 多分これが八咫烏様の声なのだろう。初めて声聞いたよ。
「うにゅ///」 (てれてれ
美人とか可愛いとか言われてお空は照れっぱなしだ。まあ見た目だけは美人なのは疑いない。中身は気にしてはいけない。
『それで、みのりんはどれだけこっちに居るつもり? そこの猫ちゃんのこと、気に入ったみたいじゃない』
「こんだけ純粋に敬ってくれる信者は久しぶりだしね。しばらくお世話になろうかなと思ってるよ。どうせ地上の豊穣神は供給過剰気味だから、私が抜けても大したことないでしょ」
「穣子さんもしばらく居るの?」
「そちらのご迷惑にならなければね」
「迷惑なんて全然ないよ! いくらでも泊まっていって!」
お空が先走って滞在許可を出してしまった。本当はさとり様に確認とらなきゃならないんだけど、まあ大丈夫だろう。
さとり様は来るものは拒まない。
「それじゃあ穣子様、今後とも宜しくお願いします」
「よろしくね、私の可愛い猫ちゃん」
『私の』などと言われてしまった。
あたいはさとり様のペットなのだが、これは浮気になるんだろうか。
そんなことを考えながら三人で食堂へ向かうのであった。
お姉ちゃんの部屋のドアを開けたら、怪しい儀式の真っ最中でした。
「アーメンそうめん!」
謎の呪文を唱え続けるお姉ちゃん。
お姉ちゃんの目の前で、ちょっと困った様子で正座しているお燐。
お燐の後ろで光っているお空。
私の理解を超える事態だ。
お夕飯ができたから、お姉ちゃんを呼びに来たのだが、これは一体どうしたらいいのだろうか?
「お、お姉ちゃん……?」
関わりたくないのだが、放っておくとご飯が冷めてしまう。
見なかったことにしたい気持ちを必死に抑え、どうにか声をかける。
「うえるかむ・とぅ・さとりー教団!!」
なんか歓迎された!? でもさとりー教団って何!?
こういう意味不明なお姉ちゃんを見ると、第三の目を開いてどんな阿呆なこと考えてるのか知りたくなる。
でも開いたらお姉ちゃんの計略に引っかかったことになる気がする。それじゃあお姉ちゃんに負けた気がするので、意地でも開かないでいる。
「これは、統一さとり教会におけるトップ・シークレットの儀式! 知られたからには生かして返さん!」
「いや、さっきウエルカムとか言ってたじゃん! あとなんか宗教名変わってるし……」
「いけ!! 燐!! 侵入者を捕まえるのよ!!」
「え!? あたいですか!?」
「何か問題あるかしら?」
「いや、さっきあたいが御本尊とか言ってたじゃないですか…… 御本尊ってラスボスですよね? 最初に戦っていいんですか?」
「あ、そうか、だめですね。でも後光役のお空を外すわけにも行かないし……」
どうやらお姉ちゃん教は、お燐が御本尊役で、お空は後光役らしい。何だよ後光役って…… ランプとか適当な光源使えばいいじゃない。
と言うかお空には八咫烏様が入ってるんだし、そっちを御本尊にすればいいのに。なんでお燐が御本尊役なんだろう。
そもそも下っ端は居ないのだろうか。お燐がいつも仲良くしてるゾンビフェアリーたちとか使っちゃダメなのだろうか。
ツッコミどころしか思い浮かばない。この短時間に幾つものボケをこなすお姉ちゃんはもう漫才でもやってればいいのではなかろうか。
「普通こういう時って下っ端の信者みたいなのをけしかけるものじゃないの?」
「さとり真理教は、信者などという脆弱な存在は必要としない、新感覚の宗教なのです! 幻想郷は常識にとらわれてはいけないのですね!」
「いや、信者要らないって、それってすでに宗教といえないじゃない」
「わたしは、この子たちがいれば十分だってことですよ」
信者の居ない宗教に意味はあるのだろうか。
そんな疑問が浮かぶ私を無視して、お燐とお空を抱き寄せるお姉ちゃん。
「さとりさまぁ」
「うにゅぅ」
抱きしめられた二人は満足気だ。
家族の絆を確かめ合うシーンとして、ここだけ切り取れば感動的なシーンにも見えなくはない。しかしその前にやっていたあやしい儀式やなんやらで全て台無しだ。
「というかなんでいきなり新興宗教なんか始めたの?」
「最近地上では宗教が流行ってるみたいじゃないですか。この流れに私達も立ち遅れてはいけないと思いまして。空だけじゃなくて、燐も神様の力を手に入れられたら楽しいと思ったので、ひとまず神降ろしの儀式をしています」
例えあれが神降ろしの儀式だったとしても、あんな奇怪な儀式で降りてくる神様なんてきっととんでもでもないやつじゃなかろうか。
「別に地上の人たちと張り合わなくたっていいんじゃないかなぁ。と言うか神降ろしってあんな奇妙奇天烈な儀式じゃないと思うよ」「でも宗教やってないと座談会呼んでくれないみたいですし……」
「座談会?」
座談会ねぇ。体を動かすのは嫌いだが頭を働かすのは好きなお姉ちゃんだ。そう言う知的なイベントは好みかもしれない。
だが、口より先に手ならぬ弾幕が飛び出るのが幻想郷の住民達である。座談会みたいな大人しいイベントなどやるのだろうか?
座談会(ただしくスペルカードで語る)とか座談会(という名の宴会)とか後ろにいろいろ付きそうな気がするんだけど。
「座談会なんてイベント、何処から知ったの?」
「この本に書いてありました」
取り出したのは一冊の真新しい本。
求問口授?
お燐が、地底の妖怪についても書かれているからということで、地上からわざわざ買ってきたものだ。
どうせ地上の人間が書いたもの、酷いことがかかれてるに違いないと思い、ろくに読まなかったんだけど……
「この本、最近知られるようになった人妖達の座談会をまとめたものなのですが、わたしは呼ばれませんでした……」
しょんぼりするお姉ちゃん。
なになに? 参加者は山の神様と、白蓮さんと、最近復活した聖人か…… あとは司会のシーフさんと記録係で著者の阿求という人だね。
確かに新勢力を対象にしているというなら、私達も当てはまるだろし、その代表者というなら地霊殿の主であるお姉ちゃんが適任だろう。まさか勇儀さんが呼ばれたのかと思ったけど、そういうわけでもないようだ。
「きっと私が呼ばれなかったのは宗教と関係無かったからに違いないのです!!」
「そうだそうだ!」
「もうねこまんま食べて寝たい……」
そういえばみんなの項目とか確認してないんだよね。ちょっと見てみよう。
まずはお姉ちゃんのから……
「なので私も考えました! 今こそ新興宗教を立ち上げるべきだと!」
「うにゅっ!」
「もう晩御飯食べにいきましょうよぉ」
お姉ちゃんの肖像画はこれかな……? うわっ、これはちょっと美化しすぎじゃない!?
ジト目とか服装とか、全体的に特徴は捉えている。けど寝癖跳ねてないし、服がよれてたりしていないから、残念さがにじみ出ていなくお姉ちゃんに見えない! 胸だって実物はこんな大きくないし。いくらか積んだのだろうか?
「宗教と言えばまずは御本尊です! 空にヤタガラス様が宿っていますしそれを信仰するのも考えたのですが……」
「フュージョンしましょ?」
「うにゃあ……お腹空いた」
お燐は巻末の新聞記事の切り抜きにも載ってるね。去年の誕生日にお姉ちゃんがあげたお洒落な服まで着込んで、随分可愛く写っている。地上にも馴染んでいるようで何よりだ。
「どうせなので自分で神降ろしをして、燐に宿らせて見ようと思い立ったのです! 見なさい! 古明地さとりの生き様を!」
「ふあ?」
ヤバい。読むのに熱中してて、お姉ちゃんの話聞いて無かった! つまりお燐に神様を降ろすってことでファイナルアンサー?
「エロイムエッサイムエロイムエッサイム」
「ゆっでたまご~ ゆっでたまご~」
状況についていけない私には目もくれず、お姉ちゃんがお空と二人で謎の呪文を唱えながらお燐の周りを回りはじめた。あまりの残念さと不気味さに見てて泣きたくなってくる。
中心にいるお燐は、お腹が空いたのか元気なくしょんぼりしている。早くやめさせたほうがよさそうだ。
「ねえ、いい加減ご飯食べにいこうよ。冷めちゃうよ?」
「今よ! 空! 燐にパワーを!!」
「う~にゅ~!!」
私の止める声も聞かずに儀式を続ける二人。
二人がお燐に向けて手をかざす。手のひらから白いモヤモヤした謎パワーが発生し、お燐に伝わって行く。
なんだあれ、意味がわからん。
「もっと! もっとです!」
「フルパワー!」
カッ!!!
そろそろ実力行使で儀式止めるべきかと悩んでいた所、急に部屋中が光に包まれる。
え? なに? 成功したの? あれで成功するもんなの!? 邪神とか来てないよね!?
「ふっふっふ! これが私の実力です!」
響き渡るお姉ちゃんの声。うわぁ、うざい。
少し経つと、光も徐々に収まってきた。そして漂いはじめる焼き芋の香り。
焼き芋? 何でこんな匂いが?
「ちわ~ 豊穣神の秋穣子です~ 信仰がもらえると聞いて来ました~」
かなりノリが軽い豊穣神が来た!
この芋の匂いは神様の匂いなのだろうか。随分美味しそうだ。
「芋ぉ!!」
「ちょ、きゃああ!?」
空腹が限界に達したのかお燐が神様に襲いかかった!!
確かにこのお芋の匂い、すごく美味しそうだよね。
「そこだやれ~」
「神を屈服させるのです!」
「ペロペロ…… 甘い……」
「ちょ、そこはだめぇ!」
神様を押し倒して馬乗りになり、なめ回すお燐。止めるどころか後押しするお空とお姉ちゃん。カオスだ……
ぐ~
お腹の虫が鳴く。
もういいや、これは放置してお夕飯食べよう。
「ペロペロ…… チューチュー」
「そこを吸っちゃらめぇ!!」
嬌声響くお姉ちゃんの部屋から出て、私はそっとドアを閉めるのであった。
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今日のカレーはチキンカレーだった。やっぱりカレーはチキンだよね。
前に、取材に来た天狗さんたちにも振舞おうとした事があるのだが、「鶏肉なんて、なんという鬼畜な!」とわけのわからないことを叫んで帰って行ってしまった。地上ではチキンカレーは一般的ではないようだ。
「おねえちゃーん、はいるよー」
あまりにお腹が空いたのであの混沌とした状況を放置してしまったが、お腹がいっぱいになったらお姉ちゃんが悪さしてないか心配になってきた。
ドアを開けてお姉ちゃんの部屋に入る。
ガチャッ
「穣子様穣子様、どうか私にもご神徳を!」
そこで待ち受けていたのは土下座するお姉ちゃん。
「そうは言われても困るんだけど……」
お姉ちゃんの目の前には困り顔の豊穣の神様。
隣には、困り顔で佇むお燐とお空。
一体何が起きているんだ……
「ねえお燐? お姉ちゃんは何をしてるの?」
ひとまずお燐に、話を聞いてみる。
「どうやらこれが原因のようです」
自身の胸を指すお燐。
お燐の胸を見る。豊満なおっぱいが目に飛び込んでくる。あれ? お燐のおっぱいが大きくなってる?
しなやかでスレンダーな体つきが自慢のお燐、おっぱいは大きくなかったはずだった。
しかし今のお燐の胸は、かなり大きい。巨乳を超えた爆乳である。
前の体つきもスタイルが良いといえるものであったけど、このはちきれんばかりの胸の大きさは凄まじく扇情的だ。
「どうしたの? これ」
「にゃあ!?」
お燐の胸をグニグニと揉んでみる。むっちりした肉の質感、詰め物などではないようである。
「こいし様のエッチ!」
「いきなり胸が大きくなってるから詰め物かと思ったんだけど…… 違うみたいだね。どうしたの、それ?」
「そこにいらっしゃる穣子様の神徳のようです。あたいを依代として降臨したから、影響を受けてるみたいで」
「えっ? 穣子さんって農業の神じゃないの?」
豊穣と胸が大きくなるのって関係ないと思うんだけど…… むしろ胸が大きいと、農作業に邪魔な気がする。
まさか穣子さん、農業じゃなくて、子作りの意味で豊穣の神様ってことはないよね?
うちのペット達は、お燐やお空が最年長とした若い子ばかりだから、子供を生んだ経験のある子は居ない。でも子作りの神様なんてこられたら、青春時代真っ盛りの若いペット達だ、どんどん出産していきかねない。
お燐は猫だから、一度に4つ子とか5つ子とか産みそうだ。お空だって、カラスは7つ子を産むっていう話もあるし、すごい勢いでペットの人数が増えたら食費が大変だ。
教育もしっかり受けさせたいんだけど、どうしよう。お姉ちゃん任せだと知識が偏りそうだし、地上の寺子屋か、白蓮さんのところにお世話になるべきかなぁ。謝礼がかかるけど背に腹は代えられない。
お金がかかるから子作りしちゃダメなんて狭量なこと言いたくないし…… でも私とお姉ちゃんのお小遣い削るだけじゃ足りないだろうなぁ。どうやりくりしよう。
「農業の神様らしいですよ? 量より質な方で、あまり収穫量を増加させるのは得意じゃない、と仰っていました」
「でも農業と胸って関係ないよね?」
「神様も客商売なので、豊穣をアピールできる体つきが必要なんだそうです。貧相だと信用してもらえないらしいので。」
私の心配は杞憂であったようだ。よかったよかった。
でも体型でアピールかぁ。穣子さんを見る。
たわわに実ったおっぱいに、むっちりしたおしり。すごく…… 豊かです。
確かに貧相な体つきより、こういった体つきのほうが豊穣の神様っぽい気がする。
「穣子様の影響を受けて、いろいろ大きくなったあたいを見たさとり様は、自分の体も豊かにしてもらおうと、ああやってお願いしてるんです」
「穣子様様!! どうか私にも御慈悲をぉぉ!!」
「いや、だからそういうことはできないんだよ」
お姉ちゃんの必死過ぎるお願いに穣子さんは困り顔だ。
確かにお姉ちゃん色々貧相だしなぁ。私もぺったんこだから、ボン・キュッ・ボンの体型に憧れるのは理解できる。
お燐を見る。むっちむちの女性らしい体型になっている。お空を見る。出るところは出てしまるところはしまった素晴らしい体型だ。
対して自分の体に目を落とす。ストーンとした残念な体型だ。
……ヤバイ、私も土下座してお願いしたくなってきた。
「お願いしたら私もボインボインにしてもらえるかなぁ」
「穣子様は植物を対象とした神様だから、そういうのはできないみたいですね。あたいのこれは、依代としての副作用みたいで、任意にできるものではないみたいですね」
「あ、そうなんだ。残念。でもそれじゃあお姉ちゃんのあの必死のお願いは意味が無いんじゃ……」
「ですね。穣子様は何度もそう仰っているのですが、さとり様は聞く耳を持たないみたいです」
どんだけ必死なんだお姉ちゃん……
お姉ちゃん命のペット達すらドン引きしてる。ただでさえ不足しているカリスマがひどいことになっているのは明らかだ。
もうやめて! お姉ちゃんのカリスマはとっくに0よ!
「大体わかったよ。お姉ちゃんはこっちで止めるから、ふたりともお夕飯食べてきなよ。今日はチキンカレーだよ。」
「わーい、チキンだー」
「カレーだカレーだ!」
「穣子さんも一緒にどうですか? カレーなんていう庶民的な食べ物で申し訳ないですが」
「え? 私もいただいて大丈夫なの?」
「量ならペット達が大量に食べても余るぐらい作ってありますし、大丈夫ですよ」
「じゃあいただこうかしら、カレー好きなのよね」
「お燐、お空。ご案内して」
「「はーい」」
「みのりこさまぁ!!」
「お姉ちゃんは私とお話しようねー」
ペット達と仲良く出て行く穣子さん。
それに追いすがろうとするお姉ちゃんの首根っこをひっ捕まえる。
「こいし! 放してください!」
「お・ね・え・ちゃん?」
「はいっ!?」
「正座」
「で、でも……」
睨みつけながら指さすと、ビクビクしながら正座するお姉ちゃん。
やだなぁ、怖い顔してないよ? ラブリープリティなこいしちゃんは常に笑顔だからね。目が笑ってないかもしれないけど。
「さて、お姉ちゃん? 私の言いたいことわかるかな?」
「だっておっぱいの大きさは非常に大事なんですよ!」
「だってもなにもないの! もうちょっと主としての自覚を考えないと」
「そういうこいしだってもっと妹としての……」
「私のことはいいの!もっと威厳を考えなさい!!」
「誰も気にしない威厳なんて意味ないわ!! そんなことよりこいしのほうが大事よ!!」
「そんなことないよ!!」
「ぎゃーぎゃー!」
「……」
「…」
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紆余曲折あったけど、あたいは新しく神様の力を手に入れたようだ。
豊穣の神様の力だから、お空のように戦闘向けの、劇的な力ではない。しかし体の調子がいいし、多少はパワーアップしたような気がする。
胸やおしりが膨らんで、ちょっと動きにくくなったけど、女の子らしくなったということで我慢しておこう。
「ねえ、さとりさん達、あのまま放っておいていいの? 怒鳴り声とか聞こえてたけど」
食堂まで行く途中、心配そうに聞いてくる穣子様。初対面に近いのに随分親身に考えてくれる。
前あった山の上の神様は随分上から目線だから、神様なんてみんなお高くとまっていて、下々の者のことなんてなんとも思っていないのかと思っていたんだけど、穣子様を見る限り神様によるようだ。
あたいは堅苦しいの苦手だし、こういう話しやすい神様のほうがいいと思う。
「夫婦喧嘩は犬も食わぬ、だよ!」
お空がドヤ顔でのたまう。
そういう的はずれなこと良く言うから周りから馬鹿にされるんだけどなぁ。まあ、それがお空の親しみやすい良い所でもあるから黙っている。
「夫婦じゃないけどね。いつもの姉妹のじゃれあいだから、放っておくのが一番かと」
「いつもどおりなの? まあ私もよくお姉ちゃんと喧嘩するし、姉妹なんてそんなもんなのかな」
「お姉さん居るんですか?」
「ええ、紅葉を司る神様してるわ」
紅葉かぁ。地上に出るようになって初めて見たが、あの山の植物の色が変わるのはかなり綺麗だった。
「凄そうな神様ですね。あんな綺麗な紅葉を司るなんて」
「大したことないわよ。私たちは八百万の神々の中でも下っ端だからね。そこにいる八咫ちゃんと比べたら月とスッポンよ」
お空の方を指す穣子様。頬を染めるお空。なぜ照れた。
「最近八咫烏が何処かに遊びに出てから、一向に帰ってこないって噂、聞いてたけど…… こんなトコロに居たのねー。美人の女の子に宿っちゃって、随分楽しそうじゃない。エロ鴉が」
『やあみのりん、お久しぶり。最初は神奈子さんに頼まれただけだったし、いやいや来たんだけどさ。宿主は可愛いし、弾幕ごっこってやつで力も結構振るえるし、案外楽しくて。今の平和な世の中じゃ、僕みたいな戦争向きの神様なんてお仕事ないからね。どうせ戻っても暇なんだよ。神社でボーッとしてるだけならしばらくこっちでご厄介になろうかと』
うお! お空の胸の辺りから男の人の声が! 多分これが八咫烏様の声なのだろう。初めて声聞いたよ。
「うにゅ///」 (てれてれ
美人とか可愛いとか言われてお空は照れっぱなしだ。まあ見た目だけは美人なのは疑いない。中身は気にしてはいけない。
『それで、みのりんはどれだけこっちに居るつもり? そこの猫ちゃんのこと、気に入ったみたいじゃない』
「こんだけ純粋に敬ってくれる信者は久しぶりだしね。しばらくお世話になろうかなと思ってるよ。どうせ地上の豊穣神は供給過剰気味だから、私が抜けても大したことないでしょ」
「穣子さんもしばらく居るの?」
「そちらのご迷惑にならなければね」
「迷惑なんて全然ないよ! いくらでも泊まっていって!」
お空が先走って滞在許可を出してしまった。本当はさとり様に確認とらなきゃならないんだけど、まあ大丈夫だろう。
さとり様は来るものは拒まない。
「それじゃあ穣子様、今後とも宜しくお願いします」
「よろしくね、私の可愛い猫ちゃん」
『私の』などと言われてしまった。
あたいはさとり様のペットなのだが、これは浮気になるんだろうか。
そんなことを考えながら三人で食堂へ向かうのであった。
奇をてらわず、丁寧ながらもテンポの好い文章で安心して読めましたよ!
日常のお話と文章とがマッチした雰囲気で、なんだか懐かしくなってきました。
こうしたお話を書ける方は実はなかなかいらっしゃらないんじゃないでしょうか。
欲を申しますなら、最後にもうひとひねりが欲しいかな、と期待してみます。
次に書いてゆくキャラクターは、やはり氏が書きたい人物が何より一番だと考えますが、
個人的には、まだほとんど誰も書いていない本居小鈴ちゃんとか面白そうです。
しかしまあ、あんな適当な儀式でも来てくれる穣子様は凄い。てっきりクトゥルフ的な何かが来るかと思ったのに。
で、新キャラ開拓ですか。
へたれるのか、へたれないのか、それが問題だ。
へたれるなら、へたりから方向性を変えて……例えば天然すっとぼけの輝夜や幽々子とかは、どうでしょうね。
へたれないなら、とりあえず自機組が取っ付き易いと思いますよ。特に霊夢&魔理沙の動かし易さは凄いです。
何らかのインスピレーションの種になりますように。
浮かんだネタで走るのが一番ですしおすし。
個人的には永遠亭あたりが良いかなと
しかもやけにフランク。
へたり様よりそっちにばっかり気が行ってしまいました。
新キャラ開拓でしたら風見幽香なんてどうですか?
組織もいいですが、無頼の花だっていいものです。
こいしだけに(ボソッ
それは置いといて、地霊殿はひょっとして実質こいしちゃんが切り盛りしてるんじゃ…
デュエルスタンバイ
こいしだけは染まらないでいて欲しいものです