大学食堂が休みをとっていた。持ち合わせの少ない私はしきりに文句を言ったが、春休み中のこと、仕方がないと諦めて定食屋を利用することにした。良い店を知っているらしいメリーにしたがって東大路をとろとろ歩いた。ようやく連れられて入った店は、メリーが気に入るだけあって清潔で広いところだった。奥まった位置のテーブル席に二人向き合って腰掛けた時、そのテーブルの寛大に広いことが妙に私の好感を誘った。それぞれ注文を告げて皿の来るのを待っていた時、雑談の途中で、急にメリーが声をひそめて耳打ちしてきた。
「蓮子の後ろ、入り口の傍のカウンター席、バイオの宮古さんが立ってるわ」
私はさりげなく振り返ってメリーの言う見当を見た。窓際のカウンターを前に姿勢良く立っている色白い少女の横姿が目に入った。私がバイオの宮古さんを見たのはこの時が初めてである。
「結構普通ね。こういうのは意外と言うべきなのかしら」
「立ってるのがまずおかしいじゃない」
私はまた振り返って見た。その人はやっぱり立っている。
バイオの宮古さんは、分子生物学講座の院生である。十以上もの講義で教授のアシスタントを務めている。バイオの宮古さんはいつも立っている。かつてその膝を曲げて座っている姿を見た者は誰も居ない。バイオの宮古さんはよく食べる。食堂に現れる日は十人前も作らせてしかもたいらげる。バイオの宮古さんは力持ちである。講座の孵卵機を買い換えた折は届いた大物二台を一人で抱えて五階の機械室まで階段で上った。バイオの宮古さんには霊感がある。時折誰も居ない虚空に向けて解らないことを話している。
そんな不思議な先輩の噂を、私はメリーから聞いていた。
「でも、立ってることを除けば、そういう種類の人にはとても見えないよ。立ってることを除けば」
私は少し首を捻った。
その日の宮古さんは、噂の怪人物にも似合わず小洒落た身なりをしていた。前述のとおり肌は白く、よく手入れされて瑞々しい。赤い華服の染め色は鮮やかに、黒いスカートと合わせて縫製細かなレース飾りをあしらってある。日避け帽には星型のバッジさえ付けている。そんな人が空き椅子と空き椅子の間にあって棒立ちに立ち尽くしているのはかえって奇観でもあったが、本人の方は非常に静かなので、周囲の客もあまり気に留めていないらしかった。
「大食いの噂も本当よ」
メリーがまた指差して言った。
テーブルの広いこの店はカウンターさえ十分広い。その広いカウンターを二席分以上領有して、宮古さんはカツ丼を並べていた。見ているうちに店員が来てさらに並べた。カツ丼は次々やってきた。離れた位置から見ても十人前は確かにあるようだ。注文が全部並んでから、ようやく宮古さんは箸をとって食べ始めた。動作がなんだかぎこちない気がした。おぼつかない箸でようやくカツを取り上げると、変に体をよじって口の方からカツを迎えに行き食べる。そんな不格好なやり方でも飲み込むのは早かった。異様に早かった。覚えず目を見張る早さがあった。それは早食い自慢にありがちな咀嚼を怠っての早さではなく、もっと常識を外れた、食べるというよりも、飲むというよりも、まるで吸い込むような早さであった。
猛烈な勢いでカツ丼をたいらげていく宮古さんを見ているうちに食欲を失した私達は、運ばれてきた定食もそこそこにしてさっさと店を出てしまった。往来へ出るなりメリーが「ねえ、変でしょう」と言ってきた。私は苦笑いをしてうなずいた。
「なるほど、人間離れしたところがあるね」
「私ちょっと怖いわ」
「あの勢いでカウンターも食べちゃいそうだった」
「人間も食べちゃいそう」
メリーは本気でぞっとしているらしかった。
「ストレスかな。勉強のしすぎだよあれは」
「胃に穴が開いたらあんな風に食べられるものかしら」
「現代の生物工学ならたぶん可能ね。デザートは別腹にするの」
「本当に実験してるのかも。講座の先生も変人らしいし」
「女性にはありがたい変人ね。じゃあ宮古さんはその験体?」
こんな想像は私にとって冗談でしかなかったが、メリーはなかなか応答しなかった。場に居ない人の話などいつまでもしているのは気が悪いので、その日はそれきりにして話題を変えた。
それ以来、私達は春休み中も大学へ行けば度々宮古さんを見かけた。ベンチに座っていると書類を抱えて前を横切ったことがあった。門前に立って桜を見上げていたこともあった。例の定食屋へ入ればカツ丼を食べていた。顔を見れば決まって無表情でいた。宮古さんは休暇中も関係なく毎日大学に居るらしかった。あるいは研究室に寝泊りしているのではないかとも思われた。
私達はよく、日の傾きかかった帰り際に、門前でふらふらしている宮古さんを追い越していくことがあった。そうした時の宮古さんは、二十リッターもありそうな大きな木箱を腕に抱えているので足元もよく見えず危なっかしい様子であった。ある時は蹴つまずいて箱を落っことした瞬間を目の前で見た。私とメリーは駆け寄って助け起こそうとしたが、箱が案外に重いので驚いた。こんな物を抱えて歩く宮古さんは確かに力持ちに違いないと思った。なんとか箱を宮古さんの腕に抱えさせると、宮古さんは何も言わない代わりにお辞儀をしかけたが、また箱を落としそうになったので慌てて止めた。無愛想だがそそっかしい人らしい。
「ねえ蓮子、あの箱の中には何が入ってるのかしら」
ある時、大学にほど近い喫茶店に入って活動予定を組んでいると、話題がバイオの宮古さんの方に移った。メリーによれば、宮古さんの行動はまったく不可解らしい。
「だってあんまりしょっちゅう過ぎるじゃない」
「例の箱持ち移動が?」
「ただの移動じゃないわ。持って出て行くのよ。研究に関係ある雑用なら構内を移動しそうじゃない」
「何かの測定に行くのかも」
「バイオってそんな分野かしら」
「メリーは何がそんなに気になるの?」
「そもそも大学って、機材とか教材とか、物が持ち込まれることはよくあるけど、持ち出されることは滅多にないでしょう?」
「……その前提はおかしい。物理とか色々的に」
「持ち込まれた物が持ち出されるとしたら、その時はそれはゴミかあるいは発見という形に変質しているわ」
「なるほど、それなら解るわ。ゴミなら業者が、発見なら企業が回収しに来るはずね」
「だから不思議なのよ。あんなに重い物を、あんなにしょっちゅう持って出て行く……」
「何かとんでもない秘密だったりして?」
メリーの話を聞いているうちに、私の方でも少々興味が湧いてきた。「それじゃあ」と言って笑みがこぼれた。「今日の活動はそれをつきとめに行きましょう」と提案すると、メリーはちょっと躊躇してみせたが、自分で口にした話題なのでやっぱり最後には賛成した。
ことが決まれば秘封倶楽部の行動は早い。私とメリーは門前に立って宮古さんを待ち構えた。これまでに宮古さんが箱を持って出てきたのは、おそらく五日前の目撃が最後だろう。普段通りの頻度なら、今日か明日にはきっとまた箱を持ち出す。
宮古さんの登場を待つ間、メリーはバイオの宮古さんについて実に様々な空想を並べて気味悪がった。その中には人間に擬態した宇宙人じゃないかしらとか未来からやって来たロボットかもしれないとか、まるで突拍子もない大昔のSF映画みたような説が多くあった。SFも結構だが秘封倶楽部ならオカルトの方面から立つ仮説はないのかと聞いてやると、メリーはしばらく考えてから「宮古さんはゾンビよ」という言葉。SFが抜けきっていないようで可笑しかった。
メリーの空想が突き進んでいって、とうとう宮古さんが講座の教授に洗脳されているという妙説にまでおよんだ時、校舎の裏側から件の人が現れた。果たして箱を抱えている。うまい事にこの日は二箱の大荷物であった。普段のごとく抱える一箱の上に、同じ大きさの物をもう一箱を積み上げている。
すかさず「先輩こんにちは」と挨拶して呼び止めた。宮古さんは顔を覆い隠す箱の向こうでなんとも返事をしなかったが、相手は尋常の人ならぬ宮古さんなので、こちらとしてもこの沈黙を単純な無視の意味とは受け取らなかった。「いつも大変ですね」とメリーが言った。「前が見えなくて危ないでしょう」と私も声をかけた。宮古さんは危ないとも危なくないとも答えないが、メリーは構わず二段に積んだ箱の上段をやや強引に奪い取って「一つ持ちましょう」と申し出た。「遠慮しないでも私ら暇ですから」と言い添えて私も持ち手の一端を取った。箱の向こうから顔を現した宮古さんは、やっぱり無表情だった。宮古さんはこの間をまったく硬直して立っていたが、しばらく待つとゆっくり口を動かしながら、「こっち、ついて来い」と、ぶっきらぼうな声をはじめて出した。
秘封倶楽部は顔を見合わせてうなずきあった。
校門を出た宮古さんは東大路を少し上がって今出川で東に折れた。私とメリーは箱の両端にある持ち手を一端ずつぶら下げて宮古さんのあとに続いた。時折ふらつく宮古さんを追って広くない道をふらふらと傍迷惑に蛇行した。「どこまで行くんですか」とメリーが訊くと、宮古さんは「上」と一言だけ漠然たる答えをさも十分らしく返した。今出川から北白川町にいたって宮古さんは往来から山手へ移ると、そのままずんずん藪の中へと踏み込んだ。
宮古さんそっちは山ですよという注意が私の口から出かけたところへ、振り返った宮古さんが私の先をとって「こっちだ」と信じ難い誘導をした。宮古さんの言った『上』というのが、吉田山の意味かと気付くのにまた少し時間がかかった。
「蓮子、今のうちに見て。このくつ新しく買ったの」
せわしく繁る薮道とその高い斜度を呆然見上げながら、メリーが半泣きで心細いことを言った。私はこれに何と言って慰めるべきか分からず、ただ「可愛い」と褒めるのが精一杯だった。
「こんなことしようなんて言い出して、蓮子のせいだわ」
「さすがに予想外だったわね。まさか行き先が山の上なんて」
「本当に、この箱いったい何を運んでるのかしら」
「死体だったりして」
「ちょっと、やめてよ!」
薮の向こうから「早く来い」と宮古さんの催促が飛んで、私もメリーもついに登山を決心をした。薮に分け入って奥へ進むと、急にあたりがほの暗くなった。見上げれば、太陽が木に覆われてほとんど隠れてしまっていた。その太陽すらも今にだんだん沈みゆく。私はこの一行について果たして日没までに下山できるだろうかと大いな不安を抱いた。坂道を登り始めると、手に提げた箱がいっそう重く感じられた。秘封倶楽部は思いもよらず奇妙な冒険に駆り出されてしまった。
一応ある細い人道を宮古さんは綽綽として登っていく。秘封倶楽部も懸命に続いた。合成樹木からなる木立はどこまで分け入っても単調な風景を繰り返す。見ていると目が回って冷や汗が出た。先の見えない登山道は十分も歩くとすぐに嫌気が差した。木々の合い間から細く差す日脚が次第に薄赤くにじみ出すと、自分が何かおかしな夢を見ているような気持ちがした。そのうちに耐えられなくなって宮古さんに質問した。
「この道はよく使うんですか?」
ややあって「使う」と宮古さんは答えた。
「大変なんですね。何を研究なさってるんですか?」
またややあってから「電気」と、実に簡単な答えが来た。さすがに電気というだけでは分かりかねたので、もう少し詳しく訊いていくと「神経」だとか「反射」だとかいう稚拙な説明がやっと得られた。
「生体電気の研究って最近はあまり聞かなくなりましたね。バイオの花形は今どこにあるのかしら」
相対性精神学を専攻するメリーが神経と聞いて口を挟んだ。学問に陽性の分野と陰性の分野があるような言いぶりは、平生からの彼女の癖である。この時、ふいに宮古さんが立ち止まった。すぐ後ろを歩いていた私とメリーは咄嗟に足を止めようとしたが、重い箱が慣性で手を引いたせいで二人とも少し前へのめった。私達はおやと思いながら宮古さんの言葉を待ったが、この時の宮古さんは容易に応答しなかった。そこになんとも形容し難い不思議な時間が流れた。夕日を受けて赤い華服がいっそう赤く目に照った。はるか頭上で鴉が鳴いた。風が止んでいた。
「先生は…………先生は、魂を探してる、から」
長い沈黙の後で、宮古さんはそれだけ言ってまた歩きだした。秘封倶楽部もついて歩きだした。私は黙って歩きながらも、先の一言を考えると不思議だった。空想に浮かべてさえSFの印象が抜けきらない機械的の見本のような人の口から、突如発せられたこの魂という神秘の単語に、私はいっそ滑稽に近いくらいの違和感を抱いていた。
山道に入ってから二十分ばかりして、なにやら開けた場所に出た。足元に広がる京都の街と西山に没する夕日とが、一の大なる屏風絵のごとく広く美しく見渡せた。場所の中心にはごく小規模なコンテナ住宅が据えられており、宮古さんはその裏へ回ってようやく箱を地に降ろした。私とメリーも宮古さんにならって箱をその場に置き降ろした。見れば大きな焼却炉らしき装置がこの建物には備わっている。
メリーが訊いた。
「これで焼くんですか? 箱の中身を?」
宮古さんはこっくりとうなずいた。そうして、ここまでついて来た後輩二人の顔を交互に見つめて「中身が何か知りたいか?」と急にこちらの本題へ切りつけてきた。私は内心ぎくりとしながらも「知りたいです」と思い切って言った。宮古さんは少し間を置いてから「知りたいか?」とまた言った。
「知りたいか? 何でも知りたいか? 隠してもか? 言わなくてもか? 見えない場所で焼いてもか? 中身が何でもか? 隠れてるのに知りたいのか? 中身が何か知らないのに中身が何か知りたいのか? それが知りたいのか? おかしいな? それでも知りたいか? どうしても知りたいのか?」
バイオの宮古さんは無表情なまま、歌うような呪うような言葉を秘封倶楽部に浴びせかけた。低く怖ろしい調子があった。私とメリーはほとんど同時に「知りたいです」と、はっきり答えた。ここまで来て引き返す秘封倶楽部なら鳥船遺跡まで行って怪我などしない。私達は秘封倶楽部だった。
「じゃあ見ろ。勝手にしろ」
宮古さんの声は、虜囚に自害を許可するような冷淡さをもって私の耳に響いた。そうして宮古さんは箱に手をかけると、怖ろしい力をこめて、釘打たれた木蓋をゆっくりと、少しずつ、引き剥がしていった。分厚い蓋が軋みをあげながら十センチほど持ち上がった時、私はその暗い中から一種の消毒液の臭いを嗅いだ。中を覗き込もうとしたメリーが、急にきわどい声を上げて私の肩に飛びついてきた。それとほぼ同時に、反り曲げられた木がみりみりと音をあげて裂けた。中を厚く覆っていた蓋が半分にちぎれてとうとう取り去られてしまうと、宮古さんの秘密が真っ赤な夕日の中に露見した。
箱の中ぎっしりと数多く詰め込まれ、いずれも白く細長く、各々ビニール袋に包まれた物は、全て、人間の右腕だった。
はじめ私はこの事実をどう理解すればいいか分からず、ただ硬直して宮古さんの色白く無表情な顔を見つめていた。そのうちに宮古さんは箱の中から一本を取り出して野菜を扱うように無造作な挙動でずいとこちらに突き付けてきた。この時になってようやく、私は全身をいきなり氷づけにされたような寒さを感じた。恐怖の声を必死に抑えてメリーの肩を抱いて言った。
「……本物、ですか?」
この確認には、目の前の現実を疑いたいという反動の意思と同時に、これが悪趣味の冗談なら許せないというさらに反動した意思が込められていた。
「本物。でも実際とは違う」
宮古さんは謎のような答えをした。
「合成して、作った右腕、だ。実習、実験、研究で使う。病院も使う。使ったらもう使えない。ラットは捨てたら捨てられるけど、腕は捨てたら怒られる。みんな怖がるから、だからここで焼く。腕以外にも使うけど、今日は腕が多い」
宮古さんはポケットから電子キーを取り出して焼却炉を起動させた。炉の扉を開いて、持っていた右腕を放り込んだ。足元の箱を抱え上げるとやはり無造作に放り込んだ。ちぎれてしまった木蓋も拾い上げて放り込んだ。「そっちの箱も」と私達に言った。しかし、私とメリー、二人とも箱に手を付けることができなかった。宮古さんは、これに表情を変えることもなく、この箱をまた抱え上げて炉に放り込んだ。
「燃やす物、何かあるか?」
私とメリーが首を振ると、宮古さんは炉の扉を閉じて傍らにあるパネルに触れた。しばらくすると排気筒から白い煙が立ち昇った。
「宮古さん、それは何ですか?」
メリーが宮古さんの手元を指差して訊いた。
「…………お祈り」
宮古さんは、例のぎこちない指を胸の前でぎこちなく組み合わせて、その言うとおり祈りのような手使いをしていた。
「……魂が、あるからですか?」
メリーがまた訊いた。宮古さんは、首を振った。そこにはやっぱり何の表情も浮かんではいかった。秘封倶楽部も真似をして手を合わせた。白い煙が赤い夕空にたなびいて昇り行くのを眺めていると、そこに魂が無いと断じながら祈らずにはいられない宮古さんの心が、少しだけ解るような気がした。
焼却は五分ほどで済んでしまった。「役に立ったぞ」と、宮古さんが言った。それは秘封倶楽部に謝したようにも聞こえたし、灰になった右腕達に詫びたようにも聞こえた。
日のほとんど暮れかかった山道を、三人あわただしく駆け下りた。自転車の行き交う今出川へ戻ると、メリーが大きく息を吐いた。先刻の体験がみな異世界の出来事のように思われた。西へ歩き出した宮古さんについて「大学へ戻るんですか」と訊いてみると「河原町に行くんだ」と返ってきた。用向きを尋ねてみればなんと「焼肉食べたい」という、とんでもない理由であった。「いっしょに行くか」と宮古さんには貴重なお誘いさえ受けたが、私もメリーも人間を焼いた直後で焼肉を口にできる神経は持ち合わせていなかった。
秘封倶楽部とバイオの宮古さんとは、そこで別れた。
それからの私達は、山手に白煙が上がるのを見る度に、ああバイオの宮古さんが何か焼いているなと思う。魂が無いかも知れずあるかも知れない部品に手を合わせて、そうしてそれが済んだら、また河原町で焼肉を食べるのかなと思う。立って肉を焼くバイオの宮古さんは、さぞかし異様だろうなと思う。
「蓮子の後ろ、入り口の傍のカウンター席、バイオの宮古さんが立ってるわ」
私はさりげなく振り返ってメリーの言う見当を見た。窓際のカウンターを前に姿勢良く立っている色白い少女の横姿が目に入った。私がバイオの宮古さんを見たのはこの時が初めてである。
「結構普通ね。こういうのは意外と言うべきなのかしら」
「立ってるのがまずおかしいじゃない」
私はまた振り返って見た。その人はやっぱり立っている。
バイオの宮古さんは、分子生物学講座の院生である。十以上もの講義で教授のアシスタントを務めている。バイオの宮古さんはいつも立っている。かつてその膝を曲げて座っている姿を見た者は誰も居ない。バイオの宮古さんはよく食べる。食堂に現れる日は十人前も作らせてしかもたいらげる。バイオの宮古さんは力持ちである。講座の孵卵機を買い換えた折は届いた大物二台を一人で抱えて五階の機械室まで階段で上った。バイオの宮古さんには霊感がある。時折誰も居ない虚空に向けて解らないことを話している。
そんな不思議な先輩の噂を、私はメリーから聞いていた。
「でも、立ってることを除けば、そういう種類の人にはとても見えないよ。立ってることを除けば」
私は少し首を捻った。
その日の宮古さんは、噂の怪人物にも似合わず小洒落た身なりをしていた。前述のとおり肌は白く、よく手入れされて瑞々しい。赤い華服の染め色は鮮やかに、黒いスカートと合わせて縫製細かなレース飾りをあしらってある。日避け帽には星型のバッジさえ付けている。そんな人が空き椅子と空き椅子の間にあって棒立ちに立ち尽くしているのはかえって奇観でもあったが、本人の方は非常に静かなので、周囲の客もあまり気に留めていないらしかった。
「大食いの噂も本当よ」
メリーがまた指差して言った。
テーブルの広いこの店はカウンターさえ十分広い。その広いカウンターを二席分以上領有して、宮古さんはカツ丼を並べていた。見ているうちに店員が来てさらに並べた。カツ丼は次々やってきた。離れた位置から見ても十人前は確かにあるようだ。注文が全部並んでから、ようやく宮古さんは箸をとって食べ始めた。動作がなんだかぎこちない気がした。おぼつかない箸でようやくカツを取り上げると、変に体をよじって口の方からカツを迎えに行き食べる。そんな不格好なやり方でも飲み込むのは早かった。異様に早かった。覚えず目を見張る早さがあった。それは早食い自慢にありがちな咀嚼を怠っての早さではなく、もっと常識を外れた、食べるというよりも、飲むというよりも、まるで吸い込むような早さであった。
猛烈な勢いでカツ丼をたいらげていく宮古さんを見ているうちに食欲を失した私達は、運ばれてきた定食もそこそこにしてさっさと店を出てしまった。往来へ出るなりメリーが「ねえ、変でしょう」と言ってきた。私は苦笑いをしてうなずいた。
「なるほど、人間離れしたところがあるね」
「私ちょっと怖いわ」
「あの勢いでカウンターも食べちゃいそうだった」
「人間も食べちゃいそう」
メリーは本気でぞっとしているらしかった。
「ストレスかな。勉強のしすぎだよあれは」
「胃に穴が開いたらあんな風に食べられるものかしら」
「現代の生物工学ならたぶん可能ね。デザートは別腹にするの」
「本当に実験してるのかも。講座の先生も変人らしいし」
「女性にはありがたい変人ね。じゃあ宮古さんはその験体?」
こんな想像は私にとって冗談でしかなかったが、メリーはなかなか応答しなかった。場に居ない人の話などいつまでもしているのは気が悪いので、その日はそれきりにして話題を変えた。
それ以来、私達は春休み中も大学へ行けば度々宮古さんを見かけた。ベンチに座っていると書類を抱えて前を横切ったことがあった。門前に立って桜を見上げていたこともあった。例の定食屋へ入ればカツ丼を食べていた。顔を見れば決まって無表情でいた。宮古さんは休暇中も関係なく毎日大学に居るらしかった。あるいは研究室に寝泊りしているのではないかとも思われた。
私達はよく、日の傾きかかった帰り際に、門前でふらふらしている宮古さんを追い越していくことがあった。そうした時の宮古さんは、二十リッターもありそうな大きな木箱を腕に抱えているので足元もよく見えず危なっかしい様子であった。ある時は蹴つまずいて箱を落っことした瞬間を目の前で見た。私とメリーは駆け寄って助け起こそうとしたが、箱が案外に重いので驚いた。こんな物を抱えて歩く宮古さんは確かに力持ちに違いないと思った。なんとか箱を宮古さんの腕に抱えさせると、宮古さんは何も言わない代わりにお辞儀をしかけたが、また箱を落としそうになったので慌てて止めた。無愛想だがそそっかしい人らしい。
「ねえ蓮子、あの箱の中には何が入ってるのかしら」
ある時、大学にほど近い喫茶店に入って活動予定を組んでいると、話題がバイオの宮古さんの方に移った。メリーによれば、宮古さんの行動はまったく不可解らしい。
「だってあんまりしょっちゅう過ぎるじゃない」
「例の箱持ち移動が?」
「ただの移動じゃないわ。持って出て行くのよ。研究に関係ある雑用なら構内を移動しそうじゃない」
「何かの測定に行くのかも」
「バイオってそんな分野かしら」
「メリーは何がそんなに気になるの?」
「そもそも大学って、機材とか教材とか、物が持ち込まれることはよくあるけど、持ち出されることは滅多にないでしょう?」
「……その前提はおかしい。物理とか色々的に」
「持ち込まれた物が持ち出されるとしたら、その時はそれはゴミかあるいは発見という形に変質しているわ」
「なるほど、それなら解るわ。ゴミなら業者が、発見なら企業が回収しに来るはずね」
「だから不思議なのよ。あんなに重い物を、あんなにしょっちゅう持って出て行く……」
「何かとんでもない秘密だったりして?」
メリーの話を聞いているうちに、私の方でも少々興味が湧いてきた。「それじゃあ」と言って笑みがこぼれた。「今日の活動はそれをつきとめに行きましょう」と提案すると、メリーはちょっと躊躇してみせたが、自分で口にした話題なのでやっぱり最後には賛成した。
ことが決まれば秘封倶楽部の行動は早い。私とメリーは門前に立って宮古さんを待ち構えた。これまでに宮古さんが箱を持って出てきたのは、おそらく五日前の目撃が最後だろう。普段通りの頻度なら、今日か明日にはきっとまた箱を持ち出す。
宮古さんの登場を待つ間、メリーはバイオの宮古さんについて実に様々な空想を並べて気味悪がった。その中には人間に擬態した宇宙人じゃないかしらとか未来からやって来たロボットかもしれないとか、まるで突拍子もない大昔のSF映画みたような説が多くあった。SFも結構だが秘封倶楽部ならオカルトの方面から立つ仮説はないのかと聞いてやると、メリーはしばらく考えてから「宮古さんはゾンビよ」という言葉。SFが抜けきっていないようで可笑しかった。
メリーの空想が突き進んでいって、とうとう宮古さんが講座の教授に洗脳されているという妙説にまでおよんだ時、校舎の裏側から件の人が現れた。果たして箱を抱えている。うまい事にこの日は二箱の大荷物であった。普段のごとく抱える一箱の上に、同じ大きさの物をもう一箱を積み上げている。
すかさず「先輩こんにちは」と挨拶して呼び止めた。宮古さんは顔を覆い隠す箱の向こうでなんとも返事をしなかったが、相手は尋常の人ならぬ宮古さんなので、こちらとしてもこの沈黙を単純な無視の意味とは受け取らなかった。「いつも大変ですね」とメリーが言った。「前が見えなくて危ないでしょう」と私も声をかけた。宮古さんは危ないとも危なくないとも答えないが、メリーは構わず二段に積んだ箱の上段をやや強引に奪い取って「一つ持ちましょう」と申し出た。「遠慮しないでも私ら暇ですから」と言い添えて私も持ち手の一端を取った。箱の向こうから顔を現した宮古さんは、やっぱり無表情だった。宮古さんはこの間をまったく硬直して立っていたが、しばらく待つとゆっくり口を動かしながら、「こっち、ついて来い」と、ぶっきらぼうな声をはじめて出した。
秘封倶楽部は顔を見合わせてうなずきあった。
校門を出た宮古さんは東大路を少し上がって今出川で東に折れた。私とメリーは箱の両端にある持ち手を一端ずつぶら下げて宮古さんのあとに続いた。時折ふらつく宮古さんを追って広くない道をふらふらと傍迷惑に蛇行した。「どこまで行くんですか」とメリーが訊くと、宮古さんは「上」と一言だけ漠然たる答えをさも十分らしく返した。今出川から北白川町にいたって宮古さんは往来から山手へ移ると、そのままずんずん藪の中へと踏み込んだ。
宮古さんそっちは山ですよという注意が私の口から出かけたところへ、振り返った宮古さんが私の先をとって「こっちだ」と信じ難い誘導をした。宮古さんの言った『上』というのが、吉田山の意味かと気付くのにまた少し時間がかかった。
「蓮子、今のうちに見て。このくつ新しく買ったの」
せわしく繁る薮道とその高い斜度を呆然見上げながら、メリーが半泣きで心細いことを言った。私はこれに何と言って慰めるべきか分からず、ただ「可愛い」と褒めるのが精一杯だった。
「こんなことしようなんて言い出して、蓮子のせいだわ」
「さすがに予想外だったわね。まさか行き先が山の上なんて」
「本当に、この箱いったい何を運んでるのかしら」
「死体だったりして」
「ちょっと、やめてよ!」
薮の向こうから「早く来い」と宮古さんの催促が飛んで、私もメリーもついに登山を決心をした。薮に分け入って奥へ進むと、急にあたりがほの暗くなった。見上げれば、太陽が木に覆われてほとんど隠れてしまっていた。その太陽すらも今にだんだん沈みゆく。私はこの一行について果たして日没までに下山できるだろうかと大いな不安を抱いた。坂道を登り始めると、手に提げた箱がいっそう重く感じられた。秘封倶楽部は思いもよらず奇妙な冒険に駆り出されてしまった。
一応ある細い人道を宮古さんは綽綽として登っていく。秘封倶楽部も懸命に続いた。合成樹木からなる木立はどこまで分け入っても単調な風景を繰り返す。見ていると目が回って冷や汗が出た。先の見えない登山道は十分も歩くとすぐに嫌気が差した。木々の合い間から細く差す日脚が次第に薄赤くにじみ出すと、自分が何かおかしな夢を見ているような気持ちがした。そのうちに耐えられなくなって宮古さんに質問した。
「この道はよく使うんですか?」
ややあって「使う」と宮古さんは答えた。
「大変なんですね。何を研究なさってるんですか?」
またややあってから「電気」と、実に簡単な答えが来た。さすがに電気というだけでは分かりかねたので、もう少し詳しく訊いていくと「神経」だとか「反射」だとかいう稚拙な説明がやっと得られた。
「生体電気の研究って最近はあまり聞かなくなりましたね。バイオの花形は今どこにあるのかしら」
相対性精神学を専攻するメリーが神経と聞いて口を挟んだ。学問に陽性の分野と陰性の分野があるような言いぶりは、平生からの彼女の癖である。この時、ふいに宮古さんが立ち止まった。すぐ後ろを歩いていた私とメリーは咄嗟に足を止めようとしたが、重い箱が慣性で手を引いたせいで二人とも少し前へのめった。私達はおやと思いながら宮古さんの言葉を待ったが、この時の宮古さんは容易に応答しなかった。そこになんとも形容し難い不思議な時間が流れた。夕日を受けて赤い華服がいっそう赤く目に照った。はるか頭上で鴉が鳴いた。風が止んでいた。
「先生は…………先生は、魂を探してる、から」
長い沈黙の後で、宮古さんはそれだけ言ってまた歩きだした。秘封倶楽部もついて歩きだした。私は黙って歩きながらも、先の一言を考えると不思議だった。空想に浮かべてさえSFの印象が抜けきらない機械的の見本のような人の口から、突如発せられたこの魂という神秘の単語に、私はいっそ滑稽に近いくらいの違和感を抱いていた。
山道に入ってから二十分ばかりして、なにやら開けた場所に出た。足元に広がる京都の街と西山に没する夕日とが、一の大なる屏風絵のごとく広く美しく見渡せた。場所の中心にはごく小規模なコンテナ住宅が据えられており、宮古さんはその裏へ回ってようやく箱を地に降ろした。私とメリーも宮古さんにならって箱をその場に置き降ろした。見れば大きな焼却炉らしき装置がこの建物には備わっている。
メリーが訊いた。
「これで焼くんですか? 箱の中身を?」
宮古さんはこっくりとうなずいた。そうして、ここまでついて来た後輩二人の顔を交互に見つめて「中身が何か知りたいか?」と急にこちらの本題へ切りつけてきた。私は内心ぎくりとしながらも「知りたいです」と思い切って言った。宮古さんは少し間を置いてから「知りたいか?」とまた言った。
「知りたいか? 何でも知りたいか? 隠してもか? 言わなくてもか? 見えない場所で焼いてもか? 中身が何でもか? 隠れてるのに知りたいのか? 中身が何か知らないのに中身が何か知りたいのか? それが知りたいのか? おかしいな? それでも知りたいか? どうしても知りたいのか?」
バイオの宮古さんは無表情なまま、歌うような呪うような言葉を秘封倶楽部に浴びせかけた。低く怖ろしい調子があった。私とメリーはほとんど同時に「知りたいです」と、はっきり答えた。ここまで来て引き返す秘封倶楽部なら鳥船遺跡まで行って怪我などしない。私達は秘封倶楽部だった。
「じゃあ見ろ。勝手にしろ」
宮古さんの声は、虜囚に自害を許可するような冷淡さをもって私の耳に響いた。そうして宮古さんは箱に手をかけると、怖ろしい力をこめて、釘打たれた木蓋をゆっくりと、少しずつ、引き剥がしていった。分厚い蓋が軋みをあげながら十センチほど持ち上がった時、私はその暗い中から一種の消毒液の臭いを嗅いだ。中を覗き込もうとしたメリーが、急にきわどい声を上げて私の肩に飛びついてきた。それとほぼ同時に、反り曲げられた木がみりみりと音をあげて裂けた。中を厚く覆っていた蓋が半分にちぎれてとうとう取り去られてしまうと、宮古さんの秘密が真っ赤な夕日の中に露見した。
箱の中ぎっしりと数多く詰め込まれ、いずれも白く細長く、各々ビニール袋に包まれた物は、全て、人間の右腕だった。
はじめ私はこの事実をどう理解すればいいか分からず、ただ硬直して宮古さんの色白く無表情な顔を見つめていた。そのうちに宮古さんは箱の中から一本を取り出して野菜を扱うように無造作な挙動でずいとこちらに突き付けてきた。この時になってようやく、私は全身をいきなり氷づけにされたような寒さを感じた。恐怖の声を必死に抑えてメリーの肩を抱いて言った。
「……本物、ですか?」
この確認には、目の前の現実を疑いたいという反動の意思と同時に、これが悪趣味の冗談なら許せないというさらに反動した意思が込められていた。
「本物。でも実際とは違う」
宮古さんは謎のような答えをした。
「合成して、作った右腕、だ。実習、実験、研究で使う。病院も使う。使ったらもう使えない。ラットは捨てたら捨てられるけど、腕は捨てたら怒られる。みんな怖がるから、だからここで焼く。腕以外にも使うけど、今日は腕が多い」
宮古さんはポケットから電子キーを取り出して焼却炉を起動させた。炉の扉を開いて、持っていた右腕を放り込んだ。足元の箱を抱え上げるとやはり無造作に放り込んだ。ちぎれてしまった木蓋も拾い上げて放り込んだ。「そっちの箱も」と私達に言った。しかし、私とメリー、二人とも箱に手を付けることができなかった。宮古さんは、これに表情を変えることもなく、この箱をまた抱え上げて炉に放り込んだ。
「燃やす物、何かあるか?」
私とメリーが首を振ると、宮古さんは炉の扉を閉じて傍らにあるパネルに触れた。しばらくすると排気筒から白い煙が立ち昇った。
「宮古さん、それは何ですか?」
メリーが宮古さんの手元を指差して訊いた。
「…………お祈り」
宮古さんは、例のぎこちない指を胸の前でぎこちなく組み合わせて、その言うとおり祈りのような手使いをしていた。
「……魂が、あるからですか?」
メリーがまた訊いた。宮古さんは、首を振った。そこにはやっぱり何の表情も浮かんではいかった。秘封倶楽部も真似をして手を合わせた。白い煙が赤い夕空にたなびいて昇り行くのを眺めていると、そこに魂が無いと断じながら祈らずにはいられない宮古さんの心が、少しだけ解るような気がした。
焼却は五分ほどで済んでしまった。「役に立ったぞ」と、宮古さんが言った。それは秘封倶楽部に謝したようにも聞こえたし、灰になった右腕達に詫びたようにも聞こえた。
日のほとんど暮れかかった山道を、三人あわただしく駆け下りた。自転車の行き交う今出川へ戻ると、メリーが大きく息を吐いた。先刻の体験がみな異世界の出来事のように思われた。西へ歩き出した宮古さんについて「大学へ戻るんですか」と訊いてみると「河原町に行くんだ」と返ってきた。用向きを尋ねてみればなんと「焼肉食べたい」という、とんでもない理由であった。「いっしょに行くか」と宮古さんには貴重なお誘いさえ受けたが、私もメリーも人間を焼いた直後で焼肉を口にできる神経は持ち合わせていなかった。
秘封倶楽部とバイオの宮古さんとは、そこで別れた。
それからの私達は、山手に白煙が上がるのを見る度に、ああバイオの宮古さんが何か焼いているなと思う。魂が無いかも知れずあるかも知れない部品に手を合わせて、そうしてそれが済んだら、また河原町で焼肉を食べるのかなと思う。立って肉を焼くバイオの宮古さんは、さぞかし異様だろうなと思う。
何か心に残る良い作品でした
宮古さんのキャラもすごく好きです
次回があればせーが先生も見たい期待
世界観といい人物の絡みといい申し分なし
こんな雰囲気の秘封がもっと読みたいと思いました!
非常によかったとだけコメントしておきます
なんでも定期的に長期休暇をとって大学からいなくなったかと思えば
随分と古い一万円札を大量に握って帰ってきたとかそうじゃないとか
相変わらず文章が流れるようで読んでて心地よかったです
ただ宮古さん(芳香)がなぜこっちにいるのかとか推測の材料に乏しい部分から幾らか投げっぱなしの印象を受けてしまったのでこの点数で
非常に良かったです。
宮古さんだからこそ成立する、説得力のある内容にゾクッときました。
学術研究って大変なのね……でもそのリアルさが面白かったです。
こんな会話が繰り広げられているのが生物系。
専門外の人が傍から見ていたら、結構異質ですよね。
自分としてはすっかり日課な、
ステンレスの巨大な容器にシャーレをギッシリ詰めて滅菌処理する姿も、
傍から見たらこんな感じに不気味に映るんだろうなぁ、
と宮古さんと自分を重ねてしまった生物系の院生です。
大学の雰囲気がよく出ている作品でした。
芳香について少し投げっぱなしな気がしたのでこの点で。
それぞれの要素がしっかりまとまっていて実に良かったです
投げっぱなしというコメントもありますが、それはちょっと的外れな感じがします。作者さんは気にしなくて好いと思います。ゲスト出演の芳香で私は十分です。この世界観が大好きですので、また次も期待しています。
ぜひ他のキャラのゲスト出演も読んでみたい。
無機質な自動書記で書いたような、もしくは宮古さん本人が書いたような・……。
この作品に合っているので、とてもおもしろいとは思います。
でも怖さや不気味さに似た不思議な寒気を読後に感じました。
秘封ってのはそう言うものなのかな。
でも、嫌な感じはしなくて面白かったです。
タイトルでバイオハザード関係かと思ったw
思考から五感への切替も自然で違和感無く、下手に語り手の感情を単語で現さない所が文体に合ってる。と感じた。
東方キャラを現代に組み込んだ、のifストーリーとして読めば宮古さんのキャラに全く違和感が無く、当然のように種族を作中で言わない辺り、おかしな人間或いは人間に近いゾンビなのかと想像出来る余地もあって面白い。と思う。
物語としても完結していて、正直点数をつけるのが申し訳無くなるくらい。個人的に、は。
ぎこちない動きでお祈りをしている宮古さんが容易に想像できました。
お札も外れ、幻想郷にいなければ、芳香もこんな感じなのでしょうか
あと右腕のくだりでは笑わしてもらいました。お見事です。
宮古さんが登場したあたりから全く話のトリコにされてしまいました。
何とも言えない感銘や衝撃を受けました。
大学に潜む不気味な感覚がよく出てました
芳香や蓮子メリーの描写が素晴らしい。
靴のくだりはお気に入りです。
大学や街の描写もリアルで、まるで本当に京都で3人を見ているかのようです。
ストーリーは短いながら如何にもキャラクターらしい内容ですね。教授が気になるw
なんだか不気味なのにほのぼのとした感じさえします。
さくっと読めてこの後味。良作ありがとうございました。
楽しく読ませて頂きました
とても読みやすくストンと落ちる文章にこの点を
実際にいそうですよね、宮古さんみたいな人。
一人で人間の部位を運んで燃やす宮古さんは何を考えているんだろう。
機会があればそちらも見てみたいものです
やはり文章が上手いですね。
最後はどんでん返しでしんみりと終わるいい作品でした
ところでこれバイオの宮古さんがどうしてこんなに変人なのかはちっとも説明されてませよね?w
宮古さん一回会ってみたい