「ふぅ」
アリスは人形のメンテナンスに区切りをつけ。一息ついた。
「明日はどうしようかしら」
アリスのいう『明日』というのは魔理沙の誕生日の事。
毎年、お互いの誕生日を祝いあっているのだが
今年はどんな形で魔理沙を喜ばせようか
アリスは思案に耽っていた
「去年までは普通に祝ってあげたけど、十分喜んでくれたわね」
去年プレゼントを渡したときの魔理沙の子供のような笑顔を思い出して、アリスの表情が崩れる
「でも…」
今までと同じ、そんなことは都会派を自称するアリスとしては許せない。
なにか、何か変化を求めなければ
「新しい方法で魔理沙を喜ばせる方法を考えなきゃ」
現状維持は退歩…と言わんばかりかアリスはノートを取り出し
自分の思いつく限りの計画を書きなぐった。
「……どれもピンと来ないわね。」
渡すべきプレゼントも決まっている。あとはシチュエーションだけなのだが
その時、頭を抱えていたアリスに悪魔の囁きが聞こえてくる。
<アリス、聞こえますか?魔理沙を……魔理沙を×××なさい……>
「!?」
はっと顔を上げる。
「魔理沙を……×××する……!」
そういう事か。アリスは思考を整理し翌日に向けて計画を練った。
「いい案が浮かんだわ。ふふふ。魔理沙。覚悟しなさい。」
そうアリスは悪魔の囁きに耳を傾けてしまったのだ。
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翌日 マーガトロイド邸にて
魔理沙はいつものように、私の家に遊びに来ていた。
心なしかその表情はいつもより弾んでいる。
「おっすアリス!おはよう!」
笑顔であいさつしてくる魔理沙に此方もつられて表情が崩れそうになる。
……がここでいつものようになってしまったら計画が台無しになってしまうので
敢えてこらえる。
「ええ。おはよう。」
いつものように抱きしめてグルグルしたい気持ちを理性でグッと抑える。
うんアリスちゃんえらい。
「?」
こちらの反応に気が付いたのか魔理沙の表情に少し疑問符が付く。
でもこれも計画通り。
「どうしたの?」
「い、いや。なんでもない。」
「そう。」
いつもの私との態度の違いに同様を隠せない様子の魔理沙。
私はそのまま、淡々とした態度で魔理沙に接する。
「なんのよう?」
「ッ!?な……なんのようって……その……」
明らかにショックを受けた反応をする魔理沙。
そんなのは分かっている。私に誕生日を祝ってほしくてこうしてやってきたことくらい。
でも
「そう、紅茶くらい出すけど。今日は忙しいから」
「…………な、なんだよ、今日はやけに冷たいじゃないか」
「普通よ」
魔理沙が無理して平静な態度を装おうとしているのが手に取るようにわかる
ズキンと胸が痛む。がそこをグッとこらえる。
「な、なぁ?今日は空いてるよな?」
「さあ?用事が長引くかもしれないし。わからないわ」
「えっ」
突き放す言葉をややオブラートに包む。
魔理沙は今にも泣きそうな表情をしている
こんな事を言ってはアレだが可愛い。すごく可愛い。
今すぐにでも抱きしめたくなるくらい、今のまりさかわいい
だが、ここでもう一言くらい冷たい言葉で突き放して
「ぐすっ……」
え……?
「ぐすっ……わかった……お茶いらない。私ももう出てくから」
「え……ちょっ」
予定が違う。展開が早すぎる!ここで帰ってしまったら計画が……
自慢のブレインを全回転させて修正する方法を考える。が
「じゃあ、また明日な」
「ま……まりさ!?」
魔理沙は踵を返し、玄関先まで走っていく
「ま!魔理沙!!待って!待ちなさい!!」
外に出ると魔理沙はそのまま箒に跨り飛び去ってしまった。
どうしてこうなった…
机に突っ伏し頭を抱えながら、その言葉だけが脳をリフレインしていた。
あの後急いで魔理沙を追いかけて飛び出したのだが
その時にはすでにあの子の姿は無かった。
心当たる場所を色々と探して回っていたのだがどうしても見つからない。
神社に寄ってみたのだが霊夢からは
「来てないわよ。」
と言われてしまった。
「何かあったの?」
霊夢に聞かれた時
「うん、少し……ね」
とはぐらかして答えた。霊夢からきついジト目で見られ
それに耐えきれず正直に私が魔理沙にしたことを話した。
<少女説明中>
「ふーん、それで敢えて魔理沙に意地悪しようとしたわけだ」
「意地悪したというか……私のブレインが徹底的に魔理沙を焦らせって……」
「おんなじでしょ?」
「う……でもその後の方が色々と喜ばせられるかな……って思って」
「まぁ話を纏めると全般的にあんたが悪いってことね。」
「はい…」
一通り事のあらすじを説明すると、霊夢からひとしきり説教をされた。
魔理沙がどこかに行ってしまったと聞いたとき
やはり霊夢も魔理沙の事が心配だったんだろう。
「とりあえず魔理沙見つけたらアリスが探してたって伝えてあげるわ。」
「うん、お願いするわ。」
相談に乗ってくれた霊夢にお礼を言い
とりあえず、空に飛びあがる。今度は人形を総動員して
このあたり一帯を探してみよう。
万が一魔理沙が自暴自棄になってて、取り返しのつかないことになったら大変だ。
「魔理沙……ごめんね。」
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アリスが去った後の博麗神社
「行ったみたいよ」
「…………。」
魔理沙が炬燵にも入らずに襖の方を向いて、ぶすくれている
「寒いから。炬燵にくらい入りなさい」
チョイチョイと手招きするが、反応はない。本当にしょうがない子だ
「事情は聞いたでしょ?アリスも反省してるって」
「…………ぐすっ」
魔理沙は未だにベソをかいていた。
午前中物凄い勢いで神社に駆け込んでくるなり
「アリスが!アリスが!!」
と掃除している私に飛びついてきたのだ。
どうせアリスの人形か何かを壊してヘソを曲げられたか何かだろうと思っていたが
どうも様子が違うようだった。
聞いた話を簡潔にまとめると
アリスが誕生日なのに祝ってくれない…と
こどもか!?と突っ込みを入れてやりたいところだがこれ以上泣かれてしまうと
あやすのが面倒臭い。
まったく、アリスも何を考えているのか……
あいつが魔理沙の誕生日を忘れるわけがない。
それに普段の魔理沙に接する態度を考えれば
今日なんてトコトンまでこの子を可愛がる気満々のはず。
それなのに魔理沙がこんな様子なんて…
「アリスなんて…嫌いだ…ぐすっ」
襖の前で膝を抱えて座り込んでしまっている。
無理に追い出すつもりはないけど
魔理沙の周囲には厄神様も真っ青になるほどの負のオーラが立ち込めている。
このままじゃいけない。これ神社に魔理沙の悲しみオーラが纏わりついてしまったら
ただでさえ来ない参拝客がさらに寄り付かなくなってしまう!
なんとかしなければ
とそんな事を考えなら午前中を過ごしていたら
やっぱりというかなんというか
件の人形師がやってきた。
しかし今魔理沙と鉢合わせをするのは色々問題がある。
とにかく事情を聴かなければ。
アリスに引き渡すという手もあるのだけど
今の魔理沙は色々と反転してしまっているので
下手したらマスタースパーク一発で神社ごと私たちが吹き飛び兼ねない。
夫婦喧嘩は犬も食わないというやつだ。
魔理沙の居る部屋に結界を展開し部屋の内外の情報を一時的に遮断し
アリスを招いた。
そして今に至る。
「ね。機嫌直しなさい。出来心だって言ってたわけだし。」
「…………ぐすん」
魔理沙の肩に手を載せて表情を伺う。
だいぶ落ち着いてきたみたいだ。
よし、もう少しだ
「ここに居たって、アリスから誕生日おめでとうって言ってもらえないわよ」
「でもさ……」
「もう、頑固なんだから。アリスの事好きなんじゃないの?」
「好きだよ。でも、今はアリスに会うのがこわい……」
予想以上にトラウマになっているみたい。
どうやら都会派は演技に加減というものを知らないらしい。仕方ない。
「じゃあ、向こうからきちんと謝って来たら許せる?」
「…………たぶん」
「らしいわよ。アリス」
「!!」
手で持っていた上海人形に話しかける。すると持ち主からすぐに返事がかえってきた
<今すぐ行くわ。>
「おまえ……」
「さっきふよふよ辺りを飛んでたからひっ捕まえたの。」
「…………」
「あの数からして……あの子索敵だけで相当数人形放ってるのがわかるわ。」
「文字通り本気の捜索活動って言えるわね」
魔理沙が下を俯く
「私……」
「ちゃんと仲直り……するのよ?」
「うん。」
魔理沙は立ち上がり外に走っていく
襖に手をかけて振り向いた
「ありがとう。霊夢」
「ええ、あ。それと」
「ん?」
「誕生日おめでとう」
私がその一言をかけると照れくさそうに顔を赤らめいつものようにニッと笑った。
外を見ると調度アリスが境内に降り立ってくるところだった。
魔理沙の姿を見つけるとひしっと抱き合った。
お互いを見つめながら話をしているみたいだ
そしてこれから二人で誕生日を祝いあうのだろう
どうでもいいけど、見ているこっちが恥ずかしい。
魔理沙とアリスの姿見守りながらそっと襖を閉じた。
「うーさむい」
「おかえり霊夢」
「………………」
振り返るとスキマ妖怪が炬燵で手招きをしていた。
「いつからそこに?」
「魔理沙が泣きながら霊夢に飛びついてきたところから」
「なるほど、最初からか…」
炬燵に入り暖を取る。
一緒に説得してくれればよかったのに…
と一瞬脳裏を過ったが話が面倒になりそうだったので
大人しくしててくれてよかったのかもしれない。
「ずっと見てたの?」
「そりゃあ一部始終」
相変わらず趣味が悪い…
「何ニヤニヤしてるのよ」
「ん?あの霊夢が世話焼きお姉さんみたいになったなぁって」
「余計なお世話よ」
「そんな大人になった霊夢ちゃんの今度の誕生日は何がいいかなって考えてたのよ」
一瞬魔理沙とアリスの二人の事を思い浮かべる
不覚にも紫との次の誕生日を二人に照らし合わせてしまい顔が熱くなった
「……そりゃどうも」
「照れちゃって」
「照れてない」
そんなやりとりをしながら騒がしい一日は暮れていった
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夕暮れ時の魔法の森
アリスを乗せて魔理沙の箒がゆっくりと空を駆ける
「ねえ魔理沙」
「なんだ?」
「今日のご飯何がいい?なんでも好きなもの作ってあげるけど」
「用事はいいのか?」
「勿論あるわ。魔理沙とずっと一緒に居るっていう。大事な用事が」
「調子いいやつ」
いつもみたいに悪戯っぽく笑う魔理沙。
「和食…なんて野暮なことはいわない。アリスが。得意な料理ならなんでも…」
「ふふふ。任せなさい」
アリスの自宅がゆっくりと見えてくる。
「あ、魔理沙。」
「ん?」
「遅くなっちゃったけど」
ちゅっ
「……あ……アリス…」
頬にキスをされてあっけにとられる魔理沙。
「おたんじょうびおめでとう」
「あああありがとう……でも」
顔を赤らめる魔理沙だったがどこか不服そうだった
「でも?なに?」
「出来れば。口がいいな……」
消え入りそうなか細い声で魔理沙がつぶやく
するとアリスはにっこりと笑って
「あとでたっぷりしてあげるわ。今日のお詫びもかねて」
「アリス……顔紅いぜ」
「あなたに言われたくないわ」
お互いで顔をつっつき合いながら
手をつないで二人は家の中へと消えていった。
しかし魔理沙は何歳になったのだろう…香霖堂を読む限りでは13~14歳くらいらしいが。
サザエさん時空だし気にしても仕方ないか。
パスも入れ忘れたままの投稿ですので編集も出来ない…バカスorz
みなさん投稿される際は十分に気を付けてください(´;ω;`)
管理人様に削除依頼は出しておきましたのでいつか消していただけるかと思います。
新年早々お見苦しいところをお見せしてすみませんでした
>>1様 コメントしていただいて本当にありがとうございます!
幻想少女はどこまでいっても少女のままではないのかと。