Coolier - 新生・東方創想話

幼い妖怪のとある一日

2012/12/24 11:26:02
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 ある日、ルーミアは、お昼ごろに目を覚ましました。
 とても早起きをしてしまったので、何をしようかなーと考えていると、すぐ近くから、誰かが楽しそうにしゃべっている声が聞こえました。木の影から覗いてみると、そこでは、人間の男の子が3人、楽しそうに木のぼりをしていました。

「おおーすげー!ずーっと遠くまで木しか見えねー!」
「早く降りてきて俺に代われよー!」
「そうだぞー!お前ばっかりずるいんだよー!」
「ちょっと待って!あとちょっとだけ!」
「しょうがねえなー……あと10秒だけだぞー!」
「「いーち、にーい、さーん」」

 いいなー。たのしそうだなー。一緒に遊びたいなー。ルーミアはそう思いましたが、少し怖かったので、ただじっと見ていることにしました。
 すると、さっきまで木に登っていた子供が、ルーミアに気づきました。

「ん?そこにいるのは誰?」

 あわてて逃げ出そうとしますが、木の根につまづいて転んでしまいます。その音を聞いて、子どもたちが集まって来ました。

「大丈夫?」
「痛くない?」
「怪我してない?」

 みんなはルーミアのことを心配して声をかけます。あんまり痛くなかったので、ルーミアは、大丈夫、と答えました。

「ねえ、君、名前は?」

 木に登っていた男の子が聞いてきます。ルーミアは、自分の名前を答えました。

「知ってる?」
「ううん……聞いたことないや」
「るみ、なら知ってるんだけどなあ」

 男の子たちが話すのを、ルーミアは地面に座ったまま、ぼーっと眺めていました。

「とりあえず、さ。るーみあ、ちゃん?」

 一人が手を伸ばしてきます。人間とまともに話したことのないルーミアは、叩かれるかと思ってとっさに頭に手を当てて、ぎゅっと目をつぶりました。

「い、いや、そんなに怖がらなくてもいいよ。乱暴しようっていうんじゃないからさ」

 ルーミアは薄く目を開けます。

「ねえるーみあちゃん、一緒に遊ばない?」

 ルーミアは、ぱっと笑顔になって、うん、とうなずきました。




 それから、ルーミアたちは、いろんなことをして遊びました。鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり、缶蹴りをしたり。いつも一人ぼっちだったルーミアは、初めての遊びにずっと目を輝かせていました。楽しいね。ルーミアがそう言うと、男の子たちも笑顔になります。そんな楽しい時間は、あっという間に過ぎ去っていきました。




「あー楽しかった!」

 何回目かわからない鬼ごっこが終わって、男の子がそう言いました。するとどこからか、くー、と可愛らしい音が聞こえてきました。それは、ルーミアのお腹の音でした。

「るーみあちゃん、おなかすいた?」

 うん、と答えると、男の子たちは、ちょっと悲しい顔になりました。

「俺たちはいつももっと遅くまで遊んでるからいいけど、るーみあちゃんは門限とかあるよなあ……」

 もんげん?ないよ?門限とは何のことだかルーミアにはわかりませんでしたが、ルーミアはもっと遊んでいたかったので、そう答えました。

「でも、お腹空いてるんだろう?もうそろそろご飯の時間かもしれないし……」

 そう言って考えこむ男の子たち。すると、ある男の子が、何かを思いついた顔で、近くの木に登り始めました。何やってるの?と聞いても、木の葉の中にもぐって何かを探すばかりで、答えてくれません。そして、少し待っていると、何かを掴んで木から飛び降りてきました。

「はい、るーみあちゃん」

 男の子から手渡されたのは、クルミでした。

「なあみんな、ここをどこだと思ってるんだ?ここは森だぜ?こんなにたくさんの食べ物がここにはあるじゃないか!お腹がすいたから帰るなんて、ばからしいよ!」

 男の子は、そう言って手を広げました。

「なるほど!」
「そうだな!じゃあ俺も食べ物を探すよ!」

 男の子たちは口々にそう言いました。ルーミアはみんなが何のことを言っているかわかりませんでしたが、食べ物がたくさんある、ということはわかったので、嬉しくなって男の子に飛びつきました。そして、




 ルーミアは、男の子を食べてしまいました。




 食べていると、男の子たちがこっちを見たまま固まっていました。分けて欲しいのかなーと思って、食べる?と手に持っていた腕を差し出します。すると、

「う、うわああああああああああああああああああああああ!」

 そう叫ぶなり、みんなどこかに走って行ってしまいました。ルーミアは、何が起こったかわからず、ただそれを見つめていました。
 食べ終わったあと、ルーミアは少し考えてみました。どうしてみんな私を置いていっちゃったんだろう。なにか悪いことしちゃったかなあ。考えても考えても、ルーミアにはわかりませんでした。

 夜も更けて、人里から明かりが消えたころ。またどこからか、くー、と可愛らしい音がなりました。お腹がすいたルーミアは、今日のお夕飯を探しに行く事にしました。そして、頭だけが残った笑顔の男の子に、ばいばい、と手を振って、ルーミアは夜の空に飛んで行きました。
 空には、明るい満月がポッカリと浮かんでいました。
食べ物がたくさん(意味深)というお話。悪いことしてないのに子どもたちに逃げられちゃうルーミアちゃんかわいそう。

コメント返信をば。
>>7,13
基本的にはこういうことは人間の里ではよくあることだと思っているので、特に巫女が来たりとかは無いですね。もっと大事にならないと巫女は動きません。

>>11
その方の話は存じ上げないのですが、るみ、という名前の少女が妖怪「ルーミア」になる漫画をうがつまつきさんという方が書いてらっしゃいます。その話を思い浮かべながら書いた作品なので、もしよろしければそちらの作品も読んでみてはいかがでしょうか?

>>15
基本的には群れを作らない妖怪は共食いを気にしません。同じ種族だろうとそうでなかろうと、知り合いだろうとそうでなかろうと、すべての生き物を平等に扱うという姿勢は、人間なんかよりもずっと自然に近い、生き物のありのままの姿なのではないかと思います。

基本的には、「人間よりも純粋なもの」として妖怪や妖精を思い描いています。なので、人間と妖怪とどちらが異常かと言われれば、(少なくとも僕の作品の中では)人間のほうが異常、ということになります。

気晴らしで書いたつもりだったのにコメントにマジレスしまくってしまった…
とっとと次の作品書いてきます。頑張ります。評価やコメントしてくれた方、ありがとうございます!
新兎
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コメント



0.480簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
う…まぁルーミア物の基本的なSSの造りですな
特筆すべき事は無いけど、要所はしっかりと抑えられてるしグリムっぽくて良いと思います
4.80名前が無い程度の能力削除
オチが分かっていても楽しく読めました
5.70名前が無い程度の能力削除
里の子だよね。

ルーミアちゃんご愁傷様です
6.80奇声を発する程度の能力削除
オチはある程度予想が出来ましたが面白かったです
7.70名前が無い程度の能力削除
このオチだとルーミアちゃん後で下手すると殺されるよね
まあ突っ込むだけ野暮だが
11.90ヤタガラス魅波削除
オチは読めた
けど最初が頬笑ましかったからおk
留美と聞いて浅木原忍さんのSS思い出したの私だけじゃないはず。
13.100名前が無い程度の能力削除
えっ?里の外なら人間襲っても文句は言えないし、気に病む必要ないんじゃないの?
まあ突っ込みに突っ込むのだけ野暮だが
15.70名前が無い程度の能力削除
ルーミア的には食べても死なないと思っているのか、それとも精神が純粋に化け物なのか?まあ、いずれにせよ構ってはいけない存在なのに、やたら魅力的なルーミアちゃんはマジ妖怪の鑑!
21.603削除
よく読むタイプの物語ですかね
ルーミア怖いよルーミア