※この作品は同作品集168『らしくないことをしてみた』の続編となっております。
そちらを読まなくても差し支えはありませんが、読んだ方がよりお楽しみ頂けると思われます。
幻想郷の迷いの竹林の中に、その小屋はあった。
その小屋の中で、小屋の主である藤原妹紅は友人である上白沢慧音からここ最近の里周辺の変化について話をしている。
「そっか、封印されていた尼さんに続いて今度は仙人様が復活したってわけか」
「ああ、例によってその連中も博麗神社に入り浸っているそうであそこの人外魔境ぶりにますます拍車がかかったと言うわけだ」
「あっはっはっは、そりゃ傑作だ。いっその事家に住み着く類の妖怪でも紹介してやったらどうだい。小豆洗いとか」
愉快そうに手を叩く友人に、しかし慧音は渋い表情で。
「笑っている場合ではない。ただでさえあの神社は里から隔離されているような立地なのに、あのままでは余計に里の人々との交流に支障が出かねん」
「そんなに深刻に考えなくてもいいと思うけどな。ほら、あの巫女って何だかんだ言っても才能はあるわけだし」
軽い口調で言う妹紅に、慧音は重い口調で返す。
「そりゃあ当人だけが理解して使うだけならば何も教える必要は無いだろう。だがその事柄について他人と共同で使うのならばお互いに共通した使い方を知っている必要がある」
いまいち理解できなかったのか、妹紅が首を傾げているのを見て更に続ける。
「つまりだ。食事を終えた後にしたって、自宅では自分で使い終えた食器を洗わなければならないが、定食屋では店員が片付けるのを待てばいいという事は、教えられなければ自分で洗おうとしてしまうだろう?」
その説明で納得が行ったらしく、何度も頷きながら。
「ああうんうん、成る程確かにその通りだ。常識や習慣なんてものは誰かが教えてくれないと身につかないものだものな」
「そうだ。ましてや妖怪連中なんてのはその常識や習慣が根本から違っていたり守る気もないようなのが多いからな。そんな連中とばかり交流していては里での常識まで忘れてしまいかねん」
その言葉に神社の宴会でよく見る面子を思い返し、更に納得顔をする。
「色々と濃い奴が多いから、そりゃ慧音も心配になるよね」
「ああ。だからなるべく時間を見つけては霊夢に教えるようにしている」
「最近こっちに来れなくなったのはそれが理由か。ま、そんな理由じゃしょうがないか」
「すまんな、なるべくここにも顔を出すようにはするつもりだが……」
「別にいいよ無理しなくて。気長に待つつもりだから。でもね、これだけは言っとくよ」
「なんだ?」
「慧音の話し方って、より詳しく教えようとしてくれるのはいいんだけどそのせいで遠まわしになりすぎて分かりにくいんだよね。そこら辺は気をつけた方がいいよ」
その忠告に、慧音は暫く落ち込んだ。
◇
「今年は『宗』の文字だと思うんですよっ!」
年の暮れの博麗神社で山の上の巫女がそんなことを言い出したのは、慧音と霊夢が昨夜の宴会の際に出たゴミを粗方片付け終わり掃除用具を仕舞い始めた頃だった。
「なんだ、藪から棒に」
あまりの唐突さにしばし固まっていた二人のうち、先にこっち側へ戻ってきたのは人里で教師を務める半人半妖の上白沢慧音。
「ですから、今年を表す一文字ですよ。外の世界では毎年年末にその一年間を表す漢字を決めるんですっ!」
先ほどよりも語気を荒らげながら語る山の上の巫女、東風谷早苗の様子にも特に気圧されることなく、話を聞きながら片付けを再開させる。
職業柄、興奮した調子で話す子供の扱いには慣れているのだろう。
「で、何で『宗』なのよ?」
説明になっているようでなっていない返答に、霊夢は霊夢で片付けを完全に慧音に任せることにしたらしく、腰をすえて早苗の話に乗りに行った。
そんな紅白巫女の態度に溜め息を吐きながらも、一応は話を聞く人間は必要だとでも思ったのか慧音は二人を残して道具置き場へと向かうことにした。
掃除道具を仕舞い戻ってくると、一人増えている。
右腕に包帯を巻いている特長的な姿は、最近神社に顔を出すようになったという仙人の、茨木華扇だろう。
何やらあなたは今年一年中怠けていたから『怠』だの、あんたは空回りしてばっかりだったから『空』だのといった罵り合いになっているようだが、何があったのやら。
「随分騒がしいが、一体何があった?」
「何がも何も、この仙人が来るなり会話に割り込んでくるからこうなったのよ」
「割り込んでなどいません、私はあなた達が今年についての反省会をしているようなので助言をしに加わっただけですっ!」
お互いに噛み付かんばかりの勢いで口論を続ける二人に、更に早苗までもが。
「そうですよ、私は霊夢さんと共にここ数年で一気に増えた宗教勢力からいかに守矢の神威を守り抜くかを『宗』の一文字に込めている件についてを語り合っていたのですから!」
などと口を挟むので、それに反応した霊夢が「いつ私が守矢の味方になったのよっ!」と更に口論の輪を広げるので慧音は大方の状況を理解した。
最近増えたと自覚している溜め息を再び吐きながらも、この不毛な言い争いを収めるために人里の教師は歩みを進める。
確か私は宴会の片付けを手伝いに来たはずだよな。
そんな今更の事を脳裏に浮かべながら。
◇
「それで、全員落ち着いたか」
場所を移して、博麗神社の縁側。
そこには居間に座る慧音の前に正座する三人の少女の姿があった。
各自のおでこにタンコブというオマケ付で。
最も、共通するのはそこまでで、後はそれぞれに膨れっ面をしていたり、「ううう……まだ痛いです……」と泣き言を言っていたり、「どうして私まで……」と不満を抱いていたりと様々だ。
そんな事は気にも留めずに受け流し、慧音は話を進めた。
「まずは早苗、どうしていきなり今年の一文字なんて言い始めたんだ?」
話を振られたことで気を取り直したのか、再びその顔に喜色を広げ。
「ですから私たちの信仰を守り抜くためですっ!」
その答えにまた溜め息を吐きたくなったが、何とか踏みとどまる。
話を短くまとめようとするのはいいのだが、まとめすぎて要点やらそこに至るまでの経過やらがそっくり抜け落ちてしまうのは指摘しておいた方がいいだろう。
「だから、なぜ今年を表す漢字を決めようとして信仰の話になったんだ?」
「それは、今年とうとう霊夢さんが信仰心に目覚めた年だからですっ!」
話しているうちに勢い付いてきたのか、拳を握りながら力説する。
それを聞く慧音にはますます分からなくなってきた。
何しろ博麗神社といえば、妖怪の宴会場と化しており、その神社の巫女である霊夢も日がな一日中掃除をするかお茶を飲んでいるか異変解決の為に外出しているかの何れかで、神職に就く者らしいことをしている姿などほとんど見た記憶が無い。
だからこそ、こうして慧音も足を運ぶようになっているというのに。
そう考えていることが表情にでも出ていたのか、今度は華扇が口を開く。
「私もその噂を耳にしたからこうして様子を見に来たのです」
こちらは流石仙人と言うべきか、比較的落ち着いた口調で話している。
最も、先程境内で見せた口論のせいで仙人らしさというものが色々と残念な印象に塗り替えられてしまっているが、それを認識できているのはこの場には誰一人としていないので問題はないだろう。
多分。
「どういうことなんだ一体。霊夢には何か心当たりがあるか?」
その言葉に、先程まで面白くなさそうな顔をしていた霊夢も首を傾げた。
どうやら彼女にも思い当たる節はなさそうだ。
「なぁ早苗、すまんがそう思うに至ったきっかけを教えてくれないか?」
このままでは埒が明かないので、慧音は話を始めた張本人に尋ねることにした。
その言葉に早苗が「待ってました!」と言わんばかりに勢いよく立ち上がり、そのきっかけとなった事を語り始めた。
◇
季節は秋から冬へと変わり、人里も新年へと向けて準備を始める頃合。
そんな空気の流れる大通りを、守矢の風祝、東風谷早苗は歩いていた。
もうすぐ年末ということもあり、年末年始に向けての買出しと、何よりも今年こそ人里の住人たちに守矢神社で二年参りをして貰うために。
そうやって意気込んでいたのだが、いくら里の人たちとの会話で二年参りの話を出してもなんだかんだではぐらかされてしまう。
「さては、最近できた新興宗教のせいですねっ!」
そう結論付けた早苗だが、それは割りと的外れで、実際は守矢神社が妖怪の山の頂上という一般人が通うには危険きわまり無い立地にあるからだ。
どうも周囲の人間たちが色々と規格外なため、一般の人たちの妖怪への対処能力というものを誤解してしまっているらしい。
ついでに言えば、他の宗教連中は確かに幻想郷に現れたのはつい最近の話だが、組織自体は早苗が生まれる遥か前から存在している。
それを指摘してくれる者がいないせいでこれから更にその溢れ返った情熱を間違った方に燃やしてしまうのだが、その時の早苗は自分の布教が足りないからだと考えてしまい山の上の神社に向けて駆け出した。
守矢の二柱と相談し、信仰を集めるための神事を新たに作るために。
そういう色々と止めてくれるような誰かがいないことが心底悔やまれる行動をしている早苗の視界の端に、見慣れた色が映った。
「あれはもしや……霊夢さん?」
気になって足を止めて見て見れば、その赤い装束を着ているのは間違いなく麓の神社の巫女、博麗霊夢その人だった。
普段は滅多に里には顔を出さず、しかも商店街からも外れた場所に居るのは珍しい。
声をかけようかとも思ったのだが、何やら誰かと話している最中のようだ。
なら、邪魔をしては悪いと思い、その時は声をかけずに帰ることにした。
それだけならば何か用があっただけだと思うのだが、その日から早苗は里へと行く度に、霊夢が誰かと話している姿を見かけるようになった。
一体どうしたのかと聞こうかとも思ったのだが、中々話しかける機会が無くてついつい後回しになってしまう。
それでやり方を変えて買い物ついでに以前霊夢と話していた八百屋の店主に聞いてみると、霊夢は最近里までお札やお守りを売りに来ていると言うではないか。
今まではまともに布教活動をしていなかったというのに、これは――
◇
「これは霊夢さんが信仰心に目覚めたとしか思えませんっ!」
どこか舞台役者を連想させるような姿勢で早苗が言い切ると、それを受け継ぐように華扇も頷く。
「私もそういった話を里で聞いたので霊夢の様子を身に来たのです」
その二人の様子に思い当たる節があったのか、霊夢と慧音はほぼ同時に『ポン』と手を打った。
「そういえば、最近そんなことをやっていたわね」
「ああ、確かにここ暫くは里に迷い込んだ魑魅魍魎たちを祓ってもらっていたな」
その返答に最初に反応したのは華扇だった。
「では、最近の霊夢の行動は自分から動いたのではなく偶然妖怪退治の依頼が続いたというだけだと言うのですか?」
「そうよ。ここ数年連続していろんなのが起き出して来たせいか、力は弱いけどそこそこ害をなす妖怪が里の中でも大量発生しているみたいで細かい仕事が多いのよ」
「あ~、そう言えばこの前も白蓮さんが髪の伸びる人形や夜中に動く人形の供養を数件同時に頼まれたって話してましたね」
早苗の裏付とも言える発言により、華扇はただでさえ落ちていた肩を更に落とす事になった。
「では結局巫女としての自覚に目覚めた訳では無かったのですね……」
顔を見せる度に霊夢に説教をしては右から左に流されている彼女としては、ようやく自分の言葉が通じたのかと期待していただけに、両膝だけではなく両手まで縁側に突いて落ち込んでしまっている。
その姿があまりにも痛々しかったからなのか、慧音が頭を掻きながらフォローしようと。
「あ~その、何だ。霊夢も霊夢なりに依頼された仕事は博麗の巫女としてちゃんとこなしているぞ」
そうは言っても聞こえなかったのか、聞こえたのに立ち上がる気力も湧かなかったのか、未だに縁側に突っ伏し続ける仙人様。
正直以前から華扇の事を知らなければ今の彼女を見て仙人だとはとても思わないだろう。
「でもそれでは今年の漢字は変更ですね。せっかく考えたのに残念です」
そんな華扇を労るでもなくぼやく早苗。
はっきり言ってこの娘もすっかり幻想郷に染まって図太くなってしまったようだ。
そしてそれ以上に図太い動きをしているのが霊夢。
いつの間にやらこの騒ぎから抜け出して、裏庭を眺めながらお茶を飲んでいる。
さりげなく他に三人分のお茶も用意してあるが、気を使うべきところが違うだろうと慧音は本日何度目になるのか分からない溜め息を吐いた。
◇
そんなやり取りのあった翌日。
博霊神社の境内を掃除しているのは神社の巫女の霊夢ではなく、里で寺子屋の教師をしている半人半獣の慧音であった。
「珍しいですね、あなたが巫女の代役をやっていると言うのは」
「また里で小物が湧いたみたいでな。掃除を変わることを条件に祓いに行ってもらった」
掃除をする手はそのままに、慧音は来客者である華扇に答える。
「霊夢だけで行かせたのですか?」
「ああ。もう霊夢だけでも里の人の相談に乗れるだろうからな」
「それで、あなたはその結果を見届けるためにお留守番ですか」
その言葉に慧音は掃除をする手を止め、改めて華扇に向き直ると。
「気づいていたのか」
「はい。里の人たちはこうも言っていましたので。『寺子屋の先生に相談したら博麗の巫女を連れて来てくれた』と」
「ばれたか。まぁ別段口止めもしていなかったから仕方無いと言えば仕方無いか」
困ったように笑う慧音へ、華扇は更に言葉を続ける。
「それだけではなく、あなたがほぼ毎日のようにこの神社へと足を運んでいることも知っていますよ」
先程よりも目に力を込めた眼差しで、真っ直ぐに目前の人物を射抜く。
まるで一切の虚言は許さないとでも言うかのように。
「幻想郷の巫女である霊夢に近づき、何をしようというのですか上白沢慧音」
その問いかけに、慧音も一度溜め息を吐き、閉じた目を開いた。
その眼差しは一切の偽りも無いような、澄んだ色をしていた。
「教師として、霊夢に人付き合いを教えるために」
「……………はい?」
余りにも予想外の返答だったのか、仙人の全身から一気に力と緊張が抜け落ちていくのがありありと見て取れた。
「だから、霊夢に一般人に対する対応の仕方を教えるためにここ最近通いつめていた。と言っているんだ」
改めて告げられても理解が追いつかないのか、華扇の表情がますます混乱していく。
慧音もそれを見て掃除を切り上げる。
「このまま立ち話もなんだし、お茶でも飲みながら腰をすえて話そう」
そういって先導する慧音に、華扇はただ付いて行くしかなかった。
◇
博麗神社の居間。
そこで慧音は華扇にお茶を出すと自分の湯のみにもお茶を注ぐ。
「お茶に関しては遠慮はいらん。来客があったら出していいと霊夢からも言われている」
手馴れた様子で部屋の中を動く慧音に、華扇はまず驚いた。
「……すっかりここの住人になっていますね」
「何度か宴会の片付けを手伝っているうちに自然と覚えただけだ」
そう言いながら出されたお茶を口に含む。
外気で冷えた体に熱いお茶の温度が広がっていく感覚が心地よい。
「さて、落ち着いたところで何から話したものか」
「それでは、あなたがこの神社に通いだした頃から先程の発言に至るまでを」
仙人の要求に、寺子屋教師は一つ頷くと語り始めた。
淀みがまるで無いその話し振りから察するに、あらかじめ質問される内容を予想していたようだ。
「始まりと言ってもそんなに大袈裟な事じゃあない。以前霊夢から博麗神社の現状についての相談というか愚痴を聞かされただけだ」
そして、その時の様子を話しても問題が無いと思われる部分だけを掻い摘んで語る。
「その時に感じた。どうも霊夢は一人で生きていく術は徹底的に教えられたようだが、人と関わって生きていく術はどんなに多く見積もっても最低限のものしか知らないと」
「だから、あなたが教えようとしたと言うのですか?」
「その通り。それに、霊夢の周りに集まっているのはどいつもこいつも個性豊かと言えば聞こえは良いが、自分勝手な奴等ばかりだ。そんな連中の振る舞いばかりを見ていては里で暮らすような一般人との関わり方が離れていくばかりだからな」
そこで華扇はあることに気付く。
「そういうことですか。だからあなたは宴会の片付けを手伝っているのですね」
「察しが良くて助かる。『自分で出したゴミは自分で片付ける』のは人として当たり前の事だろう?そうした人として当たり前、人として生活するのなら当たり前の事さえ今の巫女はズレて認識していたからな」
そう言われて仙人の脳裏に浮ぶのは、宴会後の境内の惨状。
「だからそうして人里の常識や習慣を自分でやって見せているというのですね」
知人のもとまで足を運び、会話をし、頼み事があったらお互いに協力し合う。
そういった当たり前の流れを今まで実演して見せていたのだ。
そして今日、今まで慧音が付き添ってやって来たことを霊夢一人にやらせる事にしたと言う訳だ。
そこまで考えてから、華扇はふと手元の湯のみに視線をやると。
「成る程、だからなのですね。彼女があなたの事を信頼しているのは」
「え?」
思っても見なかった言葉をかけられたとでも言うように慧音が疑問の声を上げるが、それに一つ苦笑を返し。
「少なくとも、私の知る限りにおいて霊夢がこうして神社を自分から誰かに任せるということはありませんでした」
それに、と前置きし。
「確実に私の話よりもあなたの話をよく聞いているみたいですしね。霊夢にはあなたの様に当たり前の事を当たり前にできる方こそが必要だったみたいですね」
その声には若干の嫉妬が滲んでいた。
それに対して慧音はいやいやと顔の前で手を振り否定する。
「私が教えられるのはあくまでも里での一般常識だけだ。それ以外の巫女としての作法やら何やらは門外漢だから、その内仙人殿にも力を貸してもらう時が来る」
だから、その時が来たら改めて協力してもらいたい。
そう言って会話を締め括った慧音は、不意に立ち上がると外へと向かう。
「少々失礼させてもらう。そろそろ霊夢が帰って来る頃合なので掃除の残りを終わらせておきたい。引き受けた手前、中途半端には出来ないのでな」
◇
掃除を終えて戻ってきた慧音は、台所で新しい湯のみを出してお茶の用意を始める。
「……随分とあの巫女に肩入れするんですね」
依頼を終えて帰ってくる霊夢の為にお茶を用意している慧音の背中に向けて、華扇が意外そうな声で言葉を投げかけてくる。
「教師が教え子の味方をしてなにが悪い」
その言葉に振り向き、はっきりと仙女の目を見て告げる彼女の目には確かな決意が見て取れた。
だが、その眼差しを受けた方の身としてはそれは教師と言うよりも……
「やれやれ、それでは教師というよりも姉ではないですか」
そう、霊夢にとっては今年は信仰に目覚めたというよりも、姉を得た年と言ったほうが正しい表現になりそうだ。
「今年の一文字は『宗』ではなくて『姉』ですね……」
そんなことを考えている華扇の耳に、霊夢の「ただいま」という声が聞こえた。
了
新鮮でした。
慧音と霊夢が過去にどう知り合ったのかも見てみたい