タグの通りの珍カプです。お気を付けください。
幽×映 バックナンバー
閻魔の笑顔と花妖怪
閻魔と花言葉
雨、昼下がり、相合傘にて
向日葵畑でつかまえて(前)
向日葵畑でつかまえて(後)
「小町~、ちょっと来てください」
是非曲直庁専用の連絡手段を使って仕事中のはずの小町を呼ぼうとしたところで、はたと思い出す。
「そうでした、小町は風邪を引いて休んでいるんでした。」
とても珍しいことでつい忘れてしまっていたが、まぁあの娘の事なのでお腹でも出して寝ていたのでしょう。
サボりでは無いと思う。サボり魔ではあるが、なんだかんだ言って仕事には必ず来るのだ、小町は。
「それで働いてくれれば文句ないのですが・・・。」
はぁ、と溜息をついて提出する書類を纏める。
しかし、今幻想郷では風邪が流行っているらしい。しかも妖怪だけが罹る風邪だという。
そもそも妖怪は病を患うことは少ない。人に比べて高い身体能力を持っているのだからちょっとやそっとじゃ風邪などのは罹らないのだが、妖怪ばかりがいる幻想郷故だろうか、人が患う通常の病も変異してしまうのかもしれない。
「幽香は大丈夫でしょうか・・・。」
もっぱら心配なのは部下よりも恋人。
つい一昨日幽香のところに行ったときも、もともと落ち着いた性格なので気付き難いが少し元気が無かったように思える。
もしかしたら風邪の引き始めだったのかもしれない。
「これは様子を見に行かなくてわっ!」
幸運にも今日はこの後非番だ。
急いで書類を提出した後、外套を羽織って一抹の不安を感じながら飛び立つ。
コンコン
「幽香、映姫です。来ましたよ。」
ノックをするが扉は開かない。いつもならノックをした瞬間に扉が開き幽香が顔を見せるのだが、留守のなのだろうか?
一瞬逡巡していると、ゆっくりと扉が開いた。
「わ~、映姫いらっしゃい~」
か細い声と共に幽香が顔を見せる。
「幽香?!大丈夫ですか?顔色凄い悪いですよ!」
もともと色白な幽香だがいつもより白くしかし頬は赤くなっていた。
手を幽香の額に当てる。
「熱っ!凄い熱ですよ?」
「そう?う~んでもなんか寒いかも」
「風邪を引いているのですよ、幽香は!早くベットで暖かくしてください」
「でも、せっかく映姫がきたのに・・・。」
とてもがっかりした顔になる。不謹慎かもしれないがその表情がかわいい。
パーーン
「今日はずっと一緒にいて看病しますから」
そう言って幽香をベットの下まで連れて行く。
「さ、暖かくして下さい」
ベットに横たわる幽香に掛け布団を掛ける。
「うん」
「何かしてほしいことありますか?」
「のどかわいたかも」
「わかりました、お水持ってきますね」
風邪を引いているときは水分を摂るのがいいだろう。
「はい、持って来ましたよ」
こくこくと勢い良く飲む。よほどのどが渇いていたのだろうか。
「ぷはっ、ありがとー」
空になったコップを受け取る。
「他にもしてほしいことがあったら言って下さいね。」
「うん、ありがとう」
こくん、と頷き弱弱しいながらも笑顔で答える。
パーーン
「えっと、じゃあお願いしていい?」
と、幽香は掛け布団を顔の半分まで掛けながらおずおずと申し出る。
「なんですか?」
「えっとね、ぎゅってしてほしいの・・・///」
パーーン
ってさっきからなんか乾いた破裂音がするのですが何でしょう?
(あ~私が撃たれている音か~)
なんですか?!今日の幽香は?かわいすぎですよ!
そりゃあ幽香はいつも可愛いですけど、どちらかといえば綺麗とか美しいとかなのに、今日の幽香は10割10分可愛いの純粋培養ですよ!!
しかし、なんだか恥ずかしい・・・。
いえ、何でも言っていいといったのは私。お願いというのなら仕方ないことです。
でもいまの幽香を抱きしめたりしたら自分の方がどうかなってしまうかも・・・。
幽香の体は小刻みに震えていた。
風邪からくる寒気だろう。でももしかしたら、幽香のことだから今まで風邪なんて罹ったこともないだろうし、初めて引く風邪に不安を感じているのかもしれない。
「わかりました。特別ですよ?」
なんとか崩壊しかける理性を力ずくで持ち直し、そっと幽香を抱きしめる。
「映姫、あったか~い」
「苦しくないですか?」
「ううん、ぜんぜん。映姫はやさしいね」
パーーン
あ~もう、私の心が穴だらけになっちゃうじゃないですか!それでもってその穴が幽香で埋まっちゃうじゃないですか!もともと幽香一色みたいなものですけど。
「これくらいお安い御用ですよ。」
不安そうな幽香、と考えると理性も鎌首をもたげるというものです。
「そういえば幽香は何か食べましたか?」
「ううん、食欲なくて」
「そうですか・・・。では私がおかゆでも作りますから、少しでも食べてください。食べないと体力つかないですからね?」
「うん、映姫が作ったものならたべるよ!」
ぐはっ
そりゃあ撃たれ続ければ血も吐くでしょう。
内面の私が撃たれながら血を吐いています。
満身創痍
「では、お台所借りますね」
そう言って幽香から体を離すと、幽香は寂しそうな上目遣いでこちらを見る。
ああそんな目で見ないで~。
自我、理性、個性その他もろもろが崩壊しそうになるのを、台所へ逃げることで何とかやり過ごす。
ひとつ深呼吸をして
「さ、とにかくおかゆを作りましょう」
食欲が無いようだったが、おかゆなら何とか食べられるだろう。
薬を飲むにしても何か食べなくてはいけない。
そこでふと思い出す。
「幽香、お薬飲みましたか?」
「ううん、飲んでないし、無いよ~」
やはりか・・・。
妖怪は滅多に病に罹らない、それ故に家に薬を常備しているということが少ないのだ。
(薬を買いに行った方がいいでしょうか・・・。)
そもそもこの妖怪に罹る風邪は詳しいこが分かっていない。今は普通の風邪と同じような症状だが、もしかしたら命にかかわるものかも・・・。
とはいえ、人里の薬屋では駄目だろう。おそらく人間用の薬しか置いていない。
(ここはやはりあそこに行くしかないでしょうね)
――永遠亭
月の賢人、薬師・八意永琳。彼女なら妖怪用の薬を作っているだろう。
個人的に苦手な人物なので会いたくは無いのだが、そうは言ってられない。
「幽香、少し薬を買いに行ってきますから、待っていてもらいますか?」
「行っちゃうの?」
ぐばはっ
「大丈夫ですよ、すぐ帰ってきますからね」
幽香の頭を撫でながらそう答える。
「うん、早く帰ってきてね?」
「はい、待っていてください。」
これは急がなくてわ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「うさうさ、出来たうさw」
創意工夫を凝らした落とし穴を見つめほくそ笑む。
「さ~後は鈴仙が落ちるのをゆるりと待つだけうさw」
近くの草陰に隠れて目標の人物が罠に引っかかるのを待つ。
しばらくすると・・・
「きゃっ!」
悲鳴と共に何かが穴に落ちる音がした。
すぐさま穴に近づき中を覗く。
「引っかかった引っかかったうさwざまぁ見r・・・・・。」
な、何で・・・。
何で閻魔様が中に入っている?
そ、そそそそんな莫迦な!
「因~幡~て~ゐ~~~~」
「ひぃいいい!ごめんなさい、ごめんなさい!」
不味い!これは不味い!
お師匠様のお仕置きも嫌だが、この閻魔様の長い説教を聞くのはもっと嫌だ!
しかも今回は説教だけで済むかどうか・・・。
「待ちなさい、てゐ!」
まさしく脱兎のごとく逃げ出そうとするが、捕まえられてしまう。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。説教はかんべん~~」
さすが閻魔をやっているだけあって物凄い威圧感である。
これは駄目だな、と覚悟するが、返ってきた言葉は意外なものだった。
「今日は許してあげますから、早く永遠亭に連れて行ってください。急いでいるんです」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
酷い目にあった。迷いの竹林の道案内を誰かに頼もうと探していたら、落とし穴があるのですから。
まぁ誰の仕業かはすぐに分かりましたが。
そんな落とし穴の犯人、因幡てゐに道案内をさせたので永遠亭にたどり着くことが出来ました。
てゐへの説教は今度たっぷりすることにしましょう。
「ごめんください」
「はーい、はいはい」
声と共にぱたぱたと足音が近づいてくる。
「あら?閻魔様じゃない、珍しいわね。今日はどうしたの?」
「お久しぶりです、八意永琳。今日は今流行ってる妖怪風邪の薬を貰いに来ました」
「誰か風邪に罹ったの?」
「ええ、ちょっと知り合いが・・・。」
別に隠す事ではないのかもしれないが、何故か知らせたくは無かった。
「恋人?」
「なっ!」
「うふふ、冗談よ。」
満面の笑顔。
だから苦手なのだ。妙に鋭くて図星を突いてくるから。
でも、否定はしたくなかった。
「そうそう、薬よね。あるにはあるのだけどその病気自体まだ詳しいことは研究中なのよ、とりあえず命にかかわることは無いみたいだけど。薬は作ったには作ったんだけど少し欠点があるのよね」
「欠点・・・。副作用ですか?」
「いいえ、私の薬に副作用なんか存在しないわ。」
はっきり言う。それだけ自信があるということだろう。
でも時々事件を起こしたりしていなかっただろうか・・・?
「ちょっと特殊な投与をしなくてはならないのよ」
「特殊な投与ですか?」
「ええ、それはね―――」
先ほどと変わらない満面の笑みで私に耳打ちをする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お師匠様、ただいま帰りました。」
「あらお帰りなさい、鈴仙」
「さっき閻魔様が赤い顔して出てくるのを見ましたけど、閻魔様風邪ですか?」
「いいえ、彼女は風邪を引いていないわ」
「?では誰の」
「それはきっと恋人でしょうね」
「それって・・・。」
いくらか前に配られた天狗の新聞の内容を思い出す。
「あれ本当なんですか?!」
「さぁ?どうかは分からないけど、あの反応を見るに本当なんでしょうね」
にんまりと満面の笑顔にな師匠。その顔は何か良からぬことを考えているときの顔だ。
「・・・・・・・。何かしましたね?師匠。」
「ちょっと薬の特殊な投与法を教えただけよ」
「特殊って、あの薬はごく普通の液状の飲み薬じゃないですか」
「うふふふふ」
「・・・。どうなっても知りませんよ・・・。」
「どうもならないわよ~。薬自体は普通のものだし、ちょっとした悪戯心よ。あの閻魔様も奥手そうだしね」
「はぁ、地獄に落とされちゃいますよ?」
「死なないもーん」
まったく、この人は・・・・・。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
薬を持って、急いで幽香の家に戻る。
どうやら幽香は眠っているようだ。よかった、今幽香に声を掛けられたらまともに顔を見れない。
とりあえず、途中だったおかゆを作り始める。
私はあまり料理をしませんが、おかゆくらいは作ることが出来る、、、、はず。
鍋に米と水を入れ煮立たせる。沸騰したら火を弱め、蓋をして炊く。
「うん、これぐらいでいいでしょう」
出来上がったおかゆは悪くない出来だ。
おかゆを皿に移し、お盆に載せて幽香の下へ運ぶ。
どうやらちょうど目を覚ましたところのようだ。
「あ、帰ってたんだ。おかえり」
「ええ、ただいま。おかゆが出来ていますよ。食べれそうですか?」
「うん、食べるよ」
そう言うと幽香は、おかゆを蓮華ですくい口へと運ぶ。
「うん、おいしいよ」
「そうですか、それはよかったです」
美味しそうに食べる幽香を見てほっとする。
しかし、3分の1を食べたところで幽香の手が止まってしまう。
「無理しなくていいですよ、幽香」
「ごめんね」
少し涙目で謝罪する幽香
う~可愛すぎてまた抱きしめたくなる。
「いえ、これだけ食べれれば十分ですよ」
お盆を机に置き、代わりに置いてあった薬を取る。
「それで、その、お薬を貰ってきたのですよ」
「そっか、お薬飲まないとね」
「ええ、ただ・・・、この薬には特殊な飲み方をしないといけないようでして・・・。」
「特殊?」
そう特殊・・・。
この薬は特別な方法を持ちいらなければならないのだ。それはもう恥ずかしいくらいの・・・。
それは
――口移し
なんだか小難しいことを八意永琳に言われたが、とにかく口移しでなくては意味が無いらしい。
(どうしましょう!恥ずかしすぎます!)
数は少ないが接吻はある。これだけでも胸がはちきれそうなくらいドキドキしたし恥ずかしかったのに口移しなんて・・・。
どうなってしまうのやら。
(やらなきゃいけないでしょうか・・・。)
激しく悩みながら幽香のほうを見やる。
その顔色は今だ悪く、どうやら熱も下がっていない。机の上には半分以上残ったおかゆ。
(自分の事情で決めていいことではないですね。苦しそうな幽香は見たくないです。早く楽にしてあげたい)
あの八意永琳の薬だ、飲めばたちどころに効果が出るだろう。
(ええい、どうにでもなっちゃえ!)
「幽香、横になって目を瞑ってもらえますか?」
「?良く分からないけどそうしなきゃ薬が飲めないんだね?」
「ええ、そうです」
そう答えると、幽香はベットに横たわりゆっくりと目を閉じる。
私は手に持っていた薬をぐっと口に含む。
あまりの緊張に飲み込んでしまいそうになるが、かろうじて堪える。
(だめだめ、これは幽香にあげなくてはいけないのですら)
ゆっくりと幽香の顔に近づいていく。それと同時に胸の鼓動がどんどんと早鐘を打つ。
幽香の顔が目の前までやってくる。整った顔、長い睫毛、やっぱり幽香は美人だ。なんだか背徳的なことをやっている気がしてなおさらドキドキしてしまう。
(ごめんなさい、幽香)
――ちゅっ
唇が合わさる。
「!?」
少しだけ開いた幽香の口の中へ私が口に含んだ薬を少しずつ流し込んでいく。
「はむっ・・・・ふん・・・・はぁ・・・んくっ・・・・」
幽香の口から吐息が漏れる。その吐息がとても艶かしく、背徳感がますます強まっていく。
私から流れ出ていくものが、幽香の中へ・・・。
(な、なにを考えているのでしょう、私は!)
ああ、でもなんだかとても甘い。薬の味だろうか、それとも幽香の味だろうか。
こちらがあげている立場なのにもっと欲しくなってしまう。
(もっと幽香と・・・。)
――くちゅ
(?!舌!?)
少しでも絡まってしまえばもう駄目だ。水分を含んだ艶かしい音と共に幾重にも舌が絡まりあう。
「んくっ・・・はむっ・・じゅる・・・・くちゅ・・・・」
(駄目です、こんなはしたない!でも・・・。)
「ぷはっ」
ほどなくして唇が離れる。実際は数秒だったのだろうが、物凄く長い時間に感じられた。
自分の口元を袖で拭い、幽香の口元もハンカチで拭ってあげる。
(なんて事をしてしまったんでしょう。こんな。)
嫌われてしまっただろうか。
「すみません!幽香。こんな変態じみたことしてしまって・・・。」
顔を俯かせながらおずおずと謝罪する。
「少し驚いたけど、気にしてないよ。」
「でも・・・。」
「映姫が私の為に薬を飲ませてくれたんでしょ?ありがとう」
弱弱しくも嬉しそうに感謝の言葉を述べる幽香。
「それに、その何というか、嫌じゃなかったと言うか・・・、気持ち良かったと言うか・・・。こういう薬の飲ませ方ならもっと薬飲みたいかな、なんて」
どうやら幽香はこれが元から薬の飲ませ方だと思っているようだ。
「ごめん、なんか・・、眠く・なって来ちゃった」
おそらく薬の効果だろう。もう効き始めてきたようだ。
「薬の効力ですから気にせずそのまま眠ってください」
「うん、おやすみ」
(このまま良くなるでしょう)
目を閉じた幽香からはすぐに安らかな寝息が聞こえてきた。
それを見届けると近くの椅子に腰を掛ける。
おもむろに指を唇に当てる。
(嫌じゃなかった、か・・・。)
もし逆の立場なら私はどうだっただろう。
(もちろん嫌じゃないでしょうね。)
幽香の寝息を聞きながら、唇の感触を思い出す。
それはとても柔らかく、とても甘かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ふと目を覚ますと頭に走る鈍痛が更なる覚醒を促す。
「あ~そうだ風邪だったんだ」
とは言えさっきまでに比べれば随分と体調はよくなった。
窓のほうに目を向けると日はすっかり落ち完全に夜の帳が下りていた。
結構な時間、寝ていたようだ。
あれからどれくらいたったのだろう。
あれ・・・。
だんだんと曖昧な記憶が蘇っていく。
(何てことしたんでしょう・・・。自分から舌を絡ませにいくなんて・・・。)
思い出すと、下がった熱が急激にまた上がっていくように感じた。
(そうだ映姫は?)
その姿を探すとすぐに見つかった。
自分のベットに突っ伏したまま寝ている映姫の頭があった。
視線を横に向けたことによって額の上においてあったものがずれる。濡れた手ぬぐいだ。触ってみるとまだ少しひんやりとする。何回も濡らしてくれていたのだろう。
「ありがとう」
そっと頭を撫でる。
「ぅん、ゆうか?」
「あら起こしてしまったかしら」
「もう大丈夫なのですか?」
「ええ、あなたの看病のおかげですっかり治ってしまったわ」
「そうですか、それはよかったです!」
寝起きのせいだろうか映姫は目尻に涙を溜めながら、よかった、と繰り返す。
「本当に助かったわ」
映姫の頬に手を触れる。
「ん?」
額にも触れてみる。
「映姫、少し熱いわよ?もしかして私の風邪が移ってしまったかしら?」
そうとなれば大変である。
「そうですか、良かったです」
「よかった?なんで?」
「なんだか幽香とつながっている感じがするというか、幽香のものを貰ったという感じがするからですよ」
パーーン
あれ?なんか撃たれた感じがするのだが?
「風邪を引いてしまったのでお願いを聞いてもらっていいですか?」
「何?」
私のことだから風邪でなくても映姫のお願いだったら何だって聞いてしまいそうだけど。
「一緒に寝ていいですか?」
パーーン
はい、撃たれました~!
「いいけど、二人で寝るには狭いわよ?」
「ならもうひとつお願いを――ぎゅってしてください」
ぐはっ
可愛い、思わず吐血してしまうくらいに。
「そ、それくらいお安い御用よ」
なんだか映姫のほうからこうやって来ると、いつも以上にドキドキしてしまう。
映姫の小さな体を包み込むように抱き寄せる。
「ゆうかはあたたかいです・・・。」
もともと眠かったのだろうか、抱き寄せるとすぐに寝息が聞こえてきた。
寝顔もとてつもなく可愛い。それこそ頭痛も体の倦怠感も吹っ飛んでしまうくらいに。
こんどは私が看病をしてあげよう。薬は・・・、またあれをしないといけないかもしれないので恥ずかしいが、まぁ構わない。
安心しきった寝顔に思わず頬が緩む。
掛け布団を掛けなおし、映姫の体を強く抱きしめる。
「ふふ、貴女は私の特効薬ね」
~END~
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閻魔の笑顔と花妖怪
閻魔と花言葉
雨、昼下がり、相合傘にて
向日葵畑でつかまえて(前)
向日葵畑でつかまえて(後)
「小町~、ちょっと来てください」
是非曲直庁専用の連絡手段を使って仕事中のはずの小町を呼ぼうとしたところで、はたと思い出す。
「そうでした、小町は風邪を引いて休んでいるんでした。」
とても珍しいことでつい忘れてしまっていたが、まぁあの娘の事なのでお腹でも出して寝ていたのでしょう。
サボりでは無いと思う。サボり魔ではあるが、なんだかんだ言って仕事には必ず来るのだ、小町は。
「それで働いてくれれば文句ないのですが・・・。」
はぁ、と溜息をついて提出する書類を纏める。
しかし、今幻想郷では風邪が流行っているらしい。しかも妖怪だけが罹る風邪だという。
そもそも妖怪は病を患うことは少ない。人に比べて高い身体能力を持っているのだからちょっとやそっとじゃ風邪などのは罹らないのだが、妖怪ばかりがいる幻想郷故だろうか、人が患う通常の病も変異してしまうのかもしれない。
「幽香は大丈夫でしょうか・・・。」
もっぱら心配なのは部下よりも恋人。
つい一昨日幽香のところに行ったときも、もともと落ち着いた性格なので気付き難いが少し元気が無かったように思える。
もしかしたら風邪の引き始めだったのかもしれない。
「これは様子を見に行かなくてわっ!」
幸運にも今日はこの後非番だ。
急いで書類を提出した後、外套を羽織って一抹の不安を感じながら飛び立つ。
コンコン
「幽香、映姫です。来ましたよ。」
ノックをするが扉は開かない。いつもならノックをした瞬間に扉が開き幽香が顔を見せるのだが、留守のなのだろうか?
一瞬逡巡していると、ゆっくりと扉が開いた。
「わ~、映姫いらっしゃい~」
か細い声と共に幽香が顔を見せる。
「幽香?!大丈夫ですか?顔色凄い悪いですよ!」
もともと色白な幽香だがいつもより白くしかし頬は赤くなっていた。
手を幽香の額に当てる。
「熱っ!凄い熱ですよ?」
「そう?う~んでもなんか寒いかも」
「風邪を引いているのですよ、幽香は!早くベットで暖かくしてください」
「でも、せっかく映姫がきたのに・・・。」
とてもがっかりした顔になる。不謹慎かもしれないがその表情がかわいい。
パーーン
「今日はずっと一緒にいて看病しますから」
そう言って幽香をベットの下まで連れて行く。
「さ、暖かくして下さい」
ベットに横たわる幽香に掛け布団を掛ける。
「うん」
「何かしてほしいことありますか?」
「のどかわいたかも」
「わかりました、お水持ってきますね」
風邪を引いているときは水分を摂るのがいいだろう。
「はい、持って来ましたよ」
こくこくと勢い良く飲む。よほどのどが渇いていたのだろうか。
「ぷはっ、ありがとー」
空になったコップを受け取る。
「他にもしてほしいことがあったら言って下さいね。」
「うん、ありがとう」
こくん、と頷き弱弱しいながらも笑顔で答える。
パーーン
「えっと、じゃあお願いしていい?」
と、幽香は掛け布団を顔の半分まで掛けながらおずおずと申し出る。
「なんですか?」
「えっとね、ぎゅってしてほしいの・・・///」
パーーン
ってさっきからなんか乾いた破裂音がするのですが何でしょう?
(あ~私が撃たれている音か~)
なんですか?!今日の幽香は?かわいすぎですよ!
そりゃあ幽香はいつも可愛いですけど、どちらかといえば綺麗とか美しいとかなのに、今日の幽香は10割10分可愛いの純粋培養ですよ!!
しかし、なんだか恥ずかしい・・・。
いえ、何でも言っていいといったのは私。お願いというのなら仕方ないことです。
でもいまの幽香を抱きしめたりしたら自分の方がどうかなってしまうかも・・・。
幽香の体は小刻みに震えていた。
風邪からくる寒気だろう。でももしかしたら、幽香のことだから今まで風邪なんて罹ったこともないだろうし、初めて引く風邪に不安を感じているのかもしれない。
「わかりました。特別ですよ?」
なんとか崩壊しかける理性を力ずくで持ち直し、そっと幽香を抱きしめる。
「映姫、あったか~い」
「苦しくないですか?」
「ううん、ぜんぜん。映姫はやさしいね」
パーーン
あ~もう、私の心が穴だらけになっちゃうじゃないですか!それでもってその穴が幽香で埋まっちゃうじゃないですか!もともと幽香一色みたいなものですけど。
「これくらいお安い御用ですよ。」
不安そうな幽香、と考えると理性も鎌首をもたげるというものです。
「そういえば幽香は何か食べましたか?」
「ううん、食欲なくて」
「そうですか・・・。では私がおかゆでも作りますから、少しでも食べてください。食べないと体力つかないですからね?」
「うん、映姫が作ったものならたべるよ!」
ぐはっ
そりゃあ撃たれ続ければ血も吐くでしょう。
内面の私が撃たれながら血を吐いています。
満身創痍
「では、お台所借りますね」
そう言って幽香から体を離すと、幽香は寂しそうな上目遣いでこちらを見る。
ああそんな目で見ないで~。
自我、理性、個性その他もろもろが崩壊しそうになるのを、台所へ逃げることで何とかやり過ごす。
ひとつ深呼吸をして
「さ、とにかくおかゆを作りましょう」
食欲が無いようだったが、おかゆなら何とか食べられるだろう。
薬を飲むにしても何か食べなくてはいけない。
そこでふと思い出す。
「幽香、お薬飲みましたか?」
「ううん、飲んでないし、無いよ~」
やはりか・・・。
妖怪は滅多に病に罹らない、それ故に家に薬を常備しているということが少ないのだ。
(薬を買いに行った方がいいでしょうか・・・。)
そもそもこの妖怪に罹る風邪は詳しいこが分かっていない。今は普通の風邪と同じような症状だが、もしかしたら命にかかわるものかも・・・。
とはいえ、人里の薬屋では駄目だろう。おそらく人間用の薬しか置いていない。
(ここはやはりあそこに行くしかないでしょうね)
――永遠亭
月の賢人、薬師・八意永琳。彼女なら妖怪用の薬を作っているだろう。
個人的に苦手な人物なので会いたくは無いのだが、そうは言ってられない。
「幽香、少し薬を買いに行ってきますから、待っていてもらいますか?」
「行っちゃうの?」
ぐばはっ
「大丈夫ですよ、すぐ帰ってきますからね」
幽香の頭を撫でながらそう答える。
「うん、早く帰ってきてね?」
「はい、待っていてください。」
これは急がなくてわ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「うさうさ、出来たうさw」
創意工夫を凝らした落とし穴を見つめほくそ笑む。
「さ~後は鈴仙が落ちるのをゆるりと待つだけうさw」
近くの草陰に隠れて目標の人物が罠に引っかかるのを待つ。
しばらくすると・・・
「きゃっ!」
悲鳴と共に何かが穴に落ちる音がした。
すぐさま穴に近づき中を覗く。
「引っかかった引っかかったうさwざまぁ見r・・・・・。」
な、何で・・・。
何で閻魔様が中に入っている?
そ、そそそそんな莫迦な!
「因~幡~て~ゐ~~~~」
「ひぃいいい!ごめんなさい、ごめんなさい!」
不味い!これは不味い!
お師匠様のお仕置きも嫌だが、この閻魔様の長い説教を聞くのはもっと嫌だ!
しかも今回は説教だけで済むかどうか・・・。
「待ちなさい、てゐ!」
まさしく脱兎のごとく逃げ出そうとするが、捕まえられてしまう。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。説教はかんべん~~」
さすが閻魔をやっているだけあって物凄い威圧感である。
これは駄目だな、と覚悟するが、返ってきた言葉は意外なものだった。
「今日は許してあげますから、早く永遠亭に連れて行ってください。急いでいるんです」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
酷い目にあった。迷いの竹林の道案内を誰かに頼もうと探していたら、落とし穴があるのですから。
まぁ誰の仕業かはすぐに分かりましたが。
そんな落とし穴の犯人、因幡てゐに道案内をさせたので永遠亭にたどり着くことが出来ました。
てゐへの説教は今度たっぷりすることにしましょう。
「ごめんください」
「はーい、はいはい」
声と共にぱたぱたと足音が近づいてくる。
「あら?閻魔様じゃない、珍しいわね。今日はどうしたの?」
「お久しぶりです、八意永琳。今日は今流行ってる妖怪風邪の薬を貰いに来ました」
「誰か風邪に罹ったの?」
「ええ、ちょっと知り合いが・・・。」
別に隠す事ではないのかもしれないが、何故か知らせたくは無かった。
「恋人?」
「なっ!」
「うふふ、冗談よ。」
満面の笑顔。
だから苦手なのだ。妙に鋭くて図星を突いてくるから。
でも、否定はしたくなかった。
「そうそう、薬よね。あるにはあるのだけどその病気自体まだ詳しいことは研究中なのよ、とりあえず命にかかわることは無いみたいだけど。薬は作ったには作ったんだけど少し欠点があるのよね」
「欠点・・・。副作用ですか?」
「いいえ、私の薬に副作用なんか存在しないわ。」
はっきり言う。それだけ自信があるということだろう。
でも時々事件を起こしたりしていなかっただろうか・・・?
「ちょっと特殊な投与をしなくてはならないのよ」
「特殊な投与ですか?」
「ええ、それはね―――」
先ほどと変わらない満面の笑みで私に耳打ちをする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お師匠様、ただいま帰りました。」
「あらお帰りなさい、鈴仙」
「さっき閻魔様が赤い顔して出てくるのを見ましたけど、閻魔様風邪ですか?」
「いいえ、彼女は風邪を引いていないわ」
「?では誰の」
「それはきっと恋人でしょうね」
「それって・・・。」
いくらか前に配られた天狗の新聞の内容を思い出す。
「あれ本当なんですか?!」
「さぁ?どうかは分からないけど、あの反応を見るに本当なんでしょうね」
にんまりと満面の笑顔にな師匠。その顔は何か良からぬことを考えているときの顔だ。
「・・・・・・・。何かしましたね?師匠。」
「ちょっと薬の特殊な投与法を教えただけよ」
「特殊って、あの薬はごく普通の液状の飲み薬じゃないですか」
「うふふふふ」
「・・・。どうなっても知りませんよ・・・。」
「どうもならないわよ~。薬自体は普通のものだし、ちょっとした悪戯心よ。あの閻魔様も奥手そうだしね」
「はぁ、地獄に落とされちゃいますよ?」
「死なないもーん」
まったく、この人は・・・・・。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
薬を持って、急いで幽香の家に戻る。
どうやら幽香は眠っているようだ。よかった、今幽香に声を掛けられたらまともに顔を見れない。
とりあえず、途中だったおかゆを作り始める。
私はあまり料理をしませんが、おかゆくらいは作ることが出来る、、、、はず。
鍋に米と水を入れ煮立たせる。沸騰したら火を弱め、蓋をして炊く。
「うん、これぐらいでいいでしょう」
出来上がったおかゆは悪くない出来だ。
おかゆを皿に移し、お盆に載せて幽香の下へ運ぶ。
どうやらちょうど目を覚ましたところのようだ。
「あ、帰ってたんだ。おかえり」
「ええ、ただいま。おかゆが出来ていますよ。食べれそうですか?」
「うん、食べるよ」
そう言うと幽香は、おかゆを蓮華ですくい口へと運ぶ。
「うん、おいしいよ」
「そうですか、それはよかったです」
美味しそうに食べる幽香を見てほっとする。
しかし、3分の1を食べたところで幽香の手が止まってしまう。
「無理しなくていいですよ、幽香」
「ごめんね」
少し涙目で謝罪する幽香
う~可愛すぎてまた抱きしめたくなる。
「いえ、これだけ食べれれば十分ですよ」
お盆を机に置き、代わりに置いてあった薬を取る。
「それで、その、お薬を貰ってきたのですよ」
「そっか、お薬飲まないとね」
「ええ、ただ・・・、この薬には特殊な飲み方をしないといけないようでして・・・。」
「特殊?」
そう特殊・・・。
この薬は特別な方法を持ちいらなければならないのだ。それはもう恥ずかしいくらいの・・・。
それは
――口移し
なんだか小難しいことを八意永琳に言われたが、とにかく口移しでなくては意味が無いらしい。
(どうしましょう!恥ずかしすぎます!)
数は少ないが接吻はある。これだけでも胸がはちきれそうなくらいドキドキしたし恥ずかしかったのに口移しなんて・・・。
どうなってしまうのやら。
(やらなきゃいけないでしょうか・・・。)
激しく悩みながら幽香のほうを見やる。
その顔色は今だ悪く、どうやら熱も下がっていない。机の上には半分以上残ったおかゆ。
(自分の事情で決めていいことではないですね。苦しそうな幽香は見たくないです。早く楽にしてあげたい)
あの八意永琳の薬だ、飲めばたちどころに効果が出るだろう。
(ええい、どうにでもなっちゃえ!)
「幽香、横になって目を瞑ってもらえますか?」
「?良く分からないけどそうしなきゃ薬が飲めないんだね?」
「ええ、そうです」
そう答えると、幽香はベットに横たわりゆっくりと目を閉じる。
私は手に持っていた薬をぐっと口に含む。
あまりの緊張に飲み込んでしまいそうになるが、かろうじて堪える。
(だめだめ、これは幽香にあげなくてはいけないのですら)
ゆっくりと幽香の顔に近づいていく。それと同時に胸の鼓動がどんどんと早鐘を打つ。
幽香の顔が目の前までやってくる。整った顔、長い睫毛、やっぱり幽香は美人だ。なんだか背徳的なことをやっている気がしてなおさらドキドキしてしまう。
(ごめんなさい、幽香)
――ちゅっ
唇が合わさる。
「!?」
少しだけ開いた幽香の口の中へ私が口に含んだ薬を少しずつ流し込んでいく。
「はむっ・・・・ふん・・・・はぁ・・・んくっ・・・・」
幽香の口から吐息が漏れる。その吐息がとても艶かしく、背徳感がますます強まっていく。
私から流れ出ていくものが、幽香の中へ・・・。
(な、なにを考えているのでしょう、私は!)
ああ、でもなんだかとても甘い。薬の味だろうか、それとも幽香の味だろうか。
こちらがあげている立場なのにもっと欲しくなってしまう。
(もっと幽香と・・・。)
――くちゅ
(?!舌!?)
少しでも絡まってしまえばもう駄目だ。水分を含んだ艶かしい音と共に幾重にも舌が絡まりあう。
「んくっ・・・はむっ・・じゅる・・・・くちゅ・・・・」
(駄目です、こんなはしたない!でも・・・。)
「ぷはっ」
ほどなくして唇が離れる。実際は数秒だったのだろうが、物凄く長い時間に感じられた。
自分の口元を袖で拭い、幽香の口元もハンカチで拭ってあげる。
(なんて事をしてしまったんでしょう。こんな。)
嫌われてしまっただろうか。
「すみません!幽香。こんな変態じみたことしてしまって・・・。」
顔を俯かせながらおずおずと謝罪する。
「少し驚いたけど、気にしてないよ。」
「でも・・・。」
「映姫が私の為に薬を飲ませてくれたんでしょ?ありがとう」
弱弱しくも嬉しそうに感謝の言葉を述べる幽香。
「それに、その何というか、嫌じゃなかったと言うか・・・、気持ち良かったと言うか・・・。こういう薬の飲ませ方ならもっと薬飲みたいかな、なんて」
どうやら幽香はこれが元から薬の飲ませ方だと思っているようだ。
「ごめん、なんか・・、眠く・なって来ちゃった」
おそらく薬の効果だろう。もう効き始めてきたようだ。
「薬の効力ですから気にせずそのまま眠ってください」
「うん、おやすみ」
(このまま良くなるでしょう)
目を閉じた幽香からはすぐに安らかな寝息が聞こえてきた。
それを見届けると近くの椅子に腰を掛ける。
おもむろに指を唇に当てる。
(嫌じゃなかった、か・・・。)
もし逆の立場なら私はどうだっただろう。
(もちろん嫌じゃないでしょうね。)
幽香の寝息を聞きながら、唇の感触を思い出す。
それはとても柔らかく、とても甘かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ふと目を覚ますと頭に走る鈍痛が更なる覚醒を促す。
「あ~そうだ風邪だったんだ」
とは言えさっきまでに比べれば随分と体調はよくなった。
窓のほうに目を向けると日はすっかり落ち完全に夜の帳が下りていた。
結構な時間、寝ていたようだ。
あれからどれくらいたったのだろう。
あれ・・・。
だんだんと曖昧な記憶が蘇っていく。
(何てことしたんでしょう・・・。自分から舌を絡ませにいくなんて・・・。)
思い出すと、下がった熱が急激にまた上がっていくように感じた。
(そうだ映姫は?)
その姿を探すとすぐに見つかった。
自分のベットに突っ伏したまま寝ている映姫の頭があった。
視線を横に向けたことによって額の上においてあったものがずれる。濡れた手ぬぐいだ。触ってみるとまだ少しひんやりとする。何回も濡らしてくれていたのだろう。
「ありがとう」
そっと頭を撫でる。
「ぅん、ゆうか?」
「あら起こしてしまったかしら」
「もう大丈夫なのですか?」
「ええ、あなたの看病のおかげですっかり治ってしまったわ」
「そうですか、それはよかったです!」
寝起きのせいだろうか映姫は目尻に涙を溜めながら、よかった、と繰り返す。
「本当に助かったわ」
映姫の頬に手を触れる。
「ん?」
額にも触れてみる。
「映姫、少し熱いわよ?もしかして私の風邪が移ってしまったかしら?」
そうとなれば大変である。
「そうですか、良かったです」
「よかった?なんで?」
「なんだか幽香とつながっている感じがするというか、幽香のものを貰ったという感じがするからですよ」
パーーン
あれ?なんか撃たれた感じがするのだが?
「風邪を引いてしまったのでお願いを聞いてもらっていいですか?」
「何?」
私のことだから風邪でなくても映姫のお願いだったら何だって聞いてしまいそうだけど。
「一緒に寝ていいですか?」
パーーン
はい、撃たれました~!
「いいけど、二人で寝るには狭いわよ?」
「ならもうひとつお願いを――ぎゅってしてください」
ぐはっ
可愛い、思わず吐血してしまうくらいに。
「そ、それくらいお安い御用よ」
なんだか映姫のほうからこうやって来ると、いつも以上にドキドキしてしまう。
映姫の小さな体を包み込むように抱き寄せる。
「ゆうかはあたたかいです・・・。」
もともと眠かったのだろうか、抱き寄せるとすぐに寝息が聞こえてきた。
寝顔もとてつもなく可愛い。それこそ頭痛も体の倦怠感も吹っ飛んでしまうくらいに。
こんどは私が看病をしてあげよう。薬は・・・、またあれをしないといけないかもしれないので恥ずかしいが、まぁ構わない。
安心しきった寝顔に思わず頬が緩む。
掛け布団を掛けなおし、映姫の体を強く抱きしめる。
「ふふ、貴女は私の特効薬ね」
~END~