水橋パルスィという妖怪がいた。
旧都のはずれの河流の橋に、千年来立ち尽くしている。何のわけで橋に立つようになったのか、知る者は誰もない。
果てしのない地底の流れ、それを架け渡すその橋は、彼女の最後の財産である。彼女は彼女の橋に宿り、彼女の橋を守護していた。橋へ近寄る者があれば、彼女はこれを激しく憎む。その緑眼は睨んだ相手を場に縛り付け深く怖れさせた。持ち合わせの品をことごとく差し出し去るまで、いつまでもそこを許さなかった。そうして何より呪われたことには、奪った品々は橋板の上に並べられた後、川へ捨てられてしまうのだ。
まったく、彼女は何かに呪われていた。彼女はまったくこの呪いによって、この不可解な苦役についていた。彼女の呪いとは、自負するところの何も無いこと、あらゆる他者に劣等の感を受けることである。巌洞を這う不気味な暗虫類、打ち棄てられた地獄の怨霊、地上を追われた異形の変化、それら醜怪極まる手合いでさえも、彼女の緑眼を通して見ると、たまらなく欲しいものと映る。そうしてその上に、自分には到底かなわないものと思い、ついにはこれを憎む。
旧都で彼女を知る者は、口をそろえて言った。地底に封じられた妖怪の中でも、彼女ほど月日虚しく、また心惨めなる者はない、と。
噂が伝いはじめると、橋を訪れる者はまれである。彼女はむしろ平気であった。人に疎まれることは痛快なもので、美しい橋を千年只管に占拠し続けた自身の性状の毒悪ぶりは、皮肉にも、自負するところの無い彼女の、初めて哀切な誇りとなっていた。
撒いた悪意が撒き返されるうち、彼女の緑眼は翡翠に迫る彩光を宿し、略奪の狂態はいよいよ悲しさを帯びた。暗い地底の流れの中で、行き交う怨霊の薄寒い火と彼女の眼だけが輝いて、見る者は幻惑という言葉を思う。橋脚のもとには金銀、刀剣、皿、宝玉の類も積み重なり、辺りの水は世人の欲が溶けるよう。禍々しいまでに艶めいた。
彼女には何もわからない。
あるとき、旧都の大鬼が噂を聞きつけ、これを懲らしめてくれようと思いついた。大刀を佩き大杯を片手にさっそく橋へ出向いて来ると、大々たる声を出して名乗った。
「私は大江山の怪力乱神、鬼の四天王、星熊勇儀だ! お前は水橋パルスィだな!」
彼女は何とも答えない。そうだとも、何の用だとも、何とも言わず眼を伏せている。洞窟に木霊する先の名乗りを、水の音ばかりが洗う。
「噂を聞いたぞ。道を塞ぐ橋守神だと。成敗してやろう」
言うが早いか橋へ歩み出す。わざとらしく木を踏み鳴らしながら、彼女の前へ進み出た。鬼の豪腕が彼女の襟を取り、ずいと力強く突き飛ばすと、得体の知れない不可視の力が彼女を橋の彼岸へと連れ去った。彼女は直ちに橋へ駆けたが、何かに阻まれて進めない。見れば橋には鬼が横臥し、大杯をあおり笑っている。
「離れなさい! 私の橋から離れなさい!」
これに彼女は口を開いた。橋の袂に取りすがって叫んだ。その声はまるで、我が子を奪われる暗声、怒声、悲声である。
「離れなさい! 離れなさい! 私の橋よ! 私のよ!」
「いいや、もうお前のじゃない。この橋はもらう。私の橋だ」
鬼は冷淡な口調で言った。
「橋は誰の物だと? 橋は懐に入らないだろう。そこに立ってるやつの橋さ。今は私の橋さ」
「私から奪った橋よ!」
「勝手な事ばかり言うもんだ。橋の下には奪った宝が山積じゃないか。地底じゃこれで通るのさ。欲しけりゃここまでのぼって来な」
鬼は平気で居座りながら酒をあおって彼女を見下ろす。彼女は幾度も試みたが、橋にのぼることは叶わなかった。鬼の怪力乱神はとても彼女の手に負えない。彼女は顔を赤くしてこの強大な侵略者を謗ったが、鬼は動じなかった。彼女は憎悪に全身燃えて視界は歪むような気がした。彼女は岸に持ちこたえて橋上の鬼を睨み続けた。
鬼は金眼でこれを迎え、自分に向けられる奇妙に峻烈な敵愾心をしばしおもろげに眺めていたが、やがて立ち上がると彼女の立つ岸まで歩み寄った。
「橋を返してほしければ、私と勝負して勝つことだ」
鬼は長躯から見下ろすようにして言った。
「今から三つ問いを出そう。一つ答えることができたなら、私は一歩ずつ後ろへを退き、三歩目にはこの橋をお前に譲ろう。この橋はお前の物だと私が請合ってやろう。だが一つでも間違えば、橋を去るのはお前だ。なに、心配いらない。お前には簡単な問いだよ」
鬼の金眼は今こそ光り輝いている。賭け勝負こそは、鬼の最も好むものである。
もとより鬼の提案など構うつもりのない彼女は、この理不尽な挑戦をはじめ、拒否すべき物と思ったが、少し考えを巡らす内に、これを受けないことは鬼の単純にとれば臆して譲ることと同義であると思い至った。ここで返事が気に入らなければ、彼女の領地をいつまでも占拠するだろう。鬼という連中はそのくらいのことは平気でする。他に手が無いと観念した彼女は、怨めしげな眼でこの挑戦を受けた。
鬼は、よしと一声手を打って、獰猛そうな歯を見せて笑った。そうして、第一の問いを一息に浴びせた。
「それは誰しも一度は手にするものだ。艶かしく輝きながらも表情は険しく、あらゆる家を飛び交い、触れるものすべてに痛みをあたえる。その名を答えてみせよ」
第一の問いを述べると鬼は、どうだい簡単だろうと言った。彼女は腕を組んでこの答えを探した。しかし、なかなか思い当たらない。彼女は歯軋りして鬼の方を見た。鬼は相変わらず威嚇性の笑みを浮かべて彼女の様子を窺っている。
「おや鈍いね。すぐに答えられそうなもんだ。まあ、気の済むまで待つさ」
彼女は悩んだ。鬼の簡単だと言う意味が知れない。それも、お前には簡単だと言った。そのことが解らない。自分は、ものを知らない。自分には何も無い。ただ橋に立って人を睨んでいる。我が身を儚んでいる。積み上げた物は悪評の他に無い。そのことだけを自負にしている。そう複雑な問いに適う経験など、自分にあろうとは思われない。
爪を噛みながら鬼の顔を見た。凛然として精悍な威容、自身の対象のような活力的な相好を穴の空くほど凝視した。彼女の胸中は泥溜まりである。泥は形を許さず、色を許さず、絶えず巻き返り、しかも熱く煮えている。緑眼に映る鬼の金眼は泥中に混合され、泥は一種曖昧な敵という区分へと納まる。
不意に、耳元で、嫉妬、という言葉が聞こえた。
彼女は覚えずはっとなった。彼女はしばらく無表情で、顔色は青ざめては赤みがかり、最後にうつむいて肩を震わせた。
答えは、嫉妬だ。嫉妬は誰しも一度は手にする。艶かしく輝きながらも表情は険しく、あらゆる家を飛び交い、触れるものすべてに痛みをあたえる。これに間違いない。ただ、どうしたわけか、口にすることができないのだ。
「答えが解ったか。それ、言えば良いだろう。第一問はくれてやる」
彼女の唇は震えている。
胸中に重く感じられたほどの感情は、今や蒼白となった。嫉妬という一語を、緑眼前に入れ据えて見ると、無形に思われた泥溜まりが、この一語のもと、中心を得て渦巻きだす。自身不可解だった性状に基準を見出す一語だった。橋上の怪人にあまりにも相応しい一語だった。また、彼女にとってこの一語は、あまりにも屈辱的な宣告として響いた。彼女がただ呪われた無為性として悲観していた宿命は、単純に卑劣な気性として解明されてしまった。
鬼は彼女の表情の変化に、この策が通用したことを察した。これは、悪魔的な問いである。彼女は答えることができない。答える者は知る者である。答えれば、彼女は自身の中の卑劣な気性を鬼に告白することとなる。鬼は正解だと言って一歩しりぞき、そうだろうさと得心するのだ。
鬼は腕を組んで笑っている。どうした、早く答えないか、と、屈託もなく笑っている。彼女は嫉妬した。他人の腹も自分の腹も切開して恥じる所はないと信じる鬼の素直な残酷さが、どうやら妬ましい。
自己愛と自己嫌悪が両方で彼女の声を押さえつけ、絶望的な葛藤に彼女は歯を軋って頭を抱えた。また、こうした苦悩も目の前の鬼には生涯無縁であろうと思えば、癪に障って耐えられなかった。
「答えないなら橋は私の物だ。橋脚には大鬼橋と彫り付けておこう。後になって文句を言われるのはつまらない」
鬼は大刀の柄をいじりながら彼女の答えを急き立てた。もはや進退窮まった。彼女は鬼の手をじっと見つめた。その大刀の柄の環がひやりと緑眼に光ったとき、彼女は口を開いた。
「剣、答えは剣よ」
彼女が口にしたその答えに、鬼は目を丸くした。
「剣は誰しも一度は手にする。艶かしく輝きながらも表情は険しく、あらゆる家を飛び交い、触れるものすべてに痛みをあたえる。答えは剣よ」
鬼は突然、大刀を抜き放った。九分反り三尺三寸の白刃が薄暗い岸に電光のごとく翻ったかと思うと、しかし、鬼はそれを川面に放り投げた。憮然として対敵を見下ろすと、くれてやる、とようやく言った。岸に背を向け、膝を屈伸すると、鬼は一歩のうちに橋を全長の半ばまで跳んで跨いだ。一勝を得た彼女もまた、これに従って橋の中央まで進み出ることができた。
先の妙答に鬼は、あからさまに不機嫌らしい反応を見せている。しきりに酒を口につけ、饒舌は鳴りを潜めた。これはまったく思いもよらぬ切り替えしであった。領地と自尊心の勘定を迫れば、苦悩のうちに一方を選ぼうとするのが大概である。その末に彼女が潔く自身の罪を認め、答えを嫉妬だと、自分にはそれが分かったと、そう白状したならば、勝ちを与えて引き下がる甲斐もあろう。しかし、噂に聞いた橋姫の浅ましさもよもやこれほどとは思わなかった。よもや領地と自尊心の両方を取ろうとは。よもや鬼に向かってあれほど思い切った仕返しができようとは。
鬼は時々あおる大杯に顔を隠して眉根を寄せた。
やがて、鬼は第二の問いを新たに考えだして述べた。
「それは美人で狡賢い。恋にも増して抗えない魔力を持ち、あらゆる場所に湧き、触れるものすべてを狂わせている。その名を答えてみせよ」
第二問に鬼が用意した答えは、第一に同じく嫉妬である。単純を好み嘘を嫌う鬼が、詭弁に欺かれたままではいられない。かくも醜きは嫉妬であると、認めさせるまで食い下がったのだ。
彼女は問いを聞き、その正答をすぐさま察した。同時に、この鬼が地上を追われた理由が、見透かすように察せられた。
彼女はこれをまた憎いと思った。これほど残酷なことは無いと思った。自己の無為性に耐え、叶わない羨望を押隠す泥溜まりの胸中も知らず、酒気を帯びながら再三その臓物を見せろと言うのだ。素直に見せれば鬼は機嫌を良くするのだろう。そうして気休めにもならない言葉で自分を喜ばそうとするのだ。そんな屈辱が許せるものか。断じてその期には応じるまい。彼女は体内で容赦の無い言葉を反芻してたまらず地団太を踏んだ。
「さあ、答えてみろ。今度は剣じゃないぞ。さっきのような苦し紛れでかわせるか。さあ、答えろ!」
鬼がやや息巻いた調子で挑んだ。諄々と是非を暴く気でいた鷹揚な態度は、すでに大刀と共に川底へ放り出し、今は対手を一敵と見なしている。
問答対決というのに、両者は視線を相そらさず、頭頂から爪先まで挙動に一寸の隙も無い。しかし、長い沈黙の中でただ一度、両者の視線を遮ったのは鬼が口にあおった朱の大杯である。
「答えは酒。酒は美人で狡賢い。恋にも増して抗えない魔力を持ち、あらゆる場所に湧き、触れるものすべてを狂わせている」
彼女は即座の機転で切り返した。
こうなると、状況の優位は完全に転倒していた。歯を軋るのは鬼である。鬼は常に持ちつけた大杯までもとうとうどこかへ放り出すと、憎々しげに彼女を一睨み、旧都の岸につく袂まで後ろ跳びに第二歩を譲った。
「卑小な橋守神め。八つ裂きにしても面白くない。食っても腹が悪い。お前のようなのとやり合うと自分まで弱くなった気がする」
「もうやめにしなさいよ。二度と来ないで」
「そうはいくか。劣勢で止めにするなんて鬼の名に関わる」
「勝つ気はないくせに」
「逃げ回る卑怯者の首を捕らえて自分は卑怯者だと言わせる、それが私の勝ちさ。言わせるまでは引き下がれない」
「よくもそう自分を当てにできるものね。鬼はみんなそう。絶対に直感を疑わずに、腕力に任せて勝手を飛ばす。幸せよね」
「……ならお前は何だ。お前は何を守っているのか。いつまでそこに立っている。狂気か。意地か。私には解らない。まことの答えを言うがいい」
「鬼はいつもそう」
会話は簡潔かつ無意味に終わった。先の二問を飲み下した二人なら、互いにいがみ合う中にも相手の情動をいくらかは察し得るところはある。それをあえてしなかったのは、両者共、実に途方も無く長大な過去を背に負っていたためである。長くたどってきた過去の荷が、その重大さをもって負う者の頭を押さえつけてしまうのだ。すれ違う行人の顔など窺おうものなら、重心はたちまち移り、何もかも一切合切が転覆してしまう。長く生きる妖怪同士では、こうした不通は往々にしてあることだった。
言意は通じずとも問えば答えざるを得ない。我が意を通すべく、鬼は怖ろしげな眼をぐりぐりと回して第三問を考えた。ただし、未だ顕されないその問いの、正答はすでに知れていた。鬼は今更秘すことができない。彼女は答えることができない。
鬼は背後に見えるはずの旧都の天井をはるか遠くに感じた。
彼女は、何か声出して泣きたくなった。
やがて第三問が述べられる。
「それは盲目で傲慢で嫌われ者で往生際が悪い。足下に積まれた宝を宝とは知らず、触れるものすべてを奪わずにはいられない。その名を答えてみせよ、さあ」
鬼は、大きく息を吐いて、彼女の回答を待った。
第三問は、もはや問いの形をしていない。両者橋上で睨み合い、一方は追いすがり、一方は取り合わず、それは不思議だった。両者自明の問いを前に、いつまでも川の音だけがせせらいでいる。
橋には両者を除いて何も無い。 剣も酒も今は橋の下、川底の宝物の中に沈んで怨霊の慰めに揺れている。ただ橋上には二人の妖怪が立ち尽くして睨み合っているばかりである。
彼女は、鬼の金眼をじっと覗いた。その瞳は闇の中で濁りも無く輝いている。何かこれを見つめていると、胆汁に乳を混ぜて飲むようなむかつきが、彼女の中に黒雲となって広がった。胸中の泥は、彼女の感覚を包み込み、溶岩のように煮えだした。彼女はとにかくこの鬼の眼を見るときは、身悶えするほど悔しかった。悔しさが胸を煮るのか、胸が煮えるのが悔しいのか、判然わからない。緑眼は鬼を見つめている。
ふと、金眼の底に、一瞬不気味なものが光ったかと思うと、しかしそれは鬼の眼に映る彼女の緑眼にすぎなかった。彼女はこの時、豁然としてさとった。彼女はようやく、この第三問に答えるべきものの名を知った。
鬼は沈黙の中にあって、たまらないという眼で忍んでいる。彼女もついには、すっと息を吸い、断ち切るように答えてみせた。
「答えは鬼。鬼は盲目で傲慢で嫌われ者で往生際が悪い。足下に積まれた宝を宝とは知らず、触れるものすべてを奪わずにはいられない!」
声は洞窟の壁に反響して名残を置いた。
鬼はしばし黙考、悄然として後、見事、と呟いた。
「お前は私に勝ったのだ」
言って、鬼は長い間呆然と立ち尽くした。なにやらうわごとを言うような声が聞こえる。ときに、驚愕したような顔で彼女を見る。そうか、そうかと二三度うなずき、橋の袂から岸へと一歩跳び降りた。そうして最後に、悪かった、とつぶやき残して、鬼は旧都へ去っていった。
後に残された彼女の、その胸中、勝利の感激などは少しも無い。彼女はこれまでに変わらず、橋に立ち尽くしている。橋脚のもとには、大刀と大杯、また望みもしない奪物が二つ積まれた。
それよりも、鬼の去り際に残していった、ついに非礼を詫びるような一言が、妙に彼女の性状にこたえた。
彼女はまた平時のように欄干に寄り立ち、鬼のことなどは考えまいと、愛する橋を緑眼に映した。整然と並んだ橋板の、寄木のように滑らかなおもてだけを、独り黙然と眼に入れて、美しい橋、自分の物だと、そのことだけを考えていた。
河流に静寂が戻った。せんせんと鳴る川のせせらぎの中、怨霊の薄寒い火と、彼女の眼だけが輝いている。
旧都へ帰った星熊勇儀は、妖怪たちにこの日の対決を振り返って言った。地底に封じられた妖怪の中でも、水橋パルスィほど敵して手強く、また心気高い者はない、と。
旧都のはずれの河流の橋に、千年来立ち尽くしている。何のわけで橋に立つようになったのか、知る者は誰もない。
果てしのない地底の流れ、それを架け渡すその橋は、彼女の最後の財産である。彼女は彼女の橋に宿り、彼女の橋を守護していた。橋へ近寄る者があれば、彼女はこれを激しく憎む。その緑眼は睨んだ相手を場に縛り付け深く怖れさせた。持ち合わせの品をことごとく差し出し去るまで、いつまでもそこを許さなかった。そうして何より呪われたことには、奪った品々は橋板の上に並べられた後、川へ捨てられてしまうのだ。
まったく、彼女は何かに呪われていた。彼女はまったくこの呪いによって、この不可解な苦役についていた。彼女の呪いとは、自負するところの何も無いこと、あらゆる他者に劣等の感を受けることである。巌洞を這う不気味な暗虫類、打ち棄てられた地獄の怨霊、地上を追われた異形の変化、それら醜怪極まる手合いでさえも、彼女の緑眼を通して見ると、たまらなく欲しいものと映る。そうしてその上に、自分には到底かなわないものと思い、ついにはこれを憎む。
旧都で彼女を知る者は、口をそろえて言った。地底に封じられた妖怪の中でも、彼女ほど月日虚しく、また心惨めなる者はない、と。
噂が伝いはじめると、橋を訪れる者はまれである。彼女はむしろ平気であった。人に疎まれることは痛快なもので、美しい橋を千年只管に占拠し続けた自身の性状の毒悪ぶりは、皮肉にも、自負するところの無い彼女の、初めて哀切な誇りとなっていた。
撒いた悪意が撒き返されるうち、彼女の緑眼は翡翠に迫る彩光を宿し、略奪の狂態はいよいよ悲しさを帯びた。暗い地底の流れの中で、行き交う怨霊の薄寒い火と彼女の眼だけが輝いて、見る者は幻惑という言葉を思う。橋脚のもとには金銀、刀剣、皿、宝玉の類も積み重なり、辺りの水は世人の欲が溶けるよう。禍々しいまでに艶めいた。
彼女には何もわからない。
あるとき、旧都の大鬼が噂を聞きつけ、これを懲らしめてくれようと思いついた。大刀を佩き大杯を片手にさっそく橋へ出向いて来ると、大々たる声を出して名乗った。
「私は大江山の怪力乱神、鬼の四天王、星熊勇儀だ! お前は水橋パルスィだな!」
彼女は何とも答えない。そうだとも、何の用だとも、何とも言わず眼を伏せている。洞窟に木霊する先の名乗りを、水の音ばかりが洗う。
「噂を聞いたぞ。道を塞ぐ橋守神だと。成敗してやろう」
言うが早いか橋へ歩み出す。わざとらしく木を踏み鳴らしながら、彼女の前へ進み出た。鬼の豪腕が彼女の襟を取り、ずいと力強く突き飛ばすと、得体の知れない不可視の力が彼女を橋の彼岸へと連れ去った。彼女は直ちに橋へ駆けたが、何かに阻まれて進めない。見れば橋には鬼が横臥し、大杯をあおり笑っている。
「離れなさい! 私の橋から離れなさい!」
これに彼女は口を開いた。橋の袂に取りすがって叫んだ。その声はまるで、我が子を奪われる暗声、怒声、悲声である。
「離れなさい! 離れなさい! 私の橋よ! 私のよ!」
「いいや、もうお前のじゃない。この橋はもらう。私の橋だ」
鬼は冷淡な口調で言った。
「橋は誰の物だと? 橋は懐に入らないだろう。そこに立ってるやつの橋さ。今は私の橋さ」
「私から奪った橋よ!」
「勝手な事ばかり言うもんだ。橋の下には奪った宝が山積じゃないか。地底じゃこれで通るのさ。欲しけりゃここまでのぼって来な」
鬼は平気で居座りながら酒をあおって彼女を見下ろす。彼女は幾度も試みたが、橋にのぼることは叶わなかった。鬼の怪力乱神はとても彼女の手に負えない。彼女は顔を赤くしてこの強大な侵略者を謗ったが、鬼は動じなかった。彼女は憎悪に全身燃えて視界は歪むような気がした。彼女は岸に持ちこたえて橋上の鬼を睨み続けた。
鬼は金眼でこれを迎え、自分に向けられる奇妙に峻烈な敵愾心をしばしおもろげに眺めていたが、やがて立ち上がると彼女の立つ岸まで歩み寄った。
「橋を返してほしければ、私と勝負して勝つことだ」
鬼は長躯から見下ろすようにして言った。
「今から三つ問いを出そう。一つ答えることができたなら、私は一歩ずつ後ろへを退き、三歩目にはこの橋をお前に譲ろう。この橋はお前の物だと私が請合ってやろう。だが一つでも間違えば、橋を去るのはお前だ。なに、心配いらない。お前には簡単な問いだよ」
鬼の金眼は今こそ光り輝いている。賭け勝負こそは、鬼の最も好むものである。
もとより鬼の提案など構うつもりのない彼女は、この理不尽な挑戦をはじめ、拒否すべき物と思ったが、少し考えを巡らす内に、これを受けないことは鬼の単純にとれば臆して譲ることと同義であると思い至った。ここで返事が気に入らなければ、彼女の領地をいつまでも占拠するだろう。鬼という連中はそのくらいのことは平気でする。他に手が無いと観念した彼女は、怨めしげな眼でこの挑戦を受けた。
鬼は、よしと一声手を打って、獰猛そうな歯を見せて笑った。そうして、第一の問いを一息に浴びせた。
「それは誰しも一度は手にするものだ。艶かしく輝きながらも表情は険しく、あらゆる家を飛び交い、触れるものすべてに痛みをあたえる。その名を答えてみせよ」
第一の問いを述べると鬼は、どうだい簡単だろうと言った。彼女は腕を組んでこの答えを探した。しかし、なかなか思い当たらない。彼女は歯軋りして鬼の方を見た。鬼は相変わらず威嚇性の笑みを浮かべて彼女の様子を窺っている。
「おや鈍いね。すぐに答えられそうなもんだ。まあ、気の済むまで待つさ」
彼女は悩んだ。鬼の簡単だと言う意味が知れない。それも、お前には簡単だと言った。そのことが解らない。自分は、ものを知らない。自分には何も無い。ただ橋に立って人を睨んでいる。我が身を儚んでいる。積み上げた物は悪評の他に無い。そのことだけを自負にしている。そう複雑な問いに適う経験など、自分にあろうとは思われない。
爪を噛みながら鬼の顔を見た。凛然として精悍な威容、自身の対象のような活力的な相好を穴の空くほど凝視した。彼女の胸中は泥溜まりである。泥は形を許さず、色を許さず、絶えず巻き返り、しかも熱く煮えている。緑眼に映る鬼の金眼は泥中に混合され、泥は一種曖昧な敵という区分へと納まる。
不意に、耳元で、嫉妬、という言葉が聞こえた。
彼女は覚えずはっとなった。彼女はしばらく無表情で、顔色は青ざめては赤みがかり、最後にうつむいて肩を震わせた。
答えは、嫉妬だ。嫉妬は誰しも一度は手にする。艶かしく輝きながらも表情は険しく、あらゆる家を飛び交い、触れるものすべてに痛みをあたえる。これに間違いない。ただ、どうしたわけか、口にすることができないのだ。
「答えが解ったか。それ、言えば良いだろう。第一問はくれてやる」
彼女の唇は震えている。
胸中に重く感じられたほどの感情は、今や蒼白となった。嫉妬という一語を、緑眼前に入れ据えて見ると、無形に思われた泥溜まりが、この一語のもと、中心を得て渦巻きだす。自身不可解だった性状に基準を見出す一語だった。橋上の怪人にあまりにも相応しい一語だった。また、彼女にとってこの一語は、あまりにも屈辱的な宣告として響いた。彼女がただ呪われた無為性として悲観していた宿命は、単純に卑劣な気性として解明されてしまった。
鬼は彼女の表情の変化に、この策が通用したことを察した。これは、悪魔的な問いである。彼女は答えることができない。答える者は知る者である。答えれば、彼女は自身の中の卑劣な気性を鬼に告白することとなる。鬼は正解だと言って一歩しりぞき、そうだろうさと得心するのだ。
鬼は腕を組んで笑っている。どうした、早く答えないか、と、屈託もなく笑っている。彼女は嫉妬した。他人の腹も自分の腹も切開して恥じる所はないと信じる鬼の素直な残酷さが、どうやら妬ましい。
自己愛と自己嫌悪が両方で彼女の声を押さえつけ、絶望的な葛藤に彼女は歯を軋って頭を抱えた。また、こうした苦悩も目の前の鬼には生涯無縁であろうと思えば、癪に障って耐えられなかった。
「答えないなら橋は私の物だ。橋脚には大鬼橋と彫り付けておこう。後になって文句を言われるのはつまらない」
鬼は大刀の柄をいじりながら彼女の答えを急き立てた。もはや進退窮まった。彼女は鬼の手をじっと見つめた。その大刀の柄の環がひやりと緑眼に光ったとき、彼女は口を開いた。
「剣、答えは剣よ」
彼女が口にしたその答えに、鬼は目を丸くした。
「剣は誰しも一度は手にする。艶かしく輝きながらも表情は険しく、あらゆる家を飛び交い、触れるものすべてに痛みをあたえる。答えは剣よ」
鬼は突然、大刀を抜き放った。九分反り三尺三寸の白刃が薄暗い岸に電光のごとく翻ったかと思うと、しかし、鬼はそれを川面に放り投げた。憮然として対敵を見下ろすと、くれてやる、とようやく言った。岸に背を向け、膝を屈伸すると、鬼は一歩のうちに橋を全長の半ばまで跳んで跨いだ。一勝を得た彼女もまた、これに従って橋の中央まで進み出ることができた。
先の妙答に鬼は、あからさまに不機嫌らしい反応を見せている。しきりに酒を口につけ、饒舌は鳴りを潜めた。これはまったく思いもよらぬ切り替えしであった。領地と自尊心の勘定を迫れば、苦悩のうちに一方を選ぼうとするのが大概である。その末に彼女が潔く自身の罪を認め、答えを嫉妬だと、自分にはそれが分かったと、そう白状したならば、勝ちを与えて引き下がる甲斐もあろう。しかし、噂に聞いた橋姫の浅ましさもよもやこれほどとは思わなかった。よもや領地と自尊心の両方を取ろうとは。よもや鬼に向かってあれほど思い切った仕返しができようとは。
鬼は時々あおる大杯に顔を隠して眉根を寄せた。
やがて、鬼は第二の問いを新たに考えだして述べた。
「それは美人で狡賢い。恋にも増して抗えない魔力を持ち、あらゆる場所に湧き、触れるものすべてを狂わせている。その名を答えてみせよ」
第二問に鬼が用意した答えは、第一に同じく嫉妬である。単純を好み嘘を嫌う鬼が、詭弁に欺かれたままではいられない。かくも醜きは嫉妬であると、認めさせるまで食い下がったのだ。
彼女は問いを聞き、その正答をすぐさま察した。同時に、この鬼が地上を追われた理由が、見透かすように察せられた。
彼女はこれをまた憎いと思った。これほど残酷なことは無いと思った。自己の無為性に耐え、叶わない羨望を押隠す泥溜まりの胸中も知らず、酒気を帯びながら再三その臓物を見せろと言うのだ。素直に見せれば鬼は機嫌を良くするのだろう。そうして気休めにもならない言葉で自分を喜ばそうとするのだ。そんな屈辱が許せるものか。断じてその期には応じるまい。彼女は体内で容赦の無い言葉を反芻してたまらず地団太を踏んだ。
「さあ、答えてみろ。今度は剣じゃないぞ。さっきのような苦し紛れでかわせるか。さあ、答えろ!」
鬼がやや息巻いた調子で挑んだ。諄々と是非を暴く気でいた鷹揚な態度は、すでに大刀と共に川底へ放り出し、今は対手を一敵と見なしている。
問答対決というのに、両者は視線を相そらさず、頭頂から爪先まで挙動に一寸の隙も無い。しかし、長い沈黙の中でただ一度、両者の視線を遮ったのは鬼が口にあおった朱の大杯である。
「答えは酒。酒は美人で狡賢い。恋にも増して抗えない魔力を持ち、あらゆる場所に湧き、触れるものすべてを狂わせている」
彼女は即座の機転で切り返した。
こうなると、状況の優位は完全に転倒していた。歯を軋るのは鬼である。鬼は常に持ちつけた大杯までもとうとうどこかへ放り出すと、憎々しげに彼女を一睨み、旧都の岸につく袂まで後ろ跳びに第二歩を譲った。
「卑小な橋守神め。八つ裂きにしても面白くない。食っても腹が悪い。お前のようなのとやり合うと自分まで弱くなった気がする」
「もうやめにしなさいよ。二度と来ないで」
「そうはいくか。劣勢で止めにするなんて鬼の名に関わる」
「勝つ気はないくせに」
「逃げ回る卑怯者の首を捕らえて自分は卑怯者だと言わせる、それが私の勝ちさ。言わせるまでは引き下がれない」
「よくもそう自分を当てにできるものね。鬼はみんなそう。絶対に直感を疑わずに、腕力に任せて勝手を飛ばす。幸せよね」
「……ならお前は何だ。お前は何を守っているのか。いつまでそこに立っている。狂気か。意地か。私には解らない。まことの答えを言うがいい」
「鬼はいつもそう」
会話は簡潔かつ無意味に終わった。先の二問を飲み下した二人なら、互いにいがみ合う中にも相手の情動をいくらかは察し得るところはある。それをあえてしなかったのは、両者共、実に途方も無く長大な過去を背に負っていたためである。長くたどってきた過去の荷が、その重大さをもって負う者の頭を押さえつけてしまうのだ。すれ違う行人の顔など窺おうものなら、重心はたちまち移り、何もかも一切合切が転覆してしまう。長く生きる妖怪同士では、こうした不通は往々にしてあることだった。
言意は通じずとも問えば答えざるを得ない。我が意を通すべく、鬼は怖ろしげな眼をぐりぐりと回して第三問を考えた。ただし、未だ顕されないその問いの、正答はすでに知れていた。鬼は今更秘すことができない。彼女は答えることができない。
鬼は背後に見えるはずの旧都の天井をはるか遠くに感じた。
彼女は、何か声出して泣きたくなった。
やがて第三問が述べられる。
「それは盲目で傲慢で嫌われ者で往生際が悪い。足下に積まれた宝を宝とは知らず、触れるものすべてを奪わずにはいられない。その名を答えてみせよ、さあ」
鬼は、大きく息を吐いて、彼女の回答を待った。
第三問は、もはや問いの形をしていない。両者橋上で睨み合い、一方は追いすがり、一方は取り合わず、それは不思議だった。両者自明の問いを前に、いつまでも川の音だけがせせらいでいる。
橋には両者を除いて何も無い。 剣も酒も今は橋の下、川底の宝物の中に沈んで怨霊の慰めに揺れている。ただ橋上には二人の妖怪が立ち尽くして睨み合っているばかりである。
彼女は、鬼の金眼をじっと覗いた。その瞳は闇の中で濁りも無く輝いている。何かこれを見つめていると、胆汁に乳を混ぜて飲むようなむかつきが、彼女の中に黒雲となって広がった。胸中の泥は、彼女の感覚を包み込み、溶岩のように煮えだした。彼女はとにかくこの鬼の眼を見るときは、身悶えするほど悔しかった。悔しさが胸を煮るのか、胸が煮えるのが悔しいのか、判然わからない。緑眼は鬼を見つめている。
ふと、金眼の底に、一瞬不気味なものが光ったかと思うと、しかしそれは鬼の眼に映る彼女の緑眼にすぎなかった。彼女はこの時、豁然としてさとった。彼女はようやく、この第三問に答えるべきものの名を知った。
鬼は沈黙の中にあって、たまらないという眼で忍んでいる。彼女もついには、すっと息を吸い、断ち切るように答えてみせた。
「答えは鬼。鬼は盲目で傲慢で嫌われ者で往生際が悪い。足下に積まれた宝を宝とは知らず、触れるものすべてを奪わずにはいられない!」
声は洞窟の壁に反響して名残を置いた。
鬼はしばし黙考、悄然として後、見事、と呟いた。
「お前は私に勝ったのだ」
言って、鬼は長い間呆然と立ち尽くした。なにやらうわごとを言うような声が聞こえる。ときに、驚愕したような顔で彼女を見る。そうか、そうかと二三度うなずき、橋の袂から岸へと一歩跳び降りた。そうして最後に、悪かった、とつぶやき残して、鬼は旧都へ去っていった。
後に残された彼女の、その胸中、勝利の感激などは少しも無い。彼女はこれまでに変わらず、橋に立ち尽くしている。橋脚のもとには、大刀と大杯、また望みもしない奪物が二つ積まれた。
それよりも、鬼の去り際に残していった、ついに非礼を詫びるような一言が、妙に彼女の性状にこたえた。
彼女はまた平時のように欄干に寄り立ち、鬼のことなどは考えまいと、愛する橋を緑眼に映した。整然と並んだ橋板の、寄木のように滑らかなおもてだけを、独り黙然と眼に入れて、美しい橋、自分の物だと、そのことだけを考えていた。
河流に静寂が戻った。せんせんと鳴る川のせせらぎの中、怨霊の薄寒い火と、彼女の眼だけが輝いている。
旧都へ帰った星熊勇儀は、妖怪たちにこの日の対決を振り返って言った。地底に封じられた妖怪の中でも、水橋パルスィほど敵して手強く、また心気高い者はない、と。
面白かったです
台詞回しや文章の雰囲気がとても…良い…
且つキャラの魅力はそのままに。素晴らしかったです。
言葉の回し方、ストーリーともに秀逸であり、パルスィ好きな私には御褒美でした。
ボロクソ言われても心折れない意地っ張りパルスィ可愛い。
三作目を期待してます
言い回しが小気味よく、門答もよくできていて素晴らしかったです。
パルスィ好きの自分には堪らない程良い作品でした!
足元を見る日は果たして来るのか
もちろんいい意味で
前と同じちょっとお固めの文体が読んでいて心地いい。
>今から三つ問いを出そう~
からの流れが大好きです。
百合っぽい展開になれえ!と邪な念を込めつつ読んでしまいました。
最後の問いは見事だなと思いつつも、第一、第二の問いは、答えを聞いてもちょっと納得できなかった感があります。
いや、自分に教養がないだけかもしれませんが。
問いと答えの妙が、この物語の根幹の良さだと思うので、ちょっと乗り切れなかった私は、この点数になりました。
意地汚く浅ましくてそのことを自覚しつつなお、媚びない詫びない泥臭く屈折したプライド。
問答の答えは…、上のコメにもありますが、ちょっと苦しい感じもありますね。
2問目が「酒」なら…1問目は「銭」なんてのはどうでしょう。
「それは誰しも一度は手にするものだ。艶かしく輝きながらも表情は険しく、あらゆる家を飛び交い、触れるものすべてに痛みをあたえる。その名を答えてみせよ」
1問目はさっぱりでしたが、2問目は即座に分かるよう仕掛けてあるのは妙技でしょうか?
3問目の答えにあえて「星熊勇儀」と言わせなかったのは圧倒されました。
勇儀が放っていった3つ目の「奪物」に祝福あれ!
喧嘩でも口喧嘩は不得手なのが鬼らしい。
>>憫切
検索かけても読みと意味が分からなかったので教えていただけたらと。
>>切り替えし
切り返し?
創作応援してます。
憫切とは何のことか、作者ながら解りません。大方哀切の仲間でしょう。
切り替えておきました。
緊張感のある対決でした。
互いに生じた揺らぎが、何かしら今後に続いてくれることを祈ります。
最後の問の答えを聞いたとき、思わず上のようにつぶやいて感嘆のため息を吐きました
クライマックスや見せ場のような派手さがあるわけではないのに、読んでる間はずっと引き込まれっぱなしでした。それでいてこの読了感の余韻が素晴らしい
大好きですこういう作品。
そんな作品でした。