「ねぇ、蓮子」
「んー?」
「ねぇってば」
「んー……」
「もう、電車出ちゃうわよ」
「いや、もう既に乗ってるんだから、どうでもいいじゃない」
「蓮子は、電車の出発の瞬間とか、気にしないタイプなの?」
「気にするタイプが存在することを、今始めて知ったわ」
「あっ、動いた!」
ガタリと、電車全体が揺れ、慣性の法則に従って、椅子の上に置いた蓮子のバッグが落ちかけた。
「……随分楽しそうね、メリー」
「だって。楽しくない?」
「そうね、たった今バッグの紐が首に食い込んだりしていなければ、少しは楽しめたのかもしれないわ」
「ゲンキンなのね」
「リアリティがあるの」
車窓からの景色は駅舎から開放され、僅かながら空が広がり、光が差し込んできた。
「わぁ、ほら。見てよ蓮子」
「何よ、見慣れた街の見慣れた景色じゃない」
「いつもと違う視点、ってことに意味があるのよ。ほら例えば、あそこのビルの裏口が二階にあるなんて、知ってた?」
「それはまぁ……知らなかったけど」
「ね? 見慣れてるからって、油断しない方がいいのよ」
「メリーの方が、なんだかゲンキンな気がするわ」
「リアリティなら、ないわよ? 目の前にあるものは、現実なんだもの」
「現実には、リアリティがないですって?」
「雲に対して、曇ってますね、なんて言う?」
「太陽に向かって、眩しいですね、くらいは言うかもね」
「あ、駅」
各駅停車の電車はゆっくりと減速し、車掌は駅の名前を告げる。
「メリー。止まる瞬間は、どうでもいいの?」
「一々そんなの気にしていたら、疲れるし、飽きちゃうじゃない」
「まぁ……そう、ね」
「釈然としない、って感じね」
「するとでも思ったの?」
「空はこんなに晴れているのに」
「どこかできっと、雨は降っているわ」
「どこかできっと、電車が動き始めているのと、同じでね」
「なんでそんなに得意げなのよ、メリー」
「疲れちゃったから、少し寝るわ」
そう言ってメリーは、自分のバッグを抱いて身体を丸めた。
「……本でも、読もうかしらね」
蓮子は車窓に目を移す。
太陽は予想以上にまぶしくて、蓮子は思わず、目を細めた。
「んー?」
「ねぇってば」
「んー……」
「もう、電車出ちゃうわよ」
「いや、もう既に乗ってるんだから、どうでもいいじゃない」
「蓮子は、電車の出発の瞬間とか、気にしないタイプなの?」
「気にするタイプが存在することを、今始めて知ったわ」
「あっ、動いた!」
ガタリと、電車全体が揺れ、慣性の法則に従って、椅子の上に置いた蓮子のバッグが落ちかけた。
「……随分楽しそうね、メリー」
「だって。楽しくない?」
「そうね、たった今バッグの紐が首に食い込んだりしていなければ、少しは楽しめたのかもしれないわ」
「ゲンキンなのね」
「リアリティがあるの」
車窓からの景色は駅舎から開放され、僅かながら空が広がり、光が差し込んできた。
「わぁ、ほら。見てよ蓮子」
「何よ、見慣れた街の見慣れた景色じゃない」
「いつもと違う視点、ってことに意味があるのよ。ほら例えば、あそこのビルの裏口が二階にあるなんて、知ってた?」
「それはまぁ……知らなかったけど」
「ね? 見慣れてるからって、油断しない方がいいのよ」
「メリーの方が、なんだかゲンキンな気がするわ」
「リアリティなら、ないわよ? 目の前にあるものは、現実なんだもの」
「現実には、リアリティがないですって?」
「雲に対して、曇ってますね、なんて言う?」
「太陽に向かって、眩しいですね、くらいは言うかもね」
「あ、駅」
各駅停車の電車はゆっくりと減速し、車掌は駅の名前を告げる。
「メリー。止まる瞬間は、どうでもいいの?」
「一々そんなの気にしていたら、疲れるし、飽きちゃうじゃない」
「まぁ……そう、ね」
「釈然としない、って感じね」
「するとでも思ったの?」
「空はこんなに晴れているのに」
「どこかできっと、雨は降っているわ」
「どこかできっと、電車が動き始めているのと、同じでね」
「なんでそんなに得意げなのよ、メリー」
「疲れちゃったから、少し寝るわ」
そう言ってメリーは、自分のバッグを抱いて身体を丸めた。
「……本でも、読もうかしらね」
蓮子は車窓に目を移す。
太陽は予想以上にまぶしくて、蓮子は思わず、目を細めた。
せっかくいい雰囲気のストーリーなのですから,せっかくなら作者さんの考えた通りの表情をしたキャラクターを読みたいです.
もう少し長い話を読んでみたいです。