Coolier - 新生・東方創想話

雛「静葉にスピニングトーホールドをかけてたら回転が止まらなくなっちゃった☆助けて」穣子「…………」

2012/11/10 22:42:15
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 斯くして豊穣神であるところの秋穣子は、単純にして深遠なる世界の真理を悟ることとなるのである。



 O)))



 晩秋の、澄み渡るような晴天に恵まれた昼下がりのことであった。小用を頼もうにも姿の見えぬ姉を探して、穣子は降り積もった落葉を踏み分けつつ歩いていた。
 そんな折である。枯葉を巻き上げながら蠢く、異様な回転体を発見したのは。
 あまりに怪しげなその様相を見るや、穣子は即座に逃げ出したくなる衝動に駆られた。だが、すんでのところで思い直してその場に留まったのは、赤と緑の渦巻く色調に見覚えがあったからである。よくよく目を凝らして見れば、厄神の鍵山雛であった。
 どこぞで姉の姿を見かけているかもしれぬと思い、穣子は雛に声をかけようと歩み寄った。が、途中でハタと足を止めることとなった。回転する雛の足下には、赤と黄色の落葉に半ば埋もれて、赤と黄色で彩られた少女らしき物体が横たわっていたからである。それは紛れもなく、姉の秋静葉であった。
 理解しがたい光景だった。静葉は仰向けになり、右足を雛の手に掴まれている。雛は左足を軸に、静葉に背中を向けるよう反転しながら静葉の右足を跨ぎ、その足首あたりを腿の間に挟む。挟んだまま、更なる反転によって静葉の足首にあらぬ方向への力を加える。途中で足首は腿の間から滑り抜け、最初の体勢に戻る――といったことを、滞ることのない流れるような動作で、延々と繰り返しているのである。
 否、解っている。雛の動きがファンク一家の伝家の宝刀スピニングトーホールドであるということくらいは、穣子にも充分に解っている。だが、何故に雛が静葉に対してスピニングトーホールドをかけているのか、そこに至った経緯がまるで想像できぬ。困惑に満ちた雛の表情も合わせてみると、穣子の思考はより一層の混迷に陥った。
 兎も角、白目を剥いて頭を抱えながら悶える静葉の様子を見るに、悠長に眺めている場合ではないようだった。いつから続けているのか知らぬが、足首には相当のダメージが蓄積しているものと見える。静葉の足首にもしものことがあれば、木の幹を蹴って葉を落とすという仕事ができなくなるであろう。葉が落ちなくなれば、土は新たな命を育むための養分を補充することができなくなる。そうなれば草木は枯れ、動物は飢え、後に残るのは死の荒野ばかりとなるであろう。つまるところ幻想郷における生命の循環は、静葉の足首にかかっているのだ。何としてでも、静葉の足首を守らねばならぬ。
 やめなさい。叫びながら、穣子は駆け寄った。ところが雛の反応は、穣子の予想を裏切った。従うでもなく、拒否するでもなく、無視するでもない。救いの手が差し伸べられたとばかりに、泣き顔に笑みを浮かべたのだ。回転したままで。
 ああ、穣子。よく来てくれたわ。
 何してるの。
 静葉にスピニングトーホールドをかけてたら、回転が止まらなくなっちゃった。助けて。
 穣子は、疼きだした額を手で押さえた。何をどうしたら、スピニングトーホールドが止まらなくなるというのか。そもそも、何故静葉にスピニングトーホールドをかけようなどという流れになったのか。わけがわからぬ。雛は本当は鍵山雛ではなく、雛・ファンクだったとでもいうのか。厄神であると同時に、サブミッション神だったとでもいうのか。木戸修と戦ったら、どちらが強いのか。
 とまれ、細かい話は後回しだ。早く回転を止めねば、静葉の足首が限界を超えてしまう。幻想郷が、死の大地になってしまう。
 穣子は雛の肩を掴み、力ずくで止めようと試みた。しかし回転の力は凄まじく、穣子の体は弾き飛ばされて尻から落ちた。何するの、と穣子は非難の声をあげた。自分じゃどうにもならないの、と雛は涙声で弁明した。
 穣子は立ち上がり再び掴みかかった。だが、またも為す術なく弾き飛ばされた。また掴みかかり、また弾き飛ばされ。何度も繰り返したが、回転は鈍る気配すらなかった。どさくさに紛れて雛の胸を鷲掴みしたが、次の瞬間にはあえなく吹き飛ばされていた。ただ、手に余るほどの大きさであるということだけはわかった。
 手も足も出ない。いや、手は出したが、どうにもならない。雛の回転は、何やら奇妙な作用を得て、神の力ですら容易には及ばぬ領域に達しているようだった。事ここに至り、穣子は一つの可能性に思い至った。
 ――黄金の回転。
 何らかの要因により、雛のスピニングトーホールドは黄金の回転の軌跡に入ってしまったのではあるまいか。そうとしか考えられなかった。ちなみに黄金の回転とは、黄金長方形の中に正方形を云々で無限の力を引き出せるという原理であり、正確かつ明解に説明するのは面倒もとい困難なので、詳細はSTEEL BALL RUNを参照されたし。
 さて、この仮説が正しいとするならば、回転を止めさせることは容易い。黄金の回転は、自然界に存在する黄金長方形を見ながらでなければ生み出すことができないのだ。穣子は雛に、目を閉じるように言った。さすれば黄金長方形は見えなくなり、回転の力は失われるという寸法だ。しかし雛は、泣きながらかぶりを振った。
 目が釘付けになって、どうしようもないの。
 言われて、穣子も初めて気が付いた。勢いよく回転しながらも、雛の視線は一点のみにじっと固定され、そこから動いていないのだ。だが、目が閉じられないということはなかろう。穣子は重ねて言った。
 目を閉じなさい。
 駄目、できない。
 どうして!
 だって、だって。駄々っ子のように言う雛の鼻から、鮮血が噴き出した。もしやと思った穣子は雛の隣に立ち、視線を同じ方向にやった。即ち、雛の足下のあたりである。
 穣子も鼻血を噴いた。
 静葉の右足は雛に掴まれ、高く持ち上げられた状態になっている。スピニングトーホールドを受けてもがいているうち、スカートが徐々にずり上がり、ほぼ太腿の付け根近くまでが露わになっているのだった。さらに言えば、静葉のスカートは裾の部分が紅葉を模した意匠になっている。つまり切れ込みや小さな穴からは、純白のぱんつまでもが、ちらりちらりと見え隠れしているのだ。
 ぱんつといえども、あくまで人工物である。本来ならば黄金の回転を生み出すことはできない。ただしそれが、神である静葉の身に着けたぱんつであるなら話は別だ。神のぱんつであれば、自然界に存在する究極の美に匹敵する、或いはそれ以上の力を秘めていたとしても、なんら不思議のないことであった。間違いない。静葉の太腿やぱんつが見せる黄金長方形によって、雛のスピニングトーホールドは黄金の回転を始めてしまったのだ。
 そして絶望が訪れる。なにせ、静葉のぱんつが見えているのだ。そこから目を逸らしたり、目を閉じたりするなど、とうてい不可能なことであった。
 雛を責めることはできぬ。もし穣子が同じ立場であっても、目を逸らしたり閉じたりするどころか、瞬きさえ惜しんで眼球が干涸びるまで凝視しただろうから。とはいえ、このまま幻想郷が滅ぶのを黙って見ていることなどできなかった。何か、何か手はないのか。お姉ちゃん、お姉ちゃん、と穣子は呼びかけながら、静葉の肩を揺さぶった。どさくさに紛れて胸も触ったが、揉めるほどのものは存在しなかった。
 妹の呼びかけに気付いたのか、静葉の目に光が戻った。力なく妹の名を呼び、次いで、回転を続ける雛に目をやった。
 その時、希望が生まれた。――静葉の鼻から噴き出した鮮血の飛沫が、雛の顔にかかったのだ。
 まさかと思い、穣子は姉の隣に仰向けで寝そべった。そして姉と同様、鼻血を噴き出した。回転の度に雛のスカートはふわりふわりと舞い上がり、その奥に佇む漆黒のぱんつが、静葉の視点からはちらりちらりと見え隠れしていたのだ。
 ここに天啓が舞い降りる。静葉と同じく神である雛のぱんつにも、黄金長方形は隠されているはずだ。それを見ながら、下から静葉が黄金の回転を、雛とは逆の方向で加えれば、回転は相殺されて止まるはずなのである。
 穣子は気も狂わんばかりであった。ちらちらと見えているだけでは、もはや我慢できない。二人のスカートを捲り上げて、或いはひん剥いて、もろ見えのぱんつを舐め回すように心行くまで観賞したい。だが、回転が続いているうちは無理だ。早く、一刻も早く回転を止めてほしい。溢れ出る欲望のまま、穣子は姉を急かし立てた。しかし静葉は、首を横に振った。
 できるわけがないッ!
 いいえ、お姉ちゃん。できるできないじゃないの。やるしかないのよ。
 穣子……。
 幻想郷の未来が、お姉ちゃんにかかってるんだから。
 でも、いきなり黄金の回転だなんて。
 大丈夫。きっとできるよ。穣子は姉に笑いかけた。視線はぱんつに向いたままであったが。
 ……でも。
 煮え切らない姉に、穣子はもう我慢の限界である。さっさと済ませてさっさとぱんつ見せろ、と叫びたい衝動を抑えて、自分のスカートをめくり上げた。
 ほら! こっちの黄金長方形も見せてあげるから!
 その瞬間、静葉の瞳に黄金の光が宿った。神のぱんつが示す黄金長方形を二つ同時に視界に収めたことにより、ついに静葉も黄金の回転に目覚めたのだ。両手がしっかりと地面を捉え、鋭い体のひねりが膝から足首へと伝わっていき、雛の回転と衝突する。
 一帯は眩い閃光に包まれ、穣子は衝撃波によって吹き飛ばされた。


 O)))


 どれほどの時間、気を失っていたのか。穣子は全身の痛みに耐えながら、ようやく起き上がった。
 周囲は爆弾でも落とされたかのようだった。広い範囲にわたって木々は薙ぎ倒され、地面はすり鉢状に抉れている。その中心部には、雛と静葉が倒れていた。
 いずれもスカートが顔のあたりまでめくれ上がっており、純白と漆黒のぱんつが丸出しになっている。
 穣子は、違和感に立ち尽くした。望んでいた光景のはずだ。気が狂わんばかりに求め、やっと手に入れたのだ。鼻血程度で済むものではないはずだと思っていた。だが違っていた。それを見たところで、いかなる性的欲求も満たされることはなかった。
 穣子はむしろうんざりとした気分とともに、一つの真理を悟った。即ち、パンチラに比べればパンモロなど、たいした価値も魅力もありはしない。見えては隠れ、決してその全貌を晒さないものこそが、真の美しさを持っているのだ、と。
 秋の日は短い。西の空はもう赤く染まり始めている。穣子は脱いだ帽子で服についた土を払い、さあ仕事仕事、と呟いた。
執筆中BGM
Internal Suffering 『Chaotic Matrix』
汗こきハァハァ
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コメント



0.950簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
うむ、ベネ。
2.80名前が無い程度の能力削除
そのままずっと回転しててもいいのに()
3.80名前が無い程度の能力削除
 色々言いたいことはあるけれど、「じわじわくる」という表現が一番かな。

 しかしツェペリ一族に伝わる黄金の回転、いったいどこで…
8.100名前が無い程度の能力削除
レッスン(ぱん)2だッ
10.90奇声を発する程度の能力削除
この感じ良いな
12.70名前が無い程度の能力削除
作者氏は常に少量の苦味を含ませているように感じるが、私の気のせいだろうか?
書き癖からして直球の如き変化球。変化球を装った直球。
そう考えると其のひっくり返ったハンドルネームにも納得がいきます……
コレ→ O))) あまり見掛けませんけど何でしょう?(気になる)
13.90名前が無い程度の能力削除
これが、世界の深遠か…
14.80名前が無い程度の能力削除
タイトルが残念
静葉さまのスレンダーな肢体から繰り出される落葉蹴りもねじ込んでほしかった
全体の分量とオチのバランスがよく、負担なく読める作品
20.80名前が無い程度の能力削除
安定したクオリティ!
21.90名前が無い程度の能力削除
22.無評価汗こきハァハァ削除
読んでくださった皆様、評価を入れてくださった皆様、ありがとうございます。
嬉しさのあまり、ぱんつがもげそうです。

>>12
意図的に苦味を入れているつもりはないですね。
いいものを書きたいと必死こいて考えた結果が、自然とこうなってます。

O)))←これは本来、「アンプから迸る轟音」を図案化したもので、アンプメーカーSUNNのトレードマークです。
アメリカのバンドSUNN O)))の名前の由来となったことでも有名ですね。
ただ、私は単に文章区切りの記号として勝手に使っています。
23.80名前が無い程度の能力削除
穣子はとんでもない真理に気付いてしまったな…ww
24.90名前が無い程度の能力削除
あなや―ーぱんつとは奥深きものよ
30.80名前が無い程度の能力削除
いや、下らねぇ!

と心の中でツッコみつつ、最終的に明らかになる真理の内容に納得。
展開も不思議な真面目さを出しつつも、やっぱり下らない。
こうなってくると、単語自体は重いのに表現がペラッペラな冒頭も計算の内…?
どちらにせよ、楽しく読ませていただきました。
31.80名前が無い程度の能力削除
しょうも無いけど好き
35.90名前が無い程度の能力削除
なるほど真理でした