Coolier - 新生・東方創想話

紅魔館のある一日 魔女と嫉妬と弾丸編

2012/11/10 13:51:29
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紅魔館のテラスでは麗らかな午後のティータイムが行われていた。

「ふむ…」

七曜の魔女、パチュリー・ノーレッジは不機嫌であった。
その原因は何かと言うと…

「ほら、レミィ。あ~ん」
「…一人で食べられるよ、輝夜」

客人である蓬莱山輝夜がレミリアの口にお茶菓子を入れようとしているのだ。
それも凄く笑顔で。
近距離で高濃度の甘々な空気を発せられれば居心地も悪くなる。

そもそもどうしてこうなったのか。
パチュリーは思わず溜息をつく。

「(レミィとティータイムを楽しんでいたところに、突然この姫様が現れたのよね…)」

最近、レミリアと輝夜はとても仲良しのようだ。
輝夜が客人として紅魔館に招かれることも決して少なくなくなってきている。

そして、その事実にパチュリーは何だか心が落ち着かなかった。
自分自身のことなのにまるで理解が出来ない。
それはパチュリーにとって気持ち悪さ以外の何物も感じなかった。
度重なる悩みにパチュリーは再度大きなため息をつく。

「パチェ、溜息なんてついてどうしたのさ」

レミリアが心配そうにパチュリーの顔を覗いている。
その愛らしい顔を見ていると、パチュリーは何故か心が癒される気分に陥った。
思わず見つめてしまうパチュリー。

「…パチェ?どうして私の頭をなでるのさ?」
「…あら?」

パチュリーは無意識のうちにレミリアの頭をなでていたようだった。
思わず動きを止める。
気がつくとレミリアがじと目で自身を見ていることに気付く。

(…まずいわね)

レミリアが不審がっている。
とっさに頭をフル回転させて言い訳を考えるパチュリー。

「…レミィがレミィだから仕方ないのよ」

パチュリーは自分でも何を言っているのかよくわからなかった。

「…意味がわからないな」
「(そりゃそうよ。自分でも何を言っているのか分からないもの)」

が、口からすでに出てしまった物は仕方ない。
次は最初の言葉を補強する言い訳を必死に考える。

「レミィはカリスマの権化よね、って意味よ」
「…そうは聞こえなかったけどね」
「(でしょうね)」

レミリアが口を尖らせる。
今のパチュリーにはレミリアのそのような姿も非常に愛らしく思えた。

「(可愛らしいわね…)」

パチュリーはレミリアの顔を眺めながら思う。
しかし、それを口にすることは決してない。
レミリアの機嫌を損ねてしまうからだ。

レミリアは特に威厳を大事にする。
最近はその傾向も薄れて、ふざけるようにはなってきたが。
それでも可愛がる、という行為はレミリアのプライドを刺激させる。
悪い方向に。


そのような幸せそうな光景であったが。
その光景を一人面白くないと感じる人物がいた。

「(私の…私のレミィが…)」

ティータイムに参加している三人のうちの一人である輝夜であった。
目の前で甘々な空間を形成された事に無性に悔しさを感じていたのだった。
今にも懐からハンカチを取り出して噛みしめそうな勢いだ。

「レミィ!」
「ど、どうしたのさ輝夜?」
「(…どうしよっか)」

輝夜はレミリアの注意を自分に引きつけたかっただけで特に何かを考えていた訳ではない。
何かないか必死に考える。
と、ここで輝夜の頭に一つの事実が蘇った。

「あ!そ、そうだ! 私、和菓子を作って来てたのよ!」

輝夜はすっかり忘れていた。
レミリアに渡す為に必死に練習していた苺大福を持ってきたことである。
後で二人きりの時に渡すつもりだったのだが、すっかり忘れてしまっていたのだ。

輝夜は自身が持ってきた荷物の中から小さな箱を一つ取り出す。
それはプレゼント用として丁寧に包装された箱であった。
ちなみに、包装を行ったのは永琳である。
その包装を崩さないように丁寧な仕草で取り出した箱をレミリアに渡す。

「開けていいの?」
「もちろんよ!」

レミリアも丁寧な仕草で包装を解く。
適当に破る方が楽だったのだが、さすがに客人の前でそれをするのは憚れた。
一勢力の主としての誇りがレミリアにそうさせたのだ。

箱を開けたレミリアの瞳に飛び込んできたのは白い大福であった。
レミリアは大福の一つを手にとってまじまじと見つめる。

「へぇ…美味しそうだね」
「でしょう?この日の為に練習してきたんだから!」
「食べてもいいのかい?」
「レミィの為に作ったんだもの!食べて食べて!」

輝夜の了解を得たことで、レミリアは改めて大福を小さく齧る。
レミリアの口の中にはほんのりと甘い苺の風味が広がった。

輝夜はそんなレミリアを不安げな瞳で見つめる。
が、輝夜の中には確かな自信があった。

先述の通り、彼女はこの日の為に今まで一生懸命練習していたのだ。
彼女のペットである鈴仙・優曇華院・イナバは何個もの大福を食べさせられたのか分からない程に。

「うん…美味しいよ」
「本当!?」

輝夜は嬉しそうに叫ぶとそのままレミリアに抱きつく。
それはとても微笑ましい光景であった。

が、それを微笑ましいと思えない人物が一人いた。
今までの光景を我関せずと無視していたパチュリーである。

「(なに…やってるのよ…)」

パチュリーは二人の抱擁に思わず目を見開く。
そして、脳内が弾けたような感覚に陥ってしまった。




「ふぅ…」

地下図書館で溜息をつくパチュリー。
彼女はあの場から何も言わずに立ち去ってしまったのだ。

衝動的にあの場を出てきてしまったが大丈夫だろうか。
レミリアに迷惑を掛けなかっただろうか。
はしたない真似をしてしまっただろうか。
パチュリーの脳内に数々の疑問が巡っては消える。
おかげで、読んでいる本の内容が頭に入ってこなかった。

思わず憂鬱になる。
とは言っても、すでに無言で出てしまった以上考えても仕方ない。
そう思いながらも考えてしまう。
論理的に考えることが出来ない自身の脳に思わず苛立ちを感じてしまう。

「あー、もう!一体何なのよ!」

珍しく苛立ちを前面に押し出すパチュリー。
彼女のこのような姿を見ることは非常に稀であった。

「レミィとあの姫様が抱き合ってようが…抱き合って…ようが…」

関係ない。
その一言が言えなかった。

「どう…して…?」

自分とレミリアは親友でしかない筈だ。
これではまるで…。

「ありえないわ!」

大声を出して自信の思考を必死に打ち消す。
そうすると、喉から咳が出始めた。

「けほっ…けほっ…」

持病の喘息である。
すぐに近くにある気管支拡張薬を飲み込む。
ちなみに永遠亭印の薬である。
それを飲んで幾分かすると喘息は治まってきた。

落ち着かなければ。
落ち着いて考えなければ。

パチュリーは一度整理することにした。
自分はレミリアのことをどう思っているのか。
自分はレミリアをどうしたいのか。

まず、自分はレミリアを自身の使い魔にしたい。
パチュリーの頭には真っ先にそれが浮かんだ。
これは彼女の至上の願いである。
レミリア以上に強く誇り高く美しい悪魔を彼女は知らないからだ。

それと同時に、自分とレミリアは親友である。
それは否定しようがない事実だ。
もう80年以上の付き合いとなるのだから。

レミリアは我儘でありトラブルメーカーとなることも多いが、彼女の助けになりたいとパチュリーは思っている。
それ以上の感情は決して持ち合わせていない…はずだった。

レミリアの顔を思い浮かべる。
とても愛らしい顔。
誰にも渡したくはない。
自分だけを見て欲しい。

そこまで考えてパチュリーは気がつく。
自分の理解不能の思考に、感情に。

「何よこれ…」

ありえない。
そうパチュリーは真っ先に考える。
しかし、感情がその回答は間違っていることを否定していた。

可愛らしいと思うことはあるが、それはあくまで客観視していること。
第三者視点の問題で、パチュリー本人はそれに愛情を込めたつもりはない…はずであった。

かつて、咲夜に対して「貴方はレミィを独占したい?」と聞いたことはある。
それはあくまで咲夜に対するからかい半分だったはずだった。
自分がしたいのはあくまで使い魔としての独占…パチュリーはそう思っていた。
思い込んでいた。

思わず頭を掻き毟る。
自分は誇り高い魔女の筈だ。
レミリアは単なる親友であり、使い魔にしたい最高の悪魔というだけのはずだ。
そう自分に思い聞かせる。

しかし、先程の光景がフラッシュバックする。
輝夜がレミリアに抱きついた瞬間、間違いなく脳内は弾けた。
その場にいることが出来なかった。
その光景を見続けることが出来なかった。
だからこそ、彼女は無言のままその場を立ち去ったのである。

「まさか…」

パチュリーには先程の感情の正体が掴めてきた。
しかし、それと同時に脳が認めることを拒否している。
彼女にとって、ありえないことなのだ。

「私が…あの姫様に嫉妬しているだなんて」

思わず頭を抱える。
同性の親友に恋心を抱くなんて。
しかもそれを自覚してしまうだなんて。
あってはならないことだった。

「パチュリー様?」
「きゃあっ!?」

パチュリーはその声に慌てて振り返る。
そこには平然とした顔をした咲夜がいた。

「驚かさないで欲しいわ…心臓に悪い」
「それはこちらのセリフですわ」

全く驚いてもいないような顔で咲夜が言う。
そして、彼女は一つの小さな小さな箱をパチュリーに差し出した。

「これをお嬢様がパチュリー様に渡すように…と」
「レミィが?」

パチュリーは咲夜から小さな箱を受け取り、その箱をじーっと見つめる。
何だろうか、これは。
考えるよりも開けた方が早いと思い、パチュリーは一思いに箱を開ける。
中に入っていたのは。

「銀の…弾丸…?」

パチュリーはそれを手に取ってみる。
特に魔術がかかっている訳でもない。
だが、これにどういう意味があるのかパチュリーにはすぐにわかった。
思わず笑い出してしまう。

「あはははははははは!」
「パ、パチュリー様!?」

咲夜は思わず慌てる。
パチュリーがおかしくなったのではないか、と。

パチュリーはそんな咲夜に目もくれず、銀の弾丸を強く握りしめる。
心を緩めていた過去の自分に決別を。
パチュリーは決意を新たにした。

「いいわ…貴方の心ごと撃ち抜いてやるわ」







「で、レミィ」
「何さ」
「さっきメイドに渡した箱は一体何よ?」

輝夜は思い返す。
先程、魔女が突然立ち去ってしまった。
それは別に良い。

その後にレミリアがメイドを呼びだして「パチュリーに届けるように」と小さな箱を手渡した。
あの行動はどういう意味だったのか。
輝夜にはそれが気になった。

「…ああ、銀の弾丸さ」
「…銀の弾丸?」

銀の弾丸。
一般的に吸血鬼の弱点として代表される物だ。
しかし、それはこの場にどのように関係してくるのか。
今の輝夜には理解不能でしかなかった。

「最近パチェもおとなしいからねぇ…」
「…どういう意味よ?」

輝夜にはどうにも話が見えない。
思わず話を急かしてしまう。

「パチェはかつて私を使い魔にしようとして何度も私に対決を挑んできた。私が負けることはなかったけどね」
「ああ、なるほど…あの魔女が、ね…」

輝夜にも見えてきたのだった。
レミリアが魔女に渡した銀の弾丸を渡した時の感情の正体を。

「そしてそれは私の楽しみであり刺激にもなっていた。しかし、パチェは最近それをすることもなくなってしまったんだ」
「つまりレミィは刺激が欲しかったのね?」
「ま…パチェにも少しくらい焦って欲しかった…かな」

輝夜はゆっくりとレミリアに近付く。
少しだけ微笑みながら。

「だったら私が刺激になってあげようかしら?」
「…それは楽しみだね」

輝夜の顔がゆっくりとレミリアの顔に近づいてゆく。
その顔はすでに女の顔と化していた。

「…本気で言ってるのよ?その代わり、レミィも私の刺激になってくれると嬉しいわね」
「善処するよ」

輝夜がレミリアに口付けしようとした瞬間だった。
輝夜はとっさに後方へと跳ぶ。
その一瞬後には掌サイズの火の玉が通過して行った。

輝夜は火の玉が飛んできた方向を見てにやり、と口元を歪ませる。
そこには彼女の思っていた通りの人物がいた。

「客人に対して随分失礼な輩がいたものね」
「私にとっては貴方は敵でしかない。敵に容赦をする必要はないわ」
「ならば貴方も本気でレミィに向き合うことね」
「お前に言われるまでもない」

輝夜はその返答に再度口元を歪ませる。
すると、彼女はレミリアへと一瞥した。

「今回はここまでみたいね。またね、レミィ」
「悪いね、輝夜」

そう言ってレミリアに背を向けそのまま飛び立つ輝夜。
そしてその姿はやがて見えなくなった。

レミリアは輝夜が飛び去った方向を見ながら口を開く。

「今度はお前の答えを聞かせて欲しいね」
「あら、さっきの姫様に言った通りよ?」

レミリアの背後にいた人物…パチュリー・ノーレッジは小さく笑う。

「私の物になるまでは誰にも負けちゃダメよ?」
まだまだリハビリ中…
頑張りまする

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コメント



0.130簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
ニヤリとする瞬間もあった。
でも、読んでて「新人さんだっけ?」と思ってしまう箇所もいくつかあった。
地の文が素人解説みたい、仕草や表情が伝わってこない、無駄な改行が散見される
惚気に技術は必要ないとは思うけども……。
ジャスティス補正があってこんな感じ。
4.80おかざき削除
はやくパチェさんと輝夜の感情のぶつけ合いが見たいね!
レミリアの弾丸を送りつけるくだりからすこし話の進み方が急かな?とも思いました