「ん… 」
暗い部屋で目を覚ました。
と言っても見知らぬ部屋… ではない。
よく知った私の部屋。
「お日さまっていじわるよね… なんで私には優しくしてくれないのかしら? 」
長い間生きていながらも、こんな事を考えたのは初めてだった。
否、 あったのかも知れないけど覚えてないだけかもしれない。
けど、そんなことは関係ない。
誰しもどうでもいい事は忘れてしまうでしょ?
まあ、 私の部屋には窓が無いの。
「ぬぉ~… お、スイッチあったっっとぬぁ!? 目がぁ、 目があぁ!? 」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
なんでいきなり全部灯いたの?
理由は単純、 寝る前に弱めるのを忘れてたみたい。
普段はこんなこと絶対しないのに…
「疲れてるのかなぁ… 私」
思い当たるのはただ1つ。
冬に近づくとやって来る大変な仕事。
YES、 大掃除.
数日前から始めたんだけどまだ半分も終わってない。
家具が多すぎて片付けができてないもの。
「これは… いる、 これも… いるよね? あ~ これは… いら… んむむ… どうしよう… 」
こんな調子だからか、 一向に終わりそうにない。
普段使わないような物入れとかは凄く時間がかかる。
どうせ使いもしない物だらけなのに、 何故か捨てられない…
そうしていると、 一枚の写真が出てきた。
もう随分と色褪せて見づらくなっている。
ただ、 それには見覚えがあった。
「あ、 この写真… 」
それは昔、 ずっと前にアイツと撮ったものだ。
今とそう変わらない背丈で、 屈託のない笑顔が並んでいる。
ただ…
「あー … なんかイライラする」
なんでかな、 この写真を見てるとなんとも言えない気分になる。
それは私の中で渦を巻いて、 溢れ出す。
溢れたそれが何なのか、 わからないからイライラに変わっていく…
「アイツはちゃんと掃除してるのかな? 」
答えは見つからないままに、 現実の時間は進んでいく。
「あー、 もう! 」
何ともない筈なのに、 心が落ち着かない。
…何ともない? 何が?
このままではいけない…
私はそれを写真立に入れて、 また、 片付けに戻ることにした。
「あー …」
眠り疲れて目が覚めた。
自然と起きるまで寝て、 気持ち良く起きれたときの気分は最高だ。
しかし、 気持ち良く起きれなかったときは非常に体が重くなるのだ。 ダルいのだ。
そして今日は後者だった。
「いま… んぁ? 11時? ふぇぁ… 」
どうやら朝ごはんは逃してしまったらしい…
「えっと、 起きたらまず顔を洗ってそれから… 」
桶に水を溜めてから手ですくって顔を洗う。
流すときも同じだけど、 手を洗うときはどうしても直接水で流さなきゃいけない。
「あわわわわわわわわ 」
ああ気持ち悪い!
冷たいし、 指を這うように動くし、 気のせいか痛い気もする。
何よりも恐い。 仕方ないからこうするけど全然慣れない!
「いつか流れない蛇口が出来ますように 」
おかげで毎日これを言うのが癖になってきている。
私は顔と手を拭き、 寝癖を隠すように帽子をかぶって部屋を出た。
すると廊下で咲夜と会った。
「おはよう咲夜、 いつも家事の事お疲れ様。 」
「御早う御座いますレミリアお嬢様、 もうじきお昼になりますが朝食は如何致しますか? 」
「もう昼なんでしょう? 私が遅かったんだからいいわ。 」
「わかりました。 」
ごはんまで暇だからテラスで日陰ぼっこでもしようかな?
それとも図書館でパチェと話でもしようかしら?
「咲夜、 パチェって今何してるかしら? 」
「パチュリー様ならお出掛けになられましたよ? 何やら友人に会いに行くとかで。 」
「パチェが外出? 珍しい事もあるのね… ありがとう咲夜。 」
「昼までには帰るそうですよ? 」
「わかった~ ! 」
仕方ないから最初の予定通り日陰ぼっこをすることにした。
~ 一方 ~
「あ、 お嬢様に年末が近いこと伝え忘れてた… 」
けれども、 まあ小さいながらにも此処の主なのだ。
それ位は自分で把握しているだろう。
「それにしても 『わかった~ ! 』 なんて… 不意打ちにも程があるでしょ! 」
そしてメイドは僅かの後悔と自制の為、暫し時を止めるのだった…
「これで全部かなっ! よし終わったぁ! 」
私は今、 大量の家具等に囲まれて自室の入口の前にいる。
あれからもいる物といらない物を分けていたら、 結局ほとんど残してしまったのだ。
だって棄てられないでしょ?
今の私の部屋は何も置いてない、 一面が平らになっている。
その眺めは綺麗に見えるが、 床や天井には未だ大量の埃が積もっているのだ。
「それにしても広いなぁ… 私しか使わないのに。 」
それはどこか不思議な気分だった。
普段、 自分が生活していながらあまり広いと感じた事は無かった。
それが、 改めこうして見るとあまりにも広く感じるのだ。
これだけの部屋を私の為だけに用意してあるのだ。
それは、 あまりいい気分ではなかった。
「そんなに此処に居て欲しいのかな… 」
何となく、 嫌な気分になった。
部屋の広さのせいもあり、 私としての小ささが際立った気がした。
私はこんなにちっぽけだ。
こんなに小さな存在だ。
「 早く片付けよ… 」
直ぐにでも終わらせたかった。
あの広さを感じない部屋へ戻したい。
そうだ、 あの子達に手伝って貰おう。
そう思って私は呼び掛けた。
「ねえ、 ちょっと出てきて? 」
勿論、 周りには誰もいない。
私は私に呼び掛けているだけ。
そうすれば皆が出てきてくれるから。
「お待たせ、 今度は何かな? 」
「あれ? お客さんも居ないね。 」
「人形遊びじゃあないみたいね。 」
そっくりな姿をしたそれらは各個体で独立した思考を持つ。
それは実体化する多重人格。
つまり、 皆私なの。
「ちょっと違うよ、 だって私は"私"だもの。 」
「私も"私"、 "貴女"も"私"。 」
「私も"貴女"よ? "貴女"は? 」
「勿論"私"よ。 」
要するに少し面倒な状態なの。
「あのね、 お掃除が大変そうだから手伝ってくれない? 」
「あ~ それだから何にも置いてないんだ! 」
「へ~、 私も今掃除中だよ? 」
「あれ、 もう年末!? 忘れてた… 」
思ったよりは物分りが良さそうだった。
これで掃除もはかどる。
と、 思いきや
「どう? やってくれる? 」
「ごめん、 私今忙しいんだ… 」
「私も掃除してるし… 」
「急いで始めなきゃ! 」
「はっ、 薄情者! 自分が困ってるのに助けようとしないなんて! 」
なんて奴等だ! あ、 私もなのか。
もう頭がこんがらがってきた。
「お願いだから手伝ってよ… 後でそっちの片付けも手伝うからさ? ね? 」
「えー … でもさあ? その間に誰か来ちゃったらどうするの? 」
「誰も来ないって、 大丈夫。 」
「お昼の時とかは? 」
「あ… 」
そういえばもうじき昼だった。
今から終わらせて手伝うと時間が被ってしまうかもしれない…
「という訳で… 」
「また何かあったら呼んでね? 」
「今度は手伝うから、 じゃね~ 」
「うーぅ… 」
結局皆戻ってしまった。
また私だけが取り残される。
残されてまた部屋を見る…
「 はぁ… 」
そこには先と変らぬ広い部屋。
私は諦めてマスクを着けるしかなかった。
「… 何よ、 うるさいわね… 」
廊下の方から何やら慌ただしい足音を感じる。
まず、 間違いなく咲夜ではないだろう。
あれなら一瞬で目の前に立っている筈だ。
足音はどんどん近づいてくる。
「レミィッ!! 地下から凄い量の煙がっ!! ゲホッ、 ゴフッ、 カハッ!? 」
「ちょ、パチェ!? 喘息大丈夫? 無理したでしょ? 」
まさか走ってたのがパチェだったとは…
うわっ、 なんか相当辛そう…
「さっき、 帰って、 図書館に入って、 そしたら、 地下室の方から、煙が、 ゲホッゲホッ… 」
「わかった! わかったから落ち着いて? 私が見てくるから! 」
「むきゅぅ… 」
まったく、 モヤシが無理するんじゃないわよ…
それにしても頑張ったわね、 この子。
きっと本の為に必死だったのだろう。
向こうから司書の小悪魔も走ってきた。
取り敢えずはこの場を離れても大丈夫だろう…
「もう治るまで走んないでよね。 」
それにしても、 疲れて伸びてるパチェはなんだか可愛かった。
「さて、 どうしたものか… 」
地下から出てきたと言う煙は図書館の扉から漏れだすまでに至っていた。
巨大な扉から溢れるそれは威圧感でたっぷりだ。
「よし… 開けるわよ… ? 」
私は一度、 自分に確認してから扉に手を掛けた。
「うっわナニコレ? あの子下で何やってんのよ… 」
中の様子は悲惨なものだった。
おかしなくらい広いこの大図書館を灰暗いモヤが埋め尽くしていた。
「て言うかこれホコリじゃない! ちょっとフラン! 何してんのか知らないけど今すぐ止めなさい! 」
どうせ聞こえてないだろう。
そう思って下まで降りていった。
そして部屋の前まで飛んでって唖然とする。
「なにこの家具の山は? 一人でほんと、 何してんのよ… 」
所狭しと置かれた家具の合間をぬって扉をあける。
… 開けようとしてなかなか進めずに苦労した。
「フラン、 あんた何やって… 」
扉を抜けると、 一面の銀世界が広がっていた。
その、 この世のものとは思えない景色に、 私は目を疑った。
「ナニコレ? ふざけてるの? 」
「ぬおぉ… 」
「フラン!? 」
この世の地獄から我が妹が生還した!
真っ黒になって…
眼を真っ赤にして… (元から)
大量のホコリと共に倒れ込んできた。
「げほっ、 なにやってたのよあんた! パチェが火事だと思って慌ててたわよ!? 」
「うぬぅ… はっ!? お姉さま! えっと、 掃除が終わんないの… 」
「掃除? 」
よく見るとこの妹はマスクを着けていた。
それと、 地下室には窓がないことを思い出す…
「えっなに? アンタ部屋を閉めきって掃除してたの? 」
「あ… 」
その考えは無かった! とでも言いたそうな顔で見られた。
「アンタねぇ… 大体何を思って掃除なんかしだしたのよ? 」
「えっ? お姉さまはまだ何もしてないの? 」
「そんなものメイド達がやってくれるじゃない。 」
「いえ、 お嬢様も手伝うんですよ? 」
「え? 」
いつの間にか後ろに咲夜が立っていた。
このメイドは主に対して何を言っているんだ?
「あのねえ咲夜、 何のためにアンタ等メイドが居ると思ってるのよ… 」
「お言葉ですがお嬢様、 もう年末なのですよ。 」
「だから何よ? 」
さっきから言っている意味がわからない。
主である私が何故掃除せねばならぬのか?
何故年末なのか?
「お姉さま? 年末の大掃除は皆でやりたいって言ってたの、 お姉さまだよ? 」
「へ? 」
大掃除?
そういえば人里の年間行事の1つにそんなものがあった気がする。
「何で私がそんなこと言うのよ? 」
「たしか、 あのめでたい色の巫女が来ていたときにそんな話をしてましたね。 『私達もやるわよ!!』って意気込んでました。 」
「私ってホント馬鹿… 」
その後咲夜がフランとパチェを医務室まで担いでいき、 私は自室を掃除することになった。
普段からメイドが掃除してるから大して汚れてなかったけど、 小物の仕分けには時間がかかった。
だって棄てれないじゃない!
「ねえお姉さま、 私の写真知らない? 」
「どうかしら? 私が貴女の部屋に行く事があまりいけど… 」
「そっか… コアちゃんとパチュリーにも聞いてみるね。 」
結果、 棄てるどころか1つ増えてしまった。
それは色褪せた一枚の写真
私とフランが写った、 ずっと前の想い出
「アイツめ、 勝手に持っていったな… 私のなのに~ 」
口では誤魔化してたけどタンスの上にしっかり乗っていた。
「私もタンスの上が寂しいから置こうと思ってたのに~ ! 」
ただ、 何故かあまり苛立たなかった。
寧ろどこか安心した感じがする。
「まいっか… 」
今はとてもいい気分だ。
パズルじゃないんだから、もっと素直に書いてもいいんじゃないの?
俺の読解力が足らないのかもしれないけど、俺にとっては苦痛ですらあった。
そして最後まで読んでもやっぱり分からなかった。
視点切り替えはもう少しわかりやすく書いてくださると嬉しいです
妹様の部屋埃出過ぎでしょw
普段は咲夜さんとか妖精メイドが掃除したりしないんかいw