蓮子はいつだってゴーイングマイウェイで、山でも谷でも軽々乗り越えていく。
根性やら行動力やら、ほんともう男顔負け。
「ふふ、蓮子ったら、そんなんじゃ彼氏できないわよ」
メリーの言葉の裏にはたくましい蓮子への賞賛がある。
だがある時、
(とうとう見つけたわよ蓮子の苦手なもの! これは加虐心がそそられる!)
天気の良い春の日曜日。
親子連れや恋人達でにぎわう遊園地。
メリーと蓮子は今、ジェットコースターの待機列に並んでいた。
次のアトラクションを品定めしている友達連れや、ジェットコースターに早く乗りたくてうずうずしている子供達。
園内のあちらこちらに設置されたスピーカーからはリズムのよい楽しげな音楽がエンドレス垂れ流し。
そんな中にあって、蓮子だけが処刑台に向かう囚人のように青白い顔をしている。
「ね、ねぇメリー。やっぱりやめようよぉ……私、観覧車に乗りたいよぉ……うぅ……せっかくメリーが遊園地に誘ってくれたって喜んでたのに……」
「私に誘われて喜んでどうするのよ。それより蓮子ったら、乗ったこともないのに怖がっているんでしょう?」
「だってあんなの、見るからに怖そうじゃない……」
待機列の頭上にかかるレールをタイミングよくジェットコースターが駆け抜けた。
楽しげな悲鳴と、竜巻のような轟音とがあたりに響き渡る。
おー、すげー、と列待ちの人たちが興奮気味にそれを見上げた。
蓮子は悲壮な顔つきでそれを見送った。
「あ、あんなに叫んで……」
「絶叫マシーンなんだから、そりゃ絶叫するでしょ。――だいたいねえ!」
メリーは蓮子に顔を寄せて、強い口調で言った。
「秘封倶楽部がそんなことでいいの?」
「な、何がよ、秘封倶楽部とジェットコースターは関係ないでしょ……」
「いーえ、おおあり! 乗りもしなくせにビクビク怖がってさ。そーいう姿勢で、秘封倶楽部が勤まると思う?」
「はぅ……! で、でもぉ……」
「乗ってみれば楽しいかもしれないでしょう? いつも蓮子いってるでしょ、『考えるな! まずはやれ!』って」
「そうだけどさぁ……」
蓮子はまたうつむいて、口をもごもごしながらオロオロと視線をさまよわせた。
メリーはよだれが出そうだった。
(ああーっ! ぞくぞくしちゃう。こーいう蓮子って新鮮だわ)
顔を見られないように、あさってを向いてニヤニヤと笑う。
(蓮子にゃ絶対彼氏なんかできないと思ってたけど……こーいうところを見せれば、男なんてギャップでころっといっちゃうんじゃないかしら。そもそも蓮子って見た目はとってもかわいいし。ボーイッシュっていうか素敵よね……やだ、私ったら何いってるのかしら)
世話焼きバアさんのような気持ちになって、メリーはくすくすと笑う。
ジェットコースターが発着場に帰還し、また待機列が進む。
「うう……」
あわよくば逃げ出そうとする蓮子の腕を、メリーはがっちりとつかんでいた。
ギロチンが、カタカタカタと機械仕掛けの無機質な金属音とともに巻き上げられていく。ほどなくして頂点まで吊り上げられた鉄の刃は、次の瞬間には無常にも落下をはじめるのだ。己の首を切断するために――
(なんていう風に、蓮子には聞こえてるのかしらねー)
カッキンカッキンと金属音を響かせながら乗客を積んだコースターがレールを引き上げられていく。
どんどん見晴らしのよくなっていく景色にメリーは口笛をふいた。
なんと二人はジェットコースタの最前列に座ることができた。
目の前で、白く頑丈そうな細いレールが、空へと伸びている。
レールはある高さで上昇をやめ、垂直かと思うような角度で地面に流れ落ちている。
コースターがそこに到達するまで、残り数十秒ほど。
メリーの隣では蓮子が血の気を失った顔で前方を凝視していた。
「め、めめ、メリィ、お願い……手つないで……」
「そーいうことは男にやってもらいなさい」
「意地悪……」
その時蓮子が、ふと何かを思い出した。そして青くなった。
「……ねぇメリーっ」
「何よ?」
蓮子の裏返った声に、メリーは噴出しそうになってしまう。
「このコースターってさぁ、もう何年も前から動いてるよね……?」
「え? そうね……もうずいぶん前から人気よね」
「……どうしよう。車輪とか、安全レバーとか、大丈夫かしら……壊れたりしないかな……」
「はぁ?」
「聞いたことあるでしょ! 稼動中のアトラクションの安全レバーが外れて、乗ってた人が事故にあったりとか」
「心配しなくても、そんなの天文学的確率だわ」
二人の肩はがっちりと安全バーに固定されている。
「ででででも! まったくないわけじゃないでしょ!?」
「そりゃ、何件か聞いたことはあるけど……」
「でしょ!? それにジェットコースターって部品にものすごい負荷がかかるんだよ!? カーブとか、宙返りとかで、車輪が耐え切れずにはずれちゃったりしたら、私達をのせたままレールから飛び出して……そしたら私達はなすすべもなく地面に激突してしまうのよ……!?」
「おいおい……もー、大丈夫だから。変な想像しないの」
メリーはしかたなく蓮子の手を握ってやった。
その時、後ろの席から子供の不安そうな声が聞こえてきた。
「ママー……このジェットコースター壊れちゃうの?」
「大丈夫よ、まーくん。ちゃんと遊園地の人達がいつもキレイキレイにしてくれてるからね」
メリーは思わず肩を小さくする。
(あちゃー……ごめんねボク)
と、その時、カッキンカッキンと一定の音を上げていたレールから、ガキン! と耳障りな金属音がした。何の音かは知らないが、たぶんレールの連結部を通ったとか、そんなところだろう。
が、案の定、蓮子は悲鳴を上げた。
「メ、メリィ! 今の聞いた!?」
「聞いたわよ……なんでもない。心配ないって」
「心配あるよ! ……どうしよう、このコースター部品が壊れてるのよ! でないとあんな異音がするはずない! 整備不良よ! 故障を見落としてるのよ!」
「ちょ……馬鹿なこと大声で言わないの! 恥ずかしいじゃない!」
「なにが恥ずかしいのよ! 私達死ぬかもしれないんだよ!?」
「ち、ちょっと、いいかげんにしてよ」
メリーは後悔し始めていた。まさか蓮子がこれほどまでに怖がるとは。
そしてまた後ろの席から子供の不安そうな声。
「マ、ママぁ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだからね。……うぉほんっ」
(ひぃ……す、すみません)
咳払いは明らかにメリーと蓮子に向けられていた。
が、錯乱気味の蓮子にはそんなものはこれっぽっちも聞こえていないようだ。
「止めなきゃ! 止めてー! 係員さんジェットコースターを止めてえー! どこかが壊れてるのよー!」
「ちょっとお!? かんべんしてよ! あーもー黙れ! 馬鹿蓮子! ……ご、ごめんねボク、このお姉ちゃんの言うことは全部嘘だからね。気にしないでね!」
メリーは何とか顔だけ後ろを振り向いて、母と子供にぺこぺこと頭を下げる。
子供は不安そうな目で、母親は迷惑そうな目で、メリーを見返していた。
そんなメリーの気遣いなど一切気づいていない蓮子が、ぐいっとメリーの肩をつかんで前を向かせる。
「だめ……もうだめだわ……頂上にきちゃった……もう、だめ……」
「お願いだから黙って! ね! すぐ終わるから! 私が悪かったから! お昼おごるから!」
ジェットコースターはレールの頂点に差し掛かり、二人の身体はすでに下を向き始めていた。
まだ後続車両の重みでスピードはでていないが、もはや時間の問題だ。
蓮子がものすごい力でメリーの手を握った。
「メリーっ……わたし、死ぬ前にあなたに伝えておかなきゃいけないことがっ……!」
「もー二度と蓮子をジェットコースターに乗せるもんですか! 謝るから、もうホント黙ってて頼むから!」
そしてジェットコースターは、轟音をたてながら落下を始めた。
その瞬間、蓮子はメリーが聞いたこともないありったけの金切り声をはりあげた。
「ぎゃあああーーー! 死ぬゥゥゥーー!」
そして、とんでもないことを絶叫しはじめた。
「メリィィーー! 私はあなたを愛してたのォォーー! あなたが好きなのォォーー! 死ぬ前にキスしてほしかったァァーー!」
「はぁぁぁ!? ちょ、何いってるのよ蓮子!?」
「天国でもずっと私のそばにいてェェメリィィーー!」
「ちょっ、やめて! やめ、ヤメロォォーッ!!」
二人の少女の真剣な絶叫をあたりに響き渡らせながら、ジェットコースターはレールを駆け抜けていった。
「う……えぐ……こわいよぉ……こわかったよぉ……メリーの馬鹿ぁ……」
人気のないエリアのベンチに腰掛けて、メリーの肩に蓮子がしがみついてまだスンスンと泣いていた。
メリーはぐったりと白目をむいている。
コースターがやっと発着場に戻ると、蓮子はもはや腰が抜けて立つこともできないありさまだった。
よくあることですからー、とにこやかに笑う何も知らない業務員さんと一緒に蓮子を引っ張りあげると、メリーは蓮子を担いでその場から全力で逃げた。
後ろの座席の客達がどんな目で自分たちを見ているのか恐ろしくて振り向けたもんじゃなかった。
5分ほど走って、ようやく人気のない場所をみつけたのだった。
しゃんしゃんしゃん♪
あたりに響いているメロディがむなしい。
「蓮子……」
声をかけても、蓮子は鼻をすするばかり。
だけど、どうしても聞いておかなきゃならないことがある。
「さっきのアレさぁ……」
好きだの愛してるだの一緒に死のうだの、生まれ変わったら子供は二人だの。
「……えっと、錯乱してたんだよね? わけわかんなくなっちゃって、あんなこといったんだよね?」
「……」
「……蓮子?」
「……」
蓮子はうつむいたまま、コクリと頷いた。
だけど、メリーにはわかってしまったのだ。蓮子の沈黙の意味が。
「……あぁ……どうしよっかなぁ……」
遠くで、楽しげな悲鳴が聞こえた。
蓮子が小さく、ひぃ……と情けない声をつぶやいた。
可愛い、かも――メリーはほんの少しだけ、きゅんとしてしまった。
根性やら行動力やら、ほんともう男顔負け。
「ふふ、蓮子ったら、そんなんじゃ彼氏できないわよ」
メリーの言葉の裏にはたくましい蓮子への賞賛がある。
だがある時、
(とうとう見つけたわよ蓮子の苦手なもの! これは加虐心がそそられる!)
天気の良い春の日曜日。
親子連れや恋人達でにぎわう遊園地。
メリーと蓮子は今、ジェットコースターの待機列に並んでいた。
次のアトラクションを品定めしている友達連れや、ジェットコースターに早く乗りたくてうずうずしている子供達。
園内のあちらこちらに設置されたスピーカーからはリズムのよい楽しげな音楽がエンドレス垂れ流し。
そんな中にあって、蓮子だけが処刑台に向かう囚人のように青白い顔をしている。
「ね、ねぇメリー。やっぱりやめようよぉ……私、観覧車に乗りたいよぉ……うぅ……せっかくメリーが遊園地に誘ってくれたって喜んでたのに……」
「私に誘われて喜んでどうするのよ。それより蓮子ったら、乗ったこともないのに怖がっているんでしょう?」
「だってあんなの、見るからに怖そうじゃない……」
待機列の頭上にかかるレールをタイミングよくジェットコースターが駆け抜けた。
楽しげな悲鳴と、竜巻のような轟音とがあたりに響き渡る。
おー、すげー、と列待ちの人たちが興奮気味にそれを見上げた。
蓮子は悲壮な顔つきでそれを見送った。
「あ、あんなに叫んで……」
「絶叫マシーンなんだから、そりゃ絶叫するでしょ。――だいたいねえ!」
メリーは蓮子に顔を寄せて、強い口調で言った。
「秘封倶楽部がそんなことでいいの?」
「な、何がよ、秘封倶楽部とジェットコースターは関係ないでしょ……」
「いーえ、おおあり! 乗りもしなくせにビクビク怖がってさ。そーいう姿勢で、秘封倶楽部が勤まると思う?」
「はぅ……! で、でもぉ……」
「乗ってみれば楽しいかもしれないでしょう? いつも蓮子いってるでしょ、『考えるな! まずはやれ!』って」
「そうだけどさぁ……」
蓮子はまたうつむいて、口をもごもごしながらオロオロと視線をさまよわせた。
メリーはよだれが出そうだった。
(ああーっ! ぞくぞくしちゃう。こーいう蓮子って新鮮だわ)
顔を見られないように、あさってを向いてニヤニヤと笑う。
(蓮子にゃ絶対彼氏なんかできないと思ってたけど……こーいうところを見せれば、男なんてギャップでころっといっちゃうんじゃないかしら。そもそも蓮子って見た目はとってもかわいいし。ボーイッシュっていうか素敵よね……やだ、私ったら何いってるのかしら)
世話焼きバアさんのような気持ちになって、メリーはくすくすと笑う。
ジェットコースターが発着場に帰還し、また待機列が進む。
「うう……」
あわよくば逃げ出そうとする蓮子の腕を、メリーはがっちりとつかんでいた。
ギロチンが、カタカタカタと機械仕掛けの無機質な金属音とともに巻き上げられていく。ほどなくして頂点まで吊り上げられた鉄の刃は、次の瞬間には無常にも落下をはじめるのだ。己の首を切断するために――
(なんていう風に、蓮子には聞こえてるのかしらねー)
カッキンカッキンと金属音を響かせながら乗客を積んだコースターがレールを引き上げられていく。
どんどん見晴らしのよくなっていく景色にメリーは口笛をふいた。
なんと二人はジェットコースタの最前列に座ることができた。
目の前で、白く頑丈そうな細いレールが、空へと伸びている。
レールはある高さで上昇をやめ、垂直かと思うような角度で地面に流れ落ちている。
コースターがそこに到達するまで、残り数十秒ほど。
メリーの隣では蓮子が血の気を失った顔で前方を凝視していた。
「め、めめ、メリィ、お願い……手つないで……」
「そーいうことは男にやってもらいなさい」
「意地悪……」
その時蓮子が、ふと何かを思い出した。そして青くなった。
「……ねぇメリーっ」
「何よ?」
蓮子の裏返った声に、メリーは噴出しそうになってしまう。
「このコースターってさぁ、もう何年も前から動いてるよね……?」
「え? そうね……もうずいぶん前から人気よね」
「……どうしよう。車輪とか、安全レバーとか、大丈夫かしら……壊れたりしないかな……」
「はぁ?」
「聞いたことあるでしょ! 稼動中のアトラクションの安全レバーが外れて、乗ってた人が事故にあったりとか」
「心配しなくても、そんなの天文学的確率だわ」
二人の肩はがっちりと安全バーに固定されている。
「ででででも! まったくないわけじゃないでしょ!?」
「そりゃ、何件か聞いたことはあるけど……」
「でしょ!? それにジェットコースターって部品にものすごい負荷がかかるんだよ!? カーブとか、宙返りとかで、車輪が耐え切れずにはずれちゃったりしたら、私達をのせたままレールから飛び出して……そしたら私達はなすすべもなく地面に激突してしまうのよ……!?」
「おいおい……もー、大丈夫だから。変な想像しないの」
メリーはしかたなく蓮子の手を握ってやった。
その時、後ろの席から子供の不安そうな声が聞こえてきた。
「ママー……このジェットコースター壊れちゃうの?」
「大丈夫よ、まーくん。ちゃんと遊園地の人達がいつもキレイキレイにしてくれてるからね」
メリーは思わず肩を小さくする。
(あちゃー……ごめんねボク)
と、その時、カッキンカッキンと一定の音を上げていたレールから、ガキン! と耳障りな金属音がした。何の音かは知らないが、たぶんレールの連結部を通ったとか、そんなところだろう。
が、案の定、蓮子は悲鳴を上げた。
「メ、メリィ! 今の聞いた!?」
「聞いたわよ……なんでもない。心配ないって」
「心配あるよ! ……どうしよう、このコースター部品が壊れてるのよ! でないとあんな異音がするはずない! 整備不良よ! 故障を見落としてるのよ!」
「ちょ……馬鹿なこと大声で言わないの! 恥ずかしいじゃない!」
「なにが恥ずかしいのよ! 私達死ぬかもしれないんだよ!?」
「ち、ちょっと、いいかげんにしてよ」
メリーは後悔し始めていた。まさか蓮子がこれほどまでに怖がるとは。
そしてまた後ろの席から子供の不安そうな声。
「マ、ママぁ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだからね。……うぉほんっ」
(ひぃ……す、すみません)
咳払いは明らかにメリーと蓮子に向けられていた。
が、錯乱気味の蓮子にはそんなものはこれっぽっちも聞こえていないようだ。
「止めなきゃ! 止めてー! 係員さんジェットコースターを止めてえー! どこかが壊れてるのよー!」
「ちょっとお!? かんべんしてよ! あーもー黙れ! 馬鹿蓮子! ……ご、ごめんねボク、このお姉ちゃんの言うことは全部嘘だからね。気にしないでね!」
メリーは何とか顔だけ後ろを振り向いて、母と子供にぺこぺこと頭を下げる。
子供は不安そうな目で、母親は迷惑そうな目で、メリーを見返していた。
そんなメリーの気遣いなど一切気づいていない蓮子が、ぐいっとメリーの肩をつかんで前を向かせる。
「だめ……もうだめだわ……頂上にきちゃった……もう、だめ……」
「お願いだから黙って! ね! すぐ終わるから! 私が悪かったから! お昼おごるから!」
ジェットコースターはレールの頂点に差し掛かり、二人の身体はすでに下を向き始めていた。
まだ後続車両の重みでスピードはでていないが、もはや時間の問題だ。
蓮子がものすごい力でメリーの手を握った。
「メリーっ……わたし、死ぬ前にあなたに伝えておかなきゃいけないことがっ……!」
「もー二度と蓮子をジェットコースターに乗せるもんですか! 謝るから、もうホント黙ってて頼むから!」
そしてジェットコースターは、轟音をたてながら落下を始めた。
その瞬間、蓮子はメリーが聞いたこともないありったけの金切り声をはりあげた。
「ぎゃあああーーー! 死ぬゥゥゥーー!」
そして、とんでもないことを絶叫しはじめた。
「メリィィーー! 私はあなたを愛してたのォォーー! あなたが好きなのォォーー! 死ぬ前にキスしてほしかったァァーー!」
「はぁぁぁ!? ちょ、何いってるのよ蓮子!?」
「天国でもずっと私のそばにいてェェメリィィーー!」
「ちょっ、やめて! やめ、ヤメロォォーッ!!」
二人の少女の真剣な絶叫をあたりに響き渡らせながら、ジェットコースターはレールを駆け抜けていった。
「う……えぐ……こわいよぉ……こわかったよぉ……メリーの馬鹿ぁ……」
人気のないエリアのベンチに腰掛けて、メリーの肩に蓮子がしがみついてまだスンスンと泣いていた。
メリーはぐったりと白目をむいている。
コースターがやっと発着場に戻ると、蓮子はもはや腰が抜けて立つこともできないありさまだった。
よくあることですからー、とにこやかに笑う何も知らない業務員さんと一緒に蓮子を引っ張りあげると、メリーは蓮子を担いでその場から全力で逃げた。
後ろの座席の客達がどんな目で自分たちを見ているのか恐ろしくて振り向けたもんじゃなかった。
5分ほど走って、ようやく人気のない場所をみつけたのだった。
しゃんしゃんしゃん♪
あたりに響いているメロディがむなしい。
「蓮子……」
声をかけても、蓮子は鼻をすするばかり。
だけど、どうしても聞いておかなきゃならないことがある。
「さっきのアレさぁ……」
好きだの愛してるだの一緒に死のうだの、生まれ変わったら子供は二人だの。
「……えっと、錯乱してたんだよね? わけわかんなくなっちゃって、あんなこといったんだよね?」
「……」
「……蓮子?」
「……」
蓮子はうつむいたまま、コクリと頷いた。
だけど、メリーにはわかってしまったのだ。蓮子の沈黙の意味が。
「……あぁ……どうしよっかなぁ……」
遠くで、楽しげな悲鳴が聞こえた。
蓮子が小さく、ひぃ……と情けない声をつぶやいた。
可愛い、かも――メリーはほんの少しだけ、きゅんとしてしまった。
小さい頃に蓮子みたいに怖がってたのが懐かしい…
すみません、悪ノリしました。
まーくんが余計なこと覚えてしまうわw
俺が彼氏になってやるか
へたれんこもかわいいね。
誤字報告
「心配しなくても、そんなの天文学的確立だわ」
確立→確率
へたれんこかわいいよ!
この先の話を期待してしまいますw
ジェットコースターのお母様は迷惑だっただろうなぁw
参考元今度読んでみます
妄想が妄想を呼びます